
“何気ない日常の一瞬の空気”を切り取ることで、キャラクターの生を描く。『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』連載インタビュー|監督・畑博之さん×脚本・米内山陽子さん
描きたかったのは、“何気ないけれど、何気なくない日常”
――通学路や教室、街中でのシーンなど、「キャラクターたちが生きている」と感じられるシーンが多く描かれる本作ですが、こちらは脚本の段階から意識されていたのですか?
米内山:キャラクターたちの日常のシーンでは、馴染みのある登場人物との関わりを感じていただけるように頑張りました!
アプリゲームの中で描かれる、“何気ない日常の一瞬の空気”を大事にしたいと思っていたので、ふとした日常のワンシーンや、キャラクターたちのちょっとした動きにも注目していただけると嬉しいです。
――本作の序盤に描かれていた、Leo/needの4人による何気ない日常会話がとても印象に残っています。
米内山:本当ですか? 嬉しいです!(笑)
――畑監督も、あのような空気感を大事に制作されたのでしょうか?
畑:そうですね。一見、意味がないように思えるシーンも、キャラクターを表現する・説明するために重要な描写だと考えています。自分自身、“何気ないけれど、何気なくない日常”が好きなんですよね。
――そんな日常のシーンと対照的とも言える「閉ざされた窓のセカイ」ですが、このセカイに込めた想いや空気感についてお聞かせください。
畑:「閉ざされた窓のセカイ」はアプリゲームには登場しないセカイなので、一番自由に作れたところでもあるんです。「抜け出せない」という意味でカゴの中にありつつ、それでいて広大な空間をデザインしました。
その空間に、それぞれの持ち主につながる窓があり、諦めて燃え尽きてしまった想いが砂となって積もっている。コアは破損した文字列を吸収して澱が溜まった成長を……このようなモチーフやテーマで構築したのが「閉ざされた窓のセカイ」です。制作過程でも特に自由度が高かった部分だったので、考えていて楽しかったですね。
米内山:「閉ざされた窓のセカイ」や、“閉ざされた窓のセカイの初音ミク”のキャラクター設定に関しては、同時並行のような形で制作が進んでいました。
ある日、監督から「『閉ざされた窓のセカイ』はこのようなイメージです」という連絡を、画像とともにいただきました。「広いけれど閉塞感があって息苦しい」「複数の持ち主がいる」「諦念・諦観に包まれている」という共通認識を早めに得られたことで、制作をスムーズに進めることができたのかなと思っています。
米内山:また、複数の想いが積み重なっている砂や、アクセスが上手くいかなくてバグってしまうとか、上手くいかない、つながらないというニュアンスは、脚本からも明確に伝わるように表現しました。
“閉ざされた窓のセカイの初音ミク”から想いの持ち主にアクセスしようとするものの、持ち主からは“閉ざされた窓のセカイの初音ミク”がノイズに見えて、“閉ざされた窓のセカイの初音ミク”からも持ち主がバグって見えているシーンは、「ノイズに見える」「一部が晴れる」といったように、状況をわかりやすく描けたら、と思っていました。
――監督の想いに応える形で、米内山さんの脚本が完成したのかなと思いますが、やはり制作中はミーティングを重ねられたのでしょうか?
米内山:たっくさんやりましたね!(笑)
畑:米内山さんと自分と、アニメーションプロデューサーの山本(輝)さんで、「25時、ディスコードで。」というチャンネルに集まって夜な夜な相談していました(笑)。
米内山:本当に、まるでニーゴのように集まっていましたね。
――最後に、本インタビューを読んで再度劇場へ足を運ばれる方々に向けて、2回目以降だからこそ楽しめるポイントや注目してほしい点があれば、お聞かせください。
畑:1回目はストーリーを追うのに精一杯かもしれませんが、2回目以降は画面の隅の方で動いているキャラクターの仕草なども注目していただけたらと思います。何気ない小物や街中の看板などにも、ボカロPさん関連の小ネタを挟んでいますので、隅々まで見ていただけたら嬉しいです。
また、「閉ざされた窓のセカイ」の想いの持ち主は、日本各地の人々を対象にしています。渋谷に限らず、日本全国津々浦々が描写されていますので、もしかしたらあなたの地元も出ているかも? ぜひご注目ください。
米内山:監督が仰った通り、2回目、3回目と見ていただくと、キャラクターの細かな表情や仕草にも注目していただけるかと思います。あえて文言で詳しく説明しすぎずに、絵だけで説明しているシーンもありますので、そのシーンを考察する楽しさもあると思っています。
映画が終わったあと、「閉ざされた窓のセカイ」はどうなっていくんだろう? という予想も楽しいと思いますので、様々な視点から本作を楽しんでいただけたらと思います!
【インタビュー・文:西澤駿太郎】
『劇場版プロセカ』インタビューバックナンバー
『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』作品情報
あらすじ
CDショップで聴いたことのないミクの歌を耳にした星乃一歌。彼女はモニターに、見たことのない姿の”初音ミク”を見つけ、「ミク!?」と思わず声に出す。その声に驚いたミクは、一歌と目が合ったものの、ほどなくして消えてしまう。
後日、路上ライブを終えた一歌のスマホに、以前見かけたミクが姿を現す。寂しそうに俯くミクに、一歌はそっと話を聞いてみると、歌を届けたい人たちがいるのに、いくら歌っても、その歌が届かないという。
ライブで多くの人の心に歌を届ける一歌の姿を見て、彼女のことを知れば自分も同じように出来るのではと考えたミクは、一歌のもとにやってきたのだった。ミクの願いに「私でよければ」と微笑みながら一歌は答え、初音ミクと少年少女たちの新たな物語が始まる―。
キャスト
鏡音リン・鏡音レン:ORIGINAL CV BY 下田麻美
巡音ルカ:ORIGINAL CV BY 浅川悠
MEIKO:ORIGINAL CV BY 拝郷メイコ
KAITO:ORIGINAL CV BY 風雅なおと
星乃一歌:野口瑠璃子
天馬咲希:礒部花凜
望月穂波:上田麗奈
日野森志歩:中島由貴
花里みのり:小倉唯
桐谷遥:吉岡茉祐
桃井愛莉:降幡愛
日野森雫:本泉莉奈
小豆沢こはね:秋奈
白石杏:鷲見友美ジェナ
東雲彰人:今井文也
青柳冬弥:伊東健人
天馬司:廣瀬大介
鳳えむ:木野日菜
草薙寧々:Machico
神代類:土岐隼一
宵崎奏:楠木ともり
朝比奈まふゆ:田辺留依
東雲絵名:鈴木みのり
暁山瑞希:佐藤日向
(C)「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」製作委員会




















































