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- 万木サエ
- 旅行、グルメ、テーマパーク系のライターを経て、アニメのジャンルへ出向。ネコとハワイと『バクテン‼︎』が大好き☆

──改めてではありますが、小林さんから見た、鈴木さんが演じる黒沢の印象はいかがですか?
小林:僕が安達役に決まったとき、「黒沢役は誰だろう?」って思いました。安達は割と若手でも演じやすいキャラクターだと思うんですが、黒沢は僕より先輩になりそうだなと感じました。いろんな方の顔が思い浮かんで、誰になるのか……と気になっていたんですけど、崚汰だと分かってびっくりしました。でも納得もしました。黒沢は精神的に大人で包容力のあるキャラクターで、その人物を僕より年下の崚汰がしっかり説得力のある形に作り込んでいたので、アフレコの時にその凄さを改めて感じました。
二人の掛け合いは、見知っている崚汰だったからこそ気兼ねなく思いっきり演じることができましたね。
──鈴木さんから見た、小林さんが演じる安達の印象はいかがですか?
鈴木:僕は、安達役は千晃だなって思っていました。「これ千晃っぽい!」って。だから千晃が安達をやると聞いて嬉しかったです。千晃の若干影のある雰囲気は格別!! 特有の声質と芝居感、役への馴染み方は、若手の中でもレベルがひとつ上。今回も千晃が出す安達の雰囲気は素敵でした。その千晃が主人公として物語を動かしてくれていたので、とてもやりやすかったなと。
──鈴木さんが年上っぽい役、小林さんが後輩っぽい役を演じることが多い印象がありますが、そのあたりの演じやすさなどはありますか?
小林:あまりお互いの年齢や役柄を意識したことはないですね。
鈴木:同年代の声優が同じ現場にいることがあまりないので、一緒にやれるのは嬉しいですね。心強いし、気持ちも楽です。
小林:やっぱり安心感があるし、あとアフレコ現場で話し相手がいるのも嬉しい(笑)。お互いに声質が違うこともあって同じ役をオーディションで受けないから、共演できることも大きいかも。
鈴木:でも昔は意識していたこともありました。自分は高3からこの仕事をやっていたので、「同世代が出てきた!」「主役をやっていてすごい!」「自分も頑張らなきゃ」という焦りみたいな気持ちがあって。負けてられないな、と思ってやってきましたね。
──本作品は「魔法使い」という特殊な設定が特徴的ですが、他のBL作品よりも意識された点などはありましたか?
小林:安達は、魔法が使えて心を読んでいる時はモノローグになるんですけど、相手に悟られないようにごまかしたり恥じらったりが多い作品だったので、同じニュアンスにならないよう技術的なところは意識していました。でもこの作品は、魔法が使えるからドラマが生まれるというより“オフィスラブコメ”という日常の物語なので、そこまで特殊設定を意識したということはないですね。
鈴木:黒沢のモノローグでいうと、ここ面白いだろうなとか、よりコメディ要素を強くしようっていう意識は普段のBL作品にはないので、そういう意味では違う感じがしました。あとアニメの収録は週1なので、ドラマCDの収録とは違い、毎回気持ちを再構築する必要がありました。
──台詞とモノローグは流れで収録されていたのですか?
小林:安達は台詞とモノローグにそこまでギャップがあるわけではないので、モノローグの中で悶々としたまま、口に出す台詞も悶々としているというか(笑)。別録りすることはなかったのですが、きっと黒沢の方が大変だろうなと思っていました。
鈴木:黒沢は場合によっては先に台詞を収録して、モノローグを後から別録りすることもありました。そっちの方が多かったかな、あまりに違うので。
小林:叫んだあとに(爽やかに)「どした?」とは言えないよね(笑)。
鈴木:「好き、好き~」って叫んだあとすぐに、普段の黒沢は出せない。息が上がっちゃう(笑)。
──尺に台詞が足りなくてアドリブを入れたこともあったと聞きました。
鈴木:第1話はそうでしたね。アドリブを入れるようなところは台本に書き込むのですが、台本が真っ黒になったこともありました(笑)。でも黒沢の気持ちになって「好き」という感情で埋められるので、言葉は紡ぎやすかったです。
──お話しているとお二人とても仲が良く、お二人の関係性が安達と黒沢の空気感にも表れているような気がします。そんな安達と黒沢の資料室での初キスシーンがとても素敵でした。アフレコ時になにかディスカッションなどはありましたか?
鈴木:そうですね。実際に唇をかわして……。
一同:(笑)。
鈴木:嘘です(笑)。
小林:実際は、あらかじめ相談したとかはなく、お互い出たとこ勝負というか。絵が完成していなかったので「どれくらい入れるべきか」という部分がまだ分からない中で、息の合った演技ができたと思います。
鈴木:音響監督や監督が調整してくださって、オンエアではすごくいい演出になっていましたね。
小林:周りに誰もいないというのが伝わってくる無音の中で、唇を交わす音、かすかな布が擦れる音、心臓の鼓動だけが聞こえる。音の使い方を繊細に演出されているシーンだなと思いました。
鈴木:我々は何もしていない(笑)。アニメーターさんと音響チームが作り上げてくれたものですね。
──お二人が空気感を創り上げたからこその素敵なシーンだったと思います。では、最後にこれから劇場版を観るファンに向けてメッセージをお願いします。
小林:特別編集版はラブ成分多めでお届けしています。公開時期が冬真っ只中で、どんなに寒くても観ているうちに体温が上がってくる! 外との温度差に風邪ひかないように(笑) 。
それくらいの熱量で、僕たちが演じたシーンはもちろん、監督、音響スタッフの方々が紡いだベストシーンを詰め込んでいます。初めて作品を観る方も、アニメシリーズを何度も観た方にもおすすめできるので、ぜひご覧いただけると幸いです。
鈴木:特別編集版ということで、新規カットや「ラブキャンドル」などの新しい要素もありながら、いつもの安達と黒沢を振り返っていただける。ちょっと恥ずかしいですけど、大きなスクリーンで糖度の高い二人の関係を見ていただきたい。僕たちからのクリスマスプレゼントのような作品になっていると思いますので、ぜひ受け取っていただけたら嬉しいです。
[取材・文/万木サエ]

アニメイトタイムズのお仕事のほか、旅行、グルメ、ウェディング、テーマパーク系のライターをしています。 旅行に行けなくなって、漫画やアニメにハマリ、今はもっといろんなジャンルを知るべく武者修行中! スポコンアニメを見て、一緒に泣いたり熱くなったりするのが最近のストレス発散方法。 ネコとハワイと『バクテン‼︎』が大好き☆
