
“友だちやめて良い?”──ターニングポイントを迎えたTVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』を鈴代紗弓さん・青山吉能さんが振り返る【連載インタビュー第9回】
ぼたんはピュアな小悪魔?
──『上伊那ぼたん』は、キャラクター同士の感情の矢印が特徴的に描かれています。彼女たちによる矢印をおふたりはどのように捉えていますか?
青山:難しいですよね、そこは。特にぼたんが難しい気がしています。
鈴代:ぼたんは「いろいろな人に矢印が向いているんじゃないか」と思わせるくらい、無意識に大胆で……。そこが彼女の魅力でもあるのですが……。
それこそオープニングでぼたんがピースをしているカットとか、めちゃくちゃかわいいじゃないですか。ああいう顔って、本来はひとり、ふたりにしか見せない表情だと思うんですよね。特別に近い距離感でしか見せないものというか。でもそれをみんなに見せてくれちゃう。彼女のベースは“ただただ素直でいい子”なので、結果的に誰に対しても同じ距離感でいられるんだと思っています。
──みんなに対して同じ距離感。
鈴代:周りの人たちも「きっとみんなにこうなんだろうな」と思ってしまう感じ。だから「矢印が(自分に)向いているのかな?」と一瞬相手が思ったとしても「でもこの子はこういう子だもんな」となる。だから人と人を比べたり、差異をつけたりする子じゃないんですよね。
例えば第1話で、しゃっくりを気にするいぶきに自然に声をかけられるのも、そういう性格だからこそだと思うんです。
青山:確かに。
鈴代:良い意味で思慮深さみたいなものがない。だからこそ、普段から自然体でいられるんだと思いますし、お酒を飲んだときには相手がドキッとするような一言が言えちゃう。それは郡上先輩や、やえかにもですね。ちょっと自己肯定感が高い感じがするといいますか(笑)。
だから、ぼたんの中で最初から強い“矢印”があったというよりは、気づいたら自分よりも自由ないぶきに振り回されていた、みたいな感覚に近いのかなと。いぶきはいぶきでぼたんに振り回されているところもあると思うんですけど(笑)。
“ずっと自分だけを見てくれるわけじゃない存在”に惹かれていく、という空気感が漂っている気がしています。
──ピュアな小悪魔って感じですかね。
鈴代&青山:(声を揃えて)ピュアな小悪魔!
鈴代:それです(笑)。まさにその感じです!
──(笑)。では、いぶき側の“矢印”についてはいかがですか?
青山:青山個人としては、原作を読んだときに郡上先輩が魅力的だなと思ったのもあり、最初は「いぶきがどうやってぼたんに惹かれていくのか」を自分の中で整理するのが難しかったんです。「誰かと一緒に飲みに行く」なんてことがなかったいぶきが、どうして「はじめまして」をしたばかりの人とすぐに「飲みに行こう」となるんだろう?と。
いぶきは、ぼたんの「これまで会った人が持っていなかった光、優しさ」に惹かれたんだろうなと思っています。郡上先輩の優しさって“踏み込まない優しさ”だなと思ったんです。配慮しているからこその優しさであり、相手を理解しているからこそ距離を保てる。
鈴代:うんうん。
青山:一方で、ぼたんはそこに踏み込んでくるタイプなんですよね。その足取りが、いぶきにとってすごくしっくりくるし、ピースのハマるものだったんだろうなって。読んでいくうちにそれがわかって「これはもう流れに委ねよう」と思いました。そうしてここまでやってきて、今第9話にたどり着いて。
──自然に矢印が移っていくような。
青山:はい。今はもう心が完全にぼたんに向いたから、郡上先輩と話しているときでさえ、頭のどこかでぼたんのことを考えてしまうんですよね。自分としては「郡上先輩の気持ちがわかるのに、それでもぼたんに向かってしまう」というのが少し苦しくて。でも、ぼたんに矢印が向かっているのは明確だったので、演じる上では迷いはなかったです。
鈴代:郡上先輩、幸せになってほしい……。でも郡上先輩は、楽しそうないぶきの姿も好きなんだもんね。
──第9話では、部屋で一緒にいぶきと郡上先輩、ジンランとの“部屋飲み”のシーンも印象的でした。いぶきがトラウマ的なものを乗り越えたことが伝わることも、この作品の深さを生み出しているのかなと思っていて。
鈴代:あれも大きなポイントですよね。
青山:結局いぶきの中で思い浮かぶのはぼたんなんですよね。もちろんその場も楽しいんですけど「お酒が一番楽しい」という言葉の中身って、実は“ぼたんと一緒にいる空間”だったりして。それを受けて「楽しいことは良いことだね」と、郡上先輩が……。
鈴代:そうなんだよね。“お酒”って言いながら、そのイメージは別の場所にある。ひとりで飲む時間が長かったいぶきは、誰かと飲む楽しさについては素人で、本当にはじめての感覚だったんだろうね。
青山:それを教えてくれたのは、郡上先輩ではなくて、ぼたんだった……。郡上先輩としては念願の宅飲みだったのに。そんな郡上先輩のそばにいるジンランもまた……!
鈴代:そう、そこのふたりも良い!
青山:矢印の交差がはじまるAパートでした。郡上先輩とジンランの組み合わせがすっごくいいんですよね。距離の取り方が絶妙といいますか。踏み込みすぎないけれど、話している内容もすごく知的で、文化的。そんな魅力があるからこそ、この先どのような矢印のカタチになっていくのか、楽しみにしていただきたいなと思います。
鈴代:第9話は、本当にターニングポイントになっている回だよね。
青山:うん、一気にピースがはまっていく感じがしました。思わず「ひぃー!」ってなる(笑)。
鈴代:なにげない会話がね。
──ありがとうございます。それでは最後に、第10話以降の見どころを教えてください。
鈴代:第9話を経て、ぼたんといぶきの距離がぐっと近づきました。その一方で、郡上先輩の想いがより強く見えてきて……そこにジンランちゃんがどうやって寄り添っていくのかも見どころになってくると思います。ぼたんといぶきとはまた違う形のリアリティというか、それぞれの関係性の駆け引きが丁寧に描かれているので、ぜひ注目していただきたいです。
いぶきとぼたん以外の組み合わせによる気持ちのぶつかりも出てきます。寮で一緒に生活しているからこそ生まれる会話や距離感も、より色濃くなっていきますよね。
それから、やっぱり大きな見どころとして“音楽”にもご注目いただきたいです。この先はサプライズも用意されていますし、演出としても印象的な回があります。
いぶきとぼたんも良い流れで進んでいくんですけど……一筋縄ではいかないんですよね。「このまま進むのかな」と思ったところで、また少し揺れたり。
青山:うんうん。
鈴代:「お酒がないんだったら私たちの関係は?」みたいなところもあって。仲良くなったからこそ、さらにその先を求めてしまうというか。「この関係はどこまでいけるんだろう」「その先があるのか、ないのか」……ほかのキャラクターとの関わりを通して、ぼたん自身も少しずつ整理していくので、そこもぜひ楽しんでいただきたいです。
青山:ここからは登場人物たちの関係性が怒涛のように動いていきます。ぼたんといぶきだけじゃなくて、周りのキャラクターも含めて、それぞれの距離感や関係の形がどう変わっていくのか。同じ寮で暮らしているからこそ生まれる関係性、「一緒にいる」っていろいろな方法があるよね、というのを改めて感じられる展開になっていると思います。
あくまでも誰かと誰かの物語ではあるんですけど、それだけじゃなくて、同じ場所で時間を共有している“みんな”の物語でもあります。6人のつながりがあった上でのものが描かれていくので、その前提をいま一度踏まえたうえで、それぞれの関係の変化を見ていただけたら嬉しいです。ぜひ楽しみにしていてください!
【文:逆井マリ インタビュー・編集:西澤駿太郎】
連載インタビューバックナンバー
『上伊那ぼたん、酔える姿は百合の花』作品情報

Onair
TOKYO MX、BS11、とちぎテレビ、群馬テレビ、テレ玉 ほかにて
4月10日(金)24時より放送開始
Streaming
ABEMAにて4月10日(金)24時より地上波同時・最速配信
ほか各配信プラットフォームにて順次配信
キャスト
上伊那ぼたん:鈴代紗弓
砺波いぶき:青山吉能
郡上かなで:寿美菜子
遊佐あかね:天海由梨奈
北杜やえか:富田美憂
張景嵐:河瀬茉希


























