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春アニメ『クラ★スタ』伊東健人インタビュー|“青い炎のような歌”を放つモーツァルトの知られざる一面

“青い炎のような歌”を放つモーツァルトの知られざる一面――春アニメ『クラ★スタ』モーツァルト役・伊東健人さんインタビュー

 

面白いシーンも、深読みすることができる

──第2話は、モーツァルトの紹介みたいなところがありましたが、改めて、どんなキャラクターだと感じましたか?

伊東:第2話では、まだモーツァルトのすべてが語られているわけではないんですけど、彼がなぜ“モーツァルト”なのかが、少し見えてくるというか。

すでに音楽の仕事をしていて、フィギュアスケートの貴公子であるミーシャに嫌がらせをされても、第2・第3の矢を準備している。仕事をしている人として、完璧な動きをするわけですよ。それが学生でできちゃうのがモーツァルトなんですよね。

それと同時に、彼の原動力は、歌で語られたりする。クールではあるんですが、音楽や歌に対する情熱がすごいというのが感じられるんです。「KISSとナハトムジーク」の2番で「歌は青炎-ほのお-だ」と言い切っていますから、彼にとって歌は炎なんです。これはすごく強い言葉だなぁと思いました。彼にとっての音楽って、そういうものなんだなというのが、歌で知れるんですよね。

 

 

──クラシックでいうと、個人的に、モーツァルトの曲は華麗で繊細なイメージがあったんですけど、こんなにも情熱的なんだと思いました。

伊東:音楽に対する思いは、いちばん重たいかもしれないですね。それは、それぞれのソロ曲にも反映されていて、ベートーヴェンは軽やかなロックで、ボクシングっぽいと思うし、ショパンだったらEDMのリズムやラップが入っていたり、リストならば和のテイストが入ってきていたりする。その中でモーツァルトの「Kissとナハトムジーク」は、原曲により近いところで、炎を燃やしている。だから、パンチの重さで言ったら、いちばん重いものを繰り出そうとしているのが、この曲なのかなと思いました。

──ちなみにモーツァルト役だと、モーツァルトを聴いてしまう、とかはあるのですか?

伊東:ありますよ。クラシックは好きなので。でも、誰がいちばん好きなのかというとショパンなんですけど(笑)、モーツァルトも聴きます。歴史上のモーツァルトを演じたこともあるんですけど、彼の生きていた時代の音楽の性質とか、彼自身の歴史を知るのも好きですし、ミュージカルでも『モーツァルト!』という作品があって、観に行ったりもしました。

そこでは「僕こそ音楽」と言い切っていましたから、ワードとしてすごいですよね。歴史上のモーツァルトに魅力があるから、そうやっていろんな作品に派生していくと思うので、僕ももう少しモーツァルトを掘り下げたいなと思っています。

 

 

──きっとその目的もあるんでしょうね。偉大な作曲家の音楽を聴くだけでなく、その歴史も知ってほしいという。

伊東:ですね。興味を持って辿ってくれたら、もっと楽しくなると思うので、ぜひやってほしいです。「モーツァルトってどんな人なんだろう?」と調べてみたら、結構面白いと思うんです。別にそこまで神聖なものではないらしいというのもわかってもらえる気もするので。ベートーヴェンもモーツァルトも、結構反骨というか、ロックみたいなところがあるので、ぜひ皆さんも、楽しみながら知ってほしいです。

──第2話を具体的に振り返っていきたいんですけど、モデル活動をしているシーンから始まりました。

伊東:本当にやりたいのは音楽なんだろうなっていうのはありましたけど、彼は音楽が好きだというのを外にさらけ出しているタイプでもないので、いまいち伝わりにくいんですよね。でも、作曲をしていると時間の感覚を失うくらい好きなんです。

作曲していたらいつの間にか朝になっているのってあるあるで、僕もたまにやってしまうんですけど、今は作曲が身近なものになっているから、こういう感覚をわかる人も多いのかなと思いました。音楽だけでなく、何かに没頭していると、時間って早く過ぎていきますからね。

まだ第2話だと、そこまで口数も多くないんですけど、彼のそういう行動や、短いながらも発せられる言葉ひとつひとつに力があったので、そこで彼の心の中みたいなものが知れたのは嬉しかったです。

 

 

──ベートーヴェンが「歌なんか」と言うところに、カチンと来るのは共感できましたか?

伊東:いや、でもベートーヴェンの気持ちもわかるんですよ(笑)。自分で分析すると、ベートーヴェンとモーツァルトの間くらいのメンタルなのかなと思っているんです。だって、歌とか音楽、アニメもそうですけど、100人に聴かせて、100人に受け入れられるなんてことはないわけですよ。その中の10人が良いと言ってくれたら、それで十分だし、それだけで名作のカテゴリーに入るようなものだと思うんです。

だからベートーヴェンが「歌なんか」と思う気持ちもわかるし、そっちのほうが何だったら多数派なのではないかと思うんです。本当に音楽で人生を救われた人というのは少ないはずなので。

でもモーツァルトは、きっとそういうタイプの人で、音楽に人生を捧げているから、彼の中で音楽が救いになっているところがある。でもベートーヴェンは、そうではなかった人間だから、現時点ではぶつかるよなっていう。第2話までだったら、彼にとってそれがスポーツでありボクシングなんですよね。だから対極なんです。

──その対極にいるベートーヴェンに対して、モーツァルトは部屋を半分に分けて、こっちに入ってくるなと言っているのが面白かったです(笑)。

伊東:そう! あれは本当にどうなんだろう……でも大好き(笑)。あれってアニメならではの演出じゃないですか。仲が悪い人ほど同じ部屋になるし、部屋を半分に分けるし……。ああいうところはモーツァルトのかわいいポイントなのかなと思います。ノックされたら裸で出てくるし(笑)。そういう小さいクスッとするところの積み重ねで、キャラクターと視聴者の信頼関係も積もっていき、親しみみたいなところを覚えると思うので、こういう演出、すごく好きです。

 

 

──そこから、ショパンとリストがギフトについて語っていく中盤があり、クライマックスは、ミーシャの来日からの音楽シーンでした。そこもツッコミ不在の面白さがありました。ミーシャに楽譜を踏みつけられたことに、モーツァルトは、やはり怒っていたんですかね?

伊東:怒りというのは、モーツァルトの原動力の中に確実に存在していて、それはミーシャに雑な扱いを受けただけでないものが、どうやらありそうだなと思いました。だから、彼が焦っている、あるいは怒っている理由というのは、これから語られていくと思います。

そもそもモーツァルトって、最初から怒っているんですよ。ベートーヴェン自身というより、その名前に怒ってるのではないか?みたいに思うシーンもあったので、そこはこれから先の見どころなのかなと思います。

でも難しいですよね。怒りをどういう形で放出していくのかって。エンタメにおいて、怒りはそのまま出さないほうがいいとは思うんです。ネガティブなワードでもあるので。でも、怒りから生まれるエモい作品も絶対に存在する。だからそことモーツァルトはどう向き合っていくのかっていう。

──それでいうと、ここのシーンでは、かなりかわいいものが可視化されていましたよね。

伊東:シロクマとペンギンですね(笑)。そこで本当に怖い生き物とかが出てきたら、かなり深めの怒りだったんだなってなるんですけど、ペンギンと白熊だったので、そこも親しみポイントですよね。どうやら怒ってはいるけれど、良い奴ではありそう、みたいな。そこにモーツァルトという人間が詰め込まれている感じはします。

 

 

──最後はミーシャが投げ飛ばされ、氷に埋められて、かき氷を食べるという展開でした(笑)。

伊東:ミーシャは圧倒的な強者として描かれていたので、ここで、モーツァルトに軽々と投げられてしまうという意味で、これをやられてしまったら、もうひれ伏すしかないというか。そういう意味もあったのかな?と思いました。モーツァルトが怒りを持って、ミーシャという存在を自分と対等に持っていく作業だったのかなと。そこまでして対等になれるくらいなのかなと思いました。

──そうやって深読みしようと思えば深読みできる、考察が捗るかもしれません。

伊東:深読みしたら、いくらでも語れます。音楽家が楽譜を踏まれるって、フィギュアスケート選手にとってはどういうことなんだろうと考えたら、氷を削られるようなことなのかな?と思ったり。もちろん絶対やってはダメなことだけど、そういうことも、ひとつひとつ考えたりしました。

──ツッコめるところも、さらにその先を考えると面白いかもしれませんね。では最後に、見どころをお願いします。

伊東:第3話以降、ショパンとリストの人間性の掘り下げも描かれました。いよいよキャラクターが出揃った感じがあるので、そこから先ですよね。まだまだいろんな謎が散りばめられているので、それを楽しみにしていただきたいです。ギフトとは何なのか、三原木先生、そしてロストの人たちは何なのか。それを1クールかけて描いていくと思うので、引き続き、いろんなところを楽しみにしながら、音楽の力、エモさを感じていただきたいと思います!

 
[文・塚越淳一]

 

作品概要

クラシック★スターズ

あらすじ

“世界で一番新しい音楽を共にーーー”
音楽・芸術・スポーツ、あらゆるエンターテインメント分野で未来を嘱望された若者たちが集う【私立グロリア学園】。

その音楽科では、偉大な音楽家たちの「才能(可能性)」に適合した者が【ギフト】を体内に移植され、その音楽家の名前で呼ばれることになる。ケガをきっかけに適合性を見出された青年・ベートーヴェンもその一人。

学園に編入したベートーヴェンは、異なるギフトを受け継ぐ仲間たちと出会い音楽の魅力に触れながら、コンテストでの優勝を目指すことに──。

偉大な音楽家の意思を未来へ紡ぐ夢のプロジェクト。音楽(エモージョン)とVR空間(ビジュアライズ)が織りなす奇跡のシンフォニーがここに開演!

キャスト

ベートーヴェン:内田雄馬
モーツァルト:伊東健人
ショパン:安部瞬
リスト:石毛翔弥
ロスト・ベートーヴェン:八代拓
ロスト・ヴィヴァルディ:佐藤拓也
ロスト・シューマン:村瀬歩
三原木逢生:浪川大輔

(C)CLASSIC★STARS PROJECT

 

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