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『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「赤霧」レビュー【全作レビュー連載第3回】

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「赤霧」レビュー|1人のジェダイの心に「赤い霧」がかかるーー小国の姫と孤高のジェダイ、運命の物語! 様々文化をミックスさせた“オリエンタル・ダークSF時代劇”爆誕!【全作レビュー連載第3回】

『スター・ウォーズ』にも影響を与えた黒澤明の存在感

『スター・ウォーズ』が日本をルーツに持つと言われるゆえんは、ジョージ・ルーカスも愛した黒澤明監督の存在があるからです。『赤霧』を制作するに当たってもチェ・ウニョン監督は、日本の古い映画を参考にしたと語っています。

ここからは私の考察も入りますが、今作は他の8エピソードと比べて、黒澤リスペクト度が高い作品になっているのではないでしょうか。

まず『赤霧』というタイトルです。黒澤明監督の『赤ひげ』という作品が存在し、これはそのオマージュと言えるでしょう(※赤霧の意味については後述します)。

主人公の名前である「ツバキ」はおなじく黒澤映画である『椿三十郎』に登場する凄腕の浪人・椿三十郎から取ったと思われます。ツバキの剣の腕や、無精髭、葛藤を抱える姿もよく似ていますね。

その他にも、ツバキ一向が土砂降りにあうシーンはカラーアニメーションでありながら、豪雨を黒い色で表現し黒澤映画で多用される「白黒の雨」を思わせるような演出になっていましたし、旅の道中では『羅生門』を彷彿とさせるやぐらのついた大きな門が描かれていたり、『七人の侍』で印象的だった岩陰から村の門を切り取るショットであったりとオマージュにあふれていました。

これにはジョージ・ルーカスのみならず国内外のクロサワファンも大喜びではないでしょうか! 私も視聴しながら「『スター・ウォーズ』でこんなものが見れるなんて~! クロサワ履修しといてよかった~!」と思わず涙ぐんでしまいましたよ(泣)。

忘れてはいけない『スター・ウォーズ』“らしさ”、ハードなドラマと希望

オイオイオイ!『スター・ウォーズ』度星5なのにさっきからオリエンタルだ、クロサワだと全然『スター・ウォーズ』感が無いじゃないか!

と心配されている方、ご安心ください。ご覧になればわかると思いますが、ちゃんと『スター・ウォーズ』なんです!

まず先程触れた本作のタイトルについての考察ですが、「霧」というのは視界を遮るもやのようなものですよね。そして「赤」というのはシスやダークサイドを表すものです。

主人公のツバキはフォースによって見てしまった「あるビジョン」によって自分の力を信じきれずにいるという設定です。つまり、ジェダイである彼の頭のなかに不安というもやがかかっている。ジェダイの力に不安を持ち「赤い霧」が見え隠れしてしまっているということではないかと思われます。

そしてあらすじ等を確認してほしいのですが、この物語は1人のジェダイと1人のお姫様のお話です。これってどこかで見たことがありませんか……?

まるで『スター・ウォーズ』に登場するアナキン・スカイウォーカーとパドメ・アミダラの壮絶な運命の物語のようじゃないですか!! 

そうなんですこの『赤霧』という作品の物語構造は、ガッチガチに『スター・ウォーズ』なんですよ! あの2人のハードなドラマを踏襲した作品になっているわけです。登場する武器や名称ももちろんそうですが、もう作品のテーマ自体がスター・ウォーズ』なんですよ。

日本でしかできないこと、サイエンスSARU、チェ・ウニョン監督にしかできないことがプラスされた、れっきとした『スター・ウォーズ』になっているんです。この粋な計らいに私も原作ファンとして見ていてとっても幸せで、あるシーンを見てまた涙を流してしまいました。

だからみなさん思い出してください。アナキン・スカイウォーカーは愛するパドメと出会いどのような選択をしたか、彼が命を落とす時、どんな行動をしたかを。

そして確かめてください。本作の主人公であるツバキが、どのような運命を選ぶのかを!

[文/ヨウイチロウ]

連載バックナンバーはこちら!

◆【連載第1回】「The Duel」レビュー
◆【連載第2回】「タトゥイーン・ラプソディ」レビュー
◆【連載第3回】「赤霧」レビュー
◆【連載第4回】「T0-B1」レビュー
◆【連載第5回】「村の花嫁」レビュー
◆【連載第6回】「九人目のジェダイ」レビュー
◆【連載第7回】「The Elder」レビュー
◆【連載第8回】「のらうさロップと緋桜お蝶レビュー」
◆【連載第9回】「THE TWINS」

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』とは

ディズニープラスにて独占配信

ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化から多大な影響を受け制作した「スター・ウォーズ」の創造のルーツとも言える日本へルーカスフィルムが強いリスペクトを込めた「スター・ウォーズ」史上初の一大アニメプロジェクト。「スター・ウォーズ」の創造のルーツとなった“日本”、そしてその日本から新たに誕生する、「スター・ウォーズ」への期待が、世界的に高まっていく中で、エグゼクティブ・プロデューサーであるジェームズ・ウォーは「これは私たちが愛する“アニメ”という文化を生んだ日本へ贈るルーカスフィルムからのラブレターです。」と日本アニメに対する熱い想いを語る。参加したクリエイターたちが、<スター・ウォーズ>そして<日本のアニメ>への熱い情熱を持って創り上げる、独自のビジョンで描いた9つの「スター・ウォーズ」は9月22日(水)16時よりディズニープラスにて全9話一斉に日米同時配信される。

◆ディズニープラス公式サイト

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