春アニメ『クラシック★スターズ』ショパン役・安部 瞬さんインタビュー｜物語の随所でエンターテインメントに関わる人間にとって大事なことや魂を伝えてくれる作品

2025年4月5日よりTOKYO MX・BS11にて放送中のTVアニメ『クラシック★スターズ』。本作は、偉大な音楽家たちの「ギフト（才能）」を体内に移植された少年が仲間と出会い、音楽の魅力に触れながら、コンテストでの優勝を目指す姿を描いたオリジナルアニメーションです。物語中盤では、ベートーヴェンたちが出場したコンテストの予選に謎の3人組「Dis＝Cord」が突如として登場。ライブをジャックし、予選は混沌に包まれました。

幼い頃よりピアノの才能を発揮し、ヒップホップのミュージックシーンでも芸能活動を行なっているショパン。そんな彼ですが、自身の力は「ギフト」によるものではないかと思い悩んでいます。そんな心をさらに「Dis＝Cord」のロスト・ヴィヴァルディが揺さぶりましたが、最後は友達の言葉でこれまでの積み重ねを思い出し、迷いを断ち切りました。今回はショパンを演じる安部 瞬さんにインタビュー。ここまでの物語を振り返ってもらいつつ、キャラクターソングに込めた思いなどについてお話を聞きました。

ショパンは完璧じゃない自分を客観視できている

──本作の物語を振り返ってみて、印象に残っているシーン・セリフを教えてください。

ショパン役・安部 瞬さん（以下、安部）：第6話のコンテスト予選で、ベートーヴェンがリスト・ショパンと一緒に他の出場チームのステージを見るシーンが印象的でした。あのシーンではリストとショパンが、「この日のために練習してきた。音楽にすべてをかけてきた人たちばかり」「それでも積み重ねと経験を重ねたら喝采を浴びれるか、と言われたらそうでもない」と言います。あの言葉は、いちエンターテインメントに関わる人間として、心に刺さりました。

──努力をしたら、それがすべて結果につながる訳ではないというか。

安部：もちろん積み重ねのなかで自信はつきます。ただ、それで必ず結果が出るというわけではなくて。運も含めて、簡単にはいかないんですよね。重たくて厳しい、けれども心に留めておきたい言葉だと思いました。

──ショパンがメインだった第3話はいかがでしたか？

安部：ショパンはもともと音楽的なセンスを自負していたと思うし、相応の努力もしてきたはず。ただ、「ギフト」という得体のしれないものを埋め込まれて、それに支配されていないかという葛藤が第3話では描かれていました。「ギフト」自体はファンタジーですが、でも自分に対する迷いって、意外と普遍的ではある気がするんです。特にアイデンティティに対する疑念は学生が抱える悩み・テーマでもあるのかなって。自分も通ってきた道だからこそ、親近感が湧きました。

──なるほど。

　
安部：僕は芸術系の大学に通っていたのですが、その大学では卒業制作で4年間の集大成となる作品を作るんですよ。僕も色々と考えて制作はしていたのですが、どうしても過去に同じようなものを作っている人がいて。それで、「結局模倣にしかならないじゃん、自分がやる意味なんてあるのかな」って悩んじゃいました。

──そうだったんですね……。

安部：ただ、同じような作品であってもにじみ出ている自分らしさを認めてくれた仲間が周りにいたことで、僕は救われました。第3話から第9話にかけてのショパンの葛藤や悩み、そして乗り越え方は、まさに自分が経験したことに近いと感じています。それも相まって、第9話はショパンのことをより好きになれるお話でした。

──ここまで演じてきて、ショパンにどのような印象をお持ちですか？

安部：第一印象は勉強も音楽もダンスもできる完璧なキャラクター。ただ、第9話までの物語のなかで、意外と未完成な部分があることが分かりました。ショパンって、ツンツンはしているけれどその完璧じゃない自分を客観視はできていると思うんです。ただ受け入れられなくて迷っているところがある。そんな未完成な部分があるショパンも、ベートーヴェン・モーツァルト・リストと共に過ごしていくなかで成長していった気がします。

──そういう意味では、ベートーヴェンの加入はショパンにとっても大きい出来事だった。

安部：そうですね。第3話でベートーヴェンに対して「貴方はずっとそのままですか？」と尋ねるシーンがありました。すごく厳しい言葉ですが、あれは音楽の世界に無理やり入れられて悩んでいるベートーヴェンの気持ちをショパンも理解できたからこその言葉だった気がします。しかも、あの言葉には「変わらなきゃいけないところも確かにあるけれど、そのままの自分がいてもいい」というニュアンスが含まれていると思っていて。それを自分にも言い聞かせていたのかなと思います。

──ベートーヴェンに投げかけつつ、自分にも問いかけていたというか。

安部：はい。第9話の歌唱シーンで、ショパンが白と黒に分裂して最後に一体化するという演出がありましたが、あれは「こういう自分がいてもいい」と、もう一人の自分を認めたことを表現していると思います。そう思うと「貴方はずっとそのままですか？」という言葉はベートーヴェンにとっても、ショパンにとっても次に進める、非常に意味のある言葉だった気がします。