
『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』はこうやって作られた! アニメーション制作会社エイトビットのスタッフに聞いた、イメージボードや作画に関する作業の裏話は必見
持田真治さんインタビュー
――お仕事中にお時間を取っていただきありがとうございます。持田さんが所属されている作画部がどんな作業をしているところなのかからお教えください。
持田:わかりやすくお話しすると、パラパラ漫画のようにアニメーション用の絵を一枚一枚手で描いていっています。自分は今回原画を担当しました。
フィルムの設計図となる絵コンテを基に作業し、作られた原画がまた別の工程へ繋がっていきます。原画だけでなく動画マンも在籍しています。
▲持田真治さん
――みなさんはそこを手分けしてやっているということなんですね。
江口:アニメーターの中にも色々な種類があり、持田はその中でも原画というポジションを担当しています。その他には作画監督や動画検査、動画というポジションがあったりします。色々なパートごとみんなで手分けして同時多発的に作業していくような形になります。
――エイトビットさんの作画はデジタルに完全に移行しているのでしょうか?
江口:そうですね。作画部は完全にデジタルに移行しています。ただそれ以外のセクションだと菊地康仁監督や総作画監督の小峰正頼さんも基本は紙です。社内全体では紙とデジタルを併用していますね。
持田:自分は動画検査の時はどちらも対応していましたが、原画になったタイミングでフルデジタルに移行しました。やり直しが簡単だったり、その場で映像にして確認できるのが本当に助かります。
――本作では原画マンは大体何人くらいおられるのでしょうか?
江口:『蒼海の涙編』では40~50人くらいでしょうか。動画マンはさらに100人以上はいると思います。
――持田さんが担当されていたアバンシーンはかなり激しいアクションがありますが、描く必要がある絵も多かったのではないでしょうか。
持田:あのシーンは最初からずっと動き続けているので、かなり枚数を描いたと思います。作業の順序として、まず一旦プランをざくっと描いていって、そこで絵コンテに描かれていないことを足したりするのですが、こうした方がいいんじゃないかという提案をするような感じで作っていきました。
――『蒼海の涙編』でこれはどう考えても大変だろうと思ったカットはありましたか?
持田:リムルたちが島に到着してからのシーンも担当したのですが、リムルたちがバカンスに来た島の雰囲気を伝えるためのモブキャラクターがたくさんいるカットは大変でしたね。9秒間のシーンなのですがロングショットで写っている全員が動くので、この3、4カットだけで1000枚は動画枚数があったと思います。作業時間的には全部で二週間くらいかかりましたね。このカロリーのカットはTVシリーズだとまず作らないですし、劇場版だからこその作業でした。
――劇場版だからやっちゃおうと。
江口:やっちゃおうかと言ったのが監督で、持田はやらされている側になります(笑)。
一同:(笑)。
――てっきりアクションシーンのほうが大変なんだろうと思っていました。
持田:そうなんです。画面の情報量が多ければ多いほど、画面が引いていれば引いているほど大変ですね。
――そんな苦労の中から生まれたものだなんて考えもしませんでした。
持田:でもそれが正解なんです。そうやって気にせず見てくださるのがあっています。
江口:よく見ていただくと、一人一人がこの世界で生活しているんだろうなというお芝居がかなり細やかに入っています。
持田:大体は絵コンテで指定されていなかったりするのですが、自分が担当した冒頭シーンも完全にお任せでした。
真ん中に猫がいてそれに反応する人物がいたり、コインを投げているお嬢さんがいたり、目立つところをひとつは作りたいなと思っていました。なので、絵コンテからの指示よりも自分である程度考えて作った芝居が多かったです。
江口:アニメーターは監督の要求に応えるために役者でもあり、カメラマンでもあり、照明でもある。そうやってかなり複合的に画面を作ることが要求されます。担当するカットの要求に対してどうやって応じるのかを考えてもらっている......ということですね。
――自分の考えでちょっと足してはみたものの、怒られてしまったことはありますか?
持田:いっぱいあります。無くなってしまうこともあるくらいです。やっぱりアドリブですからね。もっとこうした方がいいんじゃないかなと言われたり、でもやり過ぎて削られたりします。
――また、キャラクターの口パクは台詞を収録する前に制作しているのでしょうか?
江口:基本的には台詞を収録する前に、役者さんがお芝居ができるような素材を作らないといけなません。そのために既に上がってきているカットだったり、絵コンテだったりを使って通し映像を作ります。
それを使ってアフレコをして、ピッタリあわなかったところを後でそのデータにあわせて口パクを調整する作業をやっています。ただ、それは演出という別部署での作業になります。
――ディズニー映画とかだと先に声を録っていますよね。
江口:そうですね。ただ日本のアニメにおいてはアフレコ、つまりアフターレコーディング方式がほとんどだと思います。
――ちなみに『蒼海の涙編』全体の作画作業はどれくらいの日数が掛かっているのでしょうか?
江口:およそ1年くらいですね。
――それだけ長期にわたるとなると、作業をしている間にもう嫌だと思ったりすることはないのでしょうか? そういう時は何をされるのでしょうか?
持田:ありますよ。だけど仕事なのでやるしかないので、家で趣味の料理を作ったり別のことをして発散しています。やっぱり、美味しいご飯が好きなので。
――すぐに終わらせられる作業がストレス発散になってそうですね。
持田:そうなんです。先ほどのモブキャラクターたちのシーンも中々終わらないので、まだやっているのかと自分に問いかけながら作業するのですが、ずっと続いているのは大変でした。
――現場では他のみなさんとコミュニケーションを取られたりするのでしょうか?
持田:そこは人によると思います。話をしていた方が気が楽になる方や、逆に没頭していた方が調子のいい方もいたりしますし。その時はむしろ話さない方がいいとか、終わるまで話さないとか人によって全然違います。
――作画班で飲みにいったりするとどんな話題になりますか?
持田:あそこのシーンは大変じゃないかとか、今はお互いにどこを作業しているのかとかですね。自分は話をする方なのですが、どちらかというと最近チェックした全然違う作品について、良かったよねと語ったりしています。やっぱり仕事と全然関係ない話が好きな人とかもいますし、お酒を飲んでいるときに仕事のことを考えたくないタイプの方もいますし。
――これだけ大変な作業の中、他社の作品もチェックしているんですね。
持田:気晴らしに家に帰ってから見ることが多いです。後は、自分で作業していて前に見たようなのがあったなと思い、ふと思い出した時にそれを探してみたりはしています。
アニメだけじゃなく映像媒体ってみんななんとなく流し見していて、どうやって作っているのかなんて自分たちも全然気にしなかったりします。だから、一度これを作ると決まった時に、改めて見返す必要があって。
――行き詰った時にこれを見るみたいな作品はありますか?
持田:特定のタイトルはないのですが、その時その時でちょっと元気が出るというか、頑張ろうと思える作品はあります。ちょっと前までアクションばかりやっていた頃は、『ストレンヂア 無皇刃譚』っていうアニメ映画ですね。この作品は長らくかなり好きな作品で、長瀬智也さんが主演を務めたBONESさんのアクションがメインの作品でした。刀を使ったアクションが好きだから見ると元気がでるんです。
――『蒼海の涙編』で注目してほしいシーンは?
持田:全体を通して素直に見た通り楽しんでいただければ嬉しいです。個人的な好みでいうのであれば、ゴブタとユラが街中を逃げまわりながら刺客と格闘するシーンですね。
――ジャッキー・チェンの映画を思い出させる場面でしたね。
持田:まんまその通りな印象ではあるのですが、ああいう魔法とかではない徒手空拳のアクションが自分は結構好きなので個人的には気に入っています。
――あれは監督の指示なのでしょうか?
江口:監督とあのシーンをどうしようかと話をした時に、「ジャッキー映画みたいになると面白いよね」と言っていましたね。
――そんなアクションシーンだけでなく本作全体でゴブタが活躍していますが、これは作画チームとしても意外だったりしましたか?
持田:そこそこ良い仕事をする感じは変わらないですが、やや大抜擢ではありますよね。本来であれば、メインに据えられるのはちょっと考え付かないようなポジションです。
――描いた枚数でいうとリムルとゴブタ、どちらが多いですか?
持田:自分はゴブタの方かもしれません。といいますか、おそらく自分以外もゴブタの方が多いかもしれません。おそらく、今回の映画に関しては主人公なんじゃないかなと。
――ありがとうございました!
作品情報
あらすじ
その地は、かつて他の種族と地上で暮らしていた人々が平和な地を求めて世界を彷徨い、安寧を求めた末に水竜から与えられた、争いの無い王国。
しかし、その平和が永遠に続くことはなかった――。
長き眠りについた水竜に祈りを捧げる巫女・ユラは、水竜を目覚めさせ地上に攻め込もうと目論む者がいることを知り、一族に伝わる“笛”を手に、救いを求めて地上へ向かう。
ユラがたどり着いた先は【魔導王朝サリオン】の天帝エルメシアが治めるリゾート島。そこには【魔国連邦】の開国祭を終えて、束の間のバカンスを満喫しているリムルたちの姿があった。
エルメシアからの依頼を受けたリムルたちは、ユラを救うため【カイエン国】へ向かうが、海底では既にある陰謀が渦巻いていて…。
水竜の目覚め、そして笛を巡る騒乱の果てに明らかになるユラの秘めた“力”。リムルたちは、迫る脅威から蒼海を守り、平和を取り戻すことができるのか――。
キャスト
(C)川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会









































