
『怪獣8号』第2期 市川レノ役・加藤 渉さん&古橋伊春役・新 祐樹さんインタビュー|第19話での本獣との交戦の中で、レノと伊春に生じた心の変化。ひとつ壁を乗り越えたレノと伊春の姿をその目に焼き付けてほしい
第19話での本獣との交戦の中で、レノと伊春に生じた心の変化
──先ほども少しお話に出ていた第19話について、感想をお聞かせください。
新:伊春の回想を挟みつつ、本獣と交戦するシーンがありましたが、レノが「みんなを守るためにはもっと力がいる」と自分を追い込んでいたせいで、周りが見えなくなっていたので、伊春の気持ちがレノに届いていない感じがしました。
でも、本獣の攻撃で意識を失ったレノを見て、避難するように緒方から指示されたのに「レノと俺にもう少し時間をください」と申し出て、危険を顧みずレノを助け出して、意識を取り戻したレノに頭突きしたところでようやく話を聞いてくれて。掛け合いができてからは気持ちよくお芝居させてもらえました。
レノも伊春の話を聞いていないわけではなく、信頼はずっとしてくれていて。余獣から伊春を助けた時も「伊春くんのおかげで冷静になれた」というセリフがあったように、信頼はしてくれているけれど、伊春自身がレノをまだ信じていないチグハグさがうまく表現できたんじゃないかなと思っています。
──伊春の回想シーンでは、常に一番の道を歩んでいたのに、防衛隊に入って初めて挫折を味わったため、レノに置いて行かれることを恐れていたのではと思うような描写もありました。
新:「視界の外からやってきた」というモノローグがありましたが、レノをずっとライバル視していたのが如実にわかった回でもありました。伊春にとっては追い越されたどころか、着実に成長していくレノに劣等感みたいなものは感じていたのかなと。でもそれを受け入れて、吹っ切ったから「なめんな! なんでもかんでも一人でやろうとしやがって」や「年下なんだから黙って俺に頼っとけ!」というセリフが言えたんじゃないかなと思っています。
加藤:チグハグさみたいなものは、レノ自身は感じていなかったと思いますが、僕は俯瞰で二人を見た時に感じていました。伊春に頭突きをされてから最後に「討伐作戦延長戦開始だ」と言われるまでの間にセリフがかぶるシーンがあって、通常の場合では「別々に録りましょう」とテイクを分けて録ることが多いんですが、僕が「一緒にやりたいけどどうしようかな?」と判断を迷っていた時に新さんが「一緒にやろうよ」と言ってくださって。若干、かぶっているところはありましたが、二人同時に話して会話できたのがすごくありがたかったです。
またその前の展開では、新さんが隣のマイクで、レノが絶望している中で伊春の声が聞こえてきた時に鳥肌が立って。「伊春がいてくれて本当に良かった!」とレノだけでなく、僕も本当に思ったし、氷の壁をたたき割った音も、レノや自分の不安を割ってくれたようにも感じられて。いち視聴者目線でもおもしろかったし、演者としても「役者でよかった」と思えるような体験が、ここの掛け合いでできました。
新:めちゃめちゃ嬉しいです。ありがとうございます。
──レノはカフカが怪獣8号になった時、自分が守ると思っていたのに、変身させてしまったことへの負い目や後悔が大きすぎて、気負っていたところがありましたが、終盤のシーンでそんな重圧から開放されたのかなと。
加藤:第15話でカフカが怪獣に変身しようとしてもまったくできなかった時、キコルが「ふ~ん、そういうこと。私をナメるな。防衛隊をナメるな」というセリフがありましたが、レノと伊春のエピソードも結局、そういうことなんじゃないのかなと。レノは自分がやらなきゃと思い詰めているけど、伊春もたぶん「ナメるな。俺も戦える」と思っていて、この第4部隊の戦いでも描かれていたのかなと感じます。
──第1期もそうでしたが、第2期もグッとくるシーンや熱いエピソードが多いですね。
新:熱いシーンにシリアスな展開がプラスされているので、より感情が揺さぶられるし、みんなのお芝居もすごくて。
加藤:本当にそうですね。
──これだけカロリーが高いシーンやセリフが多いと、収録後はぐったりしてしまうのでは?
新:みんな結構、和気あいあいとしていますよ。
加藤:僕らは第2期では途中からの参加なので、出番までの第1部隊の話は放送で初めて観て、「こんなにすごいんだ!」ってビックリしました。僕らの現場感といえば、この第19話とか限られた話数に限られていて。第19話に関しては緒方役の咲野(俊介)さんから「二人の緊張感にあてられて、こっちまで緊張してきたよ」と言われました(笑)。なので特別、緊張感がある回だったんじゃないかなと思います。
新:咲野さんの人柄もありますが、そんな風に笑顔で話してくださったり、休憩中は他のキャストさんもにこやかに話してくださって、まさに「緊張と緩和」という感じでした。
加藤:宮(繁之)監督や音響監督の郷(文裕貴)さんともコミュニケーションを近い距離で取らせていただけたし、空気はとても良かったと思います。でも本番になると、すぐにシーンと張りつめた空気になりました。
二人ともお気に入りだという第16話の魅力を熱く語る!
──第2期全体の印象と、これまでに放送されてきた第13話~第19話の中でお気に入りのエピソードを教えてください。
新:それはもちろん第19話! と言いたくなるけれど……
加藤:違うシーンを言いたくなりますよね。では僕のほうから先に言わせてもらうと、第16話の「四ノ宮功という男」です。
新:長官バトル!
加藤:第2期全体の印象に近いんですが、第1期でも作画がすごかったですが、第2期ではProduction I.Gさんの作画の熱量がより上がっている感じがして。それを特に顕著に感じたのが第16話でした。登場人物の表情のお芝居もすごかったし、演出も素晴らしくて。あの回は基本的に功長官や伊丹副長官というおじさんがメインで、そこに来栖という若いオペレーターが登場するんですが、鈴木崚汰さんのお芝居がヤバくて。
新:良すぎてちょっとムカついたもん(笑)。
加藤:功役の玄田(哲章)さんのお芝居と吉野(裕行)さんが演じる9号の異物感に、大熱量の鈴木崚汰さんが加わる構図が、アニメーションという総合芸術として美しすぎて、とんでもない回だなと思いました。なので、いろいろな人にこの第16話を観るように勧めています。「配信されているから今観て!」って。それくらい印象深い回でした。
新:僕も第16話好きだったんだけど、全部言われたな~(笑)。
僕は第15話でキコルがカフカに「私をナメるな。防衛隊をナメるな」と仲間を信じるように背中を押すシーンが好きです。この作品はカフカがどれだけ成長していくのかが見どころの1つだと思いますが、8号になかなか変身できず苦しんでいる時に、キコルの言葉で呪縛が解けて変身できたことで、カフカは自分ひとりではなく、みんな一緒に戦っていることを改めて感じて、前を向けたので、めちゃめちゃ熱いなと。
キコル役のファイルーズあいさんとカフカ役の福西さんのお芝居も良かったので、すごく好きです……でもやっぱり、第16話の長官バトルもすごく良かったし。それを踏まえた上での第19話ですよ!
──第16話でアリの怪獣をせん滅した時、長官が「若い世代にはいつも驚かされる。簡単に私の想像を超えてゆく」と若い世代に託そうと思っているセリフもありましたね。そして第18話では隊員たちが大きな決意で立ち上がって……。
新:この第19話ではレノと伊春が絆を深めて、また一つ壁を乗り越えて強くなった気がします。僕らも命を削る熱量で全力で演じましたので、見逃した方や一度観ている方も配信でぜひ何度でも!
──第2期から登場した新キャラによって、物語に変化を感じた点はありますか?
新:鳴海の影響は大きいんじゃないかなと思います。鳴海は怪獣8号であるカフカにいい意味で気を遣わず、普通に怪獣8号として見ているところが、カフカも「自分を認めさせなきゃ」と燃えると思うし。
新:鳴海はカッコいいし、強いし、カフカとキコルを成長させていくキーパーソンだと思います。カフカやキコルを育て上げていくのも重要な役割で。更に長官の死という出来事が重なって、キコルは極限状態で戦っているし、そんな彼女を支えているのも鳴海かなと思うので、多大な影響を与えていると思います。
加藤:原作は物語のテンポの速さが作品のおもしろさにも繋がっていると思うし、アニメもテンポが速いけど、原作よりも(ペースを)抑えて描写している分、オリジナルエピソードで補完されていたり、原作よりも印象がより濃くなるキャラクターが多いなと第1期から感じていました。
第2期でいえば、第1部隊の面々は本当に濃いなと思っていて。長谷川もそうですが、僕が一番推しているのは花澤香菜さんが演じられている東雲りんです。
水色ってアニメ映えするんだなと感じていて、この作品は怪獣というファンタジックな要素がありつつも、現代の日本を舞台にしているのでリアリティがありますが、その中でも8号の発光する水色は視覚的にも目立つ色だと思いました。東雲も髪色に水色のメッシュが入っていて、「キャラクター的なビジュアルではなく、鳴海に憧れているから染めている可能性があるな」と水色の発色を見て思ったりして。そういう意味で第1期で小此木このみを推していて今も推していますが、第2期からはそこに東雲も推しに加わりました(笑)。
新:推し変したんですか?
加藤:いや、推しが増えたんです!
──猛威をふるっている怪獣9号ですが、カフカとレノが辞めた後に怪獣専門清掃業者に入ってきた男が9号として姿を現したんですよね。まさかここまで強いとは。
新:知能が発達し、学習して、人や他の怪獣の能力や知識をどんどん吸収していって、第16話では四ノ宮長官が吸収されてしまって、キコルの前でその姿を見せるというショッキングなシーンもありました。伊春たち防衛隊のメンバーだけでなく、僕個人も今までに見たことがないタイプの怪獣で。しかも分裂していろいろな場所に同時に現れたり。「ウイルスのようだ」というセリフがありましたが、まさにその通りですね。
──でも9号が強大だからこそ、視聴者も憎悪して、「あの怪獣を倒してほしい」と防衛隊に感情移入する気持ちが強くなる一面もあるのかなと。
新:防衛隊も視聴者の皆さんも気持ちを一つにして、9号に対して防衛隊がどんな戦いをするのか見守ってほしいし、応援してもらえたらと思います。
──これから第2期も終盤に入っていきます。今後の見どころについて、全体とご自身のキャラ的な部分、それぞれのご紹介をお願いします。
新:第1期も怪獣迎撃のための準備段階でしたが、第2期に入ってより強力になった怪獣に対して、各自が「力を鍛えていかないといけない」と覚悟と想いを持って準備してきました。ひと皮むけ始めた伊春とレノは、次の第20話でも活躍する場面が残っているので、引き続き注目して観てください。
加藤:第1期の時は全話出演していましたが、第2期ではそうではなくて。原作は先日完結しましたが、第2期でどこまで進むのか、どう締めくくるのかを楽しみに最後まで観てほしいです。ここまで熱い展開でしたが、ここからもっと激アツになっていきます。Production I.Gさんも限界まで描いてくださると思うので、僕も「頑張れ!」と最大限の熱量で応援するだけです。ひとつ壁を乗り越えたレノと伊春の姿をその目に焼き付けてください。
作品情報
あらすじ
異動命令が下った第3部隊の新人たちがそれぞれの任務先に向かうなか、彼の前に現れたのは、第1部隊を率いる防衛隊最強の男・鳴海弦だった。
隊員としてのカフカを必要としない鳴海に対し、自信の力を認めさせるため「怪獣8号」の強大すぎる力と向き合うことになるカフカ。
しかしその陰では、「怪獣9号」の脅威が迫っていた…。
継承される意志と力、新たな識別怪獣兵器(ナンバーズ)適合者の誕生、そして防衛隊を襲う史上最大の危機が訪れる――。
キャスト
(C)防衛隊第3部隊 (C)松本直也/集英社















































