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『勇者刑に処す』第1話 超絶作画をアニメーターが考察&解説!

『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』話題になった超絶作画の第1話に秘められたテクニックを考察! 現役アニメーターから見て何がすごかったのかを解説します!

2026年がスタートし、アニメ界隈では豊作の時期とも言われる冬アニメの放送が始まっています。各社様々な作品を展開していますが、その中でも年始早々にSNSでざわつかせたのは『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録(以下、勇者刑)』の第1話。

約60分というという異例のスタートを切り、作画がとにかく凄いと噂されました。よく動き、迫力もパワーもあり、話も面白い。なぜあのような映像が生まれているのでしょうか。その怒涛の60分間に込められた技術を、現役アニメーターが考察してみました!

 

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勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録
勇者とは、この世で最悪の刑罰である。大罪を犯した者が「勇者」となり、魔王と戦う刑罰を科されるのだ。殺されようとも蘇生され、死ぬことすら許されない。勇者刑に処された元聖騎士団長のザイロ・フォルバーツは、性格破綻者たちで構成された懲罰勇者部隊を率い、戦いの最前線を駆け抜けていた。過酷な状況の中、ザイロは最強の生体兵器の一人、《剣の女神》テオリッタに出会う。「敵を殲滅した暁には、この私を褒め讃え……そして頭を撫でなさい」生き抜くため、自らを陥れた者へ復讐を果たすため――。《女神》と契約を交わしたザイロは、絶望的な世界で熾烈な闘争と陰謀の渦中に身を投じていく。作品名勇者刑に処す懲罰勇者9004隊刑務記録放送形態TVアニメスケジュール2026年1月3日(土)〜TOKYOMXほかキャストザイロ・フォルバーツ:阿座上洋平テオリッタ:飯塚麻結パトーシェ・キヴィア:石上静香ドッタ・ルズラス:堀江瞬ベネティム・レオプール:土岐隼一ノルガユ・センリッジ:上田燿司タツヤ:松岡禎丞ツァーヴ:福島潤ジェイス・パーチラクト:千葉翔也ニーリィ:日笠陽子ライノー:中村悠一フレンシィ・マスティボルト:大西沙織スタッフ原作:ロケット商会(電撃の新文芸/KADOKAWA刊)原...

 

演出編

勇者が逆に謎というダークファンタジー路線

60分もあればナレーションをつけてもおかしくないですが、『勇者刑』の説明は文字表記のみで済まされ、主人公のザイロ・フォルバーツと相棒のドッタ・ルズラス何者かもすぐに紹介されず、今やるべきことを話してやっとそれぞれの名前が判明します。そこから徐々にベールを明かし、自分たちは勇者刑によって不死身の体となり、蘇生されても後遺症が残り、彼らにとって良いことが何も無いことがわかってきます。

その際にドッタは首にある印に指を当てるシーンがあり、口で語らなくてもそれが勇者刑である証がわかる演出です。ドッタが盗んだのが女神だと判明すると、ザイロはなぜか女神を嫌い、どれくらい大嫌いなのかを仕草から見てわかります。

このように「現在感」を大事にして主人公たちにしか知らない情報を前置きに、真実を視聴者に後追いさせるミステリー要素は今時のファンタジー系のアニメでは珍しいではないでしょうか。

あえて世界観の解説をナレーションやキャラクターの説明台詞に頼らず、映像やキャラクターが置かれている状況から視聴者に伝えるのはなかなかに至難の業。視聴者が「何が起こっているの?」と作品に引き込ませる圧倒的なクオリティを維持し、中だるみをさせないまま、少しずつ答え合わせが行われていき、そこまで行くともう作品の虜になっているのです。

 

没入感MAXな冒頭シーンのカメラワーク

注目してもらいたいのは、冒頭にカメラがどこに置かれているのかという点です。魔物に襲われるところを、聖騎士団隊とドッタ・ルズラスと対比した、第一人称と第三人称で視点を速く切り替えして緊迫感を与えます。

カメラが真上にあると、どんな森の中でドッタが逃走しているかわかります。地面の近くに置いてカメラの首を上げるとアオリのショットになり、地面の振動によってカメラが揺れます。覗き穴からの撮り方もサスペンスさがあり、兵隊は兜の隙間から、ドッタは木の穴から第一人称視点で魔物を注視します。

類似するショットは他に、例えばドッタが襲われるところを兵隊も同じく上から襲われるところを写し、魔物の後ろ姿が画面を覆うと前姿の全面に切り返して兵隊の相手をしていた裏切り者が逃げるという一連の流れをつなぎ合わせることで途切れることなく時間の流れが自然に感じ取れます。

舞台裏では、このような緻密な画面設計が行われています。目まぐるしく変わっていくカメラワークによって、臨場感が加速していくのです。

 

作画編

ベタ塗りで線画を魅せる

人物に影が入ってないのも特徴的です。画面設計において光源の情報は重要であり、その方向性に従ってキャラクターに当たる光と影を描きます。本作では、炎やエフェクト、差し込み光以外は驚くほど基本色のベタ塗りです。細田守監督の作品で有名なやり方で、「アニメーターの作画負担を減らす」ということもありますが、本作はそれとは同じ理由にならないほど線画が多いキャラクターデザインです。

ではなぜ、と考えたら「作画力で勝負します」のほかありません。圧倒的な作画力でキャラクターを魅せる選択をしているのだと思います。

キャラクターの立体感を見せるために影をつけますが、影を無くすとシルエットに目が行きます。例えば、顔のパーツ(目、鼻、口など)などの面積です。線画が乱れていると、ベタ塗りの面積に変化が起き、シルエットも変形します。つまり、顔が“似なく”なるのです。

追加の例えで、『サザエさん』もシンプルなベタ塗りですが、線画が不安定だと色の面積が崩れて毎週日曜日に見るあの登場人物が「似ていない」ことにつながります。影を入れないことで簡略化しているからこそ、しっかりと作画をしないとバランスが崩れてしまうのです。

キャラクターの似せ方は「比率で描く」ことにあり、影が入ると比率が複雑化してすぐには気付きません。簡単に見える絵の難しさは面積による比率がすぐ見えるためなのです。

少し脱線しましたが、『勇者刑』はあの複雑なキャラクターデザインであるのに、影を入れない恐れを抱えつつ、その注意を払った上であの描き込み量なので、気合いの入れ方に相当な熱意を感じるのです。

 

大自然を背景動画で描く

個人的に一番印象に残ったのは、ザイロがドッタを助けに森の中に駆けつける際のこのシーンです。

 

 
「これは背景動画なのでは?」と思ったのが見事的中しました。背景動画とは、動く背景を線画アニメーションとして描く技法で、最近では3DCGが一部担うようになり、このシーンも最初はセルルックの3DCGと疑うほどの滑らかな出来栄えでした。

しかし、背景動画だと感じた理由は、途中で木の枝の画を入れるこだわりにあります。木の枝に当たりながらもザイロが駆けつけるスピードにリアルな臨場感があり、その細かな表現は2Dだからこそできる足し算だと考えます。

奥の背景動画を作って目盛りに合わせて上に移動させ、カメラを下に回転させる際に手間の背景動画と1枚画に結合させてアニメーションを描くといったギミックがXから読み解けます。

背景動画にこだわったのもやはり制作チームの「作画力で勝負します」意気込みを感じます。

 

シネマチックな芝居

作画ダブルパンチの中、さらにジャブを入れるのが芝居の描写です。最近はシネマチックな表現が流行りなのか、ロトスコープ技法でよりシーンに現在感を試みる作品が増えてきました。例えば、アニメ映画『化け猫のあんずちゃん』、『ひゃくえむ』、『チェンソーマン レゼ編』などです。(ロトスコープに関しては以下の記事で詳しく解説しています)

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『勇者刑』の人物の芝居が他の商業アニメから一線を画すのは「オーバーシュート」にあります。オーバーシュートとは、動きが終点へ着地する前に若干行き過ぎてから止まる動作のことです。本動作の前に予備動作があれば、オーバーシュートは本動作の後の部分に当たります。

例えば、走っている人が止まる時、足と上半身は同時に止まりません。先に足が止まり、上半身が移動の力により若干前へ傾いてから立ち姿勢に戻ります。

海外のカートゥーンや3DCGアニメーションではよく表現されるおり、国内の商業アニメでオーバーシュートを描くのは大変珍しいと思います。何せ原画と動画枚数が上がるので、作画コストが膨らみます。

とはいえ、予備動作と本動作での芝居を完了させるのが国内では一般的だったのに対し、オーバーシュートを加えることで芝居の幅が増え、それらをつなぎ合わせた動きの強弱によってキャラクターの心情を一層深く読むことができます。その影響で約60分という尺が必要になり、『ロード・オブ・ザ・リング』や『ゲームオブスローンズ』を思わせる重厚な西洋ファンタジードラマに仕上がったと考えます。

 
放送延期から追い込み、年明け早々仕掛けた『勇者刑』第一話。午年にちなんで今期のダークホースとして最後まで走り切れるか⁉ ︎今後の主人公たちの真相が気になるところです!

 
[文/朴智銀]

 

作品情報

勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録

あらすじ

勇者とは、この世で最悪の刑罰である。
大罪を犯した者が「勇者」となり、魔王と戦う刑罰を科されるのだ。
殺されようとも蘇生され、死ぬことすら許されない。
勇者刑に処された元聖騎士団長のザイロ・フォルバーツは、
性格破綻者たちで構成された懲罰勇者部隊を率い、戦いの最前線を駆け抜けていた。
過酷な状況の中、ザイロは最強の生体兵器の一人、
《剣の女神》テオリッタに出会う。
「敵を殲滅した暁には、この私を褒め讃え……そして頭を撫でなさい」
生き抜くため、自らを陥れた者へ復讐を果たすため――。
《女神》と契約を交わしたザイロは、
絶望的な世界で熾烈な闘争と陰謀の渦中に身を投じていく。

キャスト

ザイロ・フォルバーツ:阿座上洋平
テオリッタ:飯塚麻結
パトーシェ・キヴィア:石上静香
ドッタ・ルズラス:堀江瞬
ベネティム・レオプール:土岐隼一
ノルガユ・センリッジ:上田燿司
タツヤ:松岡禎丞
ツァーヴ:福島潤
ジェイス・パーチラクト:千葉翔也
ニーリィ:日笠陽子
ライノー:中村悠一
フレンシィ・マスティボルト:大西沙織

(C)2024 ロケット商会/KADOKAWA/勇者刑に処す製作委員会
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