
『BEASTARS』アニメ完結記念:小林親弘さん(レゴシ役)×沖野晃司さん(メロン役)対談|レゴシとメロンがぶつかる最終章の真髄
モノローグは閉鎖され、専用マイクで収録! ゲストは特殊な収録にきょとん!?
──収録中や休憩中などで印象的だった、あるいはおもしろかった出来事を教えてください。
沖野:僕はモノローグを収録する時の小屋みたいなボックスがおもしろかったです。他の収録ではなかなか見ることがないものだったので。本当に閉鎖してくださっていて。
小林:マイクも違うんですよね。モノローグの時だけ、わざとガサつくような古いマイクを使ってました。
沖野:あの部屋に入ると、自分の中で閉ざされている心の声を言いやすかったです(笑)。
小林:休憩中も作品の話で盛り上がっていました。
沖野:あと動き方の確認もよくしてましたよね。例えば「僕はこっち側で見ていてもいいですか?」とマイクに対してどんな位置に立てばいいかとか……。
小林:「ここは距離を取って、1つ奥のマイクでやったほうがいいよね」とか。
──プレスコ方式の収録の中でもかなり特殊ですね。
小林:特殊ですね。普通はみんな、ボールドが出る画面を見ながらやるじゃないですか? 『BEASTARS』は画面どころか台本さえも見ずに、相手を見ながらやって、反応をもらうという。
沖野:僕と同じく「FINAL SEASON」から参加されるゲストの方々の、きょとんとした顔は毎回印象的でした(笑)。
小林:みんな、そうなりますよね。
沖野:役者さんによっては「私はここで大丈夫なので」と控えめに遠慮される方もいて。その戸惑いもすごくわかります。
小林:それも含めて、多種多様な作品でしたね。
──初めて参加するキャストの方には小林さんが説明する立場だったんですか?
小林:最初に説明します。「横を向いても大丈夫ですし、しゃがんでも大丈夫です。ただマイクの直線上にいればいいので」と僕が言ったら、皆さん、「えっ!?」と驚かれるし、不安がりますね。普段はマイクを目の前にしてお芝居することで安心するらしくて。でも舞台畑出身としてはむしろマイクが前にないほうがやりやすいんです。
沖野:そのほうが自由にできますから。
小林:尺も気にしなくていいし。収録で一番大きな制約はしゃべる時の尺通りにやらなくていけないことなので。尺の制約がなければ、自分の間でやれるので大きいです。この収録のように相手の反応を目や耳で感じながらやれるのはありがたかったです。こちらも用意してきたものをどんどん崩せますから。
この作品でこの録り方でやれて本当に良かったです。この収録の仕方でやったらもっと膨らむ作品は他にもある気がして。日常ものやファンタジーでこのやり方で録ったらどうなるのかな? と夢が膨らみますね。
──この収録方法だからこそ、目に見えない空気感や臨場感、リアルさが感じられて、まるで実写のドラマや映画を観ている感覚になれたのかもしれません。
小林:そうでしたか。
沖野:僕は毎回収録スタジオに行く時、ドラマや映画の撮影に来ている気分でした。テストでは台本を持って、映画のリハーサルをしている気分で、本番ではガンマイクに向かってしゃべって。僕は舞台で相手の目を見ながらお芝居するタイプだったので、今回も心が自然に動くというか、気持ちを事前にアイドリングしなくてもすぐに入れました。
小林:今後、このやり方でどんどん録ってほしいです。そうなったら更におもしろくなりそう。
──『BEASTARS』はアニメ界に新たな可能性を提示できたのではないでしょうか。
小林:今までも「あの作品をこのやり方で試したらもっとおもしろくなったかも」と思うものも結構ありました。でも『BEASTARS』の収録以降、ガンマイクを使って、横を向きながら録る作品も増えて嬉しかったです。
沖野:このやり方でもできるということですからね。
小林:『BEASTARS』でこの収録方法で録り始めた頃は7時間とかすごく時間がかかったけど、最後のほうは1~2時間で終わってましたから。
二人の好きなキャラ、そして小林さんと似ていると思うキャラは?
──『BEASTARS』のキャラクターの中で一番好きなキャラクターや自分に近いなと思ったキャラクターを教えてください。
小林:たくさんいますが、ジャックとセブンさんですね。マニアックかもしれないけど。そして自分と似ているキャラといえば……難しい。
沖野:もしメロンって言ったら「あの人、ヤバッ!?」ってなりますよね(笑)。僕が好きなのはゴーシャです。「いいよな、ああいうのって」と思います。
小林:素敵ですよね。
沖野:似ているキャラは、僕はのんびり屋さんなので、レゴシがバイトしているうどん屋さんの店長(スナガ)です。
小林:ああ~っ! あんな感じ……そうか、へえ。めっちゃ優しいですよね。
宣伝担当:実はSEVENTEENのWOOZIさんもスナガをお気に入りキャラに挙げていました。
小林・沖野:そうなんだ!?
小林:俺は誰と似ているかなあ?
沖野:やっぱりレゴシでは? 自分はレゴシのチカさんを見すぎているのもあるかもしれないけど。
小林:(ゴウヒン役の大塚)明夫さんにも言われたんです。「お前、レゴシっぽいよな」って。
沖野:チカさんもイメージが優しくて、大らかだけど、声も含めて芯が強く見えるんですよね。だからレゴシそのままです。
小林:そうなんだ!? でも自分以外の方からそう言ってもらえるということはそうなのかもしれませんね。
小林さんが感じた『BEASTARS』が発していたメッセージとは?
──アニメ『BEASTARS』を最後まで演じ切った心境をお聞かせください。
小林:巴留先生が社会をどう捉えているのかが色濃く反映されている作品だと思います。現在のように多様性という言葉がまだ一般的ではない頃に「多様性の話です」とおっしゃっていたことを今でも覚えています。
アニメもマンガの連載をリアルタイムで追っていたので、収録中も「この物語はどんな結末になるんだろう?」と考察したり、ワクワクしながら演じていました。そして今回、ラストシーンを迎えた時、「ああ、これが一つの答えなんだな」と。レゴシがしゃがもうとしたらハルちゃんが「そのままでいい」と言ったセリフがすべてなのかなと思いました。
どういう相手に対しても、それぞれの違う生き方を肯定してくれるんですよね。メロンに対してもそうだし、リズやピナなどに対してもそうだったように。ダメなことはダメだけど、そうしてしまった理由もちゃんと描かれているし、表層的でもなく、浅くもない多様性を描写されていて。
少し話題が逸れますが、僕は作家の朝井リョウさんの『正欲』が好きで、多様性を描いている作品です。いろいろな人が「多様性」と口にするけど、結局は自分たちが理解できる、許せる範囲でしか認めないんだと。例えば水に性欲を覚えるエピソードがありますが、誰にも理解されないわけです。それを果たして多様性と言ってもいいのだろうかと問題提起されていましたが、『正欲』を読んだ時と同じ感覚になりました。
ハルが大学生になった時、ライオンとウサギが付き合っているカップルを見て、ハルに「これはファッションで付き合っているよね」と言わせるのはすごい毒だなと衝撃を受けました。
沖野:(笑)。
小林:社会のいびつさがこれでもかとリアルに描かれていて、もし百年後に読んでも色あせず、人の心に刺さるんじゃないかなと。マンガ界という枠の中だけではなく、古典として残る作品じゃないかなと思えるくらい、『BEASTARS』から大きな影響を受けました。
沖野:「人は変わるのか、変わらないのか」を描いている作品だなと思いました。物語が進むにつれて主人公や世界が変わって、途中で仲間が増えたりして、共感されて、応援される人に変わっていく作品がありますが、『BEASTARS』は「あれ? 変わらないのかな?」と思う作品です。メロンを演じていて、どんなに人に支えられても、どんなにひどい仕打ちを受けても「変えられないものってあるよね」と思ったんです。
レゴシやルイくんは成長して変わっていって、最後を迎えますが、ストーリーのポイントポイントに出てくるキャラクターたちはどんなに頑張っても変わってくれない。それは社会が悪いからなのか、それとも考え方が悪いのか、みたいな問題提起が随所になされるので、視聴者の方へ「結局、あのキャラクターは変わらなかったな」という教訓が残ればいいなと思いました(笑)。「いくら頑張っても変えられないものもこの世にはあるんだよ」ということが心に残る作品なのかなと演じ終わった今、思っています。
──では読者の皆さんへメッセージをお願いします。
沖野:「FINAL SEASON」もこのPart2で最後です。私、メロンとしてはレゴシや皆さんを絶望の淵に叩き落すつもりでやりました。なのでレゴシとハルちゃんのハッピーエンドを期待しないでください(笑)。
キャラクターたちの関係性が複雑に絡みあっていますが、特に1話からご覧になってくださっている方々にはとってもいいラストに走っていくと思いますので、楽しんでいただけるはずです。1話ずつ少しずつでも一気見でもお好きな観方で楽しんでください。
小林:50話前後のアニメを、約8年かけて、スタッフの皆さんも我々キャストも丁寧に作ってきたなと感じています。そして自分の声の仕事への向き合い方を変えてくれた作品でした。こんなに長い時間関わることができたのは奇跡であり、とても幸せでした。視聴者の方にも物語のおもしろさに加えて、お芝居のおもしろさが伝わったら役者冥利に尽きます。
このアニメは観た人によって感じ方や受け取り方が違ってもいい、懐が広い作品だと思うので、まず観ていただいたらSNS等でつぶやいたり、お友達に勧めていただいて、感動や想いを共有して、盛り上がってほしいなと思います。
ここまで応援してくださった方がいたからアニメも完走できたと思うので、本当に感謝しかありません。改めて8年間本当にありがとうございました。
作品情報
あらすじ
キャスト
(C)板垣巴留(秋田書店)/東宝





































