
スーパー戦隊が持つ「明るく楽しく、突き抜けた濃い作品世界」――『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』東映 白倉伸一郎さん×松浦大悟さん 戦隊プロデューサー対談!
『ゴレンジャー』の力強さに宿る、スーパー戦隊の初心
松浦: 勉強していて知ったのですが、そもそも『秘密戦隊ゴレンジャー』の企画の発端って、『五人ライダー対キングダーク』が好評だったからなんですよね。
白倉:そう。「五人ライダー」を番組にしようとしたら、政治的な事情で実現しなかったらしいです。そこで石ノ森章太郎先生にライダーじゃないキャラクターを相談したら、赤、青、黄色というアイディアが出て。
松浦: そう考えると、「スーパー戦隊を作るのに、仮面ライダーが5人いて何が悪い」という気もしてきます。何度も言いますが、もちろん戦隊を仮面ライダーにしたい訳ではなくて、一人一人のキャラクターパワーが強いということが、『ゴレンジャー』への先祖返りという意味でもやる価値があるのかなと。
白倉:『ゴレンジャー』は、とにかく全員顔が濃い。「ゴレンジャー、ゴー!」の掛け声もやたらと低い。
一同:(笑)
白倉:『ゼンカイジャー』を作る時に『ゴレンジャー』を改めて観たんですけど、やっぱり勢いが違うんですよ。ドカーンって敵にやられたそのカットの中で、立ち上がって向かっていく。やられても強いし、すぐやり返す。そういうパワーがすごいんです。一人一人が半人前ではなく、それぞれが強くて、5人集まったら手が付けられない。それこそが戦隊の初心じゃないでしょうか。
ーー今作から作品数のカウントではなく、「戦隊の数」と合わせて「周年」を「アニバーサリー」とする形式に変更されました。この狙いと構想はいつ頃から考えられていたのでしょうか?
白倉:『ゴーカイジャー』の35作記念とか、中途半端な5作刻みになっていた理由は、ライダーの周年にぶつけるためです。Wアニバーサリーでライダーと戦隊を合わせたイベントが打てるので。
仮面ライダーの50周年に関しては、『シン・仮面ライダー』や『仮面ライダーBLACK SUN』、『風都探偵』で、TVシリーズとは違う周年ならではの施策が打てました。仮面ライダーは独立して周年を盛り上げている訳で、戦隊もライダーとのセット販売ではなく、独自で考えて盛り上げる必要がある。第40作記念の『動物戦隊ジュウオウジャー』の頃から「戦隊も自立心を持たなきゃ」と思っていました。その後、自分の作品でも「45バーン!」とかやってましたけど(笑)。
松浦:『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』(2021年公開)の頃には既に、白倉さんは「Wアニバーサリーでやるのは最後」とおっしゃっていましたね。
東映が一番に考えるべきは「映像そのものの価値」
ーースーパー戦隊シリーズでは従来のロボットやなりきりアイテムといった子供向け玩具の展開に加え、近年では大人向けのなりきり玩具やキャラクターのアクリルスタンドなど、グッズの展開が更に広がっています。今後のキャラクタービジネスにおいては、どのような展開をお考えでしょうか?
白倉:少子化やテレビ離れが進んでいるため、お子様をメインとしたビジネススキームは年々厳しくなっているのが事実です。一方で大人向け、特に女性ファンを中心にした層は、毎年伸びている。何をターゲットにするか、どういう形でビジネスを成立させるかは、ゼロベースで考えている最中です。マーチャンダイジングを当て込むのは『鉄腕アトム』からのスキームですが、映画会社である東映が一番に考えるべきは、映像そのものの価値だと思っています。
映画は本来そういうものですよね。パンフレットやポップコーンも売りますが、あくまで映像そのものの価値としてお客様がチケット代を支払うビジネスです。別業態でも分かりやすいのはNetflixさんじゃないでしょうか。数多ある配信プラットフォームの中でも、Netflixは映像だけで勝負をかけている。自分たちの提供する映像そのものへの対価としてお客様からお金をいただく、という彼らの気概は映画会社として学ぶべきだと感じています。
どういう形で作品自体の力をマネタイズに結びつけながら、制作費に還元して生産性が上げられるか。それは同時に今の形ではなくなる可能性も非常に高いということなので、どういうインパクトをもたらすのかも含めて思案中です。
ーースーパー戦隊だけでなく、仮面ライダーも撮影の期間の調整や映画公開タイミングの変更があり、東映特撮全体が新たな時代へ向けて動き出していますよね。
白倉: キャラクター戦略部という部署を立てているのですが、文字通り「戦略的にやっていかなければ」と思っています。東映グループ中長期VISION「TOEI NEW WAVE 2033」では、2033年を一つのゴールとして映像の価値を上げる、グローバル化などを謳っています。キャラクタービジネスにおいて、それをどうブレイクダウンさせるか、どう価値を上げるか、どうグローバル化を進めるかの具体案を策定しているところです。2033年はたった8年先でしかないので、今から着手しないと間に合いません。
「ライダーの冬の映画が〜」とか、社内でもよく言われますが、目の前の1作品や1アイテムどうこうの話ではないんです。大きい目線でキャラクターブランドをどうするのか、かなり大胆な施策をやっていくことになると思います。戦隊もそうですし、ライダーは来年55周年なので、そこで大きい発表をするでしょう。
ーー最後に、間もなく放送開始となる『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』の見どころ、今後のスーパー戦隊シリーズに対する意気込みをお聞かせください。
松浦:先ほど「戦隊に欠かせない要素」の話があったかと思います。個人的にそれは、第一に「明るく楽しく元気なこと」、第二に「色分けされた濃ゆいキャラとロボ」だと思っています。設定だけを見るとちょっと「あれ? 今度の戦隊暗い系? 大丈夫?」と感じられる方もいるかもしれませんが、ご安心ください、ちゃんと「ぶっ飛んで」ます(笑)。
そんな勘所は外さないように制作に臨んでいるつもりですので、観たら何故か元気が出るはず。スーパー戦隊が持つ、突き抜けた明るさや景気の良さや勢い、それらを全て駆使して、観ている時間がとにかく楽しくなる番組をお届けしたいと思っております。「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」、ぜひ第1話からご覧ください!
白倉: 仮面ライダーも数年前に50周年という節目を迎えましたけど、歴史の中にブランクや断絶が何回かありますよね。翻ってスーパー戦隊はほぼブランクなく、ずっと走り続けてきた長寿シリーズです。50年分の重みが全然違うんですよね。加えて、仮面ライダーには昭和、平成、令和という何となくの区切りがあるけど、戦隊にはそれもない。
松浦:そうなんですよ! 『ジオウ』は『仮面ライダーストロンガー』を背負っていないのに、こっちは『デンジマン』まで背負わないといけない(笑)。
白倉: その重みというのは半端じゃないと思います。それを松浦が一人で双肩に背負う訳ですが、松浦が言ったように、「明るく楽しく、突き抜けた濃い作品世界」をお届けするための後押しが50周年の重み。背中を押すための圧力としての過去戦隊。それでこそ「ナンバーワン戦隊」だと思います。50番目・50年目の戦隊ではなく、その50倍。たった1作品で過去49年間に立ち向かうほどのパワフルな番組である…つもりの勘違い松浦だと思います(笑)。この勘違いを笑いながら楽しんでいただきたいと同時に、ぜひ視聴者の皆さまにも、同じような錯覚に陥っていただければ嬉しいです。
[インタビュー/田畑勇樹 撮影・編集/小川いなり]
インタビューバックナンバー
『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』作品情報
2025年2月16日(日)より放送開始!
毎週日曜日 午前9:30〜10:00
あらすじ
その唯一の勝者、巨神テガソードは深い眠りについた。
テガソードの力をわけた指輪をすべてあつめると、
なんでも願いがかなうという…。
そんな指輪を、5人の“はぐれ者”が手にした!
はぐれアルバイター・遠野吠はゴジュウウルフ
元スーパーアイドル・百夜陸王はゴジュウレオン
テガソード信奉者・暴神竜儀はゴジュウティラノ
パリピ高校生・猛原禽次郎はゴジュウイーグル
ハイクラス名探偵・一河角乃はゴジュウユニコーン
ナンバーワンは1人しかありえない!?
戦士になった5人は、指輪をもとめて戦う!
さらには、悪の軍団・ブライダン、
そして歴代スーパー戦隊とも、 おきて破りの頂上バトル!
新時代のナンバーワンになるのは誰だ!?
“最高最強ヒーロー”
ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーの
戦いのゴングが今、鳴りひびく!
キャスト
(C)テレビ朝日・東映 AG・東映



















































