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悠木碧さんが『まどかマギカ』に出会って学んだこと

悠木碧さんがまどかに出会って学んだこと──『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』AbemaTV独占日本初配信記念インタビュー

 時を遡ること2011年。約6年前に放送された『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、まどかマギカ)は、当時のアニメ観を覆しました。キュートなビジュアルとは裏腹に作り込まれたダークなストーリーと衝撃の展開の数々は、多くのアニメファンを虜にし、今なお様々な話題に事欠きません。

 アニメ放送後の爆発的な人気と、現在にも受け継がれる人気。その体現者である主人公・鹿目まどかを演じた悠木碧さんは、あの時を振り返ってどう思うのでしょうか?

 この度、AbemaTV開局1周年を記念して2017年4月16日に『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』が独占配信されることが決定。ネット初配信となる今回のタイミングに合わせ、悠木さんにインタビューを行うことができました。今だから語れる、『まどかマギカ』とまどかへの思いに迫ります。

目次

悠木さんが分析、ヒットの理由は?
──『まどかマギカ』はTVシリーズの放送が、6年前になります。当時の人気を今振り返ってみてどう思いますか?

鹿目まどか役・悠木碧さん(以下、悠木):いろんなことが重なって注目していただいたなと、今では思います。当時、私はまだ十代で、右も左もわからぬ状況で、とにかく一生懸命に演じていました。そのような作品が、多くの方にこうして長く愛されていることは嬉しいですね。


──「この作品、すごいな」と思いだしたのは大体いつくらいからでしょうか?

悠木:オーディションの段階でいただいた資料があって、その段階から「これ、きっとすごく多くの人が楽しんでくれるぞ」って思っていました。まさかその「すごく多くの」がこんなに大規模だとは思わなくて。漠然とすごく面白くて、「とても新しいものができるぞ」という思いは当時から思ってました。


──作品がここまで長く愛されることに対してどう思いましたか?

悠木:いろいろなところで言わせていただいていますが、「一つ一つの仕事を手を抜かずにやっていてよかった」と本当に思います。長く愛される作品は、アニメ放送後にも多くの人が見てくださいます。どの作品も手を抜かずにやっていれば、後々に見た人にも思いが届くんです。だからこそ、『まどかマギカ』にも真面目に取り組んで良かったなと、すごく感じています。

『まどかマギカ』には、あの時の私の全力がちゃんと残っているので、それを今でも愛していただけてるのは、本当に嬉しいですよね。その時の全力は、今から見ればつたない部分もすごく多かったと思いますし、今もつたない部分はあると思うんですけど……。

それに、今振り返ってみれば、作品全体を見ても天才たちが作っている作品だったんだなと思います。それがここまで長く、いろんなものに展開できる作品になった理由なんじゃないかなと思います。

──どういった部分に天才を感じましたか?

悠木:考えさせられるストーリーということだけじゃなく、まず視聴者のみなさんに一度、この作品への固定イメージを付けるところから入った宣伝方法もすごく秀逸だったなと思います。

アニメ好きな日本人だったら、『まどかマギカ』というタイトルで、ピンクの女の子が出てきたら、「次はこういうのが出てくるんだろう?」って思ってしまう“魔法少女に対するイメージ”が刷り込まれていますよね。そのイメージをぶち壊していくところから始めるのは、すごく頭がいいなぁと驚きました。

ストーリーがとても分かりやすかったのもポイントです。「少女たちの心情に描写を絞ってたからこそ、心情を複雑に描けた」ということも、すごくセンスが必要な取捨選択だと思います。このストーリーに蒼樹うめ先生のキャラクターデザインなのも秀逸ですよね。

個人的に驚いたことと言えば、『まどかマギカ』って意外と硬派なところなんです。昨今の作品は、キャラクターソングがたくさん出たり、イベントをいっぱいやったりして、バラエティな部分を楽しめるものが多いんですけど、『魔法少女まどか☆マギカ』って基本的には作品(物語)がメインなんです。

『まどかマギカ』に限っては、そういった展開が、私も含めたファンが望んでいるものだし、ファンの欲しいものに沿って作り手が自分たちのやりたいことを提示しているんです。そのバランス感覚に優れた方たちが作ってるんだなって感じながら作品に関わってました。


──なるほど……。悠木さんは、そこまで考えて作品に関わっていたんですね。

悠木:どうなんですかね(笑)。やっぱりどの作品も多くの人に愛されたらいいなと思って私も関わらせていただいていますが、じゃあ何が『まどかマギカ』は違ったのかなって、いつも考えているのはあります。


──確かに『まどかマギカ』は何かが違いました。しかし、それは何なのでしょうか?

悠木:先程も言ったバランス感覚だと思います。すごくバランス感覚に長けた方がすべてを見ていたから。ストーリーのシリアス度合い、キャラクターデザイン、そしてキャストの起用の仕方。正直、これが「ブリブリの魔法少女ものだよ」と言われても通るキャスティングで組まれているんですよ。

そういうことも含め、すごく考えられてるなと思ったし、視聴者を驚かせる展開が一回じゃない。大どんでん返しが小刻みに、視聴者が飽きないタイミングで来るんです。もちろんストーリー上でもそうだし、絵作りもそうだし、お芝居もそうだし、メディア展開もそう。

全てのバランスが本当によかったんだと思うんです。今まで誰かがやった題材だと言われたら、あった題材だと思うんです。魔法少女ものだし。ただ、料理の仕方がすごく天才的だったんだろうなと思います。

まどかを演じたからこそわかったこと
──もう一点、気になることがあるのですが、これだけ長く同じ役を演じるというのはどういう感覚なのでしょうか? 僕らには感じられない感覚だと思いますが。

悠木:おかげさまで、まどかは多くの方にとても愛されているキャラクターです。でも、まどかは、『まどかマギカ』のキャラクターたちの中でも特に色の薄いキャラクターなんです。キャラクター性として、普通であるということが彼女の個性なので、『まどかマギカ』を見るひとりひとりの中での“まどか像”が違うんですよ。

例えば、劇場版の『[前編] 始まりの物語』と『[後編] 永遠の物語』から入った方、アプリから入った方、ゲームから入った方、それぞれのまどかに対する印象が違うんです。それに、まどかは時系列を何度も行ったり来たりします。

でも、作品の中では、とても象徴的なキャラクターとして扱われるので、そこが難しいなと思います。みんなの思っている“まどか像”が違う中で演じるのはすごく難しいんです。みんなの理想としているまどかが、どこなのかが分からなくなったこともありますし、そこは未だに模索していて……。とにかくたくさんの人に愛されるキャラクターなので、長く演じていてもすごく緊張しますね。


──その正解の糸口みたいなものは掴めているのでしょうか?

悠木:私がいつもボイスチューニングする時に「最もまどからしいセリフっていうのを言ってみて」と言われたときにいつも言うセリフがあるんです。それは、みんなが思う「こんなの絶対におかしいよ」というセリフではなくて、「ほむらちゃん(暁美ほむら、CV:斎藤千和さん)」って呼ぶセリフなんです。とりあえず「ほむらちゃん」って呼ぶと、私の中にまどかが戻ってくる気がするというか……。ちょっとテンションを上げるチューニングをするときは「さやかちゃん(美樹さやか、CV:喜多村英梨さん)」って言うんですけどね。

まどかはいろんなことを自分の中で自問自答したりもするけど、最も多かったのが「友達の名前を呼ぶこと」だと思います。だから、そこでチューニングをしています。ただ、もちろんみなさんの中にいるまどかが、音の話だけでは決してないと思ってはいて……。

演じる上でのメンタルの部分に関しては、一緒に録れるときだったらほかのキャストの先輩方に頼ってみたりしています。あとは私の思う「まどかの素敵なところ」が出せたらいいのかなって。少なくとも、私ひとりが好きだと思っているまどかであれば、それはひとりにとっての正解ではあると思うので、自分のものになりすぎないように気をつけながらまどかに寄り添えたらいいのかなと思ってます。

──みんなの好きなまどかの中心に、悠木さんの好きなまどかがいるからこそ、これだけ愛されている気もします。

悠木:そうだったら嬉しいですね。まどかは主人公だから、見てる方が自分を投影できるポジションでもあると思うんです。だから、色付けをあまり強くしてはいけないとも思っています。

まどかはすごく魅力的な子で、誰にも害がないところも、みんなが可愛いなと思うポイントになっていると思います。作中のキャラクターはみんなまどかのことが大好きなんです。でも、逆に言うとまどかのいいところって、害がないっていうところの一点なんです(笑)。だから、みんなまどかを守ってあげたいと思う。その害がないからこその正義感というのは、現代だからこその正義だなと私は思っています(笑)。これは私の意見ですけどね。

今の意見もごく一部で、まどかを愛してくれるみなさんそれぞれの中に、好きなまどかがいてくれたらいいなって思っています。まどかは、みなさんに育てていただいたキャラクターですから。


──特に『まどかマギカ』は、悠木碧さんにとっても人生を変えた作品であると思います。本作に出会ってご自身の中でいちばん変わったことは何ですか?

悠木:まさに今話したことで、「キャラクターは私のものではない」ということに気づいたことです。役者さんによっていろんなお考えが有るとは思うんですが、身もふたもない言い方をすると、あくまでキャラクターは作品のものなんです(笑)。

一同:(笑)。


──そう言われてしまえばそうですね(笑)。

悠木:例えば、ある作品でまどかの恋愛シーンが出てきたり、本編を忘れて明るく話しているストーリーが出てきたら、私はそういうまどかを演出しないといけません。でも、それがまどかを愛している人のもとに届いたときに、いかにその違和感や誤差をなくせるか、ifの世界観をいかに愛してもらえるかが、私がいる理由でもあります。その橋渡しは、声優としてできなくてはいけないことだと思っています。

もちろん「こんなのまどかじゃありません!」って戦うこともできるんですけど、それって逆にまどかの可能性をすごく狭めてしまうと思うんです。これだけ愛されているからこそ、まどかの新しいチャンスを披露できるし、いろんなまどかをみなさんに見てほしい。そういうふうに考えられるようになったのは、『まどかマギカ』でいろんなチャレンジをもらったからなのかなと思います。


──キャラクターの可能性を広げてるっていうのは大事な考えですね。

悠木:「僕、こういうまどかが好きかも」という選択肢がみなさんの中で広がれば、それは嬉しいことですよね。私の好きなまどかから好きが広がって、よりみなさんにまどかを愛していただきたいです。

私は、まどかを演じたからこそ、ほかのキャラクターを演じる時にもそう思えるようになりました。意固地にこだわるよりは、キャラクターの世界を広げてあげる方が、キャラクターのためになるんだなって考えられるようになりました。どの子たちも、演じちゃうと可愛くてしょうがなくなっちゃうので、箱入り娘にしたくなるんですけど……(笑)。可愛い子には、ちゃんと旅をさせてあげなきゃいけませんね。

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(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project Rebellion
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