
TVアニメ『異世界黙示録マイノグーラ』最終回直前! 伊良拓斗役・熊谷俊輝さん×アトゥ役・楠木ともりさんインタビュー|夫婦漫才的な掛け合いから一転、最終回に描かれる冷酷なタクトとは?
聖騎士を皆殺しにした衝撃的なシーンを振り返る
──ここまでのシーンを振り返りたいのですが、やはり印象的だったのは、第5話で、アトゥが聖騎士たちを、いたぶりながら皆殺しにしたシーンでしょうか。
熊谷:「ここまで邪悪な要素が強かったの?」ってアトゥだったので、我が側近ながら悪過ぎるなと思いました(笑)。
楠木:このシーンはオーディションでもあったので、ドキドキしながら収録を待っていたんです。本当にずっと怒っているし、なおかつ怖いんですけど、その流れは崩さないようにしつつ、メリハリをつけようと思いました。どこで相手に仕掛けて、どこで引くのが怖いのか。どうしたらアトゥが魅力的に見えるのかを考えつつ、でも考えない過ぎないように演じました。
──殺しながら、恍惚の表情になっていくのが良かったです。
楠木:本当に情緒がすごいんですよ。感情の上下が激しくて、急に楽しくなったり怖くなったり。普通にしゃべっていたのに急に凄んだりするので、なかなかその感情に追いつけなくて、こんなにやっていいのだろうかと思っていたんですけど、そこから段々、もう思い切ってやりますね!となっていった気がします(笑)。
──ちょっとやり過ぎたかもとアトゥに言われても、平然と「大丈夫だよ」と笑顔で応えるタクトもヤバいですけどね(笑)。
熊谷:アトゥもタクトのことを考えて動いた結果ですから! でも段々と、アトゥのほうがまともなんだと思えてくるんですよね……。
──ちなみに、後ろで楠木さんの演じるアトゥを見ていて、いかがでしたか?
熊谷:原作で見ていたときも、セリフ付きで聞きたかったシーンなので、めちゃめちゃハマっていて、感動しました。
──ここでどうやら、『Eternal Nations』の世界というわけではないこともわかってくるんですよね。
楠木:なので、お芝居だけでなく物語的にも、ひとつのターニングポイントになったシーンだと思います。
──その他にはありますか?
楠木:侍女であるメアリア(CV.高尾奏音)とキャリア(CV.前田佳織里)とじゃれてヘラヘラしているときのタクトがかわいくて、その演じ方も素敵だなと思いました。タクトとしての軸をぶらさずにデフォルメして演じられていて、それがタクトの魅力を引き立てていたと思います。
熊谷:ありがとうございます。
──双子とのやり取りはいかがでしたか?
熊谷:小さい女の子を侍女に選んだのも、話しやすいからという理由で、タクトには下心がまったくないので、親戚の小さな子供を相手にする感じにしようというのが、自分の中でありました。ただ、第6話で、2人に邪悪について教えるときは、それがちゃんと伝わるよう、目線を合わせるということを意識しながら演じていました。
──ここまでで、印象的だったセリフはありますか?
熊谷:収録時に面白かったのは、第7話のラストですね。アトゥが双子にヤキモチを妬いたシーンなんですけど、「君しかいないんだ、アトゥ」と言った瞬間に、アトゥの妄想が始まるんです。その中で、もう一度「君しかいないんだ、アトゥ」と言うんですけど、そこは音響監督の土屋さんが、もうタクトじゃなくてもいいからみたいな(笑)。
楠木:いわゆる、乙女ゲームのイケメンキャラみたいな、鼻に掛けたしゃべり方をしてほしいというディレクションだったんですけど、やったことがなかったんだよね(笑)。
熊谷:そうなんです。やったことがなくて、そこばかりリテイクしてしまって、時間をすごく使ってしまったのが申し訳なかったです。
楠木:でも面白かったです。しゃべる前に、ちっちゃい「ん」を付けるんだよとか(笑)。私は女性だから、そういったディレクションを聞いたことがなかったので、なるほど! こうやって息を抜くんだ、と思っていました。
──今後必要になってくるかもしれないですからね。
熊谷:そうですね。極めたいですね(笑)。でも、そういう新しい発見はありました。
──でも、ここで書いたら、見直してしまうかもしれないですね。
熊谷:恥ずかしいですね(笑)。言わないほうが良かったかも……。
その道のエキスパート!という芝居が見られた終盤
──クライマックスにかけての見どころはどんなところですか?
楠木:終盤にかけても、キャストが豪華なんですよ。新キャラが続々登場するんですけど、皆さんの張り切った演技を見られたのが、すごく良かったです。
──違うジャンルのゲームであるRPGが攻めてくるという、見たことがない設定でしたが、四天王が、アイスロック(CV.杉田智和)、フレマイン(CV.橘 龍丸)、レディウィンド(CV.伊藤 静)、オルドメカニク(CV.千葉 繁)で、魔王が森川智之さんでした。
楠木:その手のキャラクターのエキスパート!みたいな方々だったので、それを現場で直接見ることができて良かったです。なので、ぜひそこを楽しんでいただきたいです。また、出てくるゲームのジャンルによって、ルールが違うというのがギミックになっているので、そこがお話的にも面白いところだと思います。
──RPGにはRPGのルールがあるという、異種格闘技戦みたいな感じですよね。
熊谷:そういった設定もなかなかないですよね。
──個人的に、「あいつは所詮四天王最弱だ」という、フレマインのお約束セリフが面白かったです(笑)。
楠木:そういうあるあるも含めて、メタ的な面白さもありました(笑)。
──それと、終盤はイスラ(CV.井上喜久子)と双子がキーになっていきましたね。
熊谷:そうですね。イスラの死というのは、マイノグーラ全体を動かすトリガーになったような気もします。
──メアリアとキャリアとイスラの関係性も、短い話数で、親子のような関係性を描いていました。ここは井上喜久子さんのお芝居が素晴らしかったと思います。
楠木:タクトにもアトゥにもできなかった母性という愛の伝え方をイスラはしていたんですよね。もともと双子の出自のところで、お母さんを食べなければならなかったという残酷な飢えを経験していたんですけど、それをもう一度経験しなければいけないという物語の切なさがありました。この作品は、会話劇から始まって、そこからコメディ要素もありつつ、戦闘シーンもカッコ良かったんですけど、胸を打たれるシーンを入れ込んでくるんですよね。きっと先生は、そういういろんな側面を描いていきたいんだろうなと感じました。
それに、イスラの表情があまり変わらないのもいいんですよ。その分、井上喜久子さんのニュアンスに耳が行くので。その中で、目が潤んでいる描写があったりするから、より一層胸を打たれるという……。
熊谷:収録中も、お母さん!と思いながら見ていました。こうあってほしいというお母さん像そのままの声だったので、すごく感動しました。
楠木:英雄としての厳しい一面と、母の優しさ。声を変えているわけではないのに、ニュアンスでそれをやられているのが、改めて素晴らしくて……。でも喜久子さんは、別作品で、私のお母さん役でもあるんですよ! 「今度別作品でも一緒だね」と声を掛けてくださったり、休憩中も話しかけてくださるので、ママ〜ってなっています(笑)。
──そういう意味で、学ぶところが多い現場だったのですね。
熊谷:そうですね。芝居の幅は本当に広がりました。その道のプロ!という方が集まっていたので、吸収できるものがたくさんありました。
楠木:あとどうしても言いたいことがあって。第8話で、ブレインイーターのイチロウ/ジロウ/サブロウが出てくるんですけど、それを寺島拓篤さんが1人で演じていたんです。その3人のキャラ感を寺島さんが現場で考えて、分けていったんです。普通なら別録りにしたいと思うんですけど、合わせ以外は流れでやっていて、キャラクターを瞬時に切り替えられる技術がすごかったです。
熊谷:すごかった!
──では、最終話の見どころについて教えてください。
熊谷:イスラが死んでしまい、タクトにとってマイノグーラという国が何なのかという話になっていくと思います。どうやってタクトが引っ張り導いていくのかは注目してほしいです。
──これまでのタクトと、明らかに違う雰囲気でしたよね?
熊谷:そうですね。感情的というか、冷酷さがありますよね。初めて、あそこまでの冷酷さをタクトで演じたんです。そのくらいのセリフの重みや鋭さがあったので、これまでのほんわかタクトとは違う、人が変わったようなタクトを見ていただけたらと思います。
楠木:第12話まででもかなり盛り上がっていましたけど、まだ「え!?」という展開があるんです。キャラクターも設定も盛り盛りで、そのひとつひとつが作用していくので、最後はどうなっちゃうんだろうという気持ちで見届けていただければと思います!
[文&写真・塚越淳一]
作品情報
あらすじ
そこでユーザーランキング一位を獲得した伝説のプレイヤー、伊良拓斗は、入院中に意識を失う。
気が付くと拓斗は、まるでゲームの中のような世界、イドラギィア大陸に降り立っていた――。
そこに現れたのは、『Eternal Nations』で拓斗が最も愛用していたユニット、《汚泥のアトゥ》。
そこで拓斗は、ある決心をする。
「――僕たちの国を作ろう。僕と、君だけの王国を」
アトゥと共に、邪悪な国家である《マイノグーラ》を設立することを決めた拓斗。
個性豊かなダークエルフや英雄を国民とし、この世界ではチートとも言えるゲームシステムを利用しながら、大好きな内政に励むのだった。
キャスト
(C)鹿角フェフ・じゅん・マイクロマガジン社/「マイノグーラ」製作委員会












































