『真夜中ぱんチ』シリーズ構成・白坂英晃さんインタビュー|キャラクターに振り幅を持たせられるのも、オリジナル作品だからこそ【スタッフ・声優インタビュー連載第7回】
P.A.WORKSの『パリピ孔明』スタッフが贈る、オリジナルTVアニメーション『真夜中ぱんチ』が2024年7月8日(月)より放送中!
世界でもっとも見られている動画投稿サイト「NewTube」で活躍する3人組NewTuber「はりきりシスターズ」の「まさ吉」こと真咲は、とある事件がきっかけでチャンネルをクビに。 起死回生を狙う真咲の前に現れたのは、なぜか彼女に運命を感じたヴァンパイアのりぶ。
超人的な能力を持つりぶと一緒なら、最高の動画が撮れるはず……? チャンネル登録100万人を目指して邁進していく、ワケあり動画投稿者たちのハイテンション・ガールズ“再生”ストーリーです。
アニメイトタイムズでは、スタッフ&キャストのインタビューを連載中。第7回は本作のシリーズ構成を担当された白坂英晃さんです。オリジナル作品である本作ならではの“産みの苦しみ”を味わったと語る白坂さん。そして、その苦しみを経てこそ得られた感情とは? 物語やキャラクターの根幹にまつわるエピソードを伺いました。
『マヨぱん』最初期の構想は「ヴァンパイアが動画配信をして100万人の血を集めるストーリー」だった
ーーまず、白坂さんが『真夜中ぱんチ』に携われたきっかけからお伺いしたく思います。やはり『パリピ孔明』のご縁からオファーがあったのでしょうか?
白坂英晃さん(以下、白坂):僕がシリーズ構成として『真夜中ぱんチ』に参加させていただくことが決まったのは、ちょうど『パリピ孔明』の脚本が完成して、アフレコが始まったタイミングですね。「オリジナル企画で動いているものがある」とお話をいただきました。時期的には3年前……2021年の夏頃で、最初の打ち合わせもその時期でしたね。
ーー3年前! そうなると、記憶を掘り返すのも大変ですね……!
白坂:そうですね。取材前まで、関係者とのやり取りを見返していました(笑)。
ーー見返した中で、懐かしいやり取りはありましたか?
白坂:監督と長谷川育美さん(真咲役)とのオーディオコメンタリー(11月27日発売 Blu-ray BOX収録)でも話したのですが、最初期と現在に至るまでで、ストーリーが変わったんです。“ヴァンパイア×動画×コメディストーリー”というコンセプトは、僕が企画に参加する前から決まっていたのですが、最初期の企画書に書いてあるのは、ヴァンパイアが動画配信をして100万人の血を集めるストーリーだったんですよ。
ーー根本は変わらずとも、当初はストーリーが全く違う『真夜中ぱんチ』が企画されていたのですね。
白坂:そうですね。「ヴァンパイア・動画・100万人」というワードは一緒なのですが、違ったストーリーでした。「自分たちヴァンパイアが生き延びるために100万人の血が必要。そして現在の人間界では動画というものが流行っているらしいから、登録者を増やして血を集めよう!」みたいな感じだったと思います(笑)。
ーーお話を受けた当初、白坂さんは『真夜中ぱんチ』にどのような印象をお持ちでしたか?
白坂:P.A.WORKSプロデューサーの辻(充仁)さんからお話をいただいて、「面白そう!」と思いました。誰も見たことのない“ヴァンパイア×動画”という組み合わせを、どうやってアニメの形にしていくのかという好奇心も働いて、ワクワクしながら企画に参加していましたね。
ーーそれでは、二つ返事で企画に参加されたのですね。
白坂:もちろんです! やはり『パリピ孔明』の各話脚本を担当していたという繋がりもありましたし、僕自身、今までアニメのオリジナル作品をやったことがなかったので、携わってみたいという気持ちもありました。面白い話をいただけたなと思って、お返事をしました。
ちなみにその『パリピ孔明』では本間(修)監督とも出会えましたし、本間監督がアニメ制作で大事にしたいことなどの傾向も知ることができました。全体を通して、すごく楽しかったですね!
ーー本間監督の傾向とは、どのようなものなのでしょう?
白坂:言葉にするのは難しいのですが、本間監督は、基本的に様々な意見を吸収してくださるのですが、芯をしっかり持っている方なので、「本間監督がこのアニメで何をやりたいのか」を理解して作るのがすごく大事だなと思いますね。
ーー『真夜中ぱんチ』制作中には、打ち合わせや話し合いの機会も多かったのでしょうか?
白坂:そうですね。『パリピ孔明』は、四葉夕ト先生・小川亮先生の意見と監督の意見を聞いて制作していたので、ある程度の道筋が見えていました。対して、今回の『真夜中ぱんチ』はオリジナル作品で、地図のない航海をしているような感覚だったので、話し合いや打ち合わせの回数はすごく多かったです。打ち合わせがない時でも、監督とオンライン通話で作業をしていましたね(笑)。前半は特にそうでした。
「この子たちを動かしてみないことには、見える景色はわからない」
ーー本間監督が、最終話のプロットが決まっていない段階で、第1話の原稿制作を始めたというお話をされていましたが……。
白坂:最終回の結論が出ていない状態だったのですが、本間監督には「キャラクターが動いた結果を最終回にしたい」という目標があって、僕も同じことを思っていました。なので大枠の設定や話の流れを話し合っていた時、「この子たちを動かしてみないことには、見える景色はわからない」「逆にキャラクターが動いたら見えるんじゃないか」という結論に至って。半ば強引に第1話を作りました。
ーー第1話が軸となって、制作が進んでいったのですね。
白坂:結局その第1話も、何回書き直したか覚えていないくらい書き直したんですよ……(笑)。続いていくお話の中から、キャラクターの新しい一面が次々と出てくるんです。そうなると、「第1話でのあのセリフは、言い方を変えたほうが良いのでは?」と、修正が入るんですね。でも、一度走り出したことで、登場人物それぞれのキャラクター性が見え始めたので、大事だったなと思います。第4話の脚本を書いている頃には、主要人物の性格が見えてきて、また第1話の脚本を修正していたり。
ーー何回書き直したか覚えていないくらいの修正って、すごいですね……!
白坂:10……何稿くらいかなぁ(笑)。
ーー通常だと5、6稿とかでしょうか。10稿を超えたというお話は初めて聞きました。
白坂:原作がある作品だと、大体そのくらいですね。ただ今回は0から作っているので……。
ーー0から1を作り出す大変さがわかります。
白坂:このキャラクターたちを生み出すのに何ヶ月もかかっているし、そこからお話を作るのに何ヶ月もかかって……と、繰り返していましたね。
ーーこの頃には、ことぶきつかささんのキャラクター原案は出来上がっていたのでしょうか?
白坂:まだだったかな……ある程度制作が進んでから、ことぶきさんの絵が到着しました。第1話から第4話くらいまでは、「多分こういうキャラクターだろう」という想定のもと、制作を進めていましたね。
ーーことぶきさんのキャラクター原案も、第一稿と最終稿とで大きく変わっていますよね。
白坂:多分、何度も描いていただいたんだろうなと思います。これはオリジナル作品の面白いところだと思うのですが、僕の中で思っている「真咲はこういう子」というイメージと、本間監督がイメージしている真咲、プロデューサーの真咲が、少しずつ違うんです。そのイメージの擦り合わせが難しいポイントでもあるのですが、脚本が進むにつれてキャラクターの人格も形成されていって。最終的には全員ピッタリなイメージに落ち着きました。
ーーオリジナル作品の面白さを感じながらの制作だったのですね。
白坂:同時に苦しさもありましたが……(笑)。ただ、僕はずっと楽しかったですね。