映画
『クラメルカガリ』佐倉綾音(カガリ役)インタビュー

『クラメルカガリ』カガリ役・佐倉綾音さんインタビュー|カガリは素の自分に近いキャラクター。オーディションテープは自宅のクローゼットで収録していた!?

 

ユウヤへの印象は「一人で青春映画をやっている子」

――演じられたカガリについて、共感できたりご自身に似ていると感じられたポイントはありましたか?

佐倉:頭を回転させていない時の自分にはかなり近いかなと思っています。ただ、カガリはあまり先のことを考えているタイプではなく、思い立ったらすぐ動いてしまう、理論より感覚派みたいなところがあって。そこはちょっと私とは違うのですが、普段のゆったりした感じや気を抜いている時のマイペースさ、あとはとことん興味のあることとないことの差がはっきりしているところなどは共感できるなと思います。

――カガリが面白いのが、子供っぽい一面もあれば大人っぽい一面もあって、すごくたくましく生きているなと。

佐倉:たくましいというか、達観しているような一面がありますよね。自分にも他人にもあまり期待していないのではないか?というか。そこは環境で身についたものではなく、彼女が先天的に持っていた素質みたいなものなのかなとも思っていて、過去に何があったかまでは分からないのですが、元々そういう性格の子だったんじゃないかと私は思っています。なので過去の重さみたいなものは特に意識しないように演じていました。

 

 

――カガリはユウヤとの絡みが多いですが、ユウヤの印象をお聞かせいただけますか 。

佐倉:……なんか、一人で青春映画やってるなー、と(笑)。一人でずっと突っ走ったら誰もついてこない、みたいな状況になっていて、気持ちはわかるけど、彼が大人になった時にこのことを思い出して恥ずかしくならないといいなと(笑)。

カガリがそこについていける子だったらよかったんですけど、カガリはそうじゃないので。ストーリーでも、途中でハシゴを外される感じが面白いなと思って。「ああー、ユウヤかわいそう」と眺めていました。

――確かに、いろいろ空回りしてしまっていましたね。

佐倉:ただ、見る人によっても感じ方が違うキャラクターなのかもしれないとも思っていて。10代の子がこの作品を見たら、ユウヤがカッコよく見えたり、「なんでカガリはついてきてくれないんだろう」と思うかもしれないですよね。そしてかつてユウヤのような経験をした大人が見ると、「分からなくはないけど、いつかその選択を悔いる時が来るかも」みたいなことを思うのかなと。

もしかしたら今回の経験を経て、それすらも「いい思い出だったな」と笑いに変えられる素敵な大人になる可能性もあると思うんです。ただ、今の青さみたいなものが、カガリを始めちょっと達観してるキャラクター達の中に存在していることで、より等身大な子供らしい印象を受けました。

特にカガリとは面白い関係値だったなと思いますね。デコボココンビというか、今どきこういう表現はよくないかもしれないのですが、男女感が逆な雰囲気があって。そういうところも含めてとても面白いコンビだなと思って見ていました。

――ユウヤからカガリへの感情は好意と言ってもいいと思うのですが、カガリからユウヤに対しての感情はどのように解釈して演じられていましたか?

佐倉:私はこの物語の中で、ちょっとカガリに恋愛感情の自覚が芽生えてもいいのかなと思っていたのですが、スタッフさんの中では「カガリは何とも思ってなくていいかも……」という感じだったので、じゃあそういったものは無しでいいか、と(笑)。

それでも、カガリにとってユウヤが大切な人であることに変わりはないと思うのですが、その先の何かに気づくのは、もっと後の話なのかなと。

 

 

――カガリ自身がまだ子供だという事なんでしょうか。

佐倉:それもあると思います。まだカガリは、自分の興味のあるものに対してしかベクトルが向いていない感じがするので、他人に対して好奇心が向くのはもう少し先なのかなと思います。

――本作にはユウヤ以外にも個性的なキャラクターが大勢に出てきます。中でも印象的なキャラクターはいますか?

佐倉:私は原作の成田良悟先生の作品が好きなので、いかにも成田さんらしいキャラが登場していて、遺伝子レベルで昂ぶるような気持ちはありましたね(笑)。

とくに好きなのは伊勢屋で、きっと子どもの頃の私がみたら「こういう大人になりたい」と思わせるような、クールで厨ニ心を掻き立てられるような存在だなと。カガリは伊勢屋と喋るシーンも多かったのですが、煙に巻く感じや喋り方もカッコよくて、心奪われる人も多いんじゃないかなと思います。大人と子供というユウヤとの対比も含めて、いろんな意味で気になるキャラクターでした。

登場人物自体がそんなに多くないこともあって、それぞれにちゃんと見せ場があるのも良いなと。過去が気になるようなキャラクターがいたり、腹に一物抱えているようなキャラクターがいたり、それぞれでもう一つ物語ができそうだなと思えるくらいで。

――確かに、いろいろなキャラクターに焦点が当たるんですよね。

佐倉:おじいちゃん(朽縄爺)とかも美味しいキャラクターだなと。これは自論なのですが、大人や老人が面白く描かれている作品は名作だと思っているので、老若男女それぞれのキャラクターの活躍が描かれているのはとてもいいなと思いました。

――少し具体的に、成田作品らしい魅力をどんなところから感じられましたか?

佐倉:登場人物のあり方であったり、セリフの言葉選びであったりに少し成田先生らしさが出ているのかなと。『バッカーノ!』や『デュラララ!!』世代にはたまらない雰囲気がありましたね。

 

 

塚原監督は、作中の世界から飛び出してきたような存在

――カガリについてスタッフの皆さんと話し合ったり、ディレクションで印象的なものはありましたか?

佐倉:最初のカガリの肩の力の抜き方の調整は少し時間をいただきましたが、そこからは結構スムーズでした。

ラストシーンは印象的なのですが、カガリとしてどれくらい感情の強弱をつけるのかというバランスを話合いながら進めました。最初は抑えめに、徐々に力を足していくような形でテイクを重ねていったのですが、最終的にはパッと肩の力を入れたテイクを出したらそれでOKが出たので、最後はやっぱりこれくらい力を込めていいんだなと。今回の物語を通じて、一歩カガリが成長したんだなと感じた瞬間でしたね。

あとこれはアフレコ中じゃないのですが、前半のアフレコを終えて休憩に入った時、スタジオの外に出たら監督が私を見て「カガリだ」とおっしゃって「私、ちゃんとカガリになれていたんだ」と安心しました。

――確かに、こうしてお話させいただいても、お喋りの雰囲気がすごく作中のカガリみたいだと感じました。

佐倉:ラジオやイベントなどの仕事だとシャキシャキしゃべってしまうので、ファンの方には「そんなにいつもの喋りかな?」と思われるかもしれないのですが、カメラやマイクが回っていない時は、こんな感じでダラダラと喋っています(笑)。

――カガリの仕事は紙の地図を作ることですが、昔こういうことに使ったなとか、紙の地図に関する思い出とかってありますか?

佐倉:親が車を運転する時に、助手席と運転席の間に紙の地図を持っていたなという記憶がありますね。私もそれをたまに見て、どこに行きたいか探したりするのですが、その時に「何ページのA-16」みたいなものが書いてあって、縦と横を組み合わせて場所を示すという仕組みを知った時には「こんな風に行きたい場所を表現するんだ、文明ってすごい」と衝撃を受けました(笑)。

でもその後自分で地図を使うようになったのはそこからかなり時間が経ってからだったので、技術もとても発達していて、気づけば地図アプリを開けばどこにでも簡単に行けるようになっていました。

思えば、紙の地図すらなかった頃の人達はちょっと移動するのにもすごく頭と労力を使っていたのだろうなと想像すると、本当はどっちが楽しいのかな、と考えてしまう部分はありますね。

 

 

――知らない土地だと、ずっとスマホの画面見て歩いちゃったりしますもんね。

佐倉:本当にそうなんです!もう地図アプリがなかったらとても移動なんてできないなと思う一方で、なかったらなかったらで、遠回りして見つけた道があったかもしれないなと考えると、便利すぎるのも良し悪しですよね。

――塚原監督と一緒にお仕事されて感じたことや、監督が作られた世界への印象を教えてください。

佐倉:PVの収録の時に初めてお会いして、その時にご本人にもお伝えしたと記憶しているのですが、この作品世界の中から出てきたみたいな方だなと感じて。その時もそうでしたし、(インタビューを聞いている塚原監督の方を見ながら)今日もそんな感じで、レトロでセピアな感じの、ちょっと時代を感じさせるようなオシャレをいつもされているので、元々監督ご自身がそういう雰囲気が好きで、それを作品の中に落とし込んでいるのだろうなと思いました。

私はクリエイターさんのクセが強いと嬉しいタイプなんですけど(笑)、塚原監督もなかなかクセのある方で、なおかつしっかりコミュニケーションも取ろうとしてくださるタイプなのもありがたかったです。ベラペラ喋るというのは違うんですけど、アフレコの休憩時間にチーズケーキを食べながらお話しして、個人的に気になっていた、『クラユカバ』に神田伯山さんを起用した理由を教えてもらったりしていました。

『クラユカバ』は伯山さんがトップクレジットを務められていますけど、『クラメルカガリ』の方は専業声優達が起用されていて、音響監督さんやスタッフさんの面子も違うので、機会があればどういうことを考えながら2つの作品を作りあげていったのかも聞いてみたいなと思っていますね。

――最後に、公開を楽しみにされているファンに向けて、本作の見どころとなるポイントを教えてください。

佐倉:あらすじを読んでいただくとなんとなく分かると思うのですが、設定も世界観もかなりワクワクするものがあって、カガリがちゃんと大冒険をします! このちょっと独特な世界観と、鮮やかな音響、そこで行われる冒険をスクリーンで体感してもらえると、カガリたちと一緒に冒険できたような気持ちになれるのではないかなと思います。是非、劇場で楽しんでいただきたい作品です 。

――ありがとうございました。

 
[取材・文/米澤崇史 撮影/MoA]

 

作品概要

クラメルカガリ

あらすじ

零細採掘業者がひしめく炭砿町…通称“箱庭(はこにわ)”。日々迷宮の如く変化するこの町で地図屋を営む少女ーカガリ。“箱庭”からの脱却を夢想する幼馴染ーユウヤ。

昨今この町で頻発する不審な”陥没事故”は、次第にふたりの日常を侵食し始めて・・・

果たして、町の命運は、カガリはこの事態を乗り越えられるのか!?

困難の先で、少女は今日"ちょっとだけ"大人になるー

キャスト

カガリ:佐倉綾音
ユウヤ:榊原優希
伊勢屋:大塚剛央
栄和島:細谷佳正
シイナ:森なな子
飴屋:悠木碧
朽縄(くちなわ):寺田農
ササラ:川井田夏海

(C)塚原重義/クラガリ映畫協會

 

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