
「リラの精の踊り」を教えるシーンは、最初は口で教えるだけでしたが、オルガが踊って教えるように提案しました──劇場アニメ『パリに咲くエトワール』バレエ作画監督・やぐちひろこさんインタビュー
『ONE PIECE FILM RED』を手掛けた谷口悟朗監督と、『崖の上のポニョ』『魔女の宅急便』などで知られる近藤勝也氏がタッグを組んだオリジナル劇場アニメ『パリに咲くエトワール』が、2026年3月13日(金)より全国で公開中です。
本作の舞台は20世紀初頭のフランス・パリ。画家志望のフジコと、なぎなたの名手でありながらバレエへの憧れを心に秘める千鶴が、異国の地で様々な困難に直面しながらも夢を追いかける姿に夢中になる人が続出。口コミでじわじわと日本中に“パリエト旋風”が拡大しています。
本稿では、作品公式SNSに投稿された、やぐちひろこさんによるバレエパートの演出や作画などについてのお話をまとめました。
※本記事は劇場アニメ『パリに咲くエトワール』公式Xに投稿された内容を再構成しています。
レイアウトの前段階でチェックがあることで、普通の工程よりもチェックが1回多くなっています。
──バレエを正面から取り上げたアニメーション作品は珍しいです。
やぐちひろこさん(以下、やぐち):そうですね。私は知り合いから「バレエ好きだったよね。興味ある?」と声をかけられたことをきっかけに参加を決めました。私自身、子供のときにバレエをやっていたこともあり、かなり前のめりに参加を決めました。
──バレエシーンの作画作業は、どんなふうに進めたのでしょうか?
やぐち:多くのバレエシーンについては、実際に専門家の踊りをモーションキャプチャし、それを3DCGに反映した参考の動画がありました。これをもとに原画さんに、まず大まかにラフのプランを描いてもらい、そこでバレエの押さえておきたいポイントなどをチェックして、その上でレイアウトとラフ原画に入ってもらうようにしました。
レイアウトの前段階でチェックがあることで、普通の工程よりもチェックが1回多くなっています。ラフだけでも大変な作業なので最初の段階で、方向性を固めようということでこのやり方になりました。
──絵コンテの段階では、どのぐらいまで決まっていたのでしょうか。
やぐち:絵コンテの段階ではそのシーンでなにを伝えたいかはわかる内容でしたが、踊りについてはそこまで具体的に描かれていませんでした。なので、演出打ち合わせのときに、やりとりを重ねて具体的にどんな動きにしていくかを固めていきました。
カット内の細かい部分ですが例えばオルガが千鶴に「リラの精の踊り」(『眠りの森の美女』)を教えるシーンは、最初は口で教えるだけでしたが、オルガが踊って教えるように提案しました。実際にレッスンを受けていてもそういうことはありますし。そういう工程で作っていたので、事前に撮ったモーションキャプチャには無い内容になることもあり「どうしましょうか」となることもありました。
ポジション、姿勢、目線といったものも実際に忠実に描くことで、バレエの持つ余韻も含めて伝えられたらと思って描きました
──バレエをバレエらしく描くうえでどんな点を意識したのでしょうか?
やぐち:今回、私はバレエをある程度リアルに描きたかったので、バレエの何が美しいかをちゃんと表現したいと考えました。例えば3DCGは踊りの全体的な動きを反映したあたりなので、そこに反映されていない足先、指先などは意識を払ったポイントです。
バレエは先端がきれいなことが大事なので。そういう要点については、最初の段階で、つま先の伸ばし方や手の使い方などについての注意事項をまとめて、原画さんに共有しました。そのほかポジション、姿勢、目線といったものも実際に忠実に描くことで、バレエの持つ余韻も含めて伝えられたらと思って描きました。
──千鶴のバレエシーンはどのように描こうと考えましたか?
やぐち:千鶴はあの年齢からバレエを始めて、プロに追いつけるほどの、天才ではあるんですよね。だから基本の動きも含めて、最初から上手く描いています。ただ谷口監督と話をして、武道をやっていたから関節が開かない、股関節がかたいという設定にして、それを踊りには反映しています。非常に細かいところですけれど。
──苦労をしたシーンはどこでしょうか?
やぐち:大勢の人が画面内で踊るシーンや長尺カット、モーションキャプチャのないダンスカット、練習シーンなどは、大変でしたね。担当された原画さんも苦労されたと思います。あと、『ジゼル』が上演されるシーンは、尺も長く、カメラワークもついていたので大変でしたが、同時に気に入っているシーンにもなりました。
企画・構成:岩崎航太
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(C)「パリに咲くエトワール」製作委員会




























