
王道の“少年誌的ラブソング”に込めた福山“らしさ”と“らしくなさ”とは? ミニアルバム『Reflection』リリース記念! 福山潤インタビュー【後編】
2025年2月5日、声優・アーティストとして活躍する福山潤が、コンセプトミニアルバム『Reflection』をリリースした。
“少年誌的ラブソング”をコンセプトに、「友情」「絆」「努力」「愛」「正義」「勝利」といったキーワードを、福山流の解釈でラブソングに落とし込んだ全6曲を収録。福山自身がクラーク役として出演するTVアニメ『妃教育から逃げたい私』のOPテーマ「君としか恋しない」をはじめとして、どの楽曲もこれまでの“福山潤”を良い意味で覆す王道路線となっている。
今回は、アルバムに込めた想いや各楽曲の詳細レビューなどを、福山自身に語ってもらった。後編となる今回は、M1からM5の各楽曲に込められたメッセージを、福山潤自身の言葉で紐解いていく。
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ひとつの物語のように受け止めて欲しいなと思います
──ではここからは、ミニアルバム「Reflection」に収録されている楽曲について1曲ずつ詳しくお話を伺っていきます。まずはM1「Breaking ”Bad” ~堕悪緋色~」ですね。
福山:この曲は松井洋平さんとJUVENILEさんの黄金コンビによるものですが、最初にJUVENILEさんから上がってきたデモ楽曲を聞いた時には、思わず「ムズッ!!」って驚いて、直感的に「これは歌える気がしない」って思っちゃいました(笑)。
でも、たしかに音の並びだけを聞くとそうなんですけど、そこにある種の「主張」が乗るとまた変わってくるかもしれないとも思ったので、松井さんには「強めのメッセージを込めてください」とお願いして、歌詞を書いていただきました。
──福山さんは初期のころから楽曲にラップを取り入れていますが、今回のラップはこれまでとは少し違うアプローチですね。
福山:僕たちがイメージするラップって、リズムに言葉をビシッとハメていくスタイルが多いと思うんですけど、じつはラップにもいろいろな歌い方があって、今回はそのなかでも「スポークンワード」や「ポエトリーリーディング」に近い歌い方をしています。僕自身、「ラップって思っていた以上に自由なんだな」と改めて感じましたし、引き出しが増えたような気がします。
──滑舌の良さに定評のある福山さんだけに、ラップは相性が良いですよね。
福山:うーん、それが今回に関しては一概にはそうとも言えない気もするんですよね。僕に限らず声優って、カクカクして尖った音の塊を、なるべく滑らかに整形してアウトプットする癖が身体に染み付いている気がするんです。
激しいラップであれば、朗読や芝居とは別物なので切り分けられるんですけど、今回のようなポエティックなラップの場合、もっとザラついていないといけないところを必要以上に滑らかにしてしまうなど、すごく細かい部分で苦労しました。これは一朝一夕では身につかないプロの技なんだなということを痛感しましたが、いい経験になったのは間違いないですね。
──そしてこの楽曲のテーマは「正義」です。
福山:聴いた瞬間、この曲を「正義」をと当てようと決めました。展開がドラマチックで強いので、絶対に合うだろうと思ったんです。歌詞については、社会的な正義や絶対的な正義などではなく、個人の主観的な正義というものを扱っていて、そこも面白いかなと思います。
──この曲で書かれている正義は、いわばネットなどで蔓延っている「自分勝手な正義」に近いですね。
福山:まさにそういうイメージで作っています。ネットでは何か問題が起こるたびに、無責任に「正義」か「悪」かをはっきりと色分けして、すごい勢いで断罪していくじゃないですか。
しかも歌詞にもあるように「愛の名の下に」行なっているというのがやっかいで、それを持ってある種の“ラブソング”と解釈しています。
──その辺りはじつに福山さんらしい捉え方ですよね。では続いてはM2「Always watching you」です。楽曲はとても爽やかですが、歌詞からは「怖さ」も感じます。
福山:完全にそれを狙っていますね。
この曲は6つのテーマの中では「絆」に紐づけているんですけど、僕のなかには昔から「“見守る”ってどういうこと?」っていう疑問があって、この曲ではそれを掘り下げていきました。
例えば「見守ってるよ」とは言うけれど、実際にその人は何もしないわけで、それって無責任な言葉だとも感じてしまうんですよ。それと同時に、見守る側には悪意はなくて、むしろ好意を持っていることのほうが多いじゃないですか。この曲では、そんな「見守る」という言葉の裏に潜む怖さだったり、監視されているかのような息苦しさも込めているんです。
──そういうネガティブな要素も含んだ「絆」というわけですね。
福山:そうですね。「絆」って、仮に本人にとっては喜ばしくない関係性だとしても、ときにこの言葉で括られることがある気がするんです。そんな危ういバランスを表現したくて、まるで短編ドラマの登場人物を設定するかのように、それぞれのキャラクターの背景や心情について、細かく松井さんと共有しながら歌詞を作り上げていただきました。
こういう話って、きっと歌じゃないと毒気が抜けないと言うか、歌だからこそ成立するテーマだとも思うんですね。なので、僕からのメッセージと言うよりは、ひとつの物語のように受け止めて欲しいなと思います。
──ある意味で問題作なんですね。
福山:いちばんの問題作かも(笑)。
でも、ふだんから僕のことを見ていてくださる方であれば、僕が悪意を向けているわけではないということは理解してもらえると思っているので、そこはファンの皆さんに対する信頼だったり、あるいは願望があったからこそ作れた曲でもあったのかなと思います。