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『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「T0-B1」レビュー【全作レビュー連載第4回】

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「T0-B1」レビュー|『スター・ウォーズ』の世界に日本初のあのTVアニメの要素を加えた快作【全作レビュー連載第4回】

オリジナル・トリロジーの雰囲気もあわせ持つ巧みなストーリーライン

『鉄腕アトム』を思い出さざるを得ない要素があるのはもちろんですが、そこと『スター・ウォーズ』の世界観を上手く融合させている点も特筆すべき点のひとつ。

少年型ドロイドのT0-B1が主人公になっている部分は本作ならではに近いところがありますが、CO-3といった他のドロイドたちが登場していたり、アナキン・スカイウォーカーやルーク・スカイウォーカーが育った惑星タトゥイーンを思わせる砂漠の星が舞台になっていたり、一目で『スター・ウォーズ』の世界だとわかる説得力を持っているのです。

そしてこのT0-B1というキャラクターの境遇。彼はジェダイになって宇宙を旅したいという憧れがあるのですが、ミタカ博士からそういった部分を諫められて今の生活を余儀なくされているところがあります。

しかしミタカ博士は理由なく押さえつけているのではなく、T0-B1には隠された資質があり、彼を守るためであったのです。こういった部分にオリジナル・トリロジーの主人公であるルークとの共通点が少なからず感じられます。これは元々『スター・ウォーズ』のファンである人へのアピールポイントになり得るでしょう。

とはいえ、『鉄腕アトム』と『スター・ウォーズ』をなぞるのではなく、約15分という短い時間で本作独自の展開を見せ綺麗に物語を着地させているので、結末はぜひ作品を視聴して確かめていただきたいところ。

このふたつの要素はただのオマージュではなく、日本のアニメファンと『スター・ウォーズ』ファン、その両者へ訴えかける魅力のひとつという位置づけなのです。

意図を感じざるを得ないキャスティングと、欲しい時に欲しい音が鳴る気持ちよさ

本作の見どころとしてピックアップしたいポイントの最後のひとつが、声優さんたちの“声”の部分も含めた“音”の部分。まずは声についてですが、本作の主人公・T0-B1は野沢雅子さん、ミタカ博士は磯部勉さんが演じています。

野沢さんは『ドラゴンボール』シリーズの孫悟空役が有名で、海外のアニメファンにもその名が知れ渡っている存在。『ドラゴンボール』以外にも『銀河鉄道999』の星野鉄郎や『ど根性ガエル』ひろしなど、少年役を演じたら今なお右に出るものはいないのではないか? と思わされるような、生ける伝説と言える存在です。

野沢さんの事を調べてみると、1963年のアニメ『鉄腕アトム』がアニメデビュー作であるとのエピソードを知ることができます。

そして磯部勉さんは俳優としても活躍する大ベテランで、海外の映画やドラマの日本語吹替版に多数出演。中でもハリソン・フォードさんが演じた役の吹替は有名です。

ハリソン・フォードさんと言えば『インディ・ジョーンズ』シリーズなども知られていますが、『スター・ウォーズ』シリーズを語る上で欠かすことのできないキャラクターのひとり、“ハン・ソロ”を演じた俳優です。

そんなおふたりが物語の重要キャラクターとして花を添えているということで、そこから意図を見出すなという方が無理というもの。このキャスティングからも、日本のアニメと『スター・ウォーズ』の融合を感じざるを得ません。

もうひとつ音の部分で挙げておきたいのが、効果音の部分。本作のサウンド・デザインは大野松雄さんが担当されたそうなのですが、この方も伝説級の存在。なんと1963年のアニメ『鉄腕アトム』の音響を手がけた方なのです。

それを知ると、T0-B1のぴょこぴょこといったような足音が、アトムのあの特徴的な足音のようにも聞こえてきてしまいます。

その部分以外にも、終盤にあるライトセーバーを用いた殺陣のシーンの効果音たちは必聴で、バトルに迫力や映画の『スター・ウォーズ』らしさを加えていることがわかると思います。

ライトセーバーの刀身を出現させた時の特徴的な音や、振りまわしている時のブオンブオンという音、刀身と刀身がぶつかり会った時の音などがとにかくカッコよくバトルを飾っています。欲しいときに鳴ってほしい音がそこにある感覚と言えばいいのでしょうか、本当にこれだけでも『スター・ウォーズ』を感じられてしまうのです。

もちろんアニメーションの方も、ポップでコミカルな絵柄の雰囲気を守りつつ、『スター・ウォーズ』らしい殺陣にまとめられ手に汗握ること間違いなし。これが無いと『スター・ウォーズ』にならないという、骨組みの部分がしっかり作り上げられています。

ぜひとも音の部分も含め、日本が生み出した初のTVアニメである『鉄腕アトム』のエッセンスを加えた『スター・ウォーズ』の世界を、骨の髄までしゃぶりつくしてみてはいかがでしょうか!

[文/胃の上心臓]

連載バックナンバーはこちら!

◆【連載第1回】「The Duel」レビュー
◆【連載第2回】「タトゥイーン・ラプソディ」レビュー
◆【連載第3回】「赤霧」レビュー
◆【連載第4回】「T0-B1」レビュー
◆【連載第5回】「村の花嫁」レビュー
◆【連載第6回】「九人目のジェダイ」レビュー
◆【連載第7回】「The Elder」レビュー
◆【連載第8回】「のらうさロップと緋桜お蝶レビュー」
◆【連載第9回】「THE TWINS」

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』とは

ディズニープラスにて独占配信

ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化から多大な影響を受け制作した「スター・ウォーズ」の創造のルーツとも言える日本へルーカスフィルムが強いリスペクトを込めた「スター・ウォーズ」史上初の一大アニメプロジェクト。「スター・ウォーズ」の創造のルーツとなった“日本”、そしてその日本から新たに誕生する、「スター・ウォーズ」への期待が、世界的に高まっていく中で、エグゼクティブ・プロデューサーであるジェームズ・ウォーは「これは私たちが愛する“アニメ”という文化を生んだ日本へ贈るルーカスフィルムからのラブレターです。」と日本アニメに対する熱い想いを語る。参加したクリエイターたちが、<スター・ウォーズ>そして<日本のアニメ>への熱い情熱を持って創り上げる、独自のビジョンで描いた9つの「スター・ウォーズ」は9月22日(水)16時よりディズニープラスにて全9話一斉に日米同時配信される。

◆ディズニープラス公式サイト

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