
映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』監督&プロデューサーインタビュー|スピーカーに乗ってもいいじゃない! 『ヒプマイ』だからこそ実現できた映画プロジェクトはこうして生まれた!
2025年2月21日(金)より、映画『ヒプノシスマイク –Division Rap Battle-(以下、ヒプマイ)』が全国の映画館でついに公開中! 本作は、『ヒプマイ』のファイナルディビジョン・ラップバトルが描かれるとともに、観客の投票でバトルの勝敗が決まるという前代未聞の観客参加型インタラクティブ映画となっています。
映画が発表された当初は、あまりの情報量の多さにファンのみなさんも歓喜&困惑だったことでしょう。かくいう筆者も「ファイナルが映画!?」「映画なのに投票!?」と、腰を抜かしたものです。
前代未聞の映画『ヒプマイ』は一体どのようにして生まれたのでしょうか? 今回は、辻󠄀本貴則監督と中岡亮プロデューサーのお二人に聞ける範囲ギリギリの情報をお聞きしてみました。
『ヒプマイ』だからこそ実現できた夢のプロジェクトがついに幕を開けるーー!
インタビューバックナンバーはこちら!
画像をクリックすると、関連記事にとびます。「大変なことをやろうとしているな、この人たちは」
──まず、ファンの方々も気になっている点として、日本初のインタラクティブ映画ということが挙げられます。この形式が『ヒプノシスマイク』で採用されることになった理由について、お話しいただけますか?
中岡:『ヒプノシスマイク』がインタラクティブ映画になったのではなく、『ヒプノシスマイク』側からインタラクティブ映画をやりたいというスタートだったんです。
技術的な実現可能性があってそこにコンテンツを載せた、というわけではなく、逆に「こういう映画をやりたい」という話が先にあって、そこから実現の可能性を探っていった形ですね。
実は、キングレコードの宮本さんから「投票型のマルチエンディング映画ができないか?」という話を最初にいただいた時点では、技術的に実現できる目処は立っていませんでした。
それで、僕自身も一緒に色々と調査を始めました。
そこで「ダメならインタラクティブ映画は諦めましょう」となりかけたのですが、その後、東宝さんと話している中で「実は、こういうシステムならできるかもしれない」という糸口が見つかったんです。そこから実現可能性を探っていく形になりました。
つまり、『ヒプノシスマイク』というIPを最大化する方法を考える中で、宮本さんの「観客参加型のマルチエンディングができないか?」というアイデアが生まれ、その実現方法を模索していった、という流れですね。
──そもそも、最初に話が出たときは「映画を作る」という前提だったのでしょうか?
中岡:はい、お話をいただいた時点では「映画」として進めるという形でした。
──インタラクティブ映画を作る上で、「どういう構成にしようか?」という話は、最初から決まっていたのでしょうか?
中岡:それも、マルチエンディング型のインタラクティブ映画ができるかもしれない、という話が出てから、最適なトーナメント形式を考え始めたんです。宮本さんと一緒に4〜5パターンくらい作って、「他にもっといい形がないか?」と色々と検討しました。その結果、現在のトーナメント形式に落ち着きました。
映画の投票回数や投票の仕組みをどう組み込むかを決めた後に、物語のどこまでを描くかという構成を考えて、そこから辻󠄀本監督に参加してもらい、映像の演出について詰めていきました。
キャラクターが21人もいるので、ストーリー構成を整理するだけでも時間がかかりましたし、まずはキャラクターモデルを作っておこう、というのが最初の1年目でした。
作品を作っていた4年間のうちの3年間は、辻󠄀本さんにも参加していただいて、最初の段階では映画としての形を模索しながら作っていきましたね。技術検証もその後の段階でしたし。
でも、最終的にはすごくいい形に収まったと思います。キングレコードさんのおかげで、本当に素晴らしい仕上がりになったと感じています。
──監督は実際にバトンを受け取ってからは、どのようなご苦労がありましたか?
辻󠄀本:そうですね。何通りものパターンを作る必要があり、その尺を考えると「大変なことをやろうとしているな、この人たちは」と思いました(笑)。そういう話は聞いたことがなかったし、しかもスマホで投票できるシステム自体も、まだ確立されていない状態からのスタートでしたからね。
ただ、スマホの普及によって「こういうことができる時代になった」という実感もありました。まさに今だからこそ実現可能なシステムだと感じたし、日本初のプロジェクトに関われるのは大きなやりがいでした。とにかく、「クビにならないように頑張るしかないな」と(笑)。
──実際に、48パターンの展開と、それぞれのエンディングは7つですよね? 相当なボリュームを作ることになると思いますが。
辻󠄀本:そうです。最終的に計算したら48通りになったのですが、これは細かい分岐が48個あるという意味で、ゴールとしては7つに収束します。
ただ、どのルートでもすべてのディビジョンに対して愛を持って作ることが大前提でした。制作物量の面では大変でしたが、「やると決めたからには、やり切るしかない」という覚悟で取り組みましたね。
映像のクオリティも、1つ作ったらそのクオリティを落とさずに最後まで持続させることが重要でした。そのために、「このレベルを維持しないとダメだよね」と現場としっかり話し合いながら、調整していきました。
ファンを裏切らないこと
──それにしても映像のクオリティが本当に素晴らしかったです。テレビアニメシリーズも面白かったですが、映画は特に映像が際立っていました。どのような工夫があったのでしょうか?
辻󠄀本:僕の中で大きかったのは、ライブ会場の3DCG化ですね。ライブステージを3DCGで作り、照明についても実際の舞台照明のプロに依頼しました。リアルなライブ照明をCGの中で再現することで、映像のクオリティが一気に変わったんです。
キャラクターについては、TVアニメは手描きの2Dキャラ、今回は3DCGキャラです。その違いはファンのみなさんの好みによる部分もあるので、最終的にはどう受け取られるか、正直ドキドキしていました。
中岡:予告編で、キャラクターが実際に動いている映像を初めて目にする方も多いと思います。
11月の映画発表の時は、SNSでは3DCGに対してネガティブな反応があったことも承知しています。
辻󠄀本:なんならその投稿を僕に見せてきたりするんですよ(笑)。でも、それは好みの問題でもありますよね。手描きのアニメが好きな人もいれば、3DCGの独特な表現を好きな人もいる。
ただ、今回の3DCGモデルは、原作イラストを忠実に再現することは僕が入る前から徹底されていました。指先一つまでイラストに合わせたモデリングが行われていて、「汎用の手を使わない」というこだわりを持って作られていました。それを見て、「この人たち、本当にすごいことをやっているな」と驚きましたね。「そりゃあ1年かかるわ」と。
それだけのこだわりを持って作っているので、作品を最初から応援してくれているファンの方々には、きっと喜んでもらえると思います。そこを裏切らないように演出していくことが大事でした。
中岡:『ヒプノシスマイク』は、もともとアニメから生まれたコンテンツではなく、音楽とキャラクターが中心のメディアミックス作品ですよね。マルチに展開しているし、手描きのアニメが親ではないという作品の成り立ちには助けられた部分はあると思います。VRライブなども展開しているので、3DCGという表現方法も受け入れられやすい部分があったのではないかなと思っています。
だからこそ、セルルックなアニメ的表現にこだわらなくても、カッコよければ受け入れてもらえる、という感覚はありました。辻󠄀本さんもおっしゃっていましたが、3DCGモデルはひいひい言いながら作ったので、あのモデルがあればアニメーションも間違いなくカッコよくなると思っていました。
辻󠄀本:いえいえ。アニメーションもクオリティ高く作ってくれていますよ?
中岡:(笑)。そうですね。アニメーションとモデルとで掛け算で良くなっています。
辻󠄀本:けっこう3DCGモデルに助けられたところは大きいですね。
──キャラクターが複雑な構造をしているのに破綻していなくてすごいですよね。
辻󠄀本:これが、最初に作った時は破綻しまくりだったんです。それをひとつずつ修正していく作業も「大変だろうな」とは思いつつも、気づいたら指摘するしかないんです。「髪が刺さってますよ!」とか、細かく指摘していくしかないんですよね。
中岡:神宮寺寂雷など髪が長いキャラもどうやって作っていくのかしっかりと決めていきました。キャラによっては、髪の裏表で色が違うものもいるので、その仕様をどう作るかも重要なポイントでした。その辺りのベースをかなり頑張って作っていたので、100%活かしきれたかどうかは分かりませんが、間違いなく後の展開にも生きてくるものになっていると思います。
今回の映画だけで終わらせるのはもったいないですし、このキャラクターモデルを活かして、いろいろなコンテンツを展開してもらえれば……!
辻󠄀本:営業がはじまってますね(笑)。










































