
スーパー戦隊とはどういう番組なのか、今一度とらえ直すーー『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』チーフプロデューサー・松浦大悟さんインタビュー
スーパー戦隊の現場は「ナンバーワンの現場」
ーーメインキャスト5人の印象はいかがでしたか?
松浦:ずっと見ていたくなるようなキャストが揃いました。僕はとにかくキャラクターに合致する方を探していたので、ビジュアル的には、イケメンに目がない原島果歩APの選球眼に頼りました(笑)。
ーースーツアクターにも、『ブンブンジャー』とは違った5人が抜擢されています。また、スタッフクレジットには役名も記載されていて。
松浦:クレジットに関しては僕の独断でやっていますが、求める声も沢山あったと思いますし、ことさら特別なことだという意識はないです。当たり前のことかなと。
5人のメンツが『ブンブンジャー』と違うのは、撮影期間の兼ね合いという面もありますね。僕から福沢アクション監督にお願いしたのは「レッドは浅井宏輔さんでお願いできませんか」ということだけです。あとは福沢さんにお任せでしたが、ほぼ理想通りの布陣だったので「大歓迎です!」と。ただ、「下園さん、2年連続ユニコーンでごめんなさい!」という気持ちは少しあります(笑)。
ーー(笑)。浅井さんの参加を希望されたとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
松浦:準備期間に丁度、『ガッチャード』に登場する「冥黒王 ジェルマン」というキャラクターをお願いしていて、そのお芝居が素晴らしく、改めて浅井さんに惚れ直したんです。
ただ、「ゴジュウウルフ」のスーツアクトは、キャラクターの在り方をどうするかで悩まれているとか。というのも、浅井さんには「一度も膝をつかないぐらい〝強い〟ヒーローでいてほしい」というお願いをしているんです。ただ、吠のキャラクター性としては、そこまでオラオラ系のキャラでもないですし、アクションざまとして、オオカミっぽい這うような表現も求められるので。その辺りは浅井さんに無理を言ってしまった部分でした。
でも、最近の浅井さんを見ていると、だんだん響き合うものが腑に落ちてきている感覚もあって。「ゴジュウウルフ」のアクションがどんどん良くなっているので、楽しみにしていただきたいです。
ーーリング上で向かい合った状態での名乗りのシーンもカッコよかったです。いきなり応援団も登場して驚きました。
松浦:スーパー戦隊にとっての名乗りは一番大事な部分だと思っていますし、だからこそ適当にはやりたくない。変身したら機械的に名乗るのではなく、目立つ名乗りにしたかったんです。
ナンバーワン対決というところから、格闘ゲーム風な演出も付けているんですけど、両者がぶつかり合う場面で頭のネジがもう一つ外れないかなと思っていて。頑張ってアイデアをひねった結果が応援団です。「何で応援団が出てくるの?」と聞かれたら、「何でかはわからないけど元気になりません?」と答えます(笑)。
ーーヒーローは応援されるものですし、否応なしにテンションが上がりますよね。
松浦:田﨑監督は世代的にも大学の応援団がドストライクの世代らしく、僕がうっかり口を滑らしたところ、めちゃくちゃノッてこられまして(笑)。作品とあの年代特有の応援団スピリッツみたいなところが繋がりました。僕としても、ヒーローが応援されるシーンというのは絶対にやりたかったんです。
ーーブライダン側の応援団も沢山いるのが面白かったです。
松浦: そこはヒーローだけでなく、敵もやりたかったんですよ。『ドンブラザーズ』の天女、『快傑ズバット』のブルドーザーのように、東映特撮は基本的に理屈を超えるものなので。でも、本当にみんながノリノリでやってくれていました。撮影現場はとっても大変なんですけど、それでも楽しくやれているのは本当にありがたいです。スーパー戦隊の現場というのは、それこそ「ナンバーワンの現場」だと胸を張って言えるので、心から恵まれているなと感じる毎日です。
理屈はあるけど、理屈じゃない。その“ぶっ飛び”を楽しんでほしい
ーー音楽周りも豪華なアーティストやクリエイター陣が集結しています。オープニングテーマ・Wienners「WINNER!ゴジュウジャー!」はバンドサウンドで元気が出る楽曲ですよね。
松浦: オープニングにダンスが入ることは決まっていたので、「とにかく馬鹿みたいに楽しく踊れるようなダンスナンバーがいい」という話になりました。そこからコロムビアさんのレーベルのアーティストを何十曲と勉強してWiennersさんの楽曲を知り、僕の方から提案させていただいたんです。中でも「蒼天ディライト」という楽曲がすごく良くて。バンドサウンドもこれまでの歴史にはなかったし、男女混声ボーカルは『秘密戦隊ゴレンジャー』のOPのようにも感じられるんじゃないかなと。
ダンスもかなりいい感じになっています。振り付けの彩木エリ先生が覚醒してしまいまして(笑)。途中経過を見せてください、と言うと「中途半端な状態では見せたくない。一撃ノックアウトしたいです」とおっしゃるんです。監修する側としては困るのですが、「そこまでおっしゃるなら、ぜひ詰めてください」って。結果、しっかり一撃でノックアウトされました。
ーー劇伴は『ドクターX』などで知られる沢田完先生が担当されています。
松浦: 亜樹子さんの台本が上がってきた時に、田﨑監督が西部劇チックなニュアンスを感じ取ったらしくて。例えば、レギュラーセットの喫茶店は、西部劇でよく見るオープンドアになっていますし、吠の性格も含めて、「マカロニウエスタンな雰囲気を演出として通底させたい」という提案があったんです。
そういう音楽を作れそうな人を考えた時に、沢田完先生の名前が出ました。それこそ『ドクターX』的な口笛の感じもありつつ、バトル系の曲もすごく華やかで、お願いして大正解だったと思います。
ーー第2話のバトルシーンで流れる挿入歌は、影山ヒロノブさんが歌われていました。往年のスーパー戦隊ファンにも嬉しいポイントですね。
松浦:現場では「勝ち確ソング(勝利確定ソング)」と呼んでいます。『仮面ライダーガッチャード』でほぼ毎週挿入歌を流していたので、湊さんから勝手にバトンを受け取ろうかなと(笑)。僕らは挿入歌が流れる特撮を観ていた世代なんですよね。
作詩は売野雅勇先生という大ベテランの方にお願いしています。コロムビアさんからお名前が上がったときに、これまでに手掛けられた曲が好きなものだらけだったので、「ぜひお願いします!」と二つ返事でした。個人的に思い入れがあるのは、「水の星へ愛をこめて」(『機動戦士Ζガンダム』後期OP)や「風のノー・リプライ」(『重戦機エルガイム』後期OP)……スーパー戦隊では、これまでに「光戦隊マスクマン」の作詩を担当されているので、その繋がりから影山さんにお願いする運びにもなりました。
とても嬉しかったのは、最初に売野先生から「時間がかかるかもしれないです」と言われていたのですが、台本をお送りしてから数日で歌詞が上がってきて、「お話が面白かったので、すぐ書いちゃいました」と。その詩が涙が出るほど素晴らしくて! 作曲には渡部チェルさんを指名させていただき、何の心配もない布陣で最高の楽曲ができました。本編でも配信でも沢山聴いていただきたいです。
ーー最後に、今後の『ゴジュウジャー』の見どころを教えてください。
松浦: 作品を観た人から、「分からないけど、何かすごい」と言っていただけるんですよ。こちらとしては全部に理屈をつけているつもりなんですけど……応援団以外は(笑)。でも、「TV番組って理屈で観るものじゃないよね」とも思っています。「ナンバーワン対決」というアホらしいものが続いていくので、まずは観て元気になっていただきたいです。
あとは企画の段階から、「ロボット好きじゃない人も観たくなるロボットものって何だろう?」とずっと考えていて。例えば、「あんなに大きいものが実際にあったら、戦うこと以外でも使うよね」という発想から、第2話ではスコップのように使ったりしています。様々な場面で「スーパー戦隊って、真剣にロボと向き合ってます」とアピールしているので、ロボット番組の仲間として認めてもらえたら嬉しいなと思っています。あわよくば皆さんに「テガソード」を手にしていただいて、他のロボットたちと「テガソード」を並べていただきたいなと。
キャラクターに関しては安心してください。亜樹子さんが作るキャラクターは間違いないです。間違いなくぶっ飛んでいるので、そのぶっ飛びを一緒に楽しみましょう!
[インタビュー/田畑勇樹 撮影・編集/小川いなり]
インタビューバックナンバー
『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』作品情報
あらすじ
その唯一の勝者、巨神テガソードは深い眠りについた。
テガソードの力をわけた指輪をすべてあつめると、
なんでも願いがかなうという…。
そんな指輪を、5人の“はぐれ者”が手にした!
はぐれアルバイター・遠野吠はゴジュウウルフ
元スーパーアイドル・百夜陸王はゴジュウレオン
テガソード信奉者・暴神竜儀はゴジュウティラノ
パリピ高校生・猛原禽次郎はゴジュウイーグル
ハイクラス名探偵・一河角乃はゴジュウユニコーン
ナンバーワンは1人しかありえない!?
戦士になった5人は、指輪をもとめて戦う!
さらには、悪の軍団・ブライダン、
そして歴代スーパー戦隊とも、 おきて破りの頂上バトル!
新時代のナンバーワンになるのは誰だ!?
“最高最強ヒーロー”
ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーの
戦いのゴングが今、鳴りひびく!
キャスト
(C)テレビ朝日・東映 AG・東映



















































