
映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』ヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW” 入間銃兎役・駒田航さん&毒島メイソン理鶯役・神尾晋一郎さん インタビュー|ヨコハマはヴィランっぽくみえて本質は主人公みのある真っ直ぐなヒーロー
負ける要素が見当たらなかった新曲「Choice Is Yours」
──演出としては「Out of Harmony」の⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎が印象的です。
神尾:あれで僕はもう衝撃を受けて、あれがガチョーンガチョーンっていう動きをするなんて、びっくりすると思います(笑)。
バトルとなるとどうしても肩に力が入ってくると思うんですけど、ああいう演出のおかげで思わず肩の力が抜けるんですよね。「おお!こんな動きするの?」みたいな(笑)。
音楽だと思っていたものが、まさかの物理で(笑)。でも、ここは精神世界だしなとか、色々な考察もあって楽しかったです。「じゃあ、勝ち進んだ先に待っているSecond Stageではどうなるんだろう?」っていう期待感も高まりましたし、そういうのも含めて本当に緻密に作られています。
駒田:今話題にあげた演出もそうですが、どういうものがどういうふうに動いていたのかというのが、一旦アニメでなんとなく見えてはいると思います。「ラップバトルってこういうテンションなんだ」と、見えていたアニメのシーンを良い意味で助走に使って、思い切りこの映画で全てをみなさんに晒す感じの作りになっていると思うんですよね。
だからこそ、アニメを観た方はもちろん楽しめるし、観ていない方も初っ端から『ヒプマイ』の世界がどんな激しさを持っているのかが分かると思うので、「映画を観てみたいけれど、『ヒプマイ』に詳しくないからな」というのはあまり考えずに、「やべえ作品があるらしい」っていう前情報だけで観に行ってほしいなと思います。
後悔はしないと思いますし、映画を観た一瞬で推しディビジョンや推しキャラができると思います。ベテラン勢は存分に熱を放出してほしいし、どうぞご新規さんたちも映画をきっかけにチケット代以上の何かを見つけてほしいです。
──ありがとうございます。それでは新曲について、「Out of Harmony」と「Choice Is Yours」はアフレコの後に歌唱されたとのことですが、この2曲について教えてください。
神尾:「Out of Harmony」の方がレコーディングが先で、10thライブの前には録り終えていて、黒田さん(天谷奴零役・黒田崇矢さん)とも「ライブで歌いたいよね」って話していたぐらい、TVアニメ2期でオオサカ・ディビジョンと歌唱した「PUMP IT UP」とはまた違う盛り上がりを見せてくれる攻撃力が高めな楽曲です。お客さんの前で歌いたいなとみんなで言っていた記憶があります。
「Choice Is Yours」は楽曲自体もそうですしリリックのパワーがすごくて、負ける要素が見当たらなかったですね。
駒田:うん、強い。ラップコンテンツらしいむちゃくちゃ心に訴えかけるような一曲になっていて、聴いた人が何かを感じ取れるような。Second Stageで登場するディビジョン曲には、そういった要素があると思います。
別のディビジョンと交互にバトルする曲も好きですが、ヨコハマの想いを掘り起こして内情が見えるようなリリックが「Choice Is Yours」にはすごく出ているので、やっぱり、投票する際の選択肢はヨコハマひとつになっちゃうと思うんですけど……?
一同:(笑)。
駒田:そのまま頂上まで登って行ってほしい。
神尾:たしかにね。
──「Choice Is Yours」は「信じる力」というフレーズが印象的で希望を感じられるような。
神尾:本当に前向きで希望を感じられる楽曲です。かつ、ヨコハマがオーディエンスに直接問いかけているかような部分は今までになかったところではあります。
そのうえで、「お前らの気持ちも全部含めて持っていく、ただ、選ぶのはお前らだけどな」みたいなニュアンスを最後に付け加えることで、ヨコハマのカッコよさがより際立ったかなという気がしています。
──カッコよかったです。一方の「Out of Harmony」は、「力と笑い 意地と意地のクラッシュ」というフレーズがとても良かったです。
神尾:笑いって力で潰せるんだ!って(笑)。
駒田:たしかに(笑)。ヨコハマとオオサカは方向性が真逆に近いところにあるので、そのぶつかり合いを上手くミキシングしてくださったALI-KICKさんはやっぱりすごいなと思いました。
神尾:すごいものを生み出してくださった。
駒田:どちらかのディビジョンに偏るということも起こり得てしまいそうなのに、本当に良い塩梅で50:50になっています。客席のみなさんはそれを聞いた上でどちらを選びますか?というのがまた面白いんですよね。
『ヒプマイ』は常に新しい何かを生み出し続ける
──では、改めてキャラクターについてお聞かせください。入間銃兎と毒島メイソン理鶯というキャラクターを演じる上で、それぞれのキャラクター性をどのように捉え、お芝居されているのでしょうか?
駒田:もちろん、もともとキャラクター設定や基本情報があるわけですけれど、そこから7年経ち、たくさんのドラマトラックを録ってきたり、何かをするたびに銃兎から何か新しい発言・言葉が生まれてくるわけです。
どういうことを言っていたとか、3人でふざけているシーンがあってお茶目な要素を出していたりとか、そういう要素は演じる上では大事にしています。
僕自身が楽しい時と真剣な時ではテンションや考え方が違うのと同じように、キャラクターたちにも「どこまでふざけていいのか」「真剣になった時にどこまで声を荒げるのか」といった感情の振れ幅があって、それはこちらが勝手に作って良いものではないと思うんです。
表現するのは良いけれど勝手に作ってしまってはダメだと思うから、積み上げてきたものを見た上で、「ここまでやってもキャラクターの本質から逸脱しないよね」というラインを見極めて、銃兎が持っている人間性とか、陰と陽の悲しみや嬉しさの感情のレンジをどこまで振って良いのかみたいな部分がこの7年で見えたり膨らんできています。
神尾:うん。
駒田:だから、年々演じやすいところもあります。基本は変わらないんですけど、「あ、ここまで面白いことを銃兎は言うんだ」と、最初の頃よりもイメージが少しずつ変わっていったり。そう思えることで、キャラクターの厚みも出てくるなと感じます。
そういう意味では、理鶯さんもおなじように変わっていった部分があるんじゃないかと。
神尾:そうですね。理鶯もどんどん変わっていったと思っています。
理鶯が元々持っていた核の部分で、ヨコハマのみんなと一緒にいる時と敵を殲滅する時、料理を振る舞う時というテンションが上がる3つのポイントがあったとしても、今はそれ以上に違うディビジョンの誰と話している時も多少は気持ちも上がるようになっているだろうしとか。
そういった細かい情報の肉付けがどんどん増えてきて、駒ちゃんが今言ったみたいなキャラクターの深みが出ている気はします。演じる上でも、そういう徐々に増えていった理鶯がテンションの上がるポイントを自分も時系列順に追いながら、捉えて芝居をするようにしていますね。
──碧棺左馬刻を演じる浅沼さんのお芝居については、どのような印象をお持ちでしょうか?
駒田:やっぱり同じ演じる側のキャスト陣としては、いろんな要素を軽視される方はいないので、浅沼さん自体も左馬刻様を演じる上でキャラクターの要素をすごく大切にされています。
だけど時々、「ここまで言っていいんだ」「いけるのか……?」と困惑している姿を見せることもあります。
神尾:そうね。「左馬刻がこの台詞を言うだろうか」「ここまでやっていいものだろうか」と。
やっぱり、お話が進む中で、左馬刻には女性には手をあげないという信念があるけれど、「この場面ではどうなんだろう?」とか、「口調はどうするべきか?」という部分で悩まれたり。ヨコハマは全体的にそうですが、浅沼さんはルールを持って演じていらっしゃるので。
駒田:そして、自分のキャラクターのみならず他のキャラクターについても考えたりちゃんと見ている人。例えばですが、やり取りをしている時に「銃兎ってここまで強く発言するかな?」というふうに、自分のキャラだけではない部分も丁寧に見てくださっています。
神尾:広く見てくださっていますね。
駒田:そういう視点を持っているのは、すごく良いスタンスだなといつも思います。
神尾:強みです。
──ヨコハマ・ディビジョンのチームワークについては、他のディビジョンと比べてどのような特徴があると感じられていますか?
駒田:キャラクターとしては、それぞれが一旦ひとりでも生きていける強さを持っているのが、また良いなと感じるところです。
神尾:パワーバランスが対等な気もしますし、誰が強いというものではないので、“三すくみ”みたいな雰囲気がありますよね。
駒田:ヤクザと警察官と元軍人という、3人が物理的にも強いという情報もありますし、とんでもサバイバルをしているわけですから(笑)。
その上で言葉で戦うという選択肢を取っているバックグランドを含めて魅力的ですし、なんだかんだちゃんと「自分のルール」があるところが良いなと。自分の芯が曲がるようなことは、「いいんじゃない?」と思うことでも絶対にやらない部分とか。
あくまでも正攻法で倒す方を選ぶところに関しては、すごくヴィラン感があるんですけど、本質は主人公みのある真っ直ぐなヒーロー感があって、そこがヨコハマの魅力だなと思いますね。全員それぞれ強いからこその、誰かに依存しているわけではないけれど、「一緒に横を歩くならお前らかな?」みたいなスタイルを持っているのがヨコハマ・ディビジョンです。
神尾:ほかのディビジョンと比べて1人ひとりがちゃんと強い人物として完成されていて、その3人が協力体制を敷いて同じ目的のために行動していく。
そして、その同じ目的のため以上のお互いに対しての信頼や色々なものが透けて見えるのが良いところです。そんじょそこらのことじゃ焦らない大人の余裕があるチームな気がしますね。
──お話いただきありがとうございます。では、最後の質問として『ヒプノシスマイク』というコンテンツの魅力をお聞かせください。
駒田:音楽CDから始まったコンテンツであることへのプライドがあるところです。もちろん、どのコンテンツも素晴らしいのですが、本当に「そこ連れてくるんだ!?」というようなアーティストさんを迎えているのが、この作品のすごいところだと思います。
神尾:楽曲の本気度ね。
駒田:ヒップホップやラップは、今でこそ馴染んできていてボーダレスな雰囲気がありますけれど、元々は特定のコミュニティでお互いに凌ぎを削って高みを目指していくみたいな、「みんな一緒にどう?」みたいなものではない印象を持っていました。アーティストさん側からしても「キャラクターがラップ?」っていう疑問があってもおかしくないカルチャーだとは思うんですよ。
でも『ヒプノシスマイク』は、単純にキャラクターにラップをさせるのではなく、「このキャラクターにはこういう背景があって、こういうストーリーがあってこういうトラウマを持っています」というのを、アーティストさんに対してものすごく熱く伝えている作品でもあると思うんです。アーティストのみなさんもそれに共感をしてくれて、それに合わせた強いサウンドを用意してくださる。その楽曲に今度は自分たちが挑戦させてもらえるという。
非常に贅沢なコンテンツというのが、僕の中では一番最初に出てくる言葉かなと。本当に新しい風を吹き込むことができた作品だと思いますし、僕自身のキャリアの中でいろいろなことを経験させてもらえるきっかけ作りにもなった最大の作品だと思います。
今までの曲を聴いてくださっている方たちも、「こんな新しい試みがあるんだ!」と惹かれた要素があったから聴いてくださっていると思うので、映画も含めて『ヒプノシスマイク』は“想像できるものをやらないコンテンツ”なんじゃないかな。
常に新しい何かを生み出し続け、プライドを持って取り組んでいる作品だと感じているので、僕たちはその流れについて行きます。映画が公開されたらお客さんにもめちゃくちゃ走り回って楽しみ尽くしてほしいなと思います。
神尾:本当に、唯一無二のコンテンツだと思っています。その唯一無二のコンテンツが、まるでフロンティア精神のように、新しい分野や新たな事象、新たなイベント、新たな試みに挑戦し続けているのがすごいですよね。
新しいことだったり変化するというのは、怖いことだったりもすると思うのですが、それでも『ヒプノシスマイク』はそれを恐れずに飛び込み、周りを巻き込んで、お客さんも巻き込んで、ついには今回の映画というコンテンツを生み出すまでになった。やっぱり、コンテンツ自体の強い信念や熱量を感じますし、本当に素敵だなと思います。
ラップを今まで聴いたことがない方に「これが良いラップなんだ」というラップのかっこ良さを示すひとつの指標になったといいますか、そんな尖り切った良いコンテンツであることがこの作品の魅力です。
[取材・文/笹本千尋 撮影/MoA]
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画像をクリックすると、関連記事にとびます。作品概要
あらすじ
キャスト
山田一郎:木村昴
山田二郎:石谷春貴
山田三郎:天﨑滉平
MAD TRIGGER CREW
碧棺左馬刻:浅沼晋太郎
入間銃兎:駒田航
毒島メイソン理鶯:神尾晋一郎
Fling Posse
飴村乱数:白井悠介
夢野幻太郎:斉藤壮馬
有栖川帝統:野津山幸宏
麻天狼
神宮寺寂雷:速水奨
伊弉冉一二三:木島隆一
観音坂独歩:伊東健人
どついたれ本舗
白膠木簓:岩崎諒太
躑躅森盧笙:河西健吾
天谷奴零:黒田崇矢
Bad Ass Temple
波羅夷空却:葉山翔太
四十物十四:榊原優希
天国獄:竹内栄治
言の葉党
東方天乙統女:小林ゆう
勘解由小路 無花果:たかはし智秋
碧棺合歓:山本希望
(C)ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Movie












































