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『映画名探偵プリキュア!』プロデューサー陣が“心の謎”を描いた理由【インタビュー】

「“名探偵”よりも“プリキュア”が際立った映画にしたかった」『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』ABCアニメーション・多田香奈子P×東映アニメーション・中川真緒Pが語る、“心の謎”を描く物語に込めた思い【インタビュー】

 

プリキュアシンガーの音楽が物語に与えた力

──石井あみさんが歌われる挿入歌「First Step」が入ってくるタイミングもすごく印象的で。

多田:めっちゃいいですよね。

中川:好きすぎて、最近は口ずさむだけで泣けます(笑)。特に印象的だったのが、2番の歌詞の〈けど頑張らない自分じゃ 終われない泣くくらい試したい〉です。デモが届いたときはまだ歌声は入っていないので、メロディーを流しながら歌詞を見て、「こんな感じかな」と自分で歌って確かめていたんですけど、そのとき、この歌詞のところで自然と涙が出てきてしまって。(歌詞をあらためて見て)やばい、また泣いちゃう(笑)。

多田:分かる! 泣いちゃう。でも本当に、涙活は大事ですから! 個人的には最初から、「泣くための映画を作ろう」という気持ちは結構あったんです。特に、「First Step」の歌詞は、本当にこの作品が言いたいことを全部言ってくれていますよね。

中川:本当に。音楽を発注するタイミングでは、シナリオが大体出来上がったくらいな感じで。それをお渡しはするんですけど、あまり説明はしないんです。歌詞についても、要素やメッセージ性のオーダーはしますが、こちらから細かくお願いすることはなくて。

──へえ! そしたら、音楽プロデューサー・ディレクターの井上洸さん(ABCアニメーション)とは、どのようなお話をされたのでしょう?

中川:映像のイメージがあるので、「曲調はこういう感じにしたい」「歌詞の要素はこういう感じで」というお話をするくらいで、音楽チームにお任せしている範囲は結構広い印象でですね。「この作品って、こういう内容なんだ」と、逆にいただいた歌詞から教えてもらったような感覚があったりもしました。

井上さんをはじめとした音楽チームの皆さんは本当にすごいなと思って。音楽チームにもよく言っているんですけど、皆さんの想像力が本当にすごいんです。これだけ限られた資料のなかから、どうしてここまで作品を理解して、素敵な歌詞を書いてくださるんだろうと思っています。

──たくさんの曲を歌ってきた石井さんですが、今回は3000回近く練習したとおっしゃっていました。

中川&多田:ええっ!?

多田:すごい。

中川:すごいなあ、ありがたい。でもおかげで、本当に素敵なシーンになりました。歌声が力強いですよね。お話ししているときの石井さんは、私からするとすごく可愛らしい印象を受けるのですが、歌うと本当に力強くて、かっこいいなと思っています。

──劇中でも、歌詞のメッセージがしっかりと届いてきました。

中川:挿入歌のシーンは、セリフと歌が重なるので、歌詞のある曲を大きく流すとセリフが聞き取りづらくなってしまうんです。それで監督とミキサーさんの間にも、ちょっとした攻防があって。ミキサーさんとしては「もう少し曲を小さくしたほうがいい」という考えだったんですけど、監督はとにかく曲を聴かせたいから「大きくしたい」と。最終的には、なるべく曲をしっかり聴かせる形に落ち着いています。

多田:違和感や気になることもなく、セリフも歌もどちらも印象に残る形になっていましたね。

中川:気にならないですよね。セリフもしっかり聞こえるし、その合間から歌詞も耳に入ってくる。ただのBGMではなく、歌詞そのものもお客さんにちゃんと届いている感じがして、すごくいいなと思っています。だから、また泣いちゃうんですよね(笑)。

 

── 一度、すっと静かになるタイミングもありますよね。

多田:そうそう、あの場面もいいですよね。

──そして、増井優花さんと吉武千颯さんによるエンディング主題歌「FIRST PRISM」は、しっとりとした雰囲気ですね。全員勢揃いのエンディングダンスもすごく良くて。

多田:そうなんですよね!

中川:本編の最後がすごくしっとりと終わるんですよね。キュアアンサーが「キュアット解決解決」としっとり言って終わるので、そのゆっくりとした空気から、急に曲が始まってびっくりしないように、少しずつ曲が入ってくるようにしたいというオーダーをして、「FIRST PRISM」を作っていただきました。

 

「悩んだ末の49点」かりんの心をどう描くか

──かりんの悩みが本当に中学生らしいところも印象的でした。テストの「49点」という点数も絶妙ですよね。

中川:あれは多田さんが考えた点数なんですよね。

多田:最初は「29点だと低すぎるかもしれない」という話をして、「49点はどうですか」と。というのも、かりんちゃんって、ちゃんと勉強も頑張っている子なんです。努力をしている…という部分を点数でも見せたかった。61点や62、63点くらいのほうがいいかなとも迷ったんですけど…彼女の感情に沿う点数は何点なのか…。そこは、めちゃめちゃ悩みました。悩んだ末の49点です(笑)。

映画は約70分なので、例えばあと10分くらいあれば、かりんちゃんに具体的に何があったのかを、セリフ付きでもう少し描くこともできたと思います。でも今回は70分という尺のなかで、かりんちゃんがこれまでどんなことを経験してきたのかを、あれだけ短い時間で描かなければならない。それはすごく難しいことでした。

──変身シーンや応援シーンなどもありますしね。

多田:そうなんです。映画オリジナルキャラクターの悩みに観る人が感情移入できてこそ、プリキュアがその悩みを解決したときにカタルシスが生まれる。だからこそ、そこはきちんと描かなければいけないと思っています。でも、そこばかりに時間を割くわけにもいかないので、どうなるだろうということは、シナリオの段階からみんなで話し合っていました。実際に映像になったものを観ると、すごく短いフラッシュバックだけでも十分伝わるんですよね。友だちが少し遠くにいる。テストが49点だった。コップを割る。走っている途中で転んでしまう。そうした一つひとつが、自分が「なんとなく、うまくいかなかった」と思う気持ちの種になってるんですよね。すべてを説明しきらず、観ている皆さんの想像力に委ねる。そういう意味では、むしろこのくらいの描き方でよかったのかなと、映像を観て思いました。

中川:完成した映画を観ると、テンポもすごくよくて、ちょうどよかったなと思います。次々と情報が入ってくるんですけど、それが観ていて気持ちいいんですよね。すごく楽しい映画体験になっていて。それから、かりんちゃんの情報をどう出していくかという話でいうと、今回は謎解きの映画なので、最初に「かりんちゃんはこういう子です」と全部見せることはできないんですよね。それ自体が謎になっているので。

プリキュアだけがかりんちゃんについて知らず、観客には先に情報を見せておくという作り方もできたと思います。でも今回は、プリキュアと観ている人が同じタイミングで情報を知っていく構成にしています。だから、観客もプリキュアと一緒に情報を得ながら、一緒に謎を解いていける。

 

「誰かの悩みを解決する映画でありたい」

──今回ミラクルライトが復活したことも印象的でした。物語の山場ですごくいいところにミラクルライトが入ってきますよね。

多田:ミラクルライトもばっちりでしたね。

中川:ばっちりでしたね。

多田:しかも、ミラクルライトがちゃんとポチタンの形になっているのもいいんですよね。物語のなかでポチタンの思いにのってライトが生まれる、「だからポチタンの形をしているんだね」と思える。実際のミラクルライトとアニメの中の物語が、すごくいい形でマッチしていて素晴らしかったです。

──今回、ポチタンもめちゃくちゃ活躍していますよね。

多田:そうなんですよ! 何回も風船みたいになって受け止めてますから。あれ、ポチタンがいなかったら大ケガになっていたのでは?と思うくらい。

中川:お子さんたちと一緒に観る親子試写会で、ポチタンが大きくなるところで子どもたちが笑うんです。「あ、ここで笑うんだ」と思って。テレビシリーズでもやっている演出なので馴染みがあるのかなと思ったんですけど、すごく楽しそうに笑っていて。

多田:うんうん。もしかしたら元々好きなのかもしれないね。プリキュアの変身が解けるシーンがあるじゃないですか。私も、ハラハラしながら観ていて。プリキュアがみんなボロボロになって、「やばい、プリキュアが負ける」と思ったところで、ポチタンがぽよんってなって(笑)。私コンテで知っていたはずなのに、ポチタンが風船みたいになることをうっかり忘れていたんですよ(笑)。あのシーンも私もすごく笑いました。いきなり「おもしろ!」って。で、一瞬そこで緩急がつくんですよね。そのあとキュアアンサーが落ち込むシーンがあって……。一度涙が引っ込んで、そこからまた泣ける。ずっとハラハラしているより、あの緩急がすごくいいなと思いました。ポチタン、いい味を出してるなあって。

──変身シーンにもすごくメリハリがありました。

中川:よかったです。映画では、テレビシリーズでもまだ使っていない短縮版の変身シーンも入っていて、それも見応えがあったなと。

──それから、“ダメダメ”の存在も愛しくて、かわいいですよね。親としては、子どもに「ダメダメ」と言ってしまうこともありますし、アランたちの気持ちもすごくわかるなと思いました。危ない思いをさせたくないから、どうしても先回りしてしまう。でも、それだけではなくて、「可愛い子には旅をさせよ」というか、本人が一歩踏み出すことも大切なんだなと感じて。

中川:でも、私個人としてはその立場では全然考えていなかったなと思いました。私は完全にかりんちゃん側というか、子ども側の目線でずっと観ていたんです。いまだに「自分のことを好きになりたい」と青らしく悩んでいる大人なので(笑)。でも、観てくださった方から「アランって親目線だよね」と言われて……実際、どう考えてもそうなんですけども、私はその視点に全然気づいていなかったんですよ。

多田:私も同じです。

中川:純粋に、友達だから、大切だから、アランはああいう行動を取ったと私個人的には考えていて。でも、親も同じようなことをしてしまうんだなという発想が、私にはあまりなかったんです。だから、そういう感想を聞くのはすごく興味深いですし、面白いですね。

多田:私も、親御さん世代はそういった見方をしてくださっているのはとても印象的です。私は中川さんに近くて、かなりかりんちゃんに感情移入していたので。私や中川さんは、かりん、アラン、レインは“親と子”というより、“友達”としての関係性の部分でみています。

でも、確かに親御さんからすると、自分をアランに重ねる人もいるでしょうし、かりんちゃんのように悩んでいるお子さんを持つ方もいるかもしれない。そういうときに、この作品が何かの支えになったら嬉しいなと思います。

──改めて振り返ると、本作にはお二人が大切にしてきた“プリキュアらしさ”が、随所に込められているように感じます。最後には前向きな気持ちになれる作品ですよね。

多田:かりんちゃんの苦しみがとてもリアルがゆえに、「暗い映画という印象を抱かれたらどうしよう」という悩みも少しあったんです。一番悩んでいたのは年末くらいかな。

中川:「本当にこれでいいんだろうか」という悩みがありました。我々の中にも“ダメダメ”が発生していましたね(笑)。

多田:そうだよね。「本当にこれでいいのかな」って。でも「誰かの悩みを解決する映画でありたい」というところは、中川さんとも一致していました。

中川:私たちも、制作途中の映像や音楽に何度も励まされましたし、栄養にもしていましたよね。曲をめちゃくちゃ聴いて、勝手に泣いて(笑)。

多田:自家発電して、まわしてるような(笑)。本当に、良い映画です!

 
[インタビュー/逆井マリ]

 

作品情報

映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密

あらすじ

新たな依頼人は妖精・・・!?
なぞの生き物・ダメダメ調査のつもりが・・・
ここはどこ?

ある日、街でウワサの「バツ印事件」が発生!
バツ印をつけられると大切なものが動かなくなったり、
使えなくなったりして、みんな困っているみたい…。

そんな「バツ印事件」を追うあんたたちの前に
妖精の依頼人・レインが現れる。
彼の依頼は、「ダメダメからかりんを守って欲しい」というものだった!
レインに案内されてたどり着いたのは、
まるで夢のように綺麗な場所「かりんの庭」。
そこで出会った少女・かりんと、彼女を見守る妖精のアラン。
アランとレインはかりんのことをとても大切に思っているみたい。
かりんと仲良くなったあんたたちは、早速調査開始!
ところが!平和な庭にも、突然ダメダメが現れて…。

ダメダメって一体なに!?
不思議な庭に隠された秘密とは・・・?
そして!「キミとアイドルプリキュア♪」と
「わんだふるぷりきゅあ!」も駆けつけるよ!
「名探偵プリキュア!」と一緒に、バラバラのヒントを
つなげてナゾを解き明かそう!
そのナゾ、映画館でキュアット解決!

キャスト

明智あんな/キュアアンサー:千賀光莉
小林みくる/キュアミスティック:本渡楓
帆羽くれあ/キュアエクレール:長谷川育美
森亜るるか/キュアアルカナ・シャドウ:東山奈央
咲良うた/キュアアイドル:松岡美里
蒼風なな/キュアウインク:髙橋ミナミ
紫雨こころ/キュアキュンキュン:高森奈津美
プリルン/キュアズキューン:南條愛乃
メロロン/キュアキッス:花井美春
犬飼こむぎ/キュアワンダフル:長縄まりあ
犬飼いろは/キュアフレンディ:種﨑敦美
猫屋敷ユキ/キュアニャミー:松田颯水
猫屋敷まゆ/キュアリリアン:上田麗奈
ポチタン:加藤英美里
シュシュタン:礒部花凜
マシュタン:羊宮妃那
ジェット先輩:梶裕貴
かりん:鬼頭明里
アラン:島﨑信長
レイン:内山昂輝
ダメダメ:西村真二 きょん(コットン)

(C)2026 映画名探偵プリキュア!製作委員会

 

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