
『おそ松さん』10周年:第4期の“日常”と“夏”のデザインアプローチ|キャラクターデザイン・安彦英二さんインタビュー
角刈り、ドロネコetc… ディスカッションを重ねたキャラたち
──キャラクターデザインに関して、とくに難易度が高かったエピソードを教えてください。放送済みの8話までになりますが。
安彦:やはり、第3話「雷雨と角刈り」の角刈りは難しかったです。この回の総作監は和田(佳純)さんなので、僕は最初に角刈りになった一松のデザインを起こして、あとの5人は最終チェックだけさせてもらったんですが、角刈りって結構シビアなんですよ。
──というと?
安彦:単に髪を角刈りにすれば良いわけではなくて、キャラクターの頭蓋骨を意識して、骨の形に沿って描かないと、見る人の違和感につながってしまうんです。しかもこの回の角刈りの役割は出オチですから、見た瞬間違和感を拾われてしまうと、途端に面白くなくなってしまう。しっかりと説得力を持たせた角刈りにするためには、思いのほか描き手の技術が必要になりましたね。また第7話「物語だじょ」は「童話」をオマージュした物語だったので、そのぶんデザインを描かなければならず作業量が多かったです。この回は、僕が総作監でしたし。
──どの物語の登場人物もアイコンとなる服装があるので、どこまで似せるか考えるのも大変そうですね。
安彦:そうですね。キャラクターデザインという立場上、見る方がわかりやすいデザインを優先しましたが、あとは上の方々にチェックしていただいて判断してもらう感じで進めましたね。
──また、第2話のスイカ星人や第8話のドロネコは、原作にも登場しているんですよね。
安彦:はい。スイカ星人に関しては原作を元にデザインしましたが、ドロネコは原作とストーリー自体が違うからか、デザインも変えたいという話になって。何度かやり取りしながらビジュアルを固めていきました。ベースは、松原さんが見せてくれたとあるご当地ゆるキャラ。そのゆるキャラが少しふっくらしていたので、ドロネコもそっちの方向性なのかなと思い、最初はわりとふくよかなデザインにしてみました。ドロネコは二本足で走るという設定を聞いていたので、「太ったネコが二本足で逃げる姿って面白いだろうな」とも思って。ですが、実際は痩せているのが正解だったようです。野良猫のリーダー的存在なので、野性味が出たほうがいいと。
──そのラリーが何度かあったのですね。
安彦:そうですね。なおかつ、ドロネコは飼いならされて懐いたら見た目がガラリと変わるので、そこでどう変えるのかといったところも、監督や松原さんと話しながら、細かくイメージを聞き出して作っていきました。加えて、台本に描かれたシチュエーションを想像して、いちばんしっくりきそうなデザインを提案した感じですね。
──では、第8話時点で一番ディスカッションしたのはドロネコ。
安彦:ですね。
──逆に言うと、それ以外はみなさんの共通認識がちゃんとできていたのですね。
安彦:だと思います。“着せ替え”に関しては、もう外さないかなという感じがしますね。
──では、第4話「縁日」に登場する、赤塚りえ子さん(フジオ・プロダクション社長)についてはいかがですか?
安彦:あぁ……たしかに、りえ子さんのデザインも比較的やり取りは多かったです。個人的には、ゆるキャラのような方向に行ったほうが良いんじゃないかなと思ったんですよ。というのも、実在している方なので似せるとご本人があまりいい気持ちにならないでしょうし、作品から浮いてしまいそうだなと思ったので。ただ、監督や松原さんはもうちょっとご本人に寄せたかったらしく、さじ加減が難しかったですね。最終的に、「これを足すと、りえ子さんになる」というポイントをひとつ伺ったので、それを足して仕上げました。どんなポイントだったか忘れてしまったのですが(笑)。
あと、これから放送される回にもイチから作らなければいけなかったキャラクターや、実在する人物をベースに着せ替えする回がありました。
──こんなに着替えるのも『おそ松さん』ならではですよね。そのたびにデザインを起こすから大変だろうなと感じます。
安彦:一時期、デザイン作業に追われて本当に忙しかったので、「安彦さんが楽な話数をやってください」と、第5話を担当させてもらいました。
──第5話というと、「安静」(Aパート)の回ですね。劇中でも触れられていますが、アニメ制作陣にも優しい、極端に動きの少ないエピソードでした。
安彦:そのぶん、ほかの総作監さんが割りを食ってしんどかったんじゃないかなと思います。申し訳ない……。今期は30分かけて一つの話を描く長編が多いので、以前にも増して演出が肝になることが多く、全体的にカロリーが上がっているように感じますからね。
──ともあれ、第4期まできてまた新たな『おそ松さん』に出会えている気がして、毎話本当に面白いです。そんな本作に、安彦さんは第1期から携わっていますが、今『おそ松さん』はどんな存在になっていますか?
安彦:僕の生活を支えてくれている作品であり、いろんな仕事につなげてくれている作品でもありますね。そういう意味では、とてもありがたい存在です。アニメーターである僕の可能性を広げてくれました。
──安彦さんのXを拝見すると、おそ松さんの前に参加されていた作品は全然絵柄が違ってびっくりしました。そりゃあそうだよなと思うのですが。
安彦:ははっ(笑)。というか、『おそ松さん』のような作品はほかにありませんからね。なので『おそ松さん』みたいな作品のオファーは来ませんが、この作品をやったことで「いろんなテイストのキャラクターデザインができるんだな」と広めてもらえたのは大きいです。そういう意味でも感謝しないといけませんね、『おそ松さん』に。
作品情報
あらすじ
赤塚不二夫の名作ギャグ漫画「おそ松くん」を原作に、
大人になった6つ子たちを描いたTVアニメ「おそ松さん」。
20歳を過ぎてもクズでニートで童貞…
だけどどこか憎めない彼らが繰り広げる予測不能な日常を描き、
気付けば日本一有名な6つ子となってしまった!
あの衝撃の放送開始から今年で10周年。
新たな仲間? 新たな騒動? そして、新たな6つ子の一面も…?
4度目の大暴走を見届ける方も、初めての方も、
どうしようもない彼らと、また笑おう。
10年分の笑いと愛を込めて、
「おそ松さん」第4期、ここに開幕!
キャスト
(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会




























