
映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』監督&プロデューサーインタビュー|スピーカーに乗ってもいいじゃない! 『ヒプマイ』だからこそ実現できた映画プロジェクトはこうして生まれた!
『ヒプマイ』の懐の広さ
──ライブのシーンについてもお聞きしたいのですが、Second StageがMVのようになっていたのが印象的でした。『ヒプノシスマイク』は毎回YouTubeにMVがアップされるので、ファンの皆さんも映像を楽しみにしていると思います。それが映画館の大スクリーンで観られるのは、ファンとしてもすごく嬉しい体験でした。
辻󠄀本:ありがとうございます! ライブ会場でライブを披露し続けるスタイルだと、最後の曲がライブで一番盛り上がるべきなのに、単調になってしまう危険性があったんです。それぞれのバトルで創意工夫をして見た目、「味」を変えようと考えました。
中岡:そうなんですよ。話しながら思い出したんですが、「味変をしたいです」と会議で挙がったんです。ファンの方だけでなく、初見の人にも映像と音楽を楽しんでもらえるようにしたくて、なんとか切り口を変えたくて辻󠄀本さんにも相談させてもらいました。
一度、バトルのテーマごとに整理して、1回戦はこういうテーマ、2回戦はこう、という風に具体的に落とし込んでいったんです。1回戦、2回戦、3回戦と進んでいく中で、3回戦は特に盛り上がらないといけない。だから、どのようなバランスで演出を組み立てるかをしっかり考えました。
その過程で、キングレコードの宮本さんにも相談しながら、シートを作成し、どこで何をやるかを整理していきました。
辻󠄀本:脚本は、キングレコードの宮本さんと脚本家の百瀬さんが主導で進めていました。ただ、その後の演出部分については「どういう表現をするか?」というのを考えるのが僕の役割でした。
最初に書かれた案をもとに、具体的に「このシーンではこういう演出にしましょう」というように落とし込んでいきましたね。一度、エクセルにまとめて、それをチーム内で確認しながら、最終的な方向性を決めました。
中岡:ラフで作成して一度キングレコードさんに見てもらいましたよね。それでだいたいの方向性を出していったんですけど、具体的な制作カロリー配分をどうするか? というのを最後まで調整していました。
辻󠄀本:僕は最初、「Second Stageは3チームだとラップバトルができないから、それぞれのパフォーマンスをMV的に見せたい」と提案したんです。そうしたら、「MVって何?」という話が広がっていって。
それと、スピーカーの存在をしっかり活かしたかったんです。ただ後ろにフワフワ浮いているだけではなく、キャラクターと密接に関わるような演出にしたかった。あのスピーカーの上にキャラを乗せるとどう見えるだろうと。あれって乗れそうですし(笑)。そこから空中バトルをしたいとも提案しました。空中戦みたいな演出ができたらいいなと。
──なるほど(笑)。
辻󠄀本:「じゃあ空中戦は盛り上がるだろうから最後だね」となって。
中岡:空中戦のところは、「じゃあ辻󠄀本さん、提案してください」と僕は言ったんですけど、とはいえ空中戦をやるとなると制作カロリーが大変なので、「キングレコードさんが止めてくれたらいいな……」とちょっと心の中で思っていたんですよ(笑)。でも、意外と「いいですね!」と言われてしまって(笑)。
──(笑)。確かに、あの空間の演出はすごかったです。
中岡:そうでしょう? 惑星みたいなエフェクトを入れて、かなりイメージ空間を作り込んだので、エフェクトのカロリーも相当高かったですし、カメラワークも大変でした。でも、一回戦と三回戦のギャップをしっかり作りたかったので、その点では成功したと思います。
最初は「さすがにこれはやりすぎかな?」と宮本さんに止められるかと思っていたんですが、「なるほど〜、いいですね!」と言われて(笑)。それで、「じゃあ、やるしかないか」となりました。
辻󠄀本:空中戦はいいとしても、「スピーカーを足蹴にしちゃダメ」と言われたら終わりだったんですが、OKが出たのでホッとしました(笑)。
中岡:でも、スピーカーに乗っていいとなってからは「どうやって乗るんだ?」という問題が出てきて。
辻󠄀本:そうなんですよ! このスピーカー、乗せるところないぞ! みたいなキャラクターもいるんですよ。例えば、天谷奴零は屏風が浮いているんですけど、その屏風に鳳凰がついているので、「周囲に舞っている羽に乗せよう!」とか。キャラごとに工夫しました。
でも、最終的には「もう、乗せなくてもいいんじゃない?」という結論になったキャラもいました(笑)。
中岡:あの作業は楽しかったですね。スピーカーの上に立っているアクスタとか作ったらいいですよね。
辻󠄀本:少なくとも、私は買います! ぜひ発売してほしいなぁ。ひとつは売れるよ。
中岡:ひとつかい!
一同:(笑)。
中岡:そのくらい本当にすべての設計が最初から決まっていたわけではなく、見えている部分から具体化しながら作っていったんです。4年間制作してきましたが、すごく長距離を走ったというよりは、ブレイクなしの中距離走がずっと続けていたような感覚です。
ストーリーものの映画とは、また違った制作感覚でしたね。楽曲ごとに区切りがあって、それをドラマパートでうまく繋ぎながら、ひとつの映画に仕上げていったので、「一本の長尺の映画を作った」という印象はないですね。
だから、作っている側も「味変しながらやっていたから、頑張れた」というのはあると思います。
── 一本の映画の中にさまざまな表現が入っていましたね。
中岡:そうですね。だからこそ、観客にもその多様な演出を楽しんでもらえたら、それだけで嬉しいですね。あまり堅苦しく考えるより、「いろいろな演出が詰まった映画を楽しんでほしい」という気持ちです。
辻󠄀本:こちらから提案すると、「それ、いいですね!」とすぐに乗ってくれることが多かったので、それがすごくありがたかったですね。「MVっぽく見せたい」と言ったときも、キングレコードさんは最初はそう考えていなかったと思うんです。
中岡:キングレコードさんは、音楽がメインフィールドなのに、MVというお話を出しても任せてくださったんです。かなり自由にやらせてもらえました。レギュレーション的に難しいこと以外は、ほとんどNGがなかったんです。だからこそ、提案のしがいがありましたし、楽しみながら作ることができました。
──大きなIPだと、監修のハードルが高いこともあります。
中岡:そうなんですよ。有名なIPだと、クライアント側の監修レイヤーがいくつもあって、「これを上に確認します」→「さらに上に確認します」→「やっぱりNGです」という流れになることもあります。でも、今回はそういうことがなかったので、すごくスムーズでしたね。企画の段階で「これはダメ」と言われることが多くなると、制作が長期戦になり、作り手としてもしんどくなってしまいますよね。
そうなると「もうこれでいいから決めてよ」みたいな、作り手と監修側の距離感がどんどん広がってしまうことが多いんです。それはそれでしょうがない部分もあるとは思いますが、今回の制作ではそういった距離感がなかったのが良かったですね。お互いに同じ目線でキャッチボールしながら作っていけた感覚がありましたし、それが最終的に映像のクオリティにもつながったと思います。
そうじゃないと辻󠄀本さんも「もう知らないよ!」となることもあったかもしれないですよね。
辻󠄀本:あるかもですね。だからといって、むやみにぶっ飛んだ提案をなんでもかんでもしていたわけではないので安心してくださいね(笑)。「『ヒプマイ』の世界なら、ここまではOKが出るかな?」という範囲で、攻められる部分をしっかり考えていました。スピーカーにキャラを乗せるとかはまさにそれです。
中岡:細かく言われないからこそ、こちらも責任を持って出さないといけないんです。自由をもらっている分、それに対する責任も伴うので、「中途半端なものは作れない」という緊張感は、僕ら制作側にも確実にありました。そのおかげで、自由が甘えになっていない健全な制作環境が保たれていたと思います。
──では最後に、今回の映画で「ここは見てほしい!」というポイントがあれば教えてください。
中岡:やはりラストの勝者のライブパフォーマンスのシーンですね。僕も辻󠄀本監督も、最初に「これは絶対にやらなきゃいけない」と考えていた部分でした。ライブの臨場感をどう再現するかは、大きな課題でした。
そのために、スタッフィングや映像の作り方など、試行錯誤を重ねました。苦労もありましたが、それだけに見どころの詰まったシーンになっています。観客の皆さんが投票を終えた後、純粋にエンターテインメントとして楽しんでもらえる場面になっているので、ぜひ注目してほしいですね。
──ライブの生々しさが伝わる演出でしたね。
中岡:ありがとうございます。本当に、ライブの“生感”を大切にしたので、少しでも実際のライブに近い雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです。
──実は、僕も試写でラストシーンを観て感動しました。「ついにここまで来たな」と思いましたね。
辻󠄀本:嬉しいですね。それこそ、僕達が『ヒプノシスマイク』のライブを実際に観たときの衝撃を、この作品で再現したいという思いがありました。
映画館に来たお客さんが「今日はライブを観に来たんだ」と思えるように、キャラクターが本当にライブをしているような体験を提供することを意識しましたね。
投票システムも含めて、映画に没入できる作りになっているので、ぜひ期待してほしいです。
[インタビュー/石橋悠]
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画像をクリックすると、関連記事にとびます。作品概要
あらすじ
キャスト
山田一郎:木村昴
山田二郎:石谷春貴
山田三郎:天﨑滉平
MAD TRIGGER CREW
碧棺左馬刻:浅沼晋太郎
入間銃兎:駒田航
毒島メイソン理鶯:神尾晋一郎
Fling Posse
飴村乱数:白井悠介
夢野幻太郎:斉藤壮馬
有栖川帝統:野津山幸宏
麻天狼
神宮寺寂雷:速水奨
伊弉冉一二三:木島隆一
観音坂独歩:伊東健人
どついたれ本舗
白膠木簓:岩崎諒太
躑躅森盧笙:河西健吾
天谷奴零:黒田崇矢
Bad Ass Temple
波羅夷空却:葉山翔太
四十物十四:榊原優希
天国獄:竹内栄治
言の葉党
東方天乙統女:小林ゆう
勘解由小路 無花果:たかはし智秋
碧棺合歓:山本希望
(C)ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Movie
映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』公開記念フェア in アニメイト
実施期間:2025年2月21日(金)〜3月23日(日)
実施店舗:池袋本店、仙台店、札幌店、渋谷店、名古屋店、京都店、福岡パルコ店、大阪日本橋店、横浜ビブレ店、新宿店、アニメイト通販
フェア内容
期間中『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』関連のキャラクターグッズをご購入・ご予約内金税込1,100円毎、 書籍・CD・DVD・BDをご購入・ご予約(内金税込1,100円以上必須)1点毎に 【バックステージパス風カード(全18種)】を1枚プレゼント!
※特典はお選びいただけません。※内容は諸般の事情により、変更・延期・中止となる場合がございます。
特典 バックステージパス風カード(全18種)










































