
映画『スーパーマン』武内駿輔さんインタビュー|今作のスーパーマンは恐ろしい程に人を愛し続ける「パンクロッカー」
レックス・ルーサーとの対比。一人では「スーパーマン」足り得ない
ーー今作のスーパーマンは、序盤から打ちのめされたり、弱さを見せたりと、これまでの「完全無欠」というイメージとは異なる「等身大の青年」として描かれています。その人間らしい部分を声で表現するにあたって、どのような点にこだわりましたか?
武内:そのあたりはものすごく難しかったです。これまでスーパーマンの声を担当されてきた先輩方は、本当に低音ボイスが素敵で、威厳のある王様のような風格がありました。でも、今回のスーパーマンはどちらかというと、まだ王子様なんです。
武内:全てをコントロールできるほどのパワーや人柄はまだ持っていないけれど、唯一無二の存在、可能性を秘めたヒーロー。今までのスーパーマン像とは違う、新しい描き方だと思いました。
なので声を当てる上では、無理に取り繕わないようにしたいなと。危険なほど、純粋に「みんな良い人なんだ」と信じる。そういったニュアンスを声に乗せようと思いました。相手を包み込むというよりは、相手を信じ、同じ目線に立つことを心掛けるイメージです。
ーー今作のスーパーマンは強さよりも優しさがポイントで、仲間がいなければスーパーマンたり得ないという物語でもありますよね。
武内:すごく良いアプローチだなと思ったのが、『ザ・ボーイズ』のホームランダーのような残虐性も垣間見える点です。愛犬のクリプトを奪われたシーンでは、「この人をコントロールできなくなったらどうなるんだろう?」という恐怖が描かれています。
まさにスーパーマンがスーパーマンであるためには、ロイスや仲間がいることで、その力が初めて正義のために使われる。決して一人で成り立っている存在ではないんです。
それは『マン・オブ・スティール』のような描き方とはまた違って、紛争もテーマになっている分、胸に迫る恐ろしさがある。そういうテイストを丁寧に描いているからこそ、「仲間」という存在が効いてくるのだと思います。
ーーそんなスーパーマンと相対するレックス・ルーサーはどのように映りましたか?
武内:スーパーマンは最後までレックスのことを信じている節があって、自分の強さの源を彼に解説するのは、どこかで「レックスと分かり合える」という希望を持っているからなのかなと解釈しました。
今回のレックスは特に、現代の人間が持つ「弱さ」の象徴的な存在なんです。行動には移しますが、基本的には言論で人をコントロールする。誰かに攻撃を指示したり、モンキーボットたちにSNSでの誹謗中傷を書き込ませたり、口ばっかりの人と言いますか(笑)。
僕らの世代には、SNSが発達して、何でも言語化して表現しようとする人が増えた印象があります。それはすごく現代的で、そこに陥りがちになってしまう弱さでもあると感じています。あげ足取りや論破力を鍛えることで、実際に力を得られてしまうことが現代の恐ろしさでもある。それに対してスーパーマンは、「まずは身近な人を信じること」が強さの源だと示す。それって、もはや理論じゃないんですよね。
レックスとスーパーマン、二人の対比によって、そのテーマを表現しているのかなと。レックス自身は嫌なヤツなんですが、僕らデジタルネイティブ世代から見ると、どこか憎めない。自分の中にも「レックスがいる」と感じる部分があるんです。今までのレックス・ルーサー像とは違った描き方で、ニコラス・ホルトさんくらいの年齢感の俳優が演じることにすごく意義があると思いました。
今作のスーパーマンは「ポップス」ではなく「パンク」
ーースーパーマンを演じていて特に印象に残っているセリフはありますか?
武内:今作のテーマの一つに「パンク」があると思っています。エンディングテーマもイギー・ポップが歌う「Punkrocker」ですし、「パンク」という言葉が意外と現代に合っていると思うんです。
ロイスとパンクロックについて話すシ-ンがありますよね。その流れで「あなたは人を信じすぎる」と言われて、「いや、でもそれってパンクだよ」とスーパーマンが返す。あのセリフはすごく印象に残りました。考えるよりも前に「良いものは良い」と、自分の信じるものを貫き通す。スーパーマンがそれを言うことには非常に意味があります。
今回のスーパーマンは「パンク」であって、「ポップス」じゃない。恐ろしいくらいに人を愛し続ける「パンクロッカー」なんだと。その着眼点には驚きましたし、ジェームズ・ガン監督ならではのセリフだと思いました。
ーー最後に、今作を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
武内:今作のスーパーマンは、エンタメ性も会話劇もしっかり描かれていて、色々な楽しみ方ができる作品です。2D、3D、4D、ScreenX、字幕、吹替と、まさに「映画館に行く楽しさ」を再定義してくれる作品だと思います。
テレビやスマホの小さな画面ではなく、ぜひ劇場で“体験”していただきたいです。より作品のメッセージ性が伝わると思います。映画館でお待ちしております!
[インタビュー/失野 撮影/小川いなり]
『スーパーマン』作品情報
あらすじ
子供も大人も、愛する地球で生きるすべての人々を守るため日々戦うスーパーマンは、誰からも愛される存在!
そんな中、彼を地球の脅威とみなし暗躍する、最強の宿敵=天才科学者にして、大富豪・レックス・ルーサーの世界を巻き込む綿密な計画が動き出す―
キャスト
ロイス・レイン:レイチェル・ブロズナハン(種﨑敦美)
レックス・ルーサー:ニコラス・ホルト(浅沼晋太郎)
マイケル・ホルト/ミスター・テリフィック:エディ・ガテギ(諏訪部順一)
ガイ・ガードナー/グリーン・ランタン:ネイサン・フィリオン(東地宏樹)
ホークガール:イザベラ・メルセド(松岡美里)
メタモルフォ:アンソニー・キャリガン(津田健次郎)
ジョナサン・ケント:クリストファー・リーヴ(ささきいさお)
マーサ・ケント:ネヴァ・ハウエル(宮沢きよこ)
ジミー・オルセン:スカイラー・ギソンド(下野紘)
バジル・グルコス:ズラッコ・ブリッチ(千葉繁)
アンジェラ・スピカ/エンジニア:マリア・ガブリエラ・デ・ファリア(行成とあ)
イブ・テシュマッカー:サラ・サンパイオ(ファイルーズあい)
ペリー・ホワイト:ウェンデル・ピアース(楠見尚己)
キャット・グラン: ミカエラ・フーヴァー(櫻庭有紗)
メトロポリス市民:長田庄平 松尾駿(チョコレートプラネット)
スーパーガール:ミリー・オールコック(永瀬アンナ)
ピースメイカー:ジョン・シナ(大塚明夫)
(C)&TM DC(C)2025 WBEI






























