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寺本幸代監督が『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』に込めた子供たちへの想い【インタビュー】

観てくれる子供たちの心に残る作品を作りたい――『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』寺本幸代監督インタビュー|「へたっぴドラ」が動く音には“ドラえもん誕生秘話”とのリンクも

 

レギュラーキャストの情熱とアフレコに対する姿勢は20年経っても変わらない

──今作の鍵を握るクレアやマイロ、チャイはどのように構築されたのでしょうか?

寺本:まず絵の中に入るストーリーなので、絵が好きな少年としてマイロを作りました。アニメーターを見てもそうですが、基本的に絵を描く人は口数が少ない人が多いですけど、おとなしくても芯は強い感じにしたかったんです。

逆にクレアは元気いっぱいで、お姫様だけどお転婆な女の子にしました。チャイに関しては、マスコットキャラとして出したいなと思っていて。クレアに対して、最初はツンツンしていてケンカ友達みたいですが、実はクレアのことが大好きなのが本編を観ていくと分かります。久野(美咲)さんの声の感じと相まって可愛らしくなったので、嬉しく思っています。

 

 

──鈴鹿央士さん演じるパルも重要な役割を担っています。鈴鹿さんのお芝居はいかがでしたか?

寺本:鈴鹿さんはアニメに声をあてられるのが2回目ということで、最初は戸惑っていながら探り探りの感じでした。ただ、役に向かう姿勢は素晴らしかったです。「何でも直しますので言ってください」と素直に演じてくださったので、すごくありがたかったなと。

──メインキャストについてもお聞かせください。寺本監督の中で、皆さんの変化を感じた点はありますか?

寺本:皆さんが初めて『ドラえもん』で演じられた「勉強べやの釣り堀」(2005年4月)の演出を担当させていただきました。声の感じは少しずつ変わってはいますが、皆さん役に対する姿勢はずっと変わらないですね。お芝居に情熱を込めてくださっているので、毎回アフレコを見ていても感動します。

特に今回はのび太が描いた「へたっぴドラ」の声も水田さんがあてられていますが、それがいつもと違った感じのキャラクターになっていて。ちょっとミニドラっぽいというか舌足らずな感じがすごく可愛いです。

──しずか役のかかずゆみさんは「映画ではがっつり泣くところまで心情を作り込める」とおっしゃっていました。

寺本:確かにそうですね。一本通して演じられるので、役者さんたちもやりがいがあるでしょうし、お客さんもキャラクターに感情移入しやすいと思います。

──今作は「映画ドラえもん」ならではのドキドキとワクワクに加えて、次々に色々なことが分かって、腑に落ちていく爽快感も感じました。その上で複雑な感じもしなくて。

寺本:ありがとうございます。「映画ドラえもん」は45年もやっているので、小さい子供たちだけではなく、親御さんや大人の方々にも「ドラえもんが好き」と言っていただけることが多くて。万遍なく皆さんに楽しんでもらえるものを作りたいという想いがあります。

とにかく何でもありな感じというか。アクションも怪獣映画みたいだし、小さなロマンスもあるし、お別れの涙もあるし、笑いもところどころに散りばめて。盛りだくさんな内容になっているので、飽きないで最後まで観ていただけるのではないかなと思います。ただ、盛りだくさん過ぎる故に尺が足りなくて、「どう納めればいいんだろう?」という難しさもありました。

 

「へたっぴドラ」が動く音には“ドラえもん誕生秘話”とのリンクも

──レギュラーキャストの皆さんは今回「映画ドラえもん」が45周年を迎えたことについて、「これからもバトンを繋いでいけるように頑張りたい」とおっしゃっていました。

寺本:『のび太の魔界大冒険』(1984年公開)での「グリーンドラえもん」キャンペーンで作られた「僕たち地球人バッジ」、『のび太の宇宙小戦争』(1985年公開)で作られた「ともだちカード」が今も家にあるんです。ずっと取っておきましたが、そういう経験を今のお子さんたちにもしてもらいたいと思いますし、そういう作品を作れることが嬉しいです。

──現在のアニメ『ドラえもん』に関わっているキャストやスタッフには、幼少期に『ドラえもん』を観て育ったという方も多いと思います。

寺本:そうかもしれません。好きなTVシリーズのエピソードや「映画ドラえもん」を教えてくれる方も多いので、きっと『ドラえもん』を観て育ってきたのだと思います。

──寺本監督は新TVシリーズの第1話や「映画ドラえもん」の45周年記念作品など、大切な節目に重要な役割を託されていますね。

寺本:偶然だと思いますけど……言われてみればそうですね(笑)。

 

 

──そんな寺本監督から見た今作の注目ポイントはどんなところでしょうか?

寺本:「へたっぴドラ」が登場する時の音をよく聴いてほしいです。動く時に「おきあがりこぼしポロンちゃん」(知育玩具、1960年誕生、2023年生産終了)みたいな音が入っているんです。効果音担当の北田(雅也)さんに聞いたところ、最初に録音した時に「何か足りないな」と思って、「ポロンちゃん」の音を付け足してくださったそうなんです。最初にその音を聴いた時、藤子(・F・不二雄)先生が娘さんが当時持っていた「おきあがりこぼしポロンちゃん」からドラえもんを思いついたという話とリンクして、感動して泣きそうになりました。

──ズコーッとコケるシーンは一周回って新鮮に感じるかもしれません。

寺本:そうですね。80年代〜90年代のアニメでもよく「ズコーッ」とコケていて。それが好きで自分の演出でもよく使うんですけど、「最近そういうのはやりません」と若いスタッフから言われて、「あっ!? これって昭和なんだ」と。でも、「若い方には新鮮に観ていただけるのかな?」と思ったので、やめずに入れました(笑)。総合的に色々な感情を楽しんでいただける映画になったと思います。

──最後に、「映画ドラえもん」ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

寺本:やっぱり大画面で観る「映画ドラえもん」は迫力が違いますし、特に今回は背景の筆跡などもハッキリわかります。大人の方も最近ワクワクやドキドキを感じたことがないなと思ったら観に来てください。映画館に足を運んで、ドラえもんたちに会いに来ていただけると嬉しいです。

 
[インタビュー/永井和幸]

 

作品概要

映画ドラえもん のび太の絵世界物語

あらすじ

《映画ドラえもん シリーズ45周年記念作品!》
もしも、絵の中の世界に飛び込めるとしたら――?
幻の宝石をめぐり、ドラえもんたちの時空を超えた大冒険が、今はじまる!!

数十億円の価値がある絵画が発見されたニュースを横目に、夏休みの宿題である“絵”に取り組むのび太。
その前に、突然絵の切れ端が落ちてきた。
ひみつ道具「はいりこみライト」を使い絵の中に入って探検していると、不思議な少女・クレアと出会う。
彼女の頼みを受けてを目指すドラえもんたちだったが、
そこはなんと、ニュースで話題の絵画に描かれた、中世ヨーロッパの世界だった!
そしてその世界にはという幻の宝石がどこかに眠っているらしい。
絵の中の世界とは一体…?
幻の宝石のひみつを探るドラえもんたち。
しかし、に伝わる“世界滅亡”の伝説が蘇ってしまい、大ピンチに!!
はたして、のび太たちは伝説を打ち破り、世界を救うことができるのか!?

キャスト

ドラえもん水田わさび
のび太:大原めぐみ
しずか:かかずゆみ
ジャイアン:木村昴
スネ夫:関智一
クレア:和多田美咲
マイロ:種﨑敦美
チャイ:久野美咲
パル:鈴鹿央士
アートリア王妃:藤本美貴
アートリア王:伊達みきお
評論家:富澤たけし

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2025

 

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