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『ガンダム サンダーボルト』漫画でも“動き”を楽しめる細かな表現

漫画でも“動き”を楽しめる細かな表現――太田垣康男さんが語る『機動戦士ガンダム サンダーボルト』のセカイ【02】

 2016年3月4日(金)正午より、ガンダムファンクラブにて第3話の先行配信がスタートしたばかりのアニメ『機動戦士ガンダム サンダーボルト』。近年のガンダムファンだけでなく、かつてガンダムファンだった大人をも巻き込む今作の漫画原作者・太田垣康男さんへのインタビュー第2回。今回は、さらに作品制作の内側に迫っていく。『ガンダム』だからこそ待っていた関門。『ガンダム』を漫画化する上での気概。漫画『サンダーボルト』の構成。手描きとCGのバランスなどについてお伺いしました。また、『サンダーボルト』の長期連載によって止まっているアノ作品についても…。太田垣ファンは必見!(全3回/第2回目)

 
 
■ ガンプラ化とアニメ化と会社設立

――今回はアニメ化ということで取材に伺いましたが、その前にガンプラ化もありました。

太田垣康男さん(以下、太田垣):ガンプラについては、最初のうちは担当編集さんと「なったらいいよね」「それが野望だよね」という話はしていました。でも、それはこちらから出来ることではありません。ガンプラの話が来た時は、今まで自分たちがやってきたことがちゃんと評価されたんだという喜びもありました。

かつてガンプラファンだった自分の夢を達成できた感じがあって嬉しかったんですけど、手放しで「やった~!」という物ではなくて、どこかで仕事の上での関門を越えたという冷静な感覚がありました。


――安堵感なんでしょうか?

太田垣:マラソンでいうと、10kmを越えた位の感覚ですかね。



――では、その次に待っていた関門がアニメ化でしょうか。

太田垣:『ガンダム』という作品を描き、人気を得て連載を続けていく先には、ガンプラ化やアニメ化というものが、物凄く順調にいけば出てくる関門ですよね。でも、その前に元々3巻で終わらせる予定だったものを続けることになったのが、20km地点だったと思います。


――当初は何話構成のつもりだったんですか?

太田垣:企画段階では単行本1巻分で終わらせようという話をしていたんですけど、プロットの段階で担当さんに見せたら「これは(1巻では)無理ですね。たぶん2巻にはなるでしょう」「私もそう思います」と(笑)。なので、2巻で終わらせるつもりでスタートしました。

それがエピソードを描き進めていくうちに、アクションシーンにどうしてもコマ数、ページ数をとられることが分かったんです。それが1巻の途中で分かってきて……。評判も良かったので「それじゃあ3巻にしましょうか」と。


――そこは、何かを伸ばしたり足したりしたわけではなく?

太田垣:それはないですね。そもそも映画1本分くらいの感覚でプロットを作ったんです。なので、最初の考えとは若干変わりましたが、3巻の戦闘が終わる位まで(第27話)で映画1本分というのは決めていたので、4巻以降というのは全く別の話を作らないといけなくなったんです。

そこで、凄い悩んだんです。続けるのか、ここでやめるのか。自分の中での、作家としての自己満足を取るなら3巻でやめていた方がいいんです。でも、もうそういう自分だけの作品じゃなくなったという感触もあったので、自分が満足したからもういいやということではなく、これだけ周囲の人達を焚き付けて、たくさんの読者の方にもついていただいて、多くの人に注目していただいている作品なんだから「その人たち、みんなの気持ちが収まるまではやらなきゃ」とは思いました。



――ちなみに現段階で『サンダーボルト』は何巻での構成を考えているんでしょうか?

太田垣:今は、まだわかりません。エピソードによってはページ数が多くなって巻数を重ねてしまうこともあるので、巻数では計れないんです。ただ、最初のガンダムの大きなプロットをなぞってみたいなと思い描いています。アニメにした時に、1年分くらいになりそうな作品になればいいなと(笑)。


――さきほどは3巻で映画1本分と言ってましたが、4クール(約52話)ですか?(笑)。

太田垣:確かに3巻までは映画1本分です。それは映画を作るつもりで構成したからです。しかし、4巻以降は海外ドラマ的なテレビシリーズを作るつもりで構成しています。なので、意識的に群像劇にしています。


――そこで演出も変わってきているんですね。

太田垣:単行本1冊でドラマの1話分、だいたい40分くらいの意識で作っています。


――この先のプロットは、どの程度まで考えられているんですか?

太田垣:大まかな形は考えています。担当編集者さんと3巻以降の話をした時に、アイデアも頂いて、自分の中でも膨らませて。最後までの流れを決めないと見切り発車はできないので、大まかな目標地点は決めて、どんなレールでどんな乗り物を使って行くかはその都度考えていきます。

――というと、まだまだ先は長いですね。

太田垣:長くなりそうですね。


――『サンダーボルト』ファンとして長く楽しめるのは嬉しいのですが、一方で『MOONLIGHT MILE』ファンとしては悩ましいです(笑)。

太田垣:まさかこんなに長くなるとは(笑)。じつは、それも考えて会社「スタジオ・トア」を立ち上げました。自分の作風ってスタッフに凄く画力を求めてしまうので、人数を増やしただけでなんとかなるものではないんです。

人を雇って何年か掛けて育てて戦力にしていかないと、同時連載は不可能。『サンダーボルト』が当分終わりそうもないし終われない、とはいえそれまで『MOONLIGHT MILE』を棚上げするわけにもいかない。それは自分の中でも気持ち悪いので、この2作を同時連載するために会社にしました。まだ、立ち上げて2年経っていないし、スタッフもまだまだなので、彼らが一人前になってくれた暁には、なんとか。読者のみなさまには申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちいただければ。


――それが、スタジオの目標になっているわけですね。同時に我々読者の期待値でもあるので、楽しみに待っています。


■ 1色の世界でアニメに勝つ!

――アニメを観てから漫画を読み直すと、1色しかない世界での漫画の表現力の違いを感じさせられました。

太田垣:自分が漫画を描く時に参考にしているひとつに、モノクロの映画があります。色のない白黒の世界を、画面の美しさをどう表現できるのか。カラー映画の絵作りを学ぶ以前に、黒澤映画とか昔の映画をいっぱい見て学んだことがあります。だからこそ、逆に漫画のハイコントラストで作った世界をカラーに変えるアニメスタッフの技術力の高さや、培ってきた能力の違いをまざまざと感じます。


――漫画からアニメ、アニメから漫画とどちらから入っても何かしら、表現の違い、面白さの違いに気づけると思います。

太田垣:漫画を読んでいなかった方が、今回のアニメ化で漫画の『サンダーボルト』も読んでいただけると嬉しいですね。


――漫画しかできないこと、アニメだからできることってありますね。

太田垣:漫画の中で、ロボットアクションものはハードルが高いと言われています。その理由は、アニメーションで動くロボットアクションを見慣れているファンからすると、漫画ではみんな止まっているように見える「だから面白くない」っておっしゃるんです。でも、そう思っている方は是非、漫画版の『サンダーボルト』を手にして欲しいです。ちゃんと漫画の中で動いていますから(笑)。


――ファンの中には「漫画とアニメでどっちが面白いか?」という方もいますが、制作サイドとしては、どちらも勝つ気で作っていますよね(笑)。

太田垣:そうですね。今作でもアニメサイドの負けん気の強さはひしひしと感じています。「俺たちゃ本気だぜ」って(笑)。正直、漫画の方は最初に40代男性というターゲットを設定したので、その層の方たちには読んでいただけていると思いますが、もっと若い世代の方にとっては少々入りにくい作品になっているかもしれません。ダリルにせよイオにせよ感情移入はしにくいと思います。感情が分かりにくく描いているので……。

なので、アニメーションで声優さんのセリフや動く映像を観て補完してくれれば、よりスムーズに漫画を読めると思います。声優さんが声を当ててくれるとそれだけでシンパシーを感じる方もいますし、そういう面で、アニメから入ってキャラクターへ思いを巡らせてくれると嬉しいです。


――ちなみに漫画を描く上で手描きのほか、CGの技術を使っていたりするのでしょうか?

太田垣:使っています。人型の部分は全部手描きです。ただ、装備品…盾とかバックパックなどに関しては3Dモデルを作ってレンダリングをして、手描き風にレタッチをしています。どれだけ手描き感を残せるかが、今作のテーマでもあるんです。とはいえ、これだけ細いデザインになると作画の全てを下書きから手描きでやっていくのは物理的に不可能です。


――手描きに拘っている作風だからこそ、アニメでも手描きにしてくれたのは嬉しいですね。

太田垣:はい。ああいう揺らぎみたいなものがロボットアニメの一番の魅力だったと思うので、自分もCGを使ってサポートはしてもらっていますが、CGで出来たものに私は満足はしていないんです。素材としてはいいんですけど、味がない。

面白くないんですよね。玉ねぎにしろ大根にしろ、丸かじりしても美味しくないじゃないですか(笑)。素材は良くてもそこにどういう味付けをしてお客さんに提供するかが、大切な腕の見せ所だと思うんです。それをせずに「素材がいいでしょう」と野菜サラダを出されても…。もちろんCGアニメでもいいんです。けど、その人じゃないと作れないモノ、この人の味だよねっていうところまで持ち上げた作品でないと。


――シェフの顔が見える料理ですね。

太田垣:それが好きだからリピーターが大勢来る、そんな漫画を目指したいなと思っています。

[インタビュー&文・小林治/撮影・アニメイトTV編集部]


■アニメ『機動戦士ガンダム サンダーボルト』

【配信情報】
第1話:配信中
 セル版 500円(税別)/第1話(約18分)+特典映像(約18分)
 レンタル版 250円(税別)/第1話(約18分)

第2話:配信中
 セル版 800円(税別)/第2話(約18分)+特典映像
 レンタル版 400円(税別)/第2話(約18分)

【スタッフ】
原作:矢立肇・富野由悠季(「機動戦士ガンダム」より)
漫画原作・デザイン:太田垣康男
監督・脚本:松尾衡
アニメーションキャラクターデザイン:高谷浩利
モビルスーツ原案:大河原邦男
アニメーションメカニカルデザイン:仲盛文、中谷誠一、カトキハジメ
美術監督:中村豪希
色彩設計:すずきたかこ
CGディレクター:藤江智洋
モニターデザイン:青木隆
撮影監督:脇顯太朗
編集:今井大介
音楽:菊地成孔
音響監督:木村絵理子
音響効果:西村睦弘
制作:サンライズ

【キャスト】
イオ・フレミング:中村悠一
ダリル・ローレンツ:木村良平
クローディア・ペール:行成とあ
カーラ・ミッチャム:大原さやか
コーネリアス・カカ:平川大輔
グラハム:咲野俊介
バロウズ:佐々木睦
J・J・セクストン:土田大
 他


>>太田垣康男Twitterアカウント(@ohtagakiyasuo)
>>アニメ『機動戦士ガンダム サンダーボルト』公式サイト
>>アニメ『機動戦士ガンダム サンダーボルト』公式Twitter(@ gundam_tb)

(C)創通・サンライズ
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