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アニメーション監督・新房昭之×EGG FIRM代表・大澤信博対談

アニメプロデュース会社・EGG FIRM10周年記念! アニメーション監督・新房昭之氏&EGG FIRM代表取締役・大澤信博氏による居酒屋対談をお届け!!

アニメプロデュース会社・EGG FIRM(エッグファーム)の設立10周年を記念して、数多くの話題作を送り出してきたアニメーション監督・新房昭之氏と、酒飲み仲間でもあるEGG FIRM代表取締役・大澤信博氏が居酒屋で対談!

共にアニメーションに携わってきた2人が、アルコールに浸った頭で、歩んできた長き道程や、未来に描く夢を語ります。貴重なトークをお楽しみください♪

■大澤信博
おおさわのぶひろ/アニメーションプロデューサー。株式会社EGG FIRM代表取締役。
主な作品に『ソードアート・オンライン』シリーズ、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』シリーズ、『無職転生~異世界行ったら本気だす~』シリーズなど。

■新房昭之
しんぼうあきゆき/アニメーション監督。
主な作品に『魔法少女まどか☆マギカ』『物語シリーズ』、『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』、『ひだまりスケッチ』、『さよなら絶望先生』など。

アニメーション監督・新房昭之氏&EGG FIRM代表取締役・大澤信博氏 居酒屋対談

15年以上前から今に至るまで

――新房さんは、EGG FIRMの設立前、代表の大澤がGENCOに所属していたころから『まりあ†ほりっく』(2009年)、『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』(2010年)でご一緒されています。さらに前に遡ると、いつからのご縁なのでしょうか。

大澤信博(以下、大澤):新房さんと言えばシャフトで多く監督をされている印象ですが、実は最初に会ったころは、まだシャフトで仕事をしていなかったんですよね。スタジオぴえろやタツノコプロの時期でしたっけ。

新房昭之(以下、新房):童夢からだと思います。

大澤:そうそう。そのころから新房さんとは「なにかオリジナルをやろうよ」って話が出ていました。

新房:でもなかなか形にならないんですよね。

大澤:何度かトライしているんですが、途中で行き詰まってしまったり、うまく現場が組めなかったりで。

――それから2015年にEGG FIRMが設立されると、新房さんは会社に関わっています。大澤さんから新房さんへ、会社設立の相談を受けていかがでしたか。

新房:会社設立の相談という名目で月1回くらい集まって飲もうよという話をしていたのですが、なかなかそういう会が開かれなくて。相談会はいつになったらやるのですか、と(笑)。

大澤:そうやっていろんな相談相手からクレームがきちゃったわけですよ(笑)。たしかに集まって飲むのっていいですねと、自分も思っていたのですが。

新房:理由があれば、定期的に会いやすいんじゃないかって提案したんですよ。

大澤:でも自分がめちゃくちゃ忙しくて、なかなか時間がとれなかったんです。設立から5年くらい経ったころに余裕ができてきたのですが、そうしたらコロナ禍が始まってしまって。だから今日のように会うようになったのは、コロナが明けてからですよね。

新房:ただ、コロナでいろいろと予定がおかしくなったって言ってましたよね。大澤さんに限らず、世間でもたくさんのことが変わった時期でした。そんな中を生き延びてきたんだからすごいですよね。

大澤:実はアニメはコロナには強かったんです。みんな家にこもるから、アニメを観る時間も増えるんですよね。ただつくる方としてはしんどい時期だった。

新房:つくり方というか、いろいろ変わりましたからね。たとえば会議がオンラインになったり。

大澤:それ以前はオンライン会議なんてほぼありませんでしたからね。

新房:飲み会をオンラインでやったこともあります(笑)。あれはあれで案外面白かったですけどね。


 

企画実現に向けて何度も挑んだが……

――今日もお酒の席ですが、今ではけっこうな頻度で会われて、飲まれているのでしょうか。

大澤:月2回くらいでしょうか。でも、新房さんのインタビューに一緒にいるというのは久しぶりですね。とはいえだいたい他の会社の方もいるので、2人だけということはあまりないのですが。

新房:これまでに、いろいろなお店に行きました。昔、シャフトがあった下井草とか、その周辺の駅が多かったです。

大澤:新房さんって、なかなか遠出をしないんですよ。アニメの催しや他社さんが集まる機会に、たまには別の場所でと提案したこともあるのですが、なじみのお店が好きなのかな。

新房:そんなことはないですよ。でも普段とは違うところに行ったときに、鶏肉の串焼きを食べたことはよく憶えています。

大澤:ああ、新房さんはそれまで焼き鳥を食べませんでしたからね。でも今では、普通に食べるでしょ?

新房:食べる機会があまりないのでなんともですが、一番好きなのは軟骨です。

大澤:意外ですね(笑)。軟骨が大丈夫なら、ほかはなんでも食べられるのでは?

新房:いや、骨は拾ってやるっていうだけですよ。

大澤:あれ……上手いことを言おうとしてます?(笑)

新房:みんな鶏の肉の部分だけ食べて、普通なら骨は残すでしょう? だから自分だけはせめて骨だけは食べてやろうと。そういうことですよ。

大澤:なるほど。ちゃんと筋は通っている……のかな?(笑)

――こういった雑談をされる中で、新しい作品の企画が生まれることもあるのでしょうか。

大澤:さっきも言いましたけど、形にならなかったんですよ。トライして、ある程度まで進んだものもあるのですが……。シャフトで監督をされるようになってからも、企画を進めたことが何度かあって、新房さんから具体的な内容の提案も出てきましたよね。

自分としても「ぜひやりたい」と思う企画を相談されたことがありました。でも現場がうまく組めなくて。良い現場を組まないといけないと考えてしまうので、その分だけハードルが高くなっているのかもしれない。もうちょっと気楽に考えてもいいのかも、ですね。

新房:アニメを企画段階から考えていて感じることは、良いライターさんって本当に大事ですよね。

大澤:たしかに脚本は、作品の最初の設計図だからすごく大事です。まずは脚本の出来で、その後も決まっていくところがあります。

新房:脚本から先は、絵コンテで補うしかなくて、そういったところからズレが出てきてしまうと感じることがあるんです。だからブレない脚本がほしい、でも難しいと感じています。

大澤:そうですよね。脚本は間違いなく重要で、だから難しい。

――お2人は昔からの付き合いで、雑談も仕事の話もされている、公私ともに気が合う大事な関係なんだと感じます。

大澤:いや、喧嘩もしましたよ。この10年間もそうだし、その前も。憶えているのは、ある作品の本読みの後でいつものようにみんなで飲みに行って、その席で「お前とはもう二度と飲まない」って感じになってしまったことがありますよね(笑)。

新房:そのことは、実はあまり憶えていなくて(笑)。

翌週の本読みの後にも一緒に飲みに行きたいと思っていたのですが、大澤さんに予定が入っていたらしく「じゃ先週言った通り今日ぼくは次があるので」と言って席を立ったので、ぼくが「じゃまた来週」大澤さんが「はい。ぜひ!」みたいになったので、周りが「はっ?」となりました。

大澤:ぼくと新房さんは喧嘩した事自体ぜんぜん覚えてなくて(笑)。その翌週は普通に本読みをして、その後も普通にみんなで飲みに行ったという(笑)。周りの方々は喧嘩したのを覚えていて驚いてましたけど。


  

この先につくりたいもの

――10年を経たことで、環境や心持ちでも、なにか自分の中で変化を感じることはありますか。

大澤:若手にどう託すか、ということは考えないといけないですね。全部を全部、自分自身でやらなくてもよいし、任せて育てることも意識しないといけない。そういう思いは、新房さんにもありませんか?

新房:でも難しいところもありますよね。方法というか技術的なところを教えて、若手に託したい気持ちがある一方で、自分自身でやりたいこともまだまだあります。

大澤:なるほど。そういう気持ちもよくわかります。

新房:それに上手く言えないのですが、今の文法じゃない、誰か理解してくれる人がいるのかわからないけど、自分がこうしたいというものを作ってみたいというか。

大澤:いま世の中にないものを、ですか?

新房:いやわからない。実はもう存在していて自分が知らないだけかも知れないのですが、ただそれでも自分がこうしたい、というものを作ってみたいんです。

大澤:それって例えば、どんなものをイメージしてるんですか。

新房:例を言うと……これはきっと自分だけじゃなくみんなが思っていることで、イマジナリーラインを越えたいと考えているんです。

大澤:それは……いいんですか?(笑)

新房:でも、越えたいんです。自分のような年齢になったら、誰でも超えたいと思うんじゃないかな。

大澤:いや、でもイマジナリーラインって越えたら間違い、ミスだって言われるじゃないですか。そういう常識じゃないですか。

新房:その常識を超えたものを作りたいわけです。きっと若手ではできない。なぜなら若手だったら、単純にミスをした、常識がないと言われて終わってしまう。でも自分くらいの年齢なら、わかった上であえてやっていると理解を得られるんじゃないかと。

大澤:だとしても厳しいな。自分の立場では、理解はしますが認められるかどうかというと……。

新房:でもきっとみんな思ってることなんですよ。ただ実際にやってみたとき「ああこんな感じなのか、普通だな……」で終わるかもしれない(笑)。

大澤:そう言えば、シャフトさんの作品ってイマジナリーラインをけっこう無視してますよね。それは結果的にという話ではあるんだけど、「ここはこうしてこうなって」というカットつなぎをせず、目パチを入れる。あの目パチによって、イマジナリーラインを無視したつくりが成立しています。これって、ある種の発明なんじゃないですか。

新房:発明というほどのものではないと思いますけどね。ただ、なにかしら意図やねらいがないと、単に目パチを入れることに抵抗があるんです。普通のアニメの目パチ、要するに瞬きは、人間だから瞬きはするだろうくらいの必要性しかないんです。だからわざとらしく見えてしまって、それが嫌なんです。

でも昔から「カット頭に瞬きするとあとは止め絵でもつ」とも言われているから、それが今現在まで伝わっている。でも、ただ瞬きさせるだけということに自分は違和感がある。だから目だけに寄った、目パチだけのカットを使っているという面もあります。他に、『ef - a tale of memories.』(2007年)では、火村というキャラクターについて、嘘をつくときに瞬きをさせたらどうか、という提案をしました。
 

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広野紘と新藤景は幼馴染の間柄。紘はクリスマスの夜、景のパーティーに呼ばれていたが、ふとしたキッカケで宮村みやこと遭遇し、紘はマイペースなみやこに振り回されるはめに。紘のクラスメイトで映研部員の堤京介はクリスマスの街を撮影中、雑踏の中に少女の姿を見つけカメラを向けるが、つい彼女の姿を撮りそびれてしまう。一方麻生蓮治は駅で新藤千尋と出会う。翌日、そしてその次の日も蓮治は無人駅におもむき千尋と再会するのだが…。作品名ef-ataleofmemories.放送形態TVアニメシリーズef-afairytaleofthetwo.スケジュール2007年10月6日(土)〜2007年12月22日(土)チバテレビ・AT-Xほか話数全12話キャスト宮村みやこ:田口宏子新藤景:岡田純子新藤千尋:やなせなつみ羽山ミズキ:後藤麻衣広野紘:下野紘堤京介:泰勇気麻生蓮治:高城元気雨宮優子:中島裕美子火村夕:遠近孝一久瀬修一:浜田賢二スタッフ原作:minori 鏡遊 御影監督:大沼心監修:新房昭之シリーズ構成・脚本:高山カツヒコキャラクター原案:七尾奈留 2C=がろあキャラクターデザイン・総作画監督:杉山延寛色彩設計:日比野仁美術監督:加藤恵撮影監督:内村祥平編集:関一彦音楽:天門 柳英一郎音響監督:鶴岡陽太エ...


 
テキスト=木澤行人 撮影=清水邦彬
 

▼インタビューの続きとなる“新房昭之が考えるアニメにおける発明”は、こちらの本に掲載!

EGG FIRM 10周年記念本【アニメイト特典付】商品情報

アニメイト通販での購入はこちら

設立10周年を迎えたEGG FIRMがこれまでプロデュースに携わってきた数々の作品。その原作者、イラストレーター、アニメーター、監督などのクリエイターが、本企画のために集結した一冊です。

■表紙イラスト:足立慎吾(『ソードアート・オンライン』『リコリス・リコイル』など)による描き下ろし。

■描き下ろしイラスト:過去のプロデュースタイトルの描き下ろしイラストを多数収録。

■書き下ろし小説・漫画:本誌でしか読めない原作者による合計30ページ以上におよぶ特別編を収録。

■特別インタビュー:声優の松岡禎丞、茅野愛衣、水瀬いのりによる座談会、EGG FIRM代表の大澤信博とストレートエッジ代表の三木一馬(電撃文庫 元編集長)との対談、および、大澤信博と新房昭之(『魔法少女まどかマギカ』『物語シリーズ』など)との居酒屋トークを収録。

その他、寄稿コメントなどを掲載します!

[アニメイト通販 発売日]2026年4月3日
[アニメイト通販 価格]4,400円(税込)

[アニメイト特典]しおり
※特典はなくなり次第終了します。ご了承ください。

[仕様]B5タテ判型/4P+本文118ページ
[素材]
[発売元・販売元]株式会社EGG FIRM

収録タイトル・寄稿者一覧(本誌掲載順)

[描き下ろしイラスト]
■斉木楠雄のΨ難(野田康行・J.C.STAFF)
■スクールガールストライカーズ Animation Channel(小林元)
■UQ HOLDER! ~魔法先生ネギま! 2~(藤井昌宏)
■キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series(黒星紅白)
■ラストピリオド -終わりなき螺旋の物語-(高橋みか)
■ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン(小堺能夫)
■ソードアート・オンライン アリシゼーション(山本由美子)
■えんどろ~!(飯塚晴子)
■ノー・ガンズ・ライフ(筱雅律)
■ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか(木本茂樹・J.C.STAFF)
■神田川JET GIRLS(鳴子ハナハル)
■おばけずかん監督・イワタ ナオミ
■無職転生 ~異世界行ったら本気だす~(齊藤佳子)
■逆転世界ノ電池少女(渡辺明夫)
■劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ-(戸谷賢都・加口大朗)
■処刑少女の生きる道(玉置敬子)
■不徳のギルド(金子ひらく)
■お兄ちゃんはおしまい!(藤井慎吾)
■ワールドダイスター(まじろ)
■山田くんとLv999の恋をする(浅香守生)
■クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。(成海七海)
■ブサメンガチファイター(松元美季)
■瑠璃の宝石(藤井茉由)

[描き下ろし小説・漫画]
■キノの旅 the Beautiful World(時雨沢恵一&黒星紅白)
■ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン(時雨沢恵一&黒星紅白)
■ソードアート・オンライン(川原礫&abec)
■ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか(大森藤ノ)
■無職転生 ~異世界行ったら本気だす~(理不尽な孫の手&シロタカ)
■お兄ちゃんはおしまい!(ねことうふ)
■瑠璃の宝石(渋谷圭一郎)

[寄稿コメント]
■田中将賀
■井上喜久子
■松倉友二
■羽音たらく

関連リンク

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