
三つ巴の戦いから見える乙骨の本質――TVアニメ『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」連載インタビュー第18回:乙骨憂太役・緒方恵美さん
「なんで自分なんかのために必死になるんですか?」
ーー乙骨がそれぞれのキャラクターと邂逅したシーンについて、お聞かせください。特に烏鷺との掛け合いは印象的でした。
緒方:わざと怒らせてる? と聞かれますが、そんな器用な子ではないです……(笑)。前回もお話ししましたが「自分のためだけに生きるのはきっといつか限界がくる」と本心で思っていると思うので。
ーー対して烏鷺は「何者かになる」ということにこだわっています。
緒方:そうですね。例えば俳優になりたいと思う人、声優になりたいと言う人がいるとします。最初の段階だと、良い役をやれる人になりたいとか、レギュラーが欲しい、できたら主役が欲しい。有名になりたいって思いがち。自分もそうでしたけど。
私の場合は、声優を始めてからの最初の5年が地獄のような5年だったんですが(笑)、その5年ですべて叶ってしまった。その時に、「この先どうしたらいいんだ」と考えてしまいました。自分のためだけに頑張ることの限界が来てしまったんです。もう誰かのためじゃないと続けられないと思ってしまった。
ーー辛いから、誰かのためというモチベーションがないととても続けられないと。
緒方:ちょうど都合よく実家の問題が起きて、誰かのために続けられたのですが(笑)。今は「楽しんでくれるお客さんのために」続けられています。
なんかそれっぽく聞こえちゃうかもしれないんですけど、本心からそう思っているんです。媚びるということじゃなく、誠実に作ったステージや作品で笑顔がみたい。お客さんが喜んでくれるものを作れば、関係者みんなで喜べる結果になるに決まってますし!(笑)
「"自分なんか”のために……」的な自己評価が低いところは、乙骨と似てるかもしれません。でも、誰かのために頑張る、そうすることで自分も生かしていただいていると思う。そういうところも、彼とはすごくシンクロしてると思います。
ーー乙骨も生きている価値がない、みたいなところから始まっています。
緒方:そうですね。でも、烏鷺が言うことだって理解できる。新人の頃の私もそうでした。やっぱり若かったり、自分が認められなかったり、「何者にもなっていない」時には、卑屈になったり、誰かのせいにしがちですから。私は時間をかけて、そこではないところに行ったけれど、乙骨はもっと短いスパンで、たった1年でそれがわかってしまった。生きていたって仕方ないと引きこもっていたところから、友達や周りの仲間のために動き続けて、今の乙骨になった。
だから、烏鷺のように「自分が〜」と話している人に対する質問として、「なぜそういう考え方をするの?」と聞くのは自然なことで……特に彼は私のような「自分のため」という時間を経由していないから、そういう欲望が全面に出てしまう気持ちは理解できないのかもしれないなと。
石流を満腹にした乙骨
ーー石流も烏鷺とは違いますが、「満たされなさ」を持って現代へとやってきました。
緒方:演出も凄く面白かったです。戦っている最中にキャラクターとデザートが交互に映るみたいな。完成した映像をまだ観てないですが、すっごい美味しそうなデザートが写っていると思います(笑)。
彼も烏鷺と似てますが彼女よりは経験値のある人ですからーーまた私に引き込んじゃいますけど、ものづくりをする人って、自分がやったことにたいして100パーセント満足って、あまりしないですよね。
緒方:だからこそ、反省するし完璧にやりたいと思って、前に進んでいくのかなと。私は音楽もやっていますけど、完璧なステージをやれることなんかなくて。ライブ中にどこかで歌詞間違えたとか。でもちょっと間違えたとか、ちょっとずれたりしたのを戻したり色々する過程の中で、今までなかった音の重なりとか、面白いグルーヴになることもある。生楽器と一緒にやっているからこそ、そこで初めて生まれるフェイク(歌唱の表現方法)とかもあるし。
その中で「あー、ツアーがあと1ヶ所あったらもっとうまくやれたカモなのに」と思うこともなくはない。デザートが欲しいみたいな(笑)。でも、今の自分は、「今日は今日のパフォーマンスであって、今日はこれでよし!」と笑って終われるんですよ。
でも、新人の頃はそういうデザートを求める石流の気持ちに共感してたかもって。烏鷺もですが、パーフェクトを求めてしまう飢えた気持ち。だから私自身は理解できるんですが、乙骨はそうじゃないので。だから「どうしてそんなこと思うの?」って言うわけで。見方によっては嫌なやつですよね(笑)。
ーー(笑)。そういう乙骨がふたりの求めた姿というか。何者かであり、腹を満たしてくれる存在であるというのも面白い構造です。
緒方:でも、きっとそういうものですよね。もはや細かいことは覚えていませんが、私もその折々に、自分にないものを持つ人や、作品や音楽に触れ、解放されてきましたから。乙骨が石流や烏鷺に影響を与えたかどうかはわからないけど、一緒に戦うことで何かを思ってくれたのかなという気はします。私なんかより、奈々ちゃんや東地さんに聞いていただけたらその辺はありがたいのですが(笑)。
ーー水樹さんも東地さんも、一丸となった凄く良い現場だったとおっしゃっていました。
緒方:東地さん物凄く幸せそうに見えました!(笑) とっても楽しそうだった。「グラニテブラスト」を何回言ったんでしょうか(笑)。いろんなバリエーションを聞けて私も満腹、幸せでした(笑)。
ーー最後に、最終回までご覧になった視聴者の方にメッセージをお願いします。
緒方:どんな風に仕上がったのか、まだ観てないのでわからないんですけど、この素晴らしいメンバーが集まったチームで生み出すもの。絶対に面白かったと思いますが、皆さんいかがでしたでしょうか。前編と言うからには後編もあるでしょうから。お互いに楽しみにしていられたらなと思います。ありがとうございました。
[文/タイラ]
連載バックナンバー
『呪術廻戦 死滅回游』作品情報
イントロダクション
廻れ呪え 死の遊戯の中で
「渋谷事変」を経て、羂索により呪霊が蔓延る魔窟と化した
全国10の結界(コロニー)。
戦いは、呪術を持つ者達による殺し合い「死滅回游」へ。
加速していく混沌の中、伏黒の姉・津美紀が巻き込まれたことが発覚する。
五条の復活と津美紀救出の術を見出すべく動く虎杖たちだが…。
果たして、羂索の目的は何なのか。
「死滅回游」平定のためゲームに参加する彼らの行き着く先とは―。
キャスト
虎杖悠仁:榎木淳弥
伏黒恵:内田雄馬
禪院真希:小松未可子
パンダ:関智一
乙骨憂太:緒方恵美
脹相:浪川大輔
九十九由基:日髙のり子
天元:榊?原良子
秤金次:中井和哉
星綺羅羅:榊原優希
禪院直哉:遊佐浩二
日車寛見:杉田智和
髙羽史彦:鶴岡聡
レジィ・スター:青山穣
コガネ:ニーコ
夏油傑(加茂憲倫):櫻井孝宏
スタッフ
原作:「呪術廻戦」芥見下々(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:矢島陽介 丹羽弘美
副監督:高田陽介・佐藤 威
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:志賀健太郎(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳 圭介,ACE
音楽:照井順政
音楽プロデューサー:小林健樹
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA



















































