冬アニメ『REVENGER』監督・藤森雅也さん×脚本・虚淵玄さんが語るヒリヒリするような時代劇、制作の裏側/インタビュー|「時代劇はミスマッチとの勝負」海外の人も楽しんでもらえる活劇に——
ニトロプラスと亜細亜堂と松竹によるオリジナルアニメ『REVENGER』(リベンジャー)が、2023年1月5日よりTOKYO MXほかにて放送中!
本作は、残酷な運命に抗うために人を斬る、5人の殺し屋たちのダークヒーローアクション史劇です。今回、藤森雅也監督とストーリー原案・シリーズ構成のニトロプラス虚淵玄さんにインタビューを実施しました。
どこか異国を感じさせる江戸時代の長崎を舞台にした『REVENGER』。その世界観はどのように作られたのか、時代劇を題材にした本作のこだわりについて伺いました。
いろいろな要素を取り入れた架空の長崎
——最初に、オリジナルアニメ『REVENGER』を制作するまでの経緯を教えてください。
藤森雅也監督(以下、藤森):松竹さんから「昔のヒリヒリするような時代劇がやりたい」とお話をいただいたのが最初のきっかけです。詳しくお話を伺うと、なかなかアニメではやれないようなことをやれそうだなというところがあったので、引き受けさせていただきました。
じゃあ誰に脚本を書いてもらったら良いのかな?と思った矢先、こういう話は虚淵さんが好きそうだと松竹さんから提案があり、一度ダメ元で虚淵さんにお願いできないか打診させていただいた感じです。
虚淵:そうですね。割と今馴染みのない昔のフィルムで撮っていた頃の時代劇というか、やるせない人情物を描きたいとお話をいただきました。
お話をいただいた当時のご時世もあって暗いテーマの作品は結構多かったんですけど、このタイミングでやったら一周回って新しく見えるかもなという思惑もあり、ピカレスクロマンみたいな話にできないかと企画を練っていった感じです。
——私たちが知っている江戸時代ではないような世界が本作の魅力でもありますが、この設定にしたのは何か理由があるのでしょうか。
虚淵:やっぱりせっかく作るなら海外向けにも展開していきたい部分もありましたし、杓子定規に時代背景を整えた時代劇にするよりは、ちょっと架空の歴史が入った異国情緒のあるものにしたいという気持ちもありました。
時代劇といえば江戸ですけど、敢えてズラしませんかということで長崎が出てきたんです。山の中の街というか、当時の出島よりも派手にしたり、悪魔城みたいな建物にしたり、そういうアイデアのお遊びをやりながらこの世界観ができていきました。
——個人的に長崎で暮らしていた時期があったので、なぜ長崎にしたのか気になっていました。
藤森:叱られる(笑)。
一同:(笑)。
——懐かしさを感じながら見させていただいております(笑)。
虚淵:長崎には僕以外の皆さんが一度ロケハンに行ったきりなんです。
藤森:一度も長崎には行ったことがなかったので、舞台となる街を見ておこうと。
虚淵:ロケハンの下見のつもりだったと伺ってます。
藤森:そうですね。そしたらコロナ渦で動けなくなってしまって……。なので、ある意味『REVENGER』の世界は想像の長崎です。参考の写真をたくさん集めて、そこから描いたりしていました。
今回は殺し屋のチームが復讐代行をする話で、最初は長崎の当時の人口と同じ設定にしていたんです。でも、長崎にも昔はこういうチームがあったという話を聞き「長崎って当時の人口は4万人ぐらいなのに、たくさんの殺し屋がいるのはどういう状況なんだろう」と思い立って人口を増やしました(笑)。
虚淵:それで生まれたのがスラム街です。
藤森:山の上にスラム街ができて、日本人だけじゃなくいろいろな人たちがギッシリと集まる場所になり、そうして架空の長崎が出来上がりました。
——また、ダークヒーローアクション史劇ということで、作中のアクションシーンも迫力満載です。テクノロジーを感じる武器やアクションシーンは、どこからアイデアが出てきたのでしょうか。
藤森:雷蔵のスパイクシューズは虚淵さんが最初から考えていましたよね。
虚淵:そうですね。めちゃくちゃな感じが欲しくてスパイクシューズを履かせました。
藤森:示現流の達人がスパイクシューズを履いていたらきっとすごいよねって(笑)。
虚淵:鳰の凧糸を使うやり方は藤森さんが考えられましたよね。
藤森:長崎では凧の糸にガラスの粉を飯粒で練って塗りつけるんですよとお話したら、取り入れてくださいました。
虚淵:いろいろとはしゃぎながら武器やアクションシーンを練っていきましたね。レーザー光線のようなものはナシだけど、徹破が使うようなカラクリ仕掛けの巨大な弓とかはやろうと思えばきっと作ることができる。
当時に発明はされていないけど、素材として再現できるものであればアリにしちゃいましょうという方向性でした。それにしても、幽烟の金箔は何なんだろうとツッコミたくなりますが(笑)。
一同:(笑)。
——確かに、幽烟の金箔はインパクトが強すぎて試してみたくなります(笑)。
虚淵:あはははは。
藤森:試しても人は死なないので大丈夫です。
——金箔パックで気分を味わいたいと思います(笑)。先ほど、“アニメではやれないようなことをやれそう”とおっしゃっていましたが、制作時にこだわった部分はありますか?
藤森:基本的にファンタジー時代劇なんですけど、最初にヒリヒリとした昭和で公開されたような時代劇がやりたいという提案がありましたので、パッと見たときに時代劇を知らない若い人たちでも時代劇に見えるぐらいのところまで持っていきたい気持ちがありました。
たとえば、江戸当時は身分制度がガチガチにあったので侍や町人によってお辞儀の仕方も違います。雷蔵は侍、幽烟は町人だからお辞儀の仕方ひとつでもそれぞれで違う。そんな細かい書き分けを丁寧にするなどかなりこだわって作っています。
虚淵:そういう空気感やリアリズムの雰囲気というものをガッツリと踏襲してもらえた上で、日本人しかわからない大和武士みたいなものではなく、違う国の人が見ても活劇として楽しんでもらえるようなハッタリの効いたものにしたいという意識はありました。
なので、閉鎖的な街の話ではなく、国際色のある話になっています。港町を舞台にしているので、実際の長崎以上に解放されている国際都市という設定の中、あり得る範囲で荒唐無稽な綱渡りをした気がします。