「嘘の中にも、ちゃんと“本物”を込められるようにしたい」──アニメ『グノーシア』リレーインタビュー第10回 コメット役・佐倉綾音さん

2025年10月11日より放送がスタートしたTVアニメ『グノーシア』。

舞台は宇宙を漂う一隻の宇宙船、星間航行船D.Q.O.。人間に擬態した未知の存在「グノーシア」を排除するため、乗員たちは毎日1人ずつ、話し合いと投票によって“疑わしき者”をコールドスリープさせていきます。

しかし、主人公・ユーリは、どんな選択をしても“1日目”に戻ってしまう——そんなタイムリープの渦中にいました。

極限状況の中で交わされる会話を通じて、少しずつ明かされていく乗員たちの本音や秘密。信じるべき相手は誰なのか。何が正しい選択なのか。繰り返されるループの先に待つものとは——。

そんな謎に満ちた物語を彩るキャラクターたちを、キャスト陣はどのように演じたのでしょうか。

第10回目は、コメット役の佐倉綾音さんにアフレコ現場でのエピソードや演技に込めた想いを伺いました。

コメットは“ちょっと不思議な強さを持ったキャラクター”

──原作やシナリオを読んだときの印象を教えてください。

佐倉綾音さん（以下、佐倉）：“人狼ゲーム”をベースにしていながら、それぞれのキャラクターに個性と背景があって、ただの推理ものでは終わらない。そんな部分に、読みながら「この先どう展開していくんだろう？」というワクワク感がありました。

最初に収録に参加したときは、物語の全体像がまだ掴めないタイミングだったのですが、それでも各キャラクターがすでにしっかりと立ち上がっていて、『グノーシア』ならではの世界観が伝わってきました。

自身の初回の収録では、共演者の皆さんがこれまでの流れを丁寧に教えてくださって。キャストの皆さんと「このあと、どうなるんだろうね？」とシナリオを予想する時間も楽しかったです。

──コメットについて、最初にどんな印象を持ちましたか？

佐倉：とても正直な子で、原作でも“正直者”に全振りしたようなステータスなんですよね。そのぶん勘が鋭く、野生的な第六感で窮地を切り抜けたりする場面も多い。武闘派というわけではないけれど、ちょっと不思議な強さを持ったキャラクターだなと感じました。

──演技で意識したことや、音響監督とのやりとりで印象に残っていることはありますか？

佐倉：普段、キャラクターを論理的に捉えたうえで、そこに感情をのせて演じるスタイルで役作りをすることが多いのですが、コメットに関してはあまり深く潜りすぎないように意識しました。彼女が持っているナチュラルな軽やかさや天真爛漫さを、お芝居の上でも残しておきたかったんです。

彼女の内面にはきっと“闇”のような部分もあると思うのですが、それに引っ張られず、日常では明るく無邪気にふるまっている。だから演じるときも、コメットの内側の影はあえて表に出さないようにしたいと考えていました。

──コメット以外で好きなキャラクター、もしくはキャラ同士の関係性などあれば教えてください。

佐倉：ずっと気になっているのはククルシカですね。彼女の行動や表情ひとつひとつに意味があるような気がして、つい深読みしたくなってしまいます。

作品全体としては、ユーリと誰かの関係性によってストーリーが展開していく構造なので、「これはギャルゲーなのか？」という感覚で見ていました（笑）。ふとしたユーリとキャラクターの距離感の変化にキュンとくる瞬間も多かったです。

──コメットでいえば、シピとの関係性も独特ですね。

佐倉：そうそう、“バディ”という感じで、恋愛フラグはまったく立っていないんですよね（笑）。とても良い友情だなと感じました。個人的には、もう少し何かあるのかなと思っていたのですが、いい意味で裏切られましたね。シピもビジュアルのインパクトが強いので、アニメで映像としてどう描かれるのか楽しみなキャラです。

──お気に入りのシーンや話数があれば教えてください。

佐倉：やっぱり第9話のラストですね。あそこだけは音響監督さんから「とにかく一番かわいくお願いします」とディレクションをいただいて（笑）。その時点では次の話の台本をまだ読んでいなかったので、「この“大好き”って、本物の“大好き”なんですか？」と確認しました。

嘘がつけないキャラだからこそ、気持ちの方向性をきちんと理解しておきたかったんです。結果的に「本当に好きで大丈夫なので、とびきりかわいい“大好き”をください！」と言われたので、それならばと、ストレートな好意がちゃんと伝わるように意識して演じました。

「ユーリと一緒にこの世界の真実を探してみてください！」

──もしご自身が『グノーシア』の世界にいたら、どんな立ち位置で動くと思いますか？

佐倉：正直、人狼ゲームはあんまり得意じゃないんです。ルールを何度説明されても、どこか理解しきれなくて……。だから、ある意味コメットにちょっと近いところがあるかもしれません。

でも、そういう“よく分かっていない感”が逆に功を奏して、まぐれで勝っちゃったり、「何考えているか分からない……！」と、上手な人に言われたりすることもあります（笑）。

ゲーム内で発言のタイミングを計ったり、周囲の動きを読んで立ち回ったりするのが本当に苦手なので……間違いなく、“留守番”ポジションが向いていると思います！

──「このキャラが味方だったら心強い！」と思うのは？

佐倉：うーん……みんなクセが強いので、消去法になってしまう（笑）。でも、やっぱりシピですかね。優しいし、もし騙されても「まあ、しょうがないか」と思えるので。素直で、ひねくれてないからこそ、味方でいて欲しいですね。

──今回、『グノーシア』の現場に参加して、刺激を受けた点を教えてください。

佐倉：この作品って、1話見逃すだけで全体がわからなくなってしまうくらい、情報量が多い構成なんですよね。だからこそ、「どうすれば視聴者が飽きずに最後まで耳を傾けてくれるか」という点を、現場でもとても意識して作られていた印象があります。

セリフの言い回しや芝居の緩急も、その場で柔軟に調整されていて。そうした丁寧なものづくりの姿勢に触れられたことは、大きな刺激になりました。映像はもちろん、音声だけでも楽しめるように工夫されていて、現代の視聴スタイルに合った作品づくりだなと感じました。

──本作では“嘘をつく”“正体を隠す”といった、キャラクター自身も“演じる”シーンが多く描かれています。ご自身が役者として役を演じるうえで、大切にしていることを教えてください。

佐倉：突き詰めていくと、やっぱり「生きること」なのかなと思います。エンタメって、どこまでいっても“嘘”でできている世界だと思うんです。でもその中に、現実で自分が拾ってきた“本物の感情”を少しでも混ぜることができれば、それが観ている方にとっての“本物”に変わることがある。

私たちは、その錯覚をどう成立させるかに命をかけているんじゃないかなと。全部が作り物だからこそ、そこにある“リアル”をどう立ち上げるか。そこに演じる意味があると思っています。

──「まず論理で捉えてから感情をのせていく」というアプローチが、ご自身の中で一番しっくりきたと感じたのは、どんな経験やきっかけがあったのでしょうか？

佐倉：役者を志し始めた頃、いろんな作品やお芝居を観るなかで、「ああ、正解ってないんだな」と思った瞬間がありました。どこまでいっても、“好き”か“好きじゃないか”の世界なんだなと気づいたんです。

じゃあ、自分はどんな演技に心を動かされるんだろう？と考えたときに、現実では起こり得ないような非現実の中に、ふっと“本物の感情”が入り込んでくる瞬間に、強く惹かれている自分がいて。私も、そういう芝居を届けたいと思うようになりました。

芝居にはある程度台本があるから、先に何が起きるかはわかってしまうけれど、でも演じる側は“初めてそれを経験する人”であるべきなんですよね。感情だけで突っ走ると嘘くさくなるし、理屈だけでも届かない。だから、まず論理で理解した上で、そこに感情を乗せていくという手順が、自分にはいちばんしっくりくるんだと思います。

嘘の中にも、ちゃんと“本物”を込められるようにしたい。そう思いながら、いつも演じています。

──視聴者の皆さんへ、最後にメッセージをお願いします。

佐倉：『グノーシア』は、アニメからこの世界に入ってくださった方にも、原作のゲームをすでにプレイされている方にも、それぞれの角度から楽しんでいただける作品だと思います。物語やキャラクターにいろんな受け取り方があって、それがまた、この作品の懐の深さだと感じています。

アニメの制作には原作サイドの皆さんも深く関わってくださっていて、ゲームの持つ魅力や空気感を大切にしながら、アニメならではの表現をどう加えていくか、スタッフ・キャスト一丸となって向き合ってきました。この先も、驚きや発見に満ちた展開が待っていますので、ユーリと一緒にこの世界の真実を探してみてください！

【放送情報】
2025年10月11日(土)より放送中
TOKYO MX　毎週土曜 24:00～
BS11　毎週土曜 24:00～
とちぎテレビ　毎週土曜 24:00～
群馬テレビ　毎週土曜 24:00～
テレビ愛知　毎週土曜 25:45～
MBS　毎週土曜 26:08～
AT-X 　毎週月曜 23:30～

【配信情報】
ABEMA・dアニメストアにて10月11日(土)より毎週土曜24:00～地上波同時配信
ほか、各配信プラットフォームにて10月14日より毎週火曜正午以降順次配信

※放送・配信日時は変更になる場合がございます

　

作品情報

あらすじ

物語の舞台は漂流する宇宙船。

“人間に化けて人間を襲う未知の敵”─── 「グノーシア」が船内に紛れこんだことを受けて、乗員たちは疑心暗鬼の中、毎日１人ずつ疑わしい者を投票で選び、コールドスリープさせることを決める。

グノーシアを全てコールドスリープさせることができれば人間の勝利。

逆にグノーシアを当てられなければ、乗員たちは襲われてしまう。

正しい選択が求められる中、なんと主人公・ユーリは、どのような選択をしても、最初の１日目にループする事態に。

はたして乗員たちは正しい選択をすることができるのか？

タイムリープに隠された秘密とは？

そして明らかになる、乗員たちの隠された素顔とは──？

わずかな時間を繰りかえす、一瞬にして永遠のような物語が、いま、幕を開ける。

──それでは、良い旅を。

キャスト

ユーリ：安済知佳
セツ：長谷川育美
SQ：鬼頭明里
ラキオ：七海ひろき
ジナ：瀬戸麻沙美
しげみち：関智一
ステラ：早見沙織
夕里子：悠木碧
コメット：佐倉綾音
シピ：中村悠一
ジョナス：津田健次郎
オトメ：花澤香菜
レムナン：大塚剛央
沙明：江口拓也

(C)Petit Depotto/Project D.Q.O.

 「グノーシア」のグッズを探す