
豪華キャストで繰り広げられた世界一”美味しい”戦争! プレミアム音楽朗読劇『VOICARION XIX〜スプーンの盾〜』の感想を語り尽くしたい
2025年1月30日(木)に大千穐楽を迎えたプレミアム音楽朗読劇『VOICARION XIX〜スプーンの盾〜』。
総勢51名(65役) のシェフたちによって繰り広げられた奇跡の晩餐会は2024年2月8日の大阪公演から2025年1月30日の東京公演まで全45公演というロングラン公演を終えて幕を閉じました。
本稿ではプレミアム音楽朗読劇『VOICARION XIX〜スプーンの盾〜』を観劇した筆者の溢れ出る感想を書き連ねていきたいと思います。
私と『スプーンの盾』の出会い
私がはじめて朗読劇に触れたのが、『スプーンの盾』でした。その時は実際に観劇したのではなく配信だったのですが、これまで自分の持っていた朗読劇の概念を180度変えてくれたのが文翁さんが描く『スプーンの盾』だったのです。
その配信は映像はなく、音声配信でしたが「音だけでこんなに情景が目に浮かぶものなのか!?」「個々の人物の際立ちが素晴らしい……」と驚いたのを今でも覚えています。
脚本の良さもさることながら音楽がとても良く、これは現地で是非『スプーンの盾』を観劇したいとずっと思っていたところ、45公演のロングラン公演の発表があり、飛び上がって喜びました。
劇作家・舞台演出家 藤沢文翁の描く奇跡の晩餐会
今回私はありがたいことに4公演当選したので、4回も素敵な晩餐会に参加することが出来たのですが、同じ内容なのに4公演とも全くと言っていいほど違う物語に見えてしまう不思議な魔法にかかっていました。
『スプーンの盾』は言わずと知れた皇帝ナポレオン・ボナパルトと料理の帝王と呼ばれるアントナン・カレームを中心とした物語です。
私は学生時代日本史専攻だったので世界史に疎く、ナポレオンという名前は知っていても何をした人物なのかを恥ずかしながら知りませんでした。
文翁さんが描く朗読劇は史実に基づく作品が多く、作品をきっかけに歴史に触れる機会に恵まれるので非常に勉強になります。
本稿のタイトルにもあるように『スプーンの盾』は料理の力で、血の一滴も流すことなくフランスを守った人々の世界一”美味しい”戦争の物語。
ナポレオンといえば、フランス革命後の混乱を収拾し、軍事独裁政権を樹立した人物として有名ですが、ナポレオンの強さを魅せるのではなくナポレオンを料理で支えた若い料理人に焦点を当てた物語というのが、また面白いところであり、文翁さんだからこそ魅せられる物語だと思います。
1公演1公演が違う物語 役者陣の素晴らしい演技
セット、照明、衣装、音楽、そして役者陣、すべてが完璧だと思える空間で最高のランチ(昼公演) やディナー(夜公演) をいただいてお腹が一杯になった『スプーンの盾』。
各公演それぞれの人物の考え方や仕草、言い回しなどが細かく違い、何回見ても発見があり、何度観ても楽しめる、そしてこれからも何度でも観たい、そう思える朗読劇に出会えたことはまさに奇跡でした。
そう思わせてくださったすべての関係者の方々に向けて終演後、心のなかで何度も「ありがとうございます」とつぶやき続けたのは私だけではないはず……!
特に役者陣の熱演には本当に心を打たれてしまい、しばらくはずーっと「あのときのセリフの熱量はすごかった」、「あそこの言い回しはあの人と違ったな」など色々と考える日々が続きました。
私が見に行った回は下記の4回。
1月12日(昼公演)
カレーム役:武内駿輔さん、ナポレオン役:山口勝平さん、マリー役:内田真礼さん、タレーラン役:小野大輔さん
1月16日(昼公演)
カレーム:村瀬歩さん、ナポレオン役:石井正則さん、マリー役:寿美菜子さん、タレーラン役:高木 渉さん
1月18日(夜公演)
カレーム役:中井和哉さん、ナポレオン役:大塚明夫さん、マリー役:日髙のり子さん、タレーラン役:山寺宏一さん
1月30日(昼公演)
カレーム役:緒方恵美さん、ナポレオン役:立木文彦さん、マリー役:日髙のり子さん、タレーラン役:関 俊彦さん
錚々たるキャスト陣すぎて、今思い出しても震えます……!
ここからはそれぞれの日程の感想を連ねていきたいと思いますが、その前に公式HPに書かれている登場人物の紹介を引用させていただきます。
アントナン・カレーム
貧困のどん底から「国王のシェフかつシェフの帝王」と呼ばれるに至る人物。
貧しい家に生まれ、10歳でパリの路上に捨てられる。住み込みで料理人になり、めきめきと頭角を表すようになる。破天荒な天才で、自由な発想の持ち主。
ある日、彼の噂を聞きつけたナポレオンの右腕である名外交官タレーランから声がかかり、国家の威信を背負った「料理外交」の場に駆り出され、一癖も二癖もあるナポレオンと彼の来賓たちによる、料理の戦いが始まる。
ナポレオン・ボナパルト
言わずとしれた皇帝ナポレオン。コルシカ島の田舎貴族から皇帝にまで上り詰めた男。彼の才能、功績は語り尽くせぬものがあるが、今は戦に敗れ、皇帝の座を追われエルバ島で死を待つだけの幽閉生活を送っている。根っからの軍人であり、文化芸術に関心を示さず心は常に戦場にある。最初は料理などに興味がないナポレオンも次第にカレームの料理の魔法に魅せられてゆく。
マリー・グージュ
盲目ながら、カレームの右腕である。
カレーム曰く「ドン・ピエール・ペリニョンは盲目だったがゆえに、最高のシャンパンを生み出した。彼女の目は、一般人の目では見ることができない料理の王国を見ることができる」。ナポレオン、カレームという二人の全く異なる帝王の側にいて、彼女にしか見えない目線で物語を語る。
モーリス・ド・タレーラン
ナポレオンの腹心、天才外交官である。彼が得意としたのが料理外交であり、これがナポレオン帝国の拡大につながっていった。365日同じ食材で違うメニューを出せというタレーランの要求に難なく答えたカレームの才能を確信し、カレームの名をヨーロッパ中に轟かせ、あらゆる王侯貴族が一度は口にしたいと思い描く「料理の帝王」を生み出し、かつそれを利用し外交を有利に進めた。
1月12日(昼公演)
武内駿輔さんが演じるカレームは、とにかく真っ直ぐ! とにかく料理の研究に熱心で、寝ても覚めてもずっと料理のことしか考えていないマジメ人間なカレームという印象を受けました。美食家のタレーランが見初めるだけあるな、と思えるような天才肌のカレームでした。
そしてこのカレームを支えるのが内田真礼さん演じるマリー。可愛らしくも芯があり、盲目ということを感じさせない振る舞いが特に印象的でした。
武内カレームと内田マリーの相性が本当に抜群で、バカ真面目なカレームにはしっかりした内田マリーがお似合いでした。
しかし芯のあるしっかりした中にもカレームへの姉さん女房的な優しさが溢れていて私の個人的な感想ですが、武内カレームと内田マリーには少し恋愛の雰囲気が感じられ、そこも観ていてなんだかほっこりしました。
そして山口勝平さん演じるナポレオン。私のナポレオンの印象は偉そうでとにかく強い、という印象だったのですが、勝平さんのナポレオンは威厳の中にも優しさが垣間見える、人間味溢れるナポレオンでした。
史実を知っている方が観るとまた別の感想を持たれるのかもしれませんが、私の率直な感想は「ナポレオンっていい人なんだな」でした。不器用ながらも一生懸命に生きて、上まで登りつめたんだなと分かる演技でした。寄り添う姿勢がありながら、威厳は忘れず国を守ろうとする姿には感服しました。
そのナポレオンを支えるのが小野大輔さん演じるタレーラン。フランスの外交官にして美食家のタレーラン、多分本物がタイムスリップしてきたんだな、と思うほどしっくりくるタレーランでした。外交官らしい頭の切れる感じや、貴族らしい高貴な立ち居振る舞い、そして最後の熱い演説。「そこに本当にタレーランは居たんだ」と感じざるを得ませんでした。
他には、モノマネが得意な武内カレームのナポレオンのモノマネが上手だったことや、山口ナポレオンのコルシカの踊りが可愛すぎたことなど、この座組でしか得られない栄養がたくさんありすぎました!
内田マリーを囲んでの華麗なる晩餐会へご列席賜り、ありがとうございました🍽️
— VOICARION(ヴォイサリオン)公式 (@voicarion) January 12, 2025
武内さん渾身のオンリーワンランチ、河西さんの純真さも絶品でした✨
明日も🥄#武内駿輔 #河西健吾 #山口勝平 #高木渉 #内田真礼 #小野大輔 #諏訪部順一 #voicarion #スプーンの盾 https://t.co/fTgnePrrZ2 pic.twitter.com/TIVWJ3WphT