
バレエシーンは見栄えやアニメらしい表現よりもリアリティを追求──劇場アニメ『パリに咲くエトワール』監督・谷口悟朗さん、バレエ作画監督・やぐちひろこさんインタビュー
アニメーターこそ動かなきゃいけないし、所作も実際にやってみたほうがいい
ーーお話を聞いていて、アニメを作る大変さ・難しさを改めて感じています。
谷口:どの作品もそれなりに苦労はあると思いますが、本作の場合は二重、三重に大変だったところもありました。
やぐち:本当に限界まであきらめずに、こだわっていらっしゃったと思います。
谷口:ギリギリまで色々と対応いただき、ありがとうございました。
やぐち:でも、フランスの振付師の先生に振り付けをお願いしたと聞いたときはビックリしました。そこまでするんだって。
谷口:調べていくなかで、権利関係などもあって既存の振り付けを使うことができない、しかも、当時の物を再現しただけではバレエに見えない、ということがわかりました。なら、今の観客が観てバレエに見えるギリギリの振り付けを探る必要があるわけです。それで、どうせ誰かに頼むなら、現地のプロフェッショナルの方にダメ元でお願いしてみてもいいかなと思って。そしたら請けてくださったので、ありがたかったですね。田北さんは現地まで足を運んで、振り付けを覚えて帰ってきてくださったんです。田北さんはロシアバレエの方なので、フランスの振付を覚えるのは大変だったと思います。ありがたい限りですね。
やぐち:みなさん、すごい行動力ですよね。だから、なおさらバレエシーンを作ることの責任を感じていました。
谷口:本当に色々な人の協力がないと成り立たない作品でした。
ーー本作は、取材したことや実際の体験・経験をもとにリアルに作られているんですね。
谷口:アニメーションだから体験しなくてもいい・知らなくても作れるというのはないと思っていて。例えば実写作品だと、役者さんが作品ごとの登場人物に合わせて肉体改造したり、所作を覚えたりするじゃないですか。ボクシング作品なら、ボクシングのジムに通ってみるなどは、ごく普通にやるわけなんです。それをアニメーションの場合は手で描けるから必要ないよねという訳にはいかないと思います。
ーー作画するうえでも、ある種の役づくりも必要というか。
谷口:作品に対して、どれくらい基礎的なものを積み上げて説得力を持たせていくかだと思いますね。アクションものの作品だと、私の知っているアクション作画の人たちはだいたい武道経験か深い知識があります。それをベースにしたうえでどこを強調するのか、どこで嘘をつくのか。納得のためにも色々と動かなきゃいけないし、わからなければ知識を求めるべきだと思います。
前にとある作品で、海辺でこちらに向かって水をかけるというシーンがあったんですよ。その水の動き方が分からないということで、自分の家の風呂場で同じ動きをしたアニメーターの方がいらっしゃいました。誰であれ、分からなかったら動くしかないと思います。
バレエの魅力は肉体言語の強さ
ーーバレエ経験者のやぐちさんが思うバレエの魅力を教えてください。
やぐち:ストーリーを音楽と踊りだけで表現できるところですね。色々なシーンが音楽で描かれたり、ダンサーが全身で感情を表現したり、言葉の壁を超えて演目を楽しむことができます。音楽と踊りの素晴らしい表現がシンクロすると感覚は非現実の世界に連れていかれます。美しい音楽とプロのダンサーの表現力と技や肉体は、生の舞台を観ると本当に感動します。
ーー谷口監督は本作を通じて、バレエのどんなところが魅力だと感じましたか?
谷口:肉体言語の強さです。ただの感情ではなく文法にのっとった表現は強いですよね。しかもバレエは視覚的な部分に加えて、聴覚部分のところで音楽がついてくる。視覚と聴覚両方が合わさることで、抽象化された強さがある。先日、(脚本担当の)吉田玲子さんと熊川哲也さんの「くるみ割り人形」公演を一緒に見に行きました。アレンジが入ってはいたのですが、根っこの肉体言語としての素直さ、強さはやはり強いと再確認しました。
ーー本日は色々なお話、ありがとうございました。最後に改めて本作の見どころ、推しポイントを語っていただければと思います。
やぐち:もちろんバレエシーンも推しポイントではあるのですが、なぎなたやフジコのイメージシーンなど、本当にキャラクターの芝居が細かくて丁寧に作られています。柴犬のマメゾウはとてもかわいくて癒されるので、期待していてください(笑)。パリの街並み・世界観・音楽もすばらしいので、ぜんぶ含めて劇場で楽しんでいただければと思います。
谷口:音楽的な響きにもこだわって作っていますが、そういうのは劇場でないと味わいづらくなっちゃうので、一度は劇場に足を運んで見て欲しいです。今回、セリフを過剰には増やしていません。それは、肉体言語で伝わるところがあると考えたからです。映像・音楽の一体感をぜひ感じてください。バレエ経験者の方も、未経験の方も楽しめるストーリーになっていますので、色々な方に届くと嬉しいですね。
[インタビュー/M.TOKU]
『パリに咲くエトワール』作品情報
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(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会





























