
『星つなぎのエリオ』に込められたディズニー&ピクサーの哲学。「コミュニバース」誕生秘話とSF作品へのオマージュ【制作陣インタビュー】
「この広い世界のどこかに、本当の居場所があるはず――」
そんな願いを胸に、星々の世界へと旅立つ少年・エリオ。2025年8月1日(金)より公開となる、ディズニー&ピクサー最新作『星つなぎのエリオ』は、孤独を抱えた少年と異星の友との出会い、そして友情を描く“やさしい感動”に満ちた物語です。
アニメイトタイムズでは、そんな本作を手掛けたマデリン・シャラフィアン(監督)、ドミー・シー(監督)、メアリー・アリス・ドラム(制作)にインタビュー。
キャラクター起点で生まれた物語、SF作品へのオマージュ、「コミュニバース」に込められたテーマ。ディズニー&ピクサー史上最も“やさしい”感動につつまれる物語の制作過程を伺いました。
ピクサーの哲学とSF映画へのオマージュ
ーー本作の物語はどのように生まれたのでしょうか?
ドミー・シー(監督): キャラクターが原点でした。監督のひとりであるエイドリアン・モリーナが、自身の生い立ちから着想を得ています。彼の父親はアメリカ軍の歯科医で、彼自身も軍の基地で育ちました。しかし、彼はアートが好きで、周囲に馴染めず、自分の居場所がないと感じていたそうです。その経験が、主人公であるエリオの境遇の元になっています。
私とマデリンがこのプロジェクトに参加したとき、その基本設定、つまり「孤独を抱えた少年がエイリアンに誘拐される」というアイデアに非常に惹かれたんです。そして、私たちが「もし、彼がずっと誘拐されたいと願っていたらどうだろう?」という発想を加えました。それによって、従来のエイリアン誘拐ものに、面白いひねりを加えられるのではないかと。
そこから、「なぜ彼は誘拐されたいのか?」「地上で何から逃げたいのか?」「彼が向き合いたくない痛みとは何か?」といった形でキャラクターを深く掘り下げていきました。私たちの物語作りは、常にキャラクターから始まります。
▲ドミー・シー(監督)は『時をかける少女』のファン。細田守監督とも何回か会っている。『ONE PIECE』はここ10年忙しくなって追いつけていないので、新作アニメで追いつきたい
ーー劇中には、故カール・セーガン博士の音声やボイジャー計画も登場しますね。どのような意図で取り入れたのでしょうか?
マデリン・シャラフィアン(監督):あのクリップは偶然見つけたものです。私たちは、宇宙やエイリアンに夢中なエリオの頭の中を深く探ろうとしました。その中で、カール・セーガンが自身の著書について語るインタビュー映像を見つけたんです。彼の言葉は、この映画の根底にある“大きな問い”と見事に合致していました。そして、試しにエリオが叔母のオルガと大喧嘩をした直後のシーンにその音声を重ねてみたところ、映像に全く異なる趣が加わりました。観客がエリオの気持ちを瞬時に理解できるようになったのです。「彼は宇宙への想いを、恐れや感情的な混乱を乗り越え、心を落ち着かせる拠り所にしているのだ」と。
私のお気に入りのピクサー映画の一つに『ウォーリー』がありますが、あの作品で使われている『ハロー・ドーリー!』のクリップも素晴らしい使い方ですよね。ピクサーは常に、現実とファンタジーの境界線を巧みに歩んできたと感じています。
▲マデリン・シャラフィアン(監督)は『ダンジョン飯』のファン。監督陣は『千と千尋の神隠し』が大好きで、アニメーション業界を目指したきっかけのひとつだとか。
ーー本作を作る上でオマージュを捧げた、あるいはインスピレーションを受けたSF作品を教えてください。
マデリン・シャラフィアン(監督):私たちは全員が“SFオタク”だと言えるでしょう。一本の映画製作には5年ほどかかりますから、本当に好きなジャンルでなければやり遂げられません。
特に我々が影響を受けたのは、スティーブン・スピルバーグ監督のSF作品です。少年とエイリアンの友情を描いた『E.T.』は、本作のテーマと重なりますし、『未知との遭遇』でメロディを通じてコミュニケーションを図る手法も大好きで、この作品でもオマージュを捧げています。
また、少しホラー要素のある場面については、リドリー・スコット監督の『エイリアン』やジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』といった作品からインスピレーションを受けています。ジャンル全体へのラブレターとして、本当に楽しく制作することができました。
































