声優
『文芸あねもねR』トークイベントレポート

田中敦子&井上喜久子が呼びかけたチャリティー朗読企画『文芸あねもねR』のトークイベントに超豪華声優陣がずらり!

 東日本大震災の復興支援を目的としたチャリティー書籍『文芸あねもね』を、その趣旨に賛同した声優たちが朗読、オーディオブックとして配信し、ダウンロード販売の売り上げを寄付しようというチャリティー企画『文芸あねもねR』。

左から、井上喜久子さん、ささきのぞみさん、山寺宏一さん、大塚明夫さん、小山力也さん、田中敦子さん。

左から、井上喜久子さん、ささきのぞみさん、山寺宏一さん、大塚明夫さん、小山力也さん、田中敦子さん。

 声優の井上喜久子さんがちょうど1年前の3月に、書店でたまたま目にした気になるタイトルの本(井上さんの所属事務所はオフィスアネモネ)を手に取り、企画の趣旨と収録作品の内容に感動したことが、『文芸あねもねR』の始まりだったという。

 そして、井上さんから「この本に声優として、朗読という形で協力したい」との話を持ちかけられた田中敦子さんが、強力な人脈と抜群の行動力を駆使し、次々に大物声優たちを巻き込んで、井上さんがこれを思い立った頃には思ってもみなかった規模の活動になっていく。

 2013年3月1日から、いよいよ配信を開始した『文芸あねもねR』。その存在や活動目的をより広く知ってもらうために、去る3月3日には文化放送メディアプラスホールにて、田中敦子さんと井上喜久子さんを中心としたトークショーが開催された。

 ゲスト声優も圧巻で、大塚明夫さん、小山力也さん、ささきのぞみさん、さらには福岡から帰ってきたばかりという山寺宏一さんが飛び入りで出演。チャリティー活動への想いや、収録時の逸話、それに生朗読など、普通のイベントでは早々お目にかかれないような豪華共演で、会場中を大いに楽しませた。


 『文芸あねもねR』はオーディオブック配信サービス「FeBe(フィービー)」にて配信開始。新作も順次配信予定。参加声優は、大塚明夫、山寺宏一、小山力也、浪川大輔、小野大輔、杉田智和、田中敦子、井上喜久子、浅野真澄、田中理恵、ささきのぞみ ほか。



●『文芸あねもねR』の制作秘話が明らかに!!

 イベントのオープニングでは、井上喜久子さんと田中敦子さんが登場し、このトークショーに至るまでの逸話や『文芸あねもねR』の制作秘話などが語られた。

井上さんのお約束の挨拶「井上喜久子、17才ですっ!(おいおい)」に続き、なんと田中さんが「田中敦子、17才です!」と、あの凛々しい声で自己紹介。イベント中も井上さんのことをたびたび「教祖」と呼ぶなど、どうやら17才教に入信したらしい!?

井上さんのお約束の挨拶「井上喜久子、17才ですっ!(おいおい)」に続き、なんと田中さんが「田中敦子、17才です!」と、あの凛々しい声で自己紹介。イベント中も井上さんのことをたびたび「教祖」と呼ぶなど、どうやら17才教に入信したらしい!?

 チャリティー活動ということで、予算もまったくない中、昨年の夏頃にイベント会場を探していた井上さんたちは、文化放送の厚意により無料でメディアプラスホールを借りられることになったという。しかも、震災が3月11日であったため3月開催を希望していた井上さんたちに、文化放送側は3月3日を用意。チャリティー書籍『文芸あねもね』が元々、「女による女のためのR-18文学賞」を受賞した女性作家が集まって企画された、女性主導の企画であるため、そのイベントをひな祭りの日に開催できることは望外の喜びだったと語った。

 さらに、朗読を収録する場所の確保にも悩んでいた井上さんたちに、文化放送は社内スタジオの無料貸し出しまで提案。多くの人からの、たくさんの親切に助けられながら、オーディオブックの配信開始とイベント開催にまでこぎ着けられたことに、井上さんたちから深い感謝の気持ちが述べられた。

 そんな真面目な話をする一方で、これが井上さんの影響なのか、クールなイメージの田中さんまでもがおとぼけを連発していく。田中さんによる17才教の挨拶ネタを皮切りに、『文芸あねもねR』に合わせて今日の衣装をアネモネ柄のワンピースにしたが、よくよく見たらパンジー柄だったという残念話、圧力鍋を爆発させた失敗話など、田中さんも中身は意外と井上さんに近いものがあることが判明。『攻殻機動隊』の草薙素子役のイメージが強いだけに、素顔とのギャップがなんともおかしい。

 しかし、企画に協力してもらえそうな声優仲間を集める際には、まさに草薙素子ばりに活躍する田中さんの姿が見られたという。これと思った声優にスタジオで声をかけるも、うまく行かないことも多い井上さんに対し、田中さんは「狙った獲物は逃がさない」とばかりに次々と大物をゲット。その捕獲率の高さから、井上さんが田中さんを「スナイパー敦夫さん」と呼んでいるという逸話も明かされた。

 さらに、作家とのつなぎを付けたのも田中さんだったそうだ。井上さんは企画は思いついたものの、『文芸あねもね』側とのコンタクトの取りようがなかったが、田中さんはすかさずTwitterで作家の方々を次々にフォロー。その中で、田中さんのファンだった柚木麻子先生が反応したことから、その線をたぐり寄せて企画実現にまで持っていったとか。まさに「スナイパー敦夫さん」の本領発揮だと、井上さんも感嘆しきりだった。

 イベントの前半は『文芸あねもね』で執筆された女性作家を迎えてのトークで、最初のゲストは『文芸あねもね』の企画発起人である吉川トリコ先生。吉川先生の収録作品『少女病 近親者 ユキ』は、自身の『少女病』という小説のスピンオフ作品に当たるもので、元々は同人誌で出そうと考えていたそうだ。それが、同人誌制作の相談を持ちかけた宮木あや子先生の一言から、震災のチャリティーという話になり、ついには10名もの作家が集まる大きな動きにまでなったという。

チャリティー書籍『文芸あねもね』の企画発起人・吉川トリコ先生から、企画の経緯や収録作品『少女病 近親者 ユキ』の解説がなされた。また、井上さんが風変わりな母・織子役を、田中さんが旦那に逃げられたユキの母・香苗役を演じての感想などを語った。

チャリティー書籍『文芸あねもね』の企画発起人・吉川トリコ先生から、企画の経緯や収録作品『少女病 近親者 ユキ』の解説がなされた。また、井上さんが風変わりな母・織子役を、田中さんが旦那に逃げられたユキの母・香苗役を演じての感想などを語った。

 続いては、『二十三センチの祝福』を執筆された彩瀬まる先生が登場。彩瀬先生はあの東日本大震災に旅行先の仙台で被災し、津波と原発から逃げた5日間の体験を『暗い夜、星を数えて-3・11被災鉄道からの脱出-』というルポルタージュにもまとめている。それだけに、『文芸あねもね』への参加の誘いにもすぐに応じたそうだ。

 また『二十三センチの祝福』の朗読のキャスティングで、主人公・加納役が小山力也さんに決まったと連絡を受けた際は、ちょうど小山さんも出演していた某作品にハマッていただけに驚喜したとか。その小山さんが急遽イベントに駆けつけ、彩瀬先生の前で生朗読を披露。さらには若い女性でありながら、男の気持ちをよく理解していると小山さんに絶賛された彩瀬先生は、初々しく照れる姿を見せた。

 ちなみに、田中理恵さんが演じているグラビアアイドルの天海ルルコ役は、当初は井上さんがやる気満々だったとか。やはりグラビアアイドル役というのは誰にとっても魅力的だったようで、ルルコのキャスティングの話題は大いに盛り上がり、終いには小山さんまでがルルコ役に名乗りを上げていた。

『二十三センチの祝福』を書かれた彩瀬まる先生と、主人公・加納役の小山力也さんをゲストに迎えて。小山さんは数々の作品で共演する田中さんからの、脅しのような誘いに企画への参加を即決したと語り、会場を笑わせていた。

『二十三センチの祝福』を書かれた彩瀬まる先生と、主人公・加納役の小山力也さんをゲストに迎えて。小山さんは数々の作品で共演する田中さんからの、脅しのような誘いに企画への参加を即決したと語り、会場を笑わせていた。

●最後のゲストは大塚明夫さんと山寺宏一さんの超大物お2人!!

 休憩を挟んで、後半は声優ゲスト中心の構成に。まずはオーディオブックのダウンロード方法を説明してもらうため、ささきのぞみさんを迎える。ささきさんといえば、100万ダウンロードを記録したアプリ『朗読少女』で、乙葉しおり役として100作品以上を朗読している、いわば朗読アプリの大先輩。そのささきさんも『文芸あねもねR』のことを知り、「ぜひ入れていただきたい!」と参加を熱望したという。

ささきのぞみさんからダウンロード方法について非常にわかりやすい説明がなされるが、井上さんの機械オンチぶりは想定外すぎたらしい。

ささきのぞみさんからダウンロード方法について非常にわかりやすい説明がなされるが、井上さんの機械オンチぶりは想定外すぎたらしい。

 さて、ささきさんによるダウンロード方法の解説がひとしきり終わった後、毎度おなじみの井上さんの機械オンチぶりが炸裂する。井上さんの場合、ユーザー登録の最初に行う「自分のメールアドレスを入れる」ところで挫けたとか。というのも、井上さんはコピー&ペーストの機能自体を知らなかったらしいのだ。ささきさんも「そこからでしたか~」と苦笑。その先のパスワード設定も難題で、はたして井上さん自身が『文芸あねもねR』をダウンロードできる日が来るのか、はなはだ心配になるような展開に会場は笑いに包まれていた。

 そしてゲストの最後は大塚明夫さんと山寺宏一さんの超大物2人。中でも山寺さんは福岡から帰ってきたばかりの飛び入り参加で、観客にもまったく知らされていなかったため、スペシャルゲストとして名が告げられた途端に会場から大きなどよめきが上がる。

 またサービス精神が旺盛な山寺さんだけに、田中さんと大塚さんを見ながら「少佐とバトーが関わっていたら、トグサとしては行かないわけにはいかない」と、『攻殻機動隊』ネタでアニメファンを喜ばせる。かと思えば、宮城県出身であり、宮城ゆかりのアーティストで結成した「みやぎ びっきの会」にてチャリティーライブなども行っている立場から、声優仲間がこうしてチャリティー活動に立ち上がってくれたことへの感謝の言葉も誠実に述べられた。

 なおここからは、田中さん、大塚さん、山寺さん、井上さんが順番に『文芸あねもね』の収録作品のあらすじを朗読し、そこからトークを広げる形で進む。

 ここで『川田伸子の少し特異なやりくち』という作品を紹介した井上さんは、本作の主人公である、アニメキャラのコスプレ姿で日常を送っている31歳の女性・川田伸子に、まるで自分ではないかと思うほどの親近感を覚えたそうで、ぜひともこの役をやりたいと熱く語った。

大塚明夫さんと山寺宏一さんの掛け合いがあまりに面白く、完全に笑いのツボに入ってしまった井上さん。そこへさらに山寺さんが追い打ちをかけていく。

大塚明夫さんと山寺宏一さんの掛け合いがあまりに面白く、完全に笑いのツボに入ってしまった井上さん。そこへさらに山寺さんが追い打ちをかけていく。

 さらに、井上さんがコスプレの話題と大塚さんを見て思い出し、語り始めたのが、1991年発売の『おたくのビデオ』というOVA作品のイベントで起こった出来事。この作品の劇中アニメのヒロイン、ミスティーメイのコスプレをアシスタントプロデューサーの女性がしていたのだが、「これ誰か着ませんか?」と女性声優たちにもコスプレしないかと振ってきたとのこと。

 当時まだ新人で、今のようなバラエティ感覚に目覚めていない頃だった井上さんは全力で拒否するも、そこで大塚さんに「喜久ちゃん。そのぐらい着ないと、役者としてやっていけないぞ」と言われ、半泣きでそのバニーガールのような衣装を着て、ステージに出てしまったそうだ。井上さんの人生初コスプレの仕掛け人だったと判明した大塚さんは、ちなみにそのことを「全っ然、憶えてない(笑)」らしい。

 最後は会場に遊びに来ていた『文芸あねもね』の女性作家たちもすべてステージ上に呼び、今日の感想やこの企画への想いなどを全員で一言ずつコメントする。ただ、大人数になったこの場をどうまとめ、終わらせるかを悩んだ井上さんは、なんと山寺さんに最後の締めをムチャ振り!

 山寺さんも「俺、飛び入りなのにおかしいでしょ!」とツッコミつつ、たちまち見事な司会ぶりを発揮。ステージを降りる出演者の誘導や見送りまできっちりとやり遂げ、会場中から拍手喝采を受けながら場を締めた。ベテラン声優たちのスキルの高さを、改めて堪能できたイベントとなった。

エンディングでは、出演者と女性作家がステージにずらり。ここで急に司会役を任された山寺さんだが、最後を大いに盛り上げて終わらせる見事な手腕を見せた。

エンディングでは、出演者と女性作家がステージにずらり。ここで急に司会役を任された山寺さんだが、最後を大いに盛り上げて終わらせる見事な手腕を見せた。

◆オーディオブック型・声優チャリティー企画「文芸あねもねR」
価格:525円(1作品)
配信開始:2013年3月1日より、2作品配信中。以下、順次更新予定

「少女病 近親者 ユキ」
著者/吉川トリコ
キャスト/小野大輔、井上喜久子、田中敦子、坂巻学、石黒千尋、藤川茜、椎葉マリエ

「二十三センチの祝福」
著者/彩瀬まる
キャスト/小山力也、田中理恵、田中敦子、藤川茜

出演者:大塚明夫、山寺宏一、小山力也、浪川大輔、小野大輔、杉田智和、田中敦子、井上喜久子、浅野真澄、田中理恵、ささきのぞみ ほか
執筆者:彩瀬まる・豊島ミホ・蛭田亜紗子・三日月拓・南綾子・宮木あや子・山内マリコ・山本文緒・柚木麻子・吉川トリコ
制作:文芸あねもねR制作委員会・文化放送・新潮文庫
配信サイト:FeBe(フィービー)


>>チャリティー企画「文芸あねもねR」

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