
『Let's Play クエストだらけのマイライフ』花澤香菜さん・土屋神葉さん・中村悠一さん・杉田智和さんインタビュー|夢ばかりを見せるのではなく、ゲーム制作の“現実”も描かれる作品。サムが悩み、葛藤し、どんな選択をするのか見守ってほしい
夢ばかりを見せるのではなく、ゲーム制作の“現実”も描かれる作品
──収録時の雰囲気や裏話などをお聞かせください。
花澤:結構じっくり録っています。キャラクター造りも緻密にやってくださっていますし、時間いっぱいまでアフレコしています。ただ、アフレコスタジオがとても広いので、あまりみんなでワイワイしゃべるという感じではないですね。
中村:5時間みっちりやっていますが、集中してやっていますね。
──登場人物がそれほど多くないので、広いスタジオだと座席の間隔が空いて、しゃべりにくそうですね。
花澤:そうですね。それぞれキャスト同士、あまり近くにいないですね。
中村:仮にこれくらい広い場所(この日の取材場所は30~40人いても余裕なTV局のリハーサルルーム)で花澤さんのすぐ隣に来たら変じゃないですか(笑)。 花澤さんも「こんなに広いのに、なんでこんなに近くに来るんだろう? 1個空けてくれればいいのに」と思うはずです。人にはパーソナルスペースというものがありますから。なので必然的に席を1つずつ空けると、みんな距離が離れてしまいますね。
花澤:でも日笠陽子ちゃんがいてくれて、彼女がいっぱいしゃべってくれるので助かっています。
──それは良かったです。休憩中に広いスタジオで静かだったらどうなんだろうと心配だったので(笑)。
土屋:リハーサルが終わって、本番前やAパートの収録の終わりになると差し入れのいなり寿司をみんなで食べて、「力を付けて頑張りましょう!」という感じで、和気あいあいとしています。
花澤:本番前に食べていたら「力を入れるのはいいけど、食べ過ぎてボーっとしたらダメだからね」とスタッフさんに注意されました(笑)。
──完成した映像をご覧になった感想をお聞かせください。
花澤:サムが飼っているペットのバウザーがとてもかわいいです。細かい動きと表情とコメディ部分も担ってくれている感じがしていて。サムは深刻に悩むことが多いので、バウザーが癒してくれていると思います。
土屋:序盤でゲームの世界が展開されるのですが、視聴者の方にファンタジーや異世界ものと思われるかもしれないなと思うくらいしっかり描かれていて。ゲームの世界と現実世界がリンクしていそうな映像でした。あと、色味や絵のタッチなど他の作品では見たことがないような独特の感じがあって、全体的に優しいアニメだなと思いました。
中村:完成版とアフレコの時で決定的に違うのは音が付くことで、収録の時はBGMや効果音がない無音の状態でセリフだけが聴こえてきます。そこに音が入ることで演出の方向性がわかりやすくなったり、受け取りやすくなるんですよね。
収録の時は楽しい雰囲気や「これからどういうことが起きるのかな?」みたいなものを感じていたんですが、映像を観てみると、サムのプライベートの時間の描写に無音の部分があったりして「ちょっとキツいな」と(笑)。生きるということには常に悩みや不安もつきまとっていて、どんなに楽しいことがあったとしても、その裏にはツライこともあるんだなという細かい機微が描写されているように思えて、僕は正直言うとツラかったです。
花澤:確かにムダな音がないですよね。
中村:なのでサムは目標に対してただ没頭しているだけじゃなくて、葛藤があって。「本当にいいのかな?」と自問自答しつつも信念を持ってゲーム制作に打ち込んでいますが、その根底にあるのは、自分がゲームに救われたから自分も人を救うための手段としてゲームを選んだということかなと。そんな複雑な心境をのぞき見しているような気がして、すごく胸を打たれました(笑)。
花澤:チャールズの描写も良かったですよ。
中村:チャールズは色が付くとおかしいなと。(第1話の)完成版では「突然脱ぎ始めるヤベえヤツ感」が更に増していました。あのシーンは収録の時はあまり気にしていなかったんですが、完成したものを観たら「あっ、変だコイツ」って。
土屋:(笑)
中村:サムがコーヒーを服にこぼされた時に、自分が着ていたシャツを脱いでサムに渡した後、ストックのシャツを取りにいって。ストックがあるならそっちを渡せばいいのに。
杉田:全然わかんない。
中村:しかもチャールズが着替えに行ってから戻って来る早さがおもしろくて。
杉田:とっさの行動じゃない。
中村:それが衝撃でした。
花澤:アフレコ現場でみんなで観ていたら、あのシーンではどよめいていました(笑)。
中村:みんな収録の時に観ているはずなのに。女性陣からの評判は最悪でした。
杉田:このアニメを視聴してくれる方の中には、ゲームが好きで、ゲーム制作に携わったり、自分でゲームを作ってみたいと思っていたりする方もいると思いますが、そういった方のモチベーションをへし折ることはないけど、「夢ばかりも見せていないな」と。
サムが作ったゲームが批評サイトで叩かれて、「私のクリエイター人生が終わる」と落ち込むシーンは自分にもすごく響くものがありました。やっぱり気にしちゃうよね(笑)。自分が普段心の中に仕舞っていたものをずっと突かれている気がして、しんどかったです。
中村:ひょっとしたら、おじさんはしんどいのかもしれない。
杉田:最初の印象の「キラキラしてまぶし過ぎて見れない」とも違って、「現実はこうだ」と突きつけられた感じで。
中村:そう、現実的なんだよね。
杉田:もちろん視聴者の人をけなしたり、心を折ったりする内容ではないので、ギリギリエンタメになっているので良かったです。僕も実際にゲーム制作に関わった経験があるので思うところもありますが、それに対してネガティブな反応もしないでしょうし。
皆さんへ伝えたいのは、リンクは本当にいいヤツだということです。弟との接し方が印象的で、弟の良いところも悪いところも受け止めた上で、弟に自主性を持たせるように促しているので、もしかしたら親よりも優秀かもしれないなと思いました。僕にも兄がいますが、「こういうお兄ちゃんだったらいいな」という理想もリンクのお芝居に入れています。
──全体的に海外ドラマっぽいテイストですが、どこか少女マンガっぽさも感じました。
花澤:恋愛模様が繊細に描かれていて。サムが奥手なので、デートに誘われた時に「どうしたらいいの?」と動揺したり、焦ったりするところもあったりして。ここまで私が演じた印象では、この先普通にリンクと結ばれてしまいそうで。マーシャルやチャールズがどう関わってくるのか、まだわかりません。
──リンクもマーシャルもチャールズもイケメンぞろいだから悩ましいです。
花澤:そうですね。みんな程よく筋肉がついているので(笑)。
サムが悩み、葛藤し、どんな選択をするのか見守ってほしい
──この作品の見どころの紹介や、ファンへのメッセージをお願いします。
杉田:キャラクターは単なる装置じゃなく、物語として意味があるものなので、自分の理想も入れつつ、現場でリンクのキャラクターが少しずつ出来上がっていく様はとても価値があるものとして捉えています。
リンクには救命士という一面があるので、救命士について自分なりに調べて収録に臨みました。例えば「普段どういう生活を送っているんだろう?」とか「体が鍛えられているとどう声が出るのかな?」とか。また、リンクはサムに片思いしていますが、それを意識し過ぎるとリンクのキャラが変わってしまうので、「リンクってどういう男なんだろう?」という情報にだけ目を向けて、ブレずに演じていきたいと思います。
中村:このアニメの公式サイトなどを見て、恋愛があることを前提にした作品と思われる方もいるかもしれません。リンクの場合は最初からサムに好意を持っていて、対するサムはまだ気付いていない状態から始まっていますが、他のキャラクターは物語の中でどう関係性が変わっていくのか、まだ確証を持って演じていません。なので、先入観を持って観るよりはナチュラルに起きていく展開を観てほしいなと思っています。
また、たっぷり時間をかけて録っていますが、「このニュアンスは後々に繋がります」という演出をいただいて、本当に細かく調整しながらやっているので、見逃さずに楽しんでいただけると最終的に一つの線になるのかなと思います。始まった段階ではサムの生活圏すべてが映っているので視点が多く、サムのプライベートや友人関係、会社のこと、趣味でやっているゲームに関わってくるマーシャルがいて……といろいろな枝分かれした線が少しずつ一本化されていくのがおもしろさかなと思うので、楽しみにしていてください。
土屋:第1話の収録で、音響監督からとあるキャラクターについて「こういう過去があるから」という説明を聞いた時、シリアスさを感じましたし、この作品自体が何かすごい覚悟を持って、描きたいものがあって作られたのかなと思いました。
今はアフレコ中なので、先が見えない状態です。アニメの最終話にたどり着いた時に、もしかしたら視聴者の方がツラく感じることもあるかもしれませんが、タイトルに「クエスト」とあるように、キャラクターと一緒に困難や壁を乗り越えて、前に踏み出していける作品になっていると思います。そしてサムだけではなく、みんな悩みや何かを抱えているので、感情移入しながら観ていただけたら嬉しいです。
あと、サムとマーシャルの出会いが衝撃的だったり、サムに対してひどいことをしているなと演じながらも思ったし、その解決方法も間違ったものばかりで逆にサムを怒らせてしまったり、彼女がいたりと、マーシャルもナチュラルにヤバいヤツで(笑)。でも根は悪いヤツではないので、嫌わないでいただけたら嬉しいです。
花澤:サムには恋愛問題だけでなく、父が経営する会社の次期社長になるのか、好きなゲーム開発の道に進むのか、という大きな選択が待ち受けています。悩んだり、葛藤しながらどんな選択をするのかを見守ってください。
サムにとっては、自分が作ったゲームを否定されることは制作に関わってくれた人も否定されてしまうので守りたいという強い気持ちで、どんどん前に進んでいく姿が素敵だなと思いました。彼女がいろいろな悩みや問題をどう乗り越えていくのか、注目して観てください。
作品情報
あらすじ
22歳のソフトウェア開発者のサム・ヤングは、幼少期から無類のゲーム好き。
学生時代はゲーム開発にすっかり明け暮れ、アドベンチャーパズルゲーム『ルミネイト』を、満を持してリリースする!
しかし、大人気ゲーム実況者のマーシャル・ローが酷評したことで、ゲームクリエイターとしての未来は閉ざされる。
さらにマーシャルは、サムの隣の部屋に引っ越してきて──!
サムの会社の上司であるチャールズ・ジョーンズや、幼馴染で行きつけのカフェ店員のリンク・ハドソンなど、マーシャルとの出会いを機に、サムと周囲の人間との関係が少しずつ動き出す。
親から過保護に育てられてきた恋愛経験ゼロのサムは、男性との急接近に戶惑うが、次第に心の殻を破っていく。
人生をかけた最高難易度のゲームをサムはクリアすることができるのか―――!?
キャスト
(C)Let's Play製作委員会

































