
虎杖の“現在地”とリアリティを生む「ノイズ」の芝居――TVアニメ『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」連載インタビュー第1回:虎杖悠仁役・榎木淳弥さん
虎杖は助けることでしか自分を肯定できない
ーー「渋谷事変」を経て、虎杖の目標や生きがいも変化している印象があります。
榎木:結局は自分のためな気がします。祖父から言われた言葉は、未だに彼の中に残っていて。今回は伏黒の「まずは俺を助けろ」という言葉に希望を見出していました。自分はまだ人を助けることができるのかもしれない、と。
ーー伏黒が虎杖の“理由”を作ってくれている。
榎木:現実にも「誰かを助けることで自分の存在意義を感じる人」っていると思うんです。人を助けることが、自分を満たすことになる。虎杖というキャラクターは最初に死刑宣告を受けていて、自身の存在を否定されるところから始まっています。だからこそ、自分の存在をどうにか肯定したいという気持ちがある。「渋谷事変」のEDテーマである羊文学さんの「more than words」の歌詞は、まさに虎杖の精神性を表現していると思った記憶があります。
ーー特別編集版でも効果的に使用されていました。
榎木:まさにあの曲通りの心情なんだろうなって。誰かの言葉を何度も思い返す、自分を愛したい・信じたいとか。そういう意味で、虎杖は人を助けることでしか自分を肯定できないのかもしれません。
ーーそんな彼の気持ちをどのようにお芝居で表現していくのでしょうか?
榎木:芥見先生が何を伝えたくて描いているのかは考えますね。もちろん無目的に描かれる名作もあると思いますが、『呪術廻戦』は伝えたいことがしっかりとあるタイプの作品だと思います。
ただ、作品のメッセージとキャラクターの想いが相反することも少なくないんです。そこは難しい部分ですが、基本的には、作者の伝えたいことに矛盾しないように役を作っていきます。
虎杖のリアリティを創る「ノイズ」
ーー虎杖のお芝居について、物語が進むごとに生っぽさが増しているように感じます。「渋谷事変」を劇場で見てみると、実写作品のような味わいもありました。
榎木:劇場とテレビで鑑賞する場合で、生っぽさが変わってくるかもしれないですね。例えば「渋谷事変」のラストで真人を追い詰めるシーンは、自分の想定よりも生っぽくない芝居になっていると感じました。テレビは人によって視聴環境が変わるので、どうしてもアフレコ現場で録ったものにノイズキャンセリングなどを施して、見やすくなっていると思うんです。そういう意味では、自分はノイズを大事にしている気がします。
ーーノイズですか。
榎木:ノイズを極力キャンセルした芝居が、アニメらしい芝居だと僕は思っていて。とはいえ、先ほども言ったように編集が入りますから、TVアニメでやるのはあまり効果的じゃないかもなと。その辺りは演技するうえで難しい部分ですね。
ーー榎木さんが大事にしているノイズとは、具体的にはどのようなものでしょう?
榎木:要は「狙ってお芝居をしない」みたいなことだと思います。どうしても台本を読むと、アニメ作品のセオリーと言いますか、頭の中で「こうやったら上手くいく」という音のラインが流れるんです。
ーーアニメとしての正解が台本を読んだ瞬間から分かる。
榎木:今までの芝居の蓄積から、ほぼ全ての声優さんに聞こえていると思います。演技が上手い方はそのラインをあえて崩して、印象付けているんですよね。僕自身は「一体どこを走っているんだろう?」くらいを狙っているというか。なるべく自分の脳内に流れてくる音声を消したいんです。
ーー役者さんならではの興味深い感覚です。正解のラインからどこまで逸脱するのか。
榎木:作品によりますけどね。作品にとって、真っ直ぐな正解が良いものである場合もありますし、逆に抑えてもらったほうが上手くいくこともあります。
そのうえで、「演技じゃない部分を見たい」と思うことがあって。演技をしているんだけど、その人の普段の生活や人間性が見える瞬間が好きなんです。
ーー最後に、榎木さんが考える『呪術廻戦』の魅力やテーマをお聞かせください。
榎木:それこそ、今言ったように“芥見先生”が見える作品だと思います。作品を読んでいて、当時ハマっていたものや描きたいことが伝わってきますよね。最初から一本道の物語ではなかったような気がしていて。紆余曲折を経て、大きなテーマを描いている作品だと思います。そういった作家性を感じる部分が魅力ではないでしょうか。
[インタビュー/タイラ]
連載バックナンバー
『呪術廻戦 死滅回游』作品情報
イントロダクション
廻れ呪え 死の遊戯の中で
「渋谷事変」を経て、夏油 傑(加茂憲倫)により呪霊が蔓延る魔窟と化した
全国10の結界(コロニー)。
戦いは、呪術を持つ者達による殺し合い「死滅回游」へ。
加速していく混沌の中、伏黒の姉・津美紀が巻き込まれたことが発覚する。
五条の復活と津美紀救出の術を見出すべく動く虎杖たちだが…。
果たして、夏油 傑(加茂憲倫)の目的は何なのか。
「死滅回游」平定のためゲームに参加する彼らの行き着く先とは―。
キャスト
虎杖悠仁:榎木淳弥
伏黒恵:内田雄馬
禪院真希:小松未可子
パンダ:関智一
乙骨憂太:緒方恵美
脹相:浪川大輔
九十九由基:日髙のり子
天元:榊原良子
秤金次:中井和哉
星綺羅羅:榊原優希
禪院直哉:遊佐浩二
日車寛見:杉田智和
髙羽史彦:鶴岡聡
レジィ・スター:青山穣
コガネ:ニーコ
夏油傑(加茂憲倫):櫻井孝宏
スタッフ
原作:「呪術廻戦」芥見下々(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:矢島陽介 丹羽弘美
副監督:高田陽介
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介 ACE
音楽:照井順政
音楽プロデューサー:小林健樹
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA




























































