
“世界で一番新しい音楽を共に――春アニメ『クラシック★スターズ』内田雄馬さん(ベートーヴェン役)×伊東健人さん(モーツァルト役)×安部 瞬さん(ショパン役)×石毛翔弥さん(リスト役)声優座談会
本作の核となる「音楽」について
──それぞれのキャラクターソングについては上映会でもお話がありましたが、アニメに先駆けてソロ曲のリリックビデオが公開中です。全曲“エモさ”あふれる内容となっています。
内田:全曲すごいことになってますね。
伊東:本当に。
石毛:特にモーツァルトの「Kissとナハトムジーク」は本当にすごい曲です。自分が一度歌っているからこそ、あの曲を歌える伊東さんのすごさを感じます。もちろん他の曲もすごいことになってて。もしも自分が、ベートーヴェンの「魂のために」やショパンの「進化のエチュード」を歌っていたら、同じように「すげえ」と言っていたかもしれません。
内田:いや、でもどう考えても「Kissとナハトムジーク」の難易度が高すぎるような(笑)。
伊東:そんなこと言ったら(オープニングテーマの)「シンギュラリスト」もすごいけども。
内田:「シンギュラリスト」は難しかったけど、「Kissとナハトムジーク」は提示されている音域が物理的に……もう扱えないよね、って感じで。それがすごい。そこからまずハードルが高いかなと。
石毛:それぞれ、何かしらの特性があるんですよね。ショパンの「進化のエチュード」で言えば、ラップがあって、誰でも歌える曲ではない。それぞれに技術が詰まってるように感じています。
伊東:うんうん。あのスピードのラップって、ある程度リリックを頭に入れておかないと歌えないと思うんですよ。譜面を見ながら歌えるものではないと思うし、なんなら、ラップは譜面通りにはいかないと思うんですね。逆に譜面通りにはやってはいけない、と言ってもいいかもしれませんね。
自分の中でちゃんと柱を作り込まないといけないから、間違いなく高いスキルが必要だと思っています。ベートーヴェンの「魂のために」は、「殴るように歌う」という音楽的な歌のアプローチとはまた違った発声で勝負しているし、リストの「甘き羽音に乱れて・・・」は、あの中性的な立ち絵の空気感がありながらの、“和”という意外性があって。
あと、何度も話題に挙がっている「Kissとナハトムジーク」は、確かに難しい曲ではあるのですが、全部の曲、それぞれ難しいです。音の幅だけで言っても高低差があるし、リズムもあるし……「やれるでしょ」と、歌い手側を信頼して書いてくれた上松さんに対して、グータッチしたい気持ちになりました。
──実際、グータッチはされたのでしょうか……?
伊東:恐れ多くてしていないです(笑)。以前も違うコンテンツで曲は歌わせていただいたことはあったのですが、なかなかお会いできる機会はなくて。もしなにか機会があれば、じっくりとお話させていただきたいです。
安部:上松さんのお話で言うと、「クラシック音楽を鼻歌で歌えるんだから歌にできるんじゃないか、といったところから『クラシック★スターズ』の着想を得た」というエピソードを拝読したことがあります。「クラシックにはメロディーがあるから歌えるんだ」という考え方で。
伊東:ほお。
安部:その話を意識した上で、それぞれの曲と元となった曲を聴くと、原曲のメロディーのピアノの音中に歌詞が聴こえてくるようになって。「ああ、そういうことか」と。上松さんの中では、最初からそう聴こえていたのかなと思うと面白いなと思いました。
伊東:うんうん。その解釈の幅があるのが面白いところですよね。
石毛:「クラシック音楽を鼻歌で歌えるんだから歌にできるんじゃないか」って普通では考えつかない発想ですよね。本当に、さすがと言うか……。
伊東:これまでもクラシック曲にボーカルをつける、って発想自体はこれまでもありましたけど、ここまでの物量で一気に攻めてくる作品って、他にないんじゃないかなと思いますね。
──では、エンディングテーマである4人曲、Gran★MyStarの「BEYOND★CLASSIC」の制作エピソードについても教えて下さい。
内田:ハモからはじまるっていうのはなかなか珍しいですよね。意外だなと思ったのが、ショパン・リストが下ハモだったことですね。僕が確か2番手で。
伊東:僕が最初に録ったんですよね。譜面をもらった時は嬉しくて。最初から何声かに分けられた譜面なわけじゃないですか。もうそれは、ひとつの信頼だと思っています。そういう(期待される)のが好きなんですよ(笑)。オーディションの時からそれは感じていたし、選ばれた人たちだから大丈夫だろうと。だからこそ、心配はゼロで、シンプルに嬉しかったなと。
石毛:僕は(レコーディングが)最後だったんですよ。だから3人の声を聴きながら歌うことができたので、すっごく楽しかったです。上映会でもお話させていただきましたが、本編を録り終わってからの、なおかつ3人が録り終えてからのレコーディングだったので……これはリストとしてなのか、石毛翔弥としてなのか曖昧なところではありますが、歌いながら気持ちが高揚しました。さらに録り終わったあとに4声がミックスされた音源をブースで聴かせてもらい、鳥肌が立ちました。声の混ざり方、キャラクター感も含めて、感動しました。
安部:「BEYOND★CLASSIC」は4人で歌う曲ということですごく嬉しくて。僕は3番手でしたが、4人のキャラクター性を鑑みて「それぞれこんなふうに歌うんじゃないかな?」「じゃあ、自分はこういう方向性でいこうかなとか」いろいろなことを考えてレコーディングに挑みました。でも考えずとも調和の取れた歌声になったのかなと思っています。他の3人の声に自然と溶け込めたというか、“はまれた”感覚があって、そこに“チーム感”と言いますか。これまで積み上げてきたものが出たのかなと、嬉しく感じるところでした。
それと「BEYOND★CLASSIC」には、いろいろな曲のエッセンスがめちゃくちゃ散りばめられていて。1回聴いただけだと、もしかしたら全部は(元となった曲を)見つけられないかもしれません。印象も違うんですよね。僕自身、最初に聴いた印象と、今聴いて感じることってまた違っていて、「あ、これあの曲のフレーズっぽいな」「この進行はもしかして……」といった具合に、要所要所に散りばめられています。
『クラシック★スターズ』をきっかけにクラシックを聴き始める人もいると思いますし、原曲と『クラシック★スターズ』の曲を交互に聴くことで、音楽への理解や愛情が深まっていくんじゃないかなと。この曲はきっと、自分たちにとっても、お客さんにとっても、“育っていく曲”になるんじゃないかなと思っています。
──伊東さんが一番手だったんですね。
伊東:一番手って、ある意味、気楽な部分もあるんですよね。責任重大とも言えますけど……。
内田:一番手かラストが好き(笑)。一番手はこういうベーシックがあったら良いんじゃないか、という話を制作の方といろいろ話しながら進めていくこといができるという面もありますよね。完成していくのを楽しみながら歌えるのがラストで。
伊東:1番手であとのことは分からない状態だったけど、なんも心配してなかったですね。録っている時から、最初にディレクションを受けた時から、「キャラクターソング」というより「アーティスト的な格好良さ」を目指してるんじゃないかなって、なんとなく感じてました。僕の主観ではあるんですけど、時代の流れ的にも、やりたいことは実はそっちのほうなんじゃないかなと。
安部:自分もすごく同じ印象でした。キャラクターソングというよりも、キャラクターたちの内側から出てきた想いが心から出ているものを歌にするという感じだなと。
伊東:本当に、“新進気鋭の4人組きました、みたいな……。そう思ってもらっても良いのかなと思っています。






































