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『重神機パンドーラ』河森正治監督インタビュー

『重神機パンドーラ』河森正治監督インタビュー|作品に込めた問題定義のジレンマと今のSFの現状とちょっと未来のお話【TVアニメ放送直前特別編】

2018年3月29日よりNetflixにて日本先行独占配信が開始し、4月4日からはTOKYO MXほかにて放送がスタートする『重神機パンドーラ』。『マクロス』シリーズを手がける河森正治監督が、今だからこそ描く新しい近未来の世界に注目が集まっています。

アニメイトタイムズでは、作品の世界を知るべく、メインキャストのみなさんへ連続インタビューを行ってきました。みなさんには、作品の魅力はもちろんのこと、「河森監督はどんな印象?」という質問をお伺いしました。

そして今回、河森監督ご自身にその解答をぶつけてみることに。日本のアニメ界を牽引しつづける河森監督だからこそたどり着いたひとつの答えが『重神機パンドーラ』には込められていました。

■■■■過去のインタビューはこちらから■■■■■
レオン・ラウ役:前野智昭さんインタビュー
クロエ・ラウ役:東山奈央さんインタビュー
クイニー・ヨウ役:花澤香菜さんインタビュー
ダグ・ホーバット役: 津田健次郎さんインタビュー
セシル・スー役: 茅野愛衣さんインタビュー
ケイン・イブラヒーム・ハサン役:石塚運昇さんインタビュー
グレン・ディン役:内田雄馬さんインタビュー
ジェイ・ユン役・梅原裕一郎さんインタビュー

中国取材で感じた現地の人のバイタリティ

――まずは本作の制作の経緯を改めて教えてください。なぜこのような物語にしようと思ったんですか?

河森監督(以下、河森):今のアニメーション業界は、日本という国だけで物事が完結するのではなく、世界との繋がりがとても重要になっていると思います。そんな時に、中国のパートナーから、ワールドワイドに通用する作品を作ろうとお話をいただきました。

そこから企画会議を重ねていくなかで、世界をターゲットに据えるのであれば、主人公は10代よりも少し年齢を上げて20代の方が受け入れられやすいと思ったんです。実際、ハリウッドでも20代はおろか、それ以上の年齢のキャラクターが主人公であることが多いですよね。

日本のロボットアニメの場合は、どうしても弱い主人公や未熟な人間がロボットに乗って強くなるといったようなケースがこれまでのパターンではありましたが、今回はせっかくなので20代の主人公でやってみたいと思いました。

――その辺りはキャストのみなさんもビックリされていました。

河森:そうですね。単純な熱血というのとはちょっと違う、プロフェッショナルなエキスパートたちが集まって仕事として様々な困難に向き合っていく。但し、内には熱いものを秘めている……といったような。

そういうキャラクターたちが集まった上で、最初はプロ同士なので、必要以上には寄り添わないんだけど、だんだん打ち解けていって人間らしく心を開いていく過程をドラマとして描きたいと思ったんです。

――さらに本作の発表会では、「未来のことを描くとすぐ現実になってしまう」と仰っていましたが。

河森:もう恐ろしい勢いになってますよね。30数年前に作った『超時空要塞マクロス』のころだと、思い描いたアイディアや未来のコンセプトは、だいたい先端を走れたんです。

だけど、今はもうAIやバイオテクノロジー等の技術進歩のスピードがものすごくて、新しいアイディアを思いついたと思っても、次の日にはそれが現実として発表されていることもあって(笑)。

去年から映画やTVシリーズの仕事で忙しかったこともあって、新しい情報を収集している余裕があまりなかったんです。そして、気が付くとAIにしてもバイオテクノロジーにしても量子力学にしてもどんどん進んでいる。その速度が速いですよね。それに追い立てられている感じがします。

だからこそ、その追い立てられている中で、人類は何を選択して、どういう可能性が残されているのか、そういう物語にすごく興味があったんですよ。自分の追い立てられている感覚と、その追い立てられた世界というの描いてみたいと。

――なるほど。ご自身を含め、現代の人にリンクした作品になっているんですね。

河森:そうです。さすがに変形する人型ロボット兵器ができるのには、今すぐというわけにはいかないと思いますけど(笑)。でも、それ以外のことは今のつもりで描いています。

例えば、報道はされているものの生活実感としてはまだ多くの人に浸透していない、背後では激動している事柄は取り上げています。

『重神機パンドーラ』は、その激動感をクローズアップして、翻弄されながらも何とか人として生きていこうとしている人々を描いた物語です。

その中で、笑って、泣いて、食べて、寝てといったとても人間臭い話を描いています。恋愛とは違うけど、仲間としてパートナーとして、そしてチームとしてどうやっていくかを大きなポイントにしていますね。そういう意味で、人間関係のやりとりは、いろいろな組み合わせで楽しめる作品になっていると思います。

――人間関係の部分はキャストのみなさんも仰っていました。そして、見ているとお腹が空くと(笑)。

河森:短絡的ですが中国といえば食べ物かなと(笑)。中国のプロデューサーの方に「中国では、四足の動物は机以外何でも食べると聞きました」と言ったら、「机も食べますよ!」と。もちろんこれはジョークですけどね。実際、それくらい食べるのが好きらしいんです。食べるために生きているのに近いくらい(笑)。

――面白かったのが、B.R.A.I(ブライ)にメタルチップが入っていたりして、料理にもそのまま出てきて、「この料理、チップ多いよ!」みたいな話があったり。

河森:今の中国は全然そういうことないですけど、33年前はそんなことがよくありました。その頃に初めて中国を一人旅したんですが、その時は今とは全然違っていたんです。

北京の国際空港から街に入るまでの道が舗装されてなくて、半分くらいは未舗装道路で街灯もない。そんな時代だからか、田舎の小さな食堂に入るとご飯に砂利が入っているんですよ。

――(笑)。

河森:ジャリジャリガリガリして。脱穀する時に小さな砂利を入れるみたいで、それが取りきれてない。でも向こうの人たち歯が強いから、みんなガリガリ食べているんですよ。実は、それがちょっと元ネタになっていて(笑)。

それと、鳩の料理を食べたんですけど、骨だらけで口の中に刺さるんですね。それを現地の人たちは「ペッペッ」と骨を取り出して器用に食べていたんです。そういう経験がヒントになってます。

――その経験もすごいですね(笑)。今回は新たにロケハンに行かれたそうですが、今の中国はいかがでしたか?

河森:気になった点は、そのわずか30数年での激動感。最初に旅をしたのが、85年。その後は2003、2004、2005年と北京オリンピックの前に連続で行きました。

最初は少数民族が住んでいるような中国の奥地をたくさん回りました。そこから20年近く経った2000年代は激変していて。ほとんど別の国だとも思うくらい変わっていました。今回、さらに10数年経って訪れたら、もう一度別の国になったと思うくらいに変わっていましたね。

この30数年で、2回も見覚えのない街になっていたんです。変化の速度にビックリしましたね。その経験が今回のテーマになっている「加速する進化」につながっています。

この進化は、最近の中国に行かれた方じゃないと、ここまですごいと思えないんじゃないかと思います。その中でもまだギャップはあって、旧態依然とした昔ながらのところもあれば、突出して進んでいる所もあるんです。

2年くらい前に行った時でさえ、都市部はほぼキャッシュレスなんですよ。スマホとネットを使って決済できてしまうんです。その部分に関しては確実に日本より進んでいますね。

そんなに進歩しているなんて考えもしませんでした。日本では、その現状がごく一部でしか報道されていません。これだけ情報化社会が進んでいるのに不思議ですよね。

――今回の主なロケ地は、重慶だったとうかがいました。

河森:重慶は、行ってみたかった街のひとつなんですが、『マクロスΔ』の劇中でモノレールを走らせようとネットで世界のモノレールを調べていたところ、重慶の写真がたくさん出てきたんです。高層ビルの隙間や、マンションの中をモノレールがすり抜けていく。「これはすごい面白そうな街だな」と思いましたね。

当時、中国で10番目の都市だと聞いていたのですが、行ってみたらリトルマンハッタンなんですよ。現地の人に聞くと、「数年前までこんな高層ビルはありませんでした」と。その進歩のスピードに、本当に追い立てられる感じがしましたね。

――取材現場で感じたメッセージが作品にも現れていたりするのでしょうか?

河森:メッセージというか、現地の人たちのバイタリティですね。

重慶でのロケハンには、共同監督の佐藤(英一)さんやシリーズ構成の根元(歳三)さん、美術監督の佐藤(聖)さんにも来ていただいたんですけど、皆で話していたのは、「このバイタリティは何だ!?」ということです(笑)。現地の方々は、進化の波に飲まれてないんですよ。

『重神機パンドーラ』のキャラクターたちが「翔龍クライシス」という大異変に巻き込まれたのが劇中の7年前。大異変から立ち直って、緊迫している状態の中でも前向きに生きている。そのように描いているのは、取材の結果でもありますね。

アフレコを聴きながら「この組み合わせ、面白い!」

――『重神機パンドーラ』の人間関係についてもう少しお聞かせください。

河森:『マクロスΔ』では登場キャラクターが多かったので、今回は少し絞り込んで作ってみたいと思いました。絞り込む中でもキャラは強く、かつ個性豊かにしようということはとても意識しましたね。その上で人数を絞った分、一人一人の多面性が描きやすくなりました。

主人公のレオン・ラウ(CV:前野智昭さん)に関しては、天才的な頭脳を持っているんだけど、日常の生活能力が皆無という(笑)。そういうギャップが作れたんです。こんなタイプの主人公は、まずいなかっただろうなと。

でもそのギャップ、つまり足りないことがあるからこそ、チームとして他のメンバーたちが力を重ねていくんです。

――チームというのもまた良いですね。しかも今回は傭兵集団ということで。

河森:「バウンティハンター(賞金稼ぎ)」といって、世界が荒廃した中で腕の良い連中が自分のマシンに乗って、傭兵として金で雇われています。

どうしても年齢を上げて軍隊にしてしまうとルールが強くなりすぎて、突拍子もない事態に対応するのに若干厄介なところがあるんです。そのため今回は特殊なチームという設定にしました。

――契約で成り立っている集団というのも面白いですね。

河森:そこが今回チームもので描いている部分で、単純なバディものというよりは組み合わせをいろいろと変えて楽しめるようにしています。今回はレオンと誰の物語、といった感じで。

でも、キャラクター同士のドラマを1話20分の枠でやろうとすると、尺に余裕がないので必要最小限のことしかできなくなりがちなんです。

ですから、海外連続ドラマのように40分くらいの尺で、キャラクター同士の会話の掛け合いも含めて楽しんでもらうために、2話で1エピソードを構成してみようというのが、今回のストーリー構成上の新たな試みです。

――視聴者の方には、「この組み合わせが好き」と思ってもらえる仕組みですね。

河森:そうそう。そんな風になってくれたら良いなと。自分たちもいろんな組み合わせを試していて、アフレコを聴きながら「この組み合わせ、面白い!」と毎回思っています(笑)。

――アフレコで、意外な組み合わせの効果に気づくこともあるんですか?

河森:ありますよね。もちろんある程度は狙ってやっていますが、役者さんのお芝居が当初考えていたものと違っても、「このニュアンスも良いよね」と気づくこともたくさんあります。

人がやってないことをやりたくなっちゃう

――アニメイトタイムズでは、『重神機パンドーラ』の連続キャストインタビューを行っておりまして、みなさんに「河森監督はどんな印象の方ですか?」とお伺いしています。

河森:いやあ〜、恥ずかしいですね(笑)。

――(笑)。そんなみなさんの感想を聞いて、時間の許す限りコメントをいただければと思います。まずは、前野智昭さんから。前野さんはロボット作品が大好きで、特に『マクロスプラス』のイサム・ダイソンがお好きだそうです。監督に会うのがすごく緊張したと仰っていました。独特なビジョンを持っておられる方とも仰っていましたよ!

河森:いえいえ。しかし、イサム・ダイソンが好きというのはすごくありがたいですね。あの作品を作っていたのはもう20年くらい前になるわけですけど、「AIと人間どっちが優れているのか?」ということをテーマに描いた作品で、イサムは人間臭いキャラクター代表として描きました。

今回は、『マクロスプラス』とは差別化するために、学者にしたところもあります。そういう意味では、イサムのライバルのガルド・ゴア・ボーマンが技術者だったので、そっち寄りなんですが、戦うとイサムっぽいところはあるかも……。

――監督は発想をする時に大事にしているものはあるんですか?

河森:とにかく他と違うもの、他作品と極力変えたいと常に思っています。オリジナリティをいかにして出していくか、を一番気にしていますね。

あとは時代の変化のちょっと先を行きたいという気持ちは大きいです。

よくドジをしてしまうのが、半歩先を行けば良いのに、一歩や更に数歩先を行って「ネタが早すぎた!」というもの。そこにも気をつけていますね(笑)。

――(笑)。

河森:どちらかというと海外の感覚にちょっと近いところがあるのかもしれません。一般的なジャパニメーションの感覚とは微妙に違うかもしれませんね。

――それで言うと、花澤香菜さん(クイニー・ヨウ役)が、「河森監督が考える台詞回しが面白い」と仰っていたんです。センスが海外に近いからかなとも思ったり。

河森:もちろんセリフは根元さんはじめ、シナリオライターさんにも作っていただいているんですけど、気の利いているとかゆとりの会話というのは意識していますね。今回描いているキャラクターたちは、プロフェッショナルだから職務をやるのは当たり前ですので。

実際に戦場に出られている方にも取材したことがあるんですけど、特に海外の軍の経験がある方にお話を伺うと、例えば落下傘部隊だったら飛び降りる寸前までジョークばかり話していると言っていました。

降下直前まで下世話なジョークから何から言い合っていて、発進ランプが点いた時点でフッと切り替わって飛び降りて行くという。それが日常になっている人たちの常識はこういうことなんだと思います。

さきほどもお話したようにこれらを20分枠でやろうとすると、必要なことを消化するだけで精一杯になってしまうので。今回、2話を1エピソードとすることで、そういうやり取りも増やせると思いました。

――実際に見聞きした経験があるからこそですね。あとは東山奈央さん(クロエ・ラウ役)や梅原裕一郎さん(ジェイ・ユン役)や津田健次郎さん(ダグ・ホーバット役)のコメントですが。「難解な科学である量子力学とロボットものを融合させてエンタメにしようと思った着眼点がすごい」と。

河森:人がやってないことをやりたくなっちゃうんです。それに、せっかくキャラクターたちの年齢を上げたんだから、そのくらいのことを扱ってもいいよね、と。

自分でも改めて調べていくと量子力学的なテクノロジーとか、そういうものが日常に応用をされ始めているのが分かるんです。言われないだけで、どんどんそういうのが増えている。

それはAIを含め、スマホひとつとってもそうです。テクノロジーの進化が世界の変化に、生活の変化に直結する時代になってきているんだなと思います。

――一昔前までは、例えば軍事利用されていたものが民間に下りてきて一般に普及していたイメージです。

河森:今は逆に民間のほうが早いですからね。軍用の方は、信頼性や安全性を考慮して、あえて古いテクノロジーを使っているケースもありますよね。

最近のニュースで面白かったのが、アメリカの原子力潜水艦(バージニア級原子力潜水艦の15番艦「コロラド」)の潜望鏡・フォトニクスマストのコントローラーに、Xboxのコントローラーが使われたっていう話(笑)。

――ありましたね(笑)。

河森:「本当に!?」と(笑)。現実でも、民間の方が早いというのは歴然としてきている時代ですね。NASAよりも民間企業のイーロン・マスクの方が技術的に進んだロケット(ファルコン・ヘビー)を打ち上げたりしていますし。

人類そのものが岐路に立たされている

――キャラクターの年齢設定を上げることで、どういう効果がありましたか?

河森:そこは、やっぱり「責任」という言葉の重みが10代のキャタクターとは違うかたちで描けていると思います。

10代の主人公の場合は、若気の至りで命令を無視して突っ走っていくといったような描き方がやりやすい。

でも、レオンは20代であり、この物語の世界が変容してしまったきっかけを作ってしまったキャラクターなので、それに対しての「責任」をとるということはどういうことか? そういった側面は特に意識して描いていますね。

――なるほど。

河森:あと、85年に初めて中国に行った時、とにかく少数民族の村を中心に回っていたんです。

そこで気づいたのが、テレビと電気がないところでは、子供がとても元気で活き活きしているんです。

これは内モンゴルでもシルクロードでも雲南省でも見ました。子どもにとっては、テレビと電気がない方が良いのかもしれないと。あれは衝撃でした。

そこからエンターテイメントを作る側の責任というものが、ずっと気になっています。

問題提起を含んだものを作る傾向が強いのは、その体験が原点なのかもしれません。そして、その上でエンターテインメントとして作りたい。それらのバランスをとって作品を作ることが、自分が作る意義であり責任かとも思います。

――その両軸を抱えているからこそ、こういった作品が生まれるんですね。

河森:そうですね。エンターテイメント性を強く意識しはじめたのが『マクロスプラス』くらいの時期だったかと思います。

自分が20代〜30代前半のころは、大げさに言えば「芸術とは何だ?」といったようなことを優先していた時期があって。でも、そういうものを作る難しさと同じくらい、エンターテイメントをちゃんと作る難しさを再認識したところがあるんですよね。

なので、両方のバランスを取りながらものづくりができたら良いなというのは、いつも思っています。そもそも、巨大人型ロボットなんて現実ではありえないですし、非合理的なんですけどね。

――やはりご自身もいろんなものを模索しながら、今のベストをということですね。

河森:そうですね。最先端テクノロジーもすごく好きだし興味がありますけど、その反面人間そのものが持っているはず自然の力にも興味があります。それはもう本当に引き裂かれるようなジレンマですよね。

――方向性が違うアンテナを色々張られていらっしゃいますね。にもかかわらず河森監督はどれも認識が深い感じがします。

河森:そこまでではないですけどね。でもやはり作品を作るとなったら調べないといけないことはたくさんありますから。

一つのことに興味を持つと、これはどうなってるんだろう、これもどうなっているんだろう と芋づる式に気になっちゃいますし。

――これを調べたら、隣にこれがあって、その隣も調べなきゃいけなくて、その隣・隣・隣……で一周回っちゃったみたいな。

河森:そんな感じですよね。その時にAIだけのネタだと他の作品でもたくさんやられているし、バイオテクノロジーを題材にしたものもたくさん作られている。だから、全部ごちゃ混ぜにしないと今の時代を描けないと思うんです。

地球上に人類が生まれて繁栄している。人類の起源とされている猿人の出現から数百万年以上ですが、それも地球誕生からの45億年のスパンで考えたら一瞬に過ぎない。その中で今、本当に人類そのものが岐路に立たされているという感じがすごくするんです。そこに立ち会えている面白さを感じますね。

河森監督は未来をどう見る!?

――『重神機パンドーラ』を見る上での指針や何かヒントをいただけますか?

河森:レオンが難しいことを言っていても、全部聞き逃していただいて大丈夫です(笑)。

――(笑)。

河森:彼が天才科学者なのは、作品を見ていただいたらわかるようには作っているつもりです。ですが難しいと感じるようであれば、その内容を無視しても、ちゃんと楽しめるようにも作っていますよ。彼の言葉は、例えば洋楽の歌詞みたいなものだと思ってもらえればと(笑)。

そのうえで、専門用語的なところに興味を持つ人には持っていただければ嬉しいですし、そうでなければレオンのしゃべり方だったり、それに対する周りのリアクションなどでキャラクターの関係性やドラマを楽しんでいただきたいなと。とにかく、雰囲気で「重大なことが起きているようだ」と感じていただければ大丈夫ですよ。

――熱血だけで通しちゃうみたいな展開もあったり?

河森:ありますね。特にグレンは熱血キャラです。全部の理屈があっても、感情の強さの方が勝るときもあるだろうし、あって欲しいと思いますしね(笑)。

――では最後に、読者のみなさんにメッセージをいただければと思います。

河森:今回の作品は、進化したB.R.A.Iという強力な生物に襲われたネオ翔龍という街を、レオンをはじめパンドーラのチームのメンバーたちがどうやって守るっていくのかを描いています。

自分たちの知恵と力を駆使して、そしてそのチームとしての力を結集してどう守るのか。その手に汗握る部分を楽しんでいただきたいです。

その中でレオンとクロエの話があり、レオンとクイニーの話があり、レオンとジェイの話があり、ダグの話があり、いろいろな組み合わせ、キャラクターたちのドラマが展開していきます。姫の背景にも謎があったりと……。

一人一人背負っているものが次々に明かされながら物語が進行していきますので、お気に入りのキャラクターを見つけていただいて、その目線で見ていただきたいですね。レオンだけではなく誰もが主人公のつもりで作っていますので、いろいろな環境を楽しんでいただければ良いなと思います。

――すみません、最後といいつつもう一つだけ! 未来をどこまで描くんだろうというのも個人的に気になっています。

河森:現実は本当に早いですよね。人型ロボットどころか操縦型のマシンもこれから先の世代の子供たちにとっては過去の遺物になるわけですから。

――もうリモートの世界ですよね。

河森:そうそう。『マクロスプラス』のころに、戦闘機が無人機になっていくのはしょうがないと思っていました。戦争で人が死なないように、また予算の面で考えても自動操縦の機体になっていくだろうと思って、あの作品を作ったんです。

今は、それどころか街中がみんなそうなってきている。現実になるのが考えていたよりずっと早いですよね。
VRももっと進歩していったら移動すらもしなくなるかもしれません。どのくらい社会が変わってしまうかとても読みにくいですね。

――河森監督はこれからの未来がどうなるのか、ビジョンはあったりするんですか?

河森:さきほどお話した通り激変するしかないとは思っています。しかし、どのテクノロジーが先に突破口を開くかで社会の変わり方が違うので、そこは読みきれないですね。
AIが先に行くのか、バイオテクノロジーで寿命を伸ばす技術が先行するのか、遺伝子編集技術が先なのか。

どれも今競っている分野ですので、ほんの数年の差で世界の方向が変わる。その時に人類が倫理観を含めて先に協議をするのが間に合うのかどうか、それが自分の中で一番の争点ですよね。それが間に合わなかったらば、取り返しのつかないことが起きてしまうかもしれない。

――今がちょうど激動の時代ということですね。

河森:そう思いますね。一つ、これは『マクロスF』のころから扱ってるネタですけど、脳に直接接続するインプラントだけは、そっちに行ったらもう自由意志はアウトだと思っています。これは『マクロスF』でやったので、今回はやるつもりはないですけど(笑)。

――ありがとうございました!

[インタビュー/石橋悠]

TVアニメ『重神機パンドーラ』作品概要

<放送・配信情報>
2018年4月4日より
TOKYO MXに毎週水曜23:30~

4月6日より
WOWOWにて毎週金曜21:30~

4月6日より
BS11にて毎週金曜23:30~

4月7日よりMBSにて
毎週土曜27:38~

2018年3月29日より
Netflix にて日本先行独占配信/全世界展開決定

〈イントロダクション パンドーラ編〉
2031 年 、次世代エネルギーとして開発されていた量子リアクターの暴走事故「翔龍クライシス」により世界は激変した。
突如 、 地下から広がったその閃光は都市ビル群を呑み込みながら大地を覆い尽くし、
やがて生物、機械、植物を超越・融合した未知なる特異進化生物「 B.R.A.I 」 が出現 した 。

7 年後、翔龍は 絶対防衛都市 「 ネオ翔龍 」へと生まれ変わっ てい た 。
驚異的スピードで進化を遂げ人類 を滅亡 の危機に陥れた B.R.A.I に対抗する 、 人類最後の希望の砦である。

運命に導かれネオ翔龍に集 う、 レオン、クロエ、クイニ ー 、ダグ 。
彼らを防衛軍へと迎え入れる 、 セシル、ケイン、ジェイ、グレン。
そして、人類の存亡をかけて戦う特殊部隊「パンドーラ」が誕生する。

契約の時、希望は彼らに託された――

<スタッフ>
原作:河森正治・サテライト
総監督:河森正治
監督:佐藤英一
シリーズ構成:根元歳三
キャラクター原案:江端里沙
キャラクターデザイン:安彦英二
重神機デザイン:河森正治
色彩設計:林可奈子
美術監督:伊藤聖
CGディレクター:後藤浩幸
音楽:得田真裕、眞鍋昭大
制作:サテライト

<キャスト>
レオン・ラウ:前野智昭
クイニー・ヨウ:花澤香菜
ダグ・ホーバット:津田健次郎
クロエ・ラウ:東山奈央
グレン・ディン:内田雄馬
ケイン・I・ハサン:石塚運昇
ジェイ・ユン:梅原裕一郎
セシル・スー:茅野愛衣

檜山修之/中村悠一/近藤孝行/石川界人/瀬戸麻沙美/能登麻美子/石田彰

公式サイト
公式Twitter @unit_pandora

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