
TVアニメ『桃源暗鬼』スペシャル対談! 一ノ瀬四季役・浦 和希と第二クール・練馬編オープニング主題歌「阿弥陀籤」担当アーティスト・超学生が作品の魅力と“声の表現”を語り合う!
「運を天に任せるしかない」――“阿弥陀籤”に込めた理不尽さと覚悟
──続いて、超学生さんが歌う第二クールのオープニング主題歌「阿弥陀籤」についてお伺いします。どのように制作を進めていったのでしょうか。
超学生:この曲を作ってくださった辻村有記さんとご一緒するのは、2022年に配信リリースした「Fake Parade」、僕のニューアルバム『アンフィテアトルム』にも収録されている「Hazure」(TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』オープニング主題歌)に続いて3度目になるのですが、まず制作にあたって「僕が本来出せる音域を無視して作ってください」とお願いしたところから始まりました。
浦:えっ!? それはあえてオーダーしたんですか?
超学生:はい。『桃源暗鬼』は四季たち登場人物の“成長の物語”だと感じたので、僕ができる範囲で100点を出すのは、なんだか作品とフェアじゃないなと感じたんです。なので「曲が来たら頑張ります」とお願いをして、挑戦させていただきました。楽曲を聴いてくださった方はわかると思うのですが、男性キーとしてはめちゃめちゃ高い曲なんです。僕も今まで出したことないキーだったので、デモ音源をいただいてからボイストレーナーの先生にめっちゃ相談をして。レコーディングも本当に壮絶で、辻村さんのディレクションもありながら、なんとか完パケまでやり遂げました。きっと『桃源暗鬼』の主題歌でなければ、やっていなかったと思いますし、この作品だからこそできたことだと思います。僕自身も歌い手としてこの楽曲に高めてもらいましたし、初めての感覚でした。
浦:すごすぎる……!
──どうやって歌えるようになったのですか?
超学生:歌える音域には個人差があって、喉の形や骨の太さで決まる部分があるので、多分、物理的に僕に向いている音域ではなかったので、裏技みたいなものを探るところから始まりました。レコーディングでは一発で録る必要はないので、それこそマイクを低くして座りながら歌ってみたり、どの姿勢が一番高い声が出やすいかを試したりもしました。それと辻村さんは、もともとHaKUというバンドのボーカルをやっていて歌がすごく上手い方なので、レコーディングブースの向こう側からヘッドホンを通してお手本の歌を歌ってくれたんです。それを参考により声の出しやすい発声の仕方や、筋肉をガチガチにするのではなく、力を抜くことも大事なことがわかって、実は自分でストッパーをかけていたことに気付けました。
浦:そういう気付きってありますよね。僕もそれこそ四季みたいなタイプの役はあまりやったことがなくて、もっと普通のティーンエイジャーや細めの男の子の役が多かったのですが、四季を演じたことによって、「俺ってやんちゃな声も意外と出せるんだ」ということに気付いて。
超学生:声優さんは役によっていろんな声を出す必要がありますもんね。ボーカルはやろうと思ったら自分の好きな世界観だけで貫くこともできるので。きっとオーディションでは何役も受けたりすると思いますし、そう考えると、日々、可能性が広がり続けるんじゃないですか?
浦:それが楽しいところでもあるんですよね。それこそボーカルと同じで、自分の喉で出せる音域には限界があるので、例えば声の低いキャラを2人演じるとなると、どうしても差をつけるのが難しくなるんです。でも、同じ「低い声」でも、例えば「柔らかく聞こえさせる」とか「硬く聞こえさせる」みたいなテクニックを使って演じ分けることができる。
超学生:なるほど、すごい!
浦:それこそ皇后崎 迅 役の西山宏太朗さんは、地声が結構低くて割とエッジボイスに近いんですけど、ご本人の物腰も喋り方もすごく柔らかいので、出てる音域は低いのに、なんとなく高く聞こえるんですよ。でも、皇后崎はちゃんとドスの効いた声じゃないですか。そういうことに気付いてから、自分も演じる際のアプローチ方法として取り入れるようになりました。
超学生:面白いですね。お話を聞いていると、歌に重点を置いている自分とお芝居に重点を置いてる浦さん、入り口はそれぞれ違うけど、到達するところはなんとなく似ているのかなと思いました。
浦:うんうん。自分も超学生さんのお話を聞いていると、別分野からの発想だから発見もありますし、すごく刺激を受けます。
──いいですね。楽曲のお話に戻りまして、「阿弥陀籤」は作品や第二クールの内容とどんな部分でマッチすると感じますか?
超学生:これはあくまで僕の印象ですが、この曲は特定のキャラクターに寄せた曲ではなく、作品全体をイメージして作られていると感じていて。「ここは迅くんの過去かな?」とか「ここは桃太郎側の視点だろうな」みたいに、いろんなキャラクターに当てはまる部分が歌詞にある。そのなかで強いて第二クールでマッチする部分を挙げるなら、この先で描かれる(桃華)月詠との戦いだと思います。お互い血の滲むような努力と実践を重ねて、極限まで高められた者同士がぶつかるからこそ、最後は「阿弥陀籤(あみだくじ)」のように、運を天に任せるしかない。そういう部分が、今後の戦いと親和性が高いなと感じています。
浦:いやあ、僕はシンプルにマジでかっこいい曲だなっていうのが第一印象でした。音楽の造詣が深くないので浅い言葉になりますけど、ある種、暴力的でありながら、繊細でもあって、『桃源暗鬼』の世界観を丸ごと投影してくださっているなと思います。四季たちが生きる世界はすごくバイオレンスですけど、なぜ彼らが戦い続けるかというと、すごく繊細な事情が色々重なっているからで。戦いたくないはずなのに、何かのために戦わなくてはいけない。その拳の裏に見える心みたいなものを、この楽曲から感じました。人によってはすごくアッパーでアガれる曲でもあるし、ある種、浸ってしまう曲でもあるんじゃないかなって。
超学生:その「理不尽さ」みたいなものを大事に歌おうと思っていたんです。完全に戦闘狂みたいな曲にはしたくなかったので、そこを汲み取っていただけたのはすごく光栄です。
浦:解釈一致で良かった! 俺の感性は間違ってなかった(笑)。
超学生:それと今お話しながら思ったんですけど、「後戻りできなさ」みたいなものが、「阿弥陀籤」というモチーフに投影されているのかもしれないですね。あみだくじも一度始めたら、もう進んでいくしかないじゃないですか。
浦:確かに! 間違いないですね。まさにこれからの戦いにばっちりハマる曲だと思います。
──そんな第ニクールの今後の見どころ、楽しみにしているところを教えてください。
浦:練馬編はより“総力戦”という感じで、京都編でもみんな活躍していましたけど、より一層、全員で困難に立ち向かう場面がたくさんあります。そしてもう一つの大きなテーマは“友情”。四季と神門との関係もそうですし、今まで険悪だった皇后崎と四季もお互いの事情を知っていく。そこから各々が何を思うのか、どんな行動に出るのかが今後の物語に強く作用するので、ぜひ観逃さないでほしいです。
超学生:僕が注目しているのは、敵味方問わず、それぞれのキャラクターがちゃんと一つの結論をこれから出していく、というところです。友情関係にせよ、自分自身の戦い方にせよ、「俺は今はこうなんだ」と結論を出していくのが、すごくいいなと原作を読んでいて思ったので。あとは、各キャラクターの今まで明かされてこなかった部分が明るみになっていくので、いち視聴者としてすごく楽しみにしています。
──ありがとうございます。ちなみに作品の話からは逸れるのですが、お二人は「声を使う活動」という意味で共通する部分がありますよね。浦さんはコンテンツのお仕事でボカロ曲の「歌ってみた」動画をYouTubeに公開していますし、超学生さんは『王様戦隊キングオージャー』で声のお仕事をされたりと、お互いの領域にも足を踏み入れています。
超学生:僕、浦さんの「歌ってみた」動画を拝聴しましたよ。なとりさんの「Overdose」と、(海渡翼と)お二人で歌っているDECO*27さんの「ラビットホール」を。
浦:えっ、マジですか! うわ、めちゃくちゃ恥ずかしい……!(笑)。
超学生:いやいや、素晴らしかったです。お声が良すぎて、セリフから始まる曲だと、一回そこを止めて「おお、いい声……」ってなってしまって(笑)。声が良くて歌まで上手いとなると、我々歌手としては、もう勘弁してほしいです(笑)。
浦:とんでもないです! いやあ、でも歌が上手い人は、声の使い方が上手いから声優も上手いんですよ。マジで。
超学生:いやいやいやいや!
浦:もちろんお芝居は経験がないと大変な部分はあると思うんですけど、才能はめちゃくちゃあると思います。超学生さんもお声がいいし。なので正直、もう勘弁してください。僕らの仕事を取られちゃうんで(笑)。
──お互いに謙遜とけん制をし合ってますね(笑)。
浦:でも、こうして声優に対してリスペクトをしてくださってるのがすごくありがたいです。いつかご一緒してみたいですね。もちろんお互い声優でもいいですし、僕が曲の後ろでヤジを飛ばすとかでもいいので(笑)。
超学生:いやいや(笑)。でも、そんなことを言っていただけるなんて、嬉しすぎます。もし実現できるとしたら、ボイスドラマみたいな曲を書きますけどね、僕。今回初めてご一緒させて、すごく素敵な方だったので、ぜひまた別の形でもご一緒できればと思いました。
──期待しております。最後に今後、歌や演技で挑戦してみたいことはありますか?
浦:僕はすごく不器用で、二つのことが同時にできない人間なんです。だから今は声優を頑張ろうかなと。でも歌うのはすごく楽しいし、歌で何かを届けるのもかっこいいなと思うので、ゆくゆくは……60歳とか70歳ぐらいになった時に、もし機会があるなら人前で歌おうかなという気持ちではいます。
超学生:なんで60~70歳なんですか?
浦:多分その頃には、いろんなことがどうでもよくなってると思うので(笑)。プライドとか、恐れ多さとか、そういう青い部分が取っ払われて、「歌いたいな」と思う瞬間がきっと来ると思うので。それが自然な心の流れかなと。まあ、今日、超学生さんとお話したことがきっかけで明日そう思うかもしれないですけど(笑)。
超学生:僕は逆に、今日お話を聞いていて、声優さんのお仕事はすごすぎて自分にはできないなと思いました。でも強いて今後やりたいことを挙げるなら、ミュージカル映画が好きなので、歌うキャラクターとして作品に関わってみたいです。セリフもあるような役で、本編の中でボーカルとして関われたら嬉しいなと思いますね。
浦:それはぜひやってほしいですね! 歌の実力はもう担保されてるわけですから。
──それこそ『マクロス』シリーズのように、声優担当と歌担当の2人でキャラクターを演じる作品もあるので、いつか浦さんと超学生さんでそういう役柄を担当する日が来るかもしれません。
超学生:それ、めちゃくちゃ劇的じゃないですか! でも視聴者の方は「浦さんが歌ってくれたらいいのに」ってなるんじゃないですか。こんなに歌える方なので。
浦:いやいやいや! でも、せっかくご縁ができたので、またいつか、いい意味での融合があると嬉しいなと思います。
[文・北野創 / 写真・MoA]



















































