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映画『サイコパスSS』関智一×塩谷直義監督インタビュー

映画『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』関智一×塩谷直義監督インタビュー

1月25日から劇場版3部作が連続公開となる映画『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』。アニメイトタイムズでは本作の上映開始を記念し、狡噛慎也役を演じる関智一さんと、作品を手掛ける塩谷直義監督にインタビューを実施。

『PSYCHO-PASS サイコパス』の世界観を作り上げてきたお二人に、TVシリーズ制作時からの裏話や狡噛慎也というキャラクターの存在について語っていただきました。

「自分で決めて引き金を引く」という面では何も変わっていない(関)

ーーTVシリーズ、劇場版(2015年)から約4年が経過していますが、関さんは今回改めて作品を振り返られていかがでしたか?

関智一:この作品の何が面白いかは一言では言い表せないんですけど、大きな要素として「心理的なもの(犯罪係数)を数値化して表せる」というドミネーターのアイデアから始まっていて。

『ドラゴンボール』の戦闘力を数値化できるスカウターのようなところに男の子心をくすぐられるというか、ガシッと鷲掴みにされました。

あとは“予言の書”を読んでいるようなストーリーですね。TVシリーズの第一期が終わってから世の流れを見ていると「このアニメは政府に操作されて作られているのでは…」と思えて。

塩谷直義:そうしたらもうちょっと予算があると思います(笑)。ただ、スタート当時から今もずっと脚本チームとは何が今起きているのか話をします。そこから物語の重要な鍵が生まれる事はよくありますね。

:そのくらい先見性がある作品で、それを人間ドラマと絡めながら自然と見せられて。これから生きていく中で『PSYCHO-PASS サイコパス』を振り返るとヒントになることがあって、今後100年間のバイブル的アニメになるんじゃないかと踏んでいます。

オーディションの時から「何か関わりたい」と思える魅力的なコンテンツだったので、役が決まったことも嬉しかったです。

ーーこれまで狡噛慎也を演じてこられて、彼をどのように捉えていますか?

:シリーズは2012年の第一期から続いていますが、狡噛は何かが大きく変わったというわけではなく、一本の信念を貫き通しているという感じで。

彼の葛藤や悩みも描かれてはいますが、「自分で決めて引き金を引く」という面では何も変わっていないなと。そういう芯の強さは僕にないところなので。

僕は人の顔色を見て優柔不断に世渡りをするタイプなので、そこに憧れるし、かっこいいなと思います。

ーー塩谷監督にとって狡噛慎也はどのようなキャラクターでしょうか。

塩谷:狡噛は自分にとっての“ヒーロー”だと思います。彼は“前を歩いている人”というイメージがあるんですよ。

これは僕がTVシリーズ第一期を制作していた時に、常守朱の立ち位置で作っているということも大きく影響しているんですけど、“追いかける存在”みたいな。

彼の生き方は真似できないじゃないですか。自分の芯を揺るぎなく持っていて、全部自己責任で危ない橋を渡るという。あれを現実でやろうとしたら相当な覚悟がいる。全てを失ったとしても突き進む決断ができる、そんな狡噛に僕は憧れをもっています。だからこそ、彼に向き合う時はそれ相応の緊張感を持って描こうと自分にプレッシャーをかけます。

制作中は「何が彼をそんなに奮い立たせるのか?」「何を望んでいるのか?」をずっと考えています。彼の背中を見て“前を歩いている人”だと思うのは、常守朱からの視点でもあり、お客さんの視点でもあるのかなと個人的に思っていて。その彼に僕が会いに行き、「今までのように前を歩く彼を追うのではなく、同じ視点で向き合いたい」と思ったお話『Case.3』が今回作る動機でもありました。

ーー関さんがTVシリーズで特に印象に残っているエピソードを教えてください。

:第1話から印象に残っていますね。冒頭のシーンが中盤にシンクロするような構成になっているのは、インパクトもあるし、見ているうちにつながっていく面白さもあって。まんまと作劇にやられました。

優れたシステムに操られるのか、自分の判断に責任を持つことで得られる自由の良さと引き換えにそのリスクを負うか。その狭間で狡噛が袂を分かつシーンがドラマチックに描かれていて印象に残っています。

ーー監督の中でTVシリーズ制作時に意識されていたことはありますか?

塩谷:TVシリーズ第一期の1話は、狡噛慎也と常守朱が主人公のお話なんですけど、最初に世界観をお客さんに浸透させるため、ドミネーターが初めに登場するんですよ。それが主人公である狡噛を撃つわけなので。

その話が作れたことで、『PSYCHO-PASS サイコパス』というSF作品のオリジナリティを描くことができて。そこから登場人物たちにカメラをゆっくり向けていって、狡噛が旅立つまでを描けたんです。

この作品は「サイコパス」や「犯罪係数」や「ドミネーター」など聞いたことのないワードが多いじゃないですか。そういうものがスッと入らないとドラマを描く上でのブレーキになってしまうので、そこは気を使いましたね。

ーーこの作品を通して「PSYCHO-PASS サイコパス」という単語が世に浸透した感じがありますよね。

塩谷:放送開始前、「サイコパス」と検索したことがあったんですけど、当然あまり出てこなかったんです。もちろん違う意味での言葉は検索できますが、アニメはほとんど無かった。

放送が始まって、1クール目から2クール目にかけてお客さんに面白いと思って頂けたタイミングで徐々に「サイコパス」という単語が世の中に浸透していった感じがしました。。今では、iPhoneで文字入力する時に、予測変換で「PSYCHO-PASS」が出てきます。これは本当に嬉しかったですね。

このままの状態で『PSYCHO-PASS サイコパス』の続編を制作していった場合、狡噛がいないと“嘘”をついているように思えてきて。(塩谷)

ーー久しぶりの『PSYCHO-PASS サイコパス』のアフレコ現場だったかと思いますが、雰囲気はいかがでしたか?

:アフレコ現場は我々キャスト陣は和気あいあいとした感じでしたけど、監督からはピリッとした一抹の怖さのようなものを感じました。

塩谷:『PSYCHO-PASS サイコパス』のアフレコは大体1日で収録しています。その日が勝負ですからね。時間をかけて映像制作している分、求めているイメージが大きかったので。キャストの皆さんがどういうふうにイメージしてくださっているのかが気になって。

:監督とは事前に制作に関するお話をする時間もあって。

塩谷:関さんのことは狡噛慎也だと思っているので、相談しようと。

:「セリフこうしようと思うんですけど、どう思いますか?」とか。一緒に作品作りに関わらせて頂いている感じがして嬉しかったです。

ーーお互いに信頼されているんですね。関さんから見て、塩谷監督はどのような印象ですか?

:いまだにわからないです。この普段会っている監督は“よそ行きの姿”じゃないですか。要は今は監督をしていないわけですよ。今はニコニコした優しい人ですけど、「やっかいな怖い監督」という噂も聞きますから(笑)。

塩谷:(笑)。

:我々キャストは監督の“作品をこだわって作っている姿”を見ていないですから。そういう意味では「犯罪係数」を測定してみたいですよね。若いアニメーターたちをどのように可愛がっているのかとか(笑)。

塩谷:気をつけてください!最近のそういう危ないワードを使うの!(笑)

:実際に最前線で作品作りをしているお姿を見ていなくて、半分遊んでいる時にしか会っていないので、僕にとっては優しくて面白い監督ですね。

ーー(笑)。今回の劇場版3作品は狡噛を含め5人のキャラクターにスポットが当たっていますが、この5人を主役に選んだ理由を教えてください。

塩谷:まず狡噛についてはわかりやすく、もう『PSYCHO-PASS サイコパス』では描きにくいんですよ。日本にはいないし、ドミネーターも持てない。シビュラシステムとは関係のない位置にいますから。

今回の新プロジェクトの話がプロデューサーサイドから来た時、このままの状態で『PSYCHO-PASS サイコパス』の続編を制作していった場合、狡噛がいないと“嘘”をついているように思えてきて。そこが上手くはまっていないなと思っていたんです。

今回の『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』という括りで、より人にスポットを当てたドラマのエピソードとして描くのに狡噛は間違いないというか。ここでしか描けないお話だなと思って彼を主人公にした物語を作りました。

ーーなるほど。一方で「霜月・宜野座」、「須郷・征陸」については少し意外な組み合わせですよね。

塩谷:「霜月・宜野座」という組み合わせは、僕は二人を似た境遇の持ち主だと捉えています。だから今回、この二人から物語をスタートさせたかったというのがあって。

「霜月・宜野座」編は『PSYCHO-PASS サイコパス』らしい事件を描く。「狡噛」編は前回の劇場版のその後を描く。なんとなくエピソードのイメージが湧きますよね?そうすると捻ったものを作りたくなるじゃないですか。

そこで「須郷・征陸」という組み合わせは、時間軸も、刑事になったタイミングも違うので絶対に内容を想像できないと思ったんです。

さらに須郷のバックグラウンドにCase.2のような物語があることで、彼が刑事である理由がしっくりくるなと。“絶対にお客さんがこの映画を観るまで予想がつかないもの”として制作しました。しかも、三作全て予想もつかない異なる展開を用意しています。

ーー確かに須郷はTVシリーズ第二期でもあまり過去について触れられていませんでしたね。

塩谷:「霜月・宜野座」と「狡噛」というドラマと比較すると「須郷・征陸」の組み合わせは地味だと思われるかもしれませんが、この2本があるからこそ作れる、また違う立ち位置から描きたかったお話です。

“このタイミングでしか描けない二人”ですね。

:でも「須郷・征陸」編の内容は派手ですよね。軍事的なところから物語が展開されていて。

塩谷:「須郷・征陸」編には“花城フレデリカ”というキャラクターが新登場して、「狡噛」編にも出てくるという流れにもなっていて。どうなるのか楽しみにしていただきたいですね。

ーー狡噛が主人公の『恩讐の彼方に__』では彼のどんな姿が描かれるのですか?

塩谷:ちょっとした事ですが、狡噛が手料理を作っていましたね。

:そうですね。何も変わらない狡噛がそこにはいるんですけど、環境が変わって、狡噛のこの先を決める何らかの出来事が起こり、少女と出会います。

狡噛が少女の願いを叶えるために色々な手段を講じていって、それが結果的に今後の何かに大きく関わってくるような。

この3つのお話が全て違う時間軸・場所での出来事なんですけど、上手く全部が噛み合っていくという仕掛けになっていて。もしかしたら、大いなる何かが神に届くと、この先また新しい流れが生まれてくるかもしれません。

ーー最後に『PSYCHO-PASS サイコパス』ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

塩谷:今回の3作品があることで、その先の大きな流れを生み、また何かが起きるかもしれないという作り方をしています。

:プロジェクトの扉を開く鍵みたいな3作品ですよね。

塩谷:ぜひ劇場でご覧ください!

ーー素敵なお話をありがとうございました!

インタビュー・文:吉野庫之介  撮影:鳥谷部宏平

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映画『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰』野島健児×佐倉綾音インタビュー

『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』とは

正義は、歪んだ世界を照らす。

人間の心理状態を数値化し管理する近未来。犯罪に関する数値〈犯罪係数〉を測定する銃〈ドミネーター〉を持つ刑事たちは、犯罪を犯す前の〈潜在犯〉を追う。

2012年にスタートしたオリジナルTVアニメーション作品『PSYCHO-PASS サイコパス』は、2014年にTVアニメ第二期を放送、2015年に劇場版アニメを公開し、その世界観を広げてきた。

そして2019年――劇場版アニメ三部作としてその物語が動き始める。

これまでのシリーズと劇場版に参加したスタッフが再結集。塩谷直義が監督を務め、アニメーション制作はProduction I.Gが担当する。

Case.1の脚本は、『PSYCHO-PASS サイコパス』ノベライズ「PSYCHO-PASS ASYLUM/GENESIS」を執筆した吉上亮が担当。Case.2とCase.3の脚本を、TVアニメ第一期、劇場版の脚本を手掛けた深見真が担うことになった。

3つの物語の舞台は約100年後の日本とアジア――その現在、過去、未来に起きる事件が語られる。事件に立ち向かうのは、規定値を超えた〈犯罪係数〉を計測された〈執行官〉たちと〈シビュラシステム〉が適性を見出したエリート刑事〈監視官〉たち。

犯罪を未然に防ぐために必要なものは、猟犬の本能か、狩人の知性か。事件は思わぬ事実を明らかにし、世界のあり方を映し出す。

これまで語られていなかった『PSYCHO-PASS サイコパス』のミッシングリンクがついに紐解かれる。

PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰

2019年1月25日(金)より公開

■ストーリー
「今回は、私の事件ってことでいいですよね、センパイ」2117年冬、公安局ビルに一台の暴走車両が突入する事件が発生。その運転手は青森にある潜在犯隔離施設 〈サンクチュアリ〉の心理カウンセラー・夜坂泉だった。しかし取調べ直前に夜坂の即時送還が決定する。監視官の霜月美佳は、執行官・宜野座伸元らとともに夜坂送還のため青森へ向かう。そこで待っていたのは、〈偽りの楽園〉だった。

■キャスト
宜野座伸元:野島健児
霜月美佳:佐倉綾音
夜坂泉:弓場沙織
久々利武弥:平井祥恵
辻飼羌香:岡寛恵
松来ロジオン:小山力也
玄沢愛子:斉藤貴美子
能登耕二:多田野曜平
烏間明:中川慶一
常守朱:花澤香菜
須郷徹平:東地宏樹
雛河翔:櫻井孝宏
六合塚弥生:伊藤静
唐之杜志恩:沢城みゆき

■スタッフ
SSストーリー原案・監督:塩谷直義
脚本:吉上亮
総作画監督:中村悟
作画監督:新野量太、古川良太、鈴木俊二、森田史、中村悟、諸貫哲朗
演出:黒川智之、下司泰弘
撮影監督:荒井栄児
3D:サブリメイション
色彩設計:上野詠美子
美術監督:草森秀一
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
キャラクターデザイン:恩田尚之、浅野恭司、阿部恒
シリーズ原案:虚淵玄
キャラクター原案:天野明
アニメーション制作:Production I.G
配給:東宝映像事業部

PSYCHO-PASS サイコパスSinners of the System Case.2 First Guardian

2019年2月15日(金)より公開

■ストーリー
「『フットスタンプ作戦』……あそこで、本当はいったいなにがあったんですか!」常守朱が公安局刑事課一係に配属される前の2112年夏、沖縄。国防軍第15統合任務部隊に所属する須郷徹平は、優秀なパイロットとして軍事作戦に参加していた。三ヶ月後、無人の武装ドローンが東京・国防省を攻撃する事件が発生する。事件調査のため、国防軍基地を訪れた刑事課一係執行官・征陸智己は、須郷とともに事件の真相に迫る。

■キャスト
須郷徹平:東地宏樹
征陸智己:有本欽隆
青柳璃彩:浅野真澄
大友逸樹:てらそままさき
大友燐:大原さやか
狡噛慎也:関智一
宜野座伸元:野島健児
縢秀星:石田彰
六合塚弥生:伊藤静
唐之杜志恩:沢城みゆき
花城フレデリカ:本田貴子
常守朱:花澤香菜
霜月美佳:佐倉綾音

■スタッフ
SSストーリー原案・監督:塩谷直義
脚本:深見真
総作画監督:阿部恒
作画監督:中村深雪、古川良太、阿部恒、諸貫哲朗
演出:下司泰弘
撮影監督:荒井栄児
3D:I.G3D
色彩設計:上野詠美子
美術監督:草森秀一
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
キャラクターデザイン:恩田尚之、浅野恭司、青木康浩
シリーズ原案:虚淵玄
キャラクター原案:天野明
アニメーション制作:Production I.G
配給:東宝映像事業部

PSYCHO-PASS サイコパスSinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__

2019年3月8日(金)より公開

■ストーリー
「わたしの、先生になってもらえませんか」2116年に起きた東南アジア連合・SEAUnでの事件後、狡噛慎也は放浪の旅を続けていた。南アジアの小国で、狡噛は武装ゲリラに襲われている難民を乗せたバスを救う。その中には、テンジンと名乗るひとりの少女がいた。かたき討ちのために戦い方を学びたいと狡噛に懇願するテンジン。出口のない世界の縁辺で、復讐を望む少女と復讐を終えた男が見届ける、この世界の様相とは…。

■キャスト
狡噛慎也:関智一
テンジン・ワンチュク:諸星すみれ
花城フレデリカ:本田貴子
キンレイ・ドルジ:志村知幸
ギレルモ・ガルシア:磯部勉
ツェリン・グルン:高木渉
ジャン=マルセル・ベルモンド:鶴岡聡

■スタッフ
SSストーリー原案・監督:塩谷直義
脚本:深見真
総作画監督:恩田尚之、阿部恒、中村悟
作画監督:中村深雪、古川良太、竹内知海、古川尚哉、市川美帆、黄瀬和哉、阿部恒、諸貫哲朗、新野量太、中村悟
演出:河野利幸、遠藤広隆
撮影監督:荒井栄児
3D:サブリメイション
色彩設計:上野詠美子
美術監督:草森秀一
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
キャラクターデザイン:恩田尚之、浅野恭司、阿部恒
シリーズ原案:虚淵玄
キャラクター原案:天野明
アニメーション制作:Production I.G
配給:東宝映像事業部

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(C)サイコパス製作委員会

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