
「馬鹿者!」に込められた想い──春アニメ『本好きの下剋上 領主の養女』井口裕香さん&速水奨さんが語るローゼマインとフェルディナンドの関係性の変化【インタビュー】
超豪華な平民のガヤに驚!?
──『領主の養女』編でローゼマインやフェルディナンドを演じる際に心がけていることや、役作りで気をつけたことを教えて下さい。
井口:原作を読んでいてわかっていたことではありますが、台本を開いたときに、ローゼマインは単純にセリフ量がすごく多いんです。ローゼマイン目線のモノローグ、ナレーション、セリフ、その切り替えをパパパっとやらないといけなくて。放送を見ているとそれほど気にならないですが、台本チェックをしているとかなり入り組んでいるので、感情の切り替えはすごく意識して演じるようにしています。見ている人が「いまのはなに?」とならないように、きちんと伝えたいですから。
あとはやっぱり、ローゼマインが軸になって物語が動いていきますので、見ている人も巻き込む勢いを、セリフに出せたらいいなと思っています。
速水:フェルディナンドは、演じる上で“逃げ場”がないんですよ。しっかり喋らないといけないですし、表現もジャストでなければいけない。「こんな感じかな?」「こんな感じでいいのかな?」みたいな演じ方はできないので、覚悟が必要な役です。そういう役にチャレンジできる嬉しさはあります。ただ、僕も何十年とこの仕事をしていますけど、やはりプレッシャーを感じることなんですよ。どうしたらいいのか考えながら、毎回収録に臨んでいます。
だからこそ、特に『領主の養女』の収録になってから、共演者ともより親しくなった気がするんです。制作の人たちともフラットになったというか。僕自身、「家を出る。スタジオに着く。ドアを開ける」といった敷居がなくなったと感じていて。マイクの前に立ったときにも、普段のままでいられるように心がけているところがあります。それが進歩なのかどうかはわかりませんが。
井口:それって共演者が増えたからですか?
速水:それよりもプライベートな変化ですね。僕も普段持っていますが、(人との距離を作る)バリアってあるじゃないですか。井口さんはないですけど(笑)。
井口:ありますよ!誰よりもあります(笑)。
速水:それがなくなって親和性が生まれたというんですかね。油と卵が合わさってマヨネーズになったみたいな感じがします。
──その収録現場で、ほかのキャストも含めて印象的なエピソードがありましたらお聞かせください。
速水:ある収録の日、井口さんが高速道路の出口を間違えて、なかなかスタジオに現れなかったときがあったんですよ。
井口:本当に申し訳ありません。急いで行こうと思って普段使わない高速に乗ったら、余計にわからなくなっちゃって……。
速水:そういう些細なエピソードはありましたけど、みんなプロなので現場で事件は起こらないです。起きたら大変なことになりますからね。特に『本好き』の場合はタイムテーブルがしっかりしていて、例えば12時から収録がスタートするなら、その15分前に来てくださいと香盤表に書かれていて。みんなちゃんと集まってちゃんと収録するので、事件はなにも起きません(笑)。
井口:リテイクが多いわけでもなく、滞りなく収録が進みますからね。でも、そういう事件ではなく、先輩が格好いいなと思ったことはあります。フェルディナンドもジルヴェスターも貴族ならではの難しい用語がたくさん出てきますし、それを当たり前のように言う役柄じゃないですか。和彦さん(ジルヴェスター役の井上和彦さん)は毎回、「この言葉は言いにくいな」って始まる前にぼやくんですよ。
速水:絶対ぼやくね。「こんなの言えねえよ。カタカナばっかりだ」って。
井口:「家で1回も言えなかったよ。今日は時間かけちゃうかもな」なんて言いながら、テストでマイクの前に立ったら1回も噛まずにさらっとやられていて。先輩ずるいな、格好いいな、と思ってしまうことがあります。
それから、「男性のガヤを録ります」となったときに、たまたまその場にいる男性キャストが奨さんと和彦さんと子安さん(ベンノ役の子安武人さん)の3人だけだったときがあったんです。
速水:この3人でやるのは久々でしたね。
井口:3人が「なんだなんだ?」と言いながら、街の平民のガヤを録っていたんです。「こんないい声のガヤがある?」「こんなの『本好き』だけだぞ!」って。本当にすごいなと思いました。
合言葉は「みんな健康で!」
──1クールで終わる作品も多いなかで、ここまで長期で続くシリーズの楽しさや、逆に難しいところがあればお聞かせください。
速水:制作サイドの人が最初から言っていたんですよ。「『本好き』は最後までやりたいんですよね」って。でも、それって何年かかりますかね。最初のシリーズから8年ぐらいかかって、まだ物語の半分もいっていないですし(笑)。
井口:やっと『領主の養女』編ですからね。ここからスタートというか。
「みんな健康で!」
合言葉はいつもこれです(笑)。
速水:願わくば、今回のTVアニメのあとに、あの有名作品に負けないほど長尺の劇場版を作ってもらって。一気に貴族院の話を超えて、またTVアニメに戻ってくる。そういう遠大な計画を考えています(笑)。
井口:「やりたいです」と言っても、本当にこうやって続けられる作品はなかなかないですからね。
速水:しかも、同じキャスティングで。
井口:そうなんですよ。これからどんどんキャラクターが増えていきますし、ドラマCDでは兼役もありましたから、そこに新たなキャストがついてさらに豪華になっていきます。
速水:実質8年かかって、ローゼマインはいくつ歳を取ったんだっけ?
井口:1〜2歳かな?(笑)でも、こんなに丁寧に描いていただける作品はなかなかないので、携われて本当に幸せです。
速水:こういう仕事をしていると「代表作を書いてください」ってよく言われるのですが、僕は絶対に『本好き』を入れていますからね。
井口:すべては老若男女問わず楽しめる原作があってこそですし、応援してくださっているファンの皆さん、熱量の高いスタッフ陣のおかげで私たちも走っていられます。本当にありがたいです。
──作品にちなんだこともお聞きします。もしご自身がローゼマインと同じような状況に陥った場合、彼女のように「ないなら作っちゃおう」と思えるほど好きなことはありますか?
速水:酒作りですかね。
井口:「酒がなければ作ればいい」ですね(笑)。
速水:あとは、僕も本が好きなので、さすがに「本がなければ作ればいい」とはならないですけど、頭の中で物語を考えて楽しめればいいかなって思います。
井口:それを(なにかに)写していって。
速水:砂浜で。
井口:ロマンチック!! お酒を作るとしたらなにを作りますか?
速水:1人で作れるお酒は限られているからなぁ……穀物を口に含んで、噛んで、壺の中に……。
井口:作る工程はあまり美しくなかった(笑)。
速水:井口さんはありますか?
井口:私は、コロナ禍でダラダラと怠惰な生活を送っていたんですが、そこから一転、トレーニングに目覚めて10kgぐらい痩せることができたんです。たるんでいたお尻もプリッと持ち上がったので、「垂れているなら持ち上げればいい」かな(笑)。より高みのあるお尻を目指して、トレーニングしています。
速水:ヒップスターですね。
井口:声優界のヒップスターでございます(笑)。
速水:そういうのは、なければ作ればいいの?
井口:はい。「筋肉がなければ鍛えればいい」です。
──最後に、改めて全国ネット放送にかける意気込みをこめて、楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
井口:ついに全国ネットでの放送がスタートします。魅力的なキャラクターがたくさん登場して、物語はここからより一層盛り上がっていきますし、ここから見ていただいても絶対に『本好き』ワールドに入っていただけると思います。老若男女問わずたくさんの方に、映像の美しさ、音楽の美しさ、我々のお芝居、いろんな『本好き』の世界を感じていただき、Cパートやエンディングのイラストまで全部まるっと楽しんでいただけたら嬉しいです。
速水:先ほど言ったように、僕自身のバリアがどんどんなくなって、演じることに特化できている気がします。おそらくキャスト全員が同じように思っていて、そういうチームワークで作っていくのが『本好き』です。ましてや、放送が『名探偵コナン』の前。2作品連続で「見た目は子供、頭脳は大人」のコンセプトで、楽しい作品をお届けできると思いますので、ぜひ期待してください。
[文・千葉研一/写真・MoA]
作品情報
あらすじ
ひとりの少女の情熱が世界を動かす――
魔力を持つ貴族が支配する<エーレンフェスト>
書物なき世界で本作りに奮闘するマインだったが、
その身に秘めた強大な魔力が陰謀を招く。
下町の家族や仲間を守るため、彼女は領主の養女・ローゼマインとして生きる道を選ぶ。
大切な家族と別れ、自分の名前さえ捨てて――
常識の通じない貴族社会で、本への情熱と家族への想いを胸に、
ローゼマインの闘いが始まる!
キャスト
フェルディナンド:速水奨
ジルヴェスター:井上和彦
カルステッド:森川智之
ダームエル:梅原裕一郎
ベンノ:子安武人
マルク:前野智昭
ルッツ:田村睦心
フラン:狩野翔
ギル:三瓶由布子
ヴィルマ:安野希世乃
トゥーリ:中島愛
ギュンター:小山剛志
エーファ:折笠富美子
エックハルト:小林裕介
ランプレヒト:白井悠介
コルネリウス:山下誠一郎
カミル:日野まり
リヒャルダ:宮沢きよこ
ヨハン:髙橋孝治
ザック:福原かつみ
ユストクス:関俊彦
インゴ:中村章吾
ゲオルギーネ:田村ゆかり
ヴェローニカ:小山茉美
フロレンツィア:高山みなみ
ボニファティウス:山路和弘
アンゲリカ:東山奈央
ブリギッテ:瀬戸麻沙美
ザック:福原かつみ
(C) 香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会2026































