
TVアニメ『戦隊大失格』2ndシーズン最終話直前! さとうけいいち監督ロングインタビュー|アニメならではの答え合わせと2クールの軌跡
2クール、アニメ『戦隊大失格』を観てくださった皆さんに、お返しをする最終話にしたかった
──原作と同時進行で進んでいた、というのは驚きでした。
さとう:そうでしょう(笑)。制作チームも、この物語は、レッドキーパーvs.戦闘員Dだと考えていたんです。TVアニメでも、1stシーズン第2話で赤刎創星とすれ違って、第3話で神具を奪い取っているので、ロックオンはされていたと思うんです。だから、2ndシーズンの制作が始まり、プロデューサーやシリーズ構成の大知慶一郎くんとの打ち合わせの中でやろうとしていたのが、レッドとの対決で、そのためにレッドの影は薄くしたくなかったんです。だからレッドが欠けないように、Dの裏でレッドが暗躍しながら何をしているのかというのを見せていったんですね。
なので、物語が現在進行形で進んでいる中、先生にレッドに対しての答えを聞いてみたんですよ。そしたら、ここではまだレッドキーパーvs.戦闘員Dはないらしいということで、頭を切り替えて、アニメとして[戦保怪戦編]をしっかり終わらせることを考えました。原作では続きがあるということもわかっていたんだけど、ここまで2クール、アニメ『戦隊大失格』を観てくださった皆さんに、お返しをするという意味で、大団円にしよう!と思ったんです。
──続きを匂わすと言うよりは、ここで一旦終わらせるということですね。
さとう:そうです。ここで一度ケリは付けましょう!という話になりまして、それに対して先生も「そうですね」と言ってくださり、こういうのを見せたいというのも伝えてくださったので、それを聞いた上で、進めていきました。
そういう意味では、オリジナル作品を作ったことがないスタッフさんたちだったら、やれなかったかもしれないですね。私もオリジナル作品をやってきたという実績はあるので、こうしたほうが、未来は救われるというのがわかっていたんです。つまり、アニメでこういうキャラクターだと描いてきたものを、強引に漫画原作の世界に落とし込んでいこうとすると、逆に齟齬が出てきてしまう。アニメのストロークで、ぐいぐい描いていったキャラクターは、アニメの世界のまま押し切ったほうがいいと思っているので、そう判断して進めていきました。最後、第23〜24話がセットになっているんですけど、そのことは先生にもお伝えしています。
──原作とは違う展開もありましたね。あと第23話では、候補生たちも出てきました。
さとう:打ち合わせをしていたときは、まだ[戦保怪戦編]がどう終わるのかまでは行っていなくて、小熊蘭丸も生きているかどうかわからないという話だったので、私は「生きているなら出したほうがいいですよ」とお話させていただきました。だって、藍染小町をあそこまで身を挺して庇ったわけですから。そしたら原作のほうでも、候補生や小熊くんが出てきてくれたのは嬉しかったですね。
──アニメと原作で補完しながら作っていったのですね。
さとう:私が特に意識をしたのは浮遊城で、原作では登場シーンは限られているんですけど、アニメでは遠景が入ると、スモーキーな空にシルエットが薄っすら見えるようにしていたんです。なので1stシーズンから観てくださっていた方にお返しをするという意味でも、戦闘員たちはちゃんと出したかった。なので、最終話では登場します!
──EDテーマでダンスしているだけではなかったわけですね(笑)。
さとう:戦闘員やレッドキーパーのアイデンティティという部分も含めて、アニメはアニメでちゃんと取り戻せるようにしたかったので、最終話は、「おかえり戦闘員たち」「おかえり候補生たち」になっていると思います。あと、第24話は音楽面で私からのサプライズも詰め込んでいますので、それはそれで楽しんでいただければと思います。
──それは楽しみです。
さとう:やっぱり、観終わった感は大事にしたかったんですよ。あれだけレッドと向き合って、2ndシーズンでもレッドの描写をオリジナルで積んできたわけだから、レッドの立ち位置は見せたかったですし、戦闘員は戦闘員たちで、わけのわからないオタク怪人(=大怪人デスメシア)が現れたけど、そんなの知らねー!と。それより「日曜決戦」の視聴者がいなくなったら困るんだと、自分たちのアイデンティティを見せる。それぞれが自分の正義のためだったら、アイデンティティを使っていいだろうと考えて、オタク怪人を止めるためには、全員野球しかないと思いました。
──ありがとうございます。少しだけ音響の話もお願いします。大怪人デスメシア=薄久保薬師役を神谷浩史さんが担当されていて、ぴったりだなと思いました。
さとう:原作モノを久方ぶりにやったんです。『いぬやしき』以来だったんですけど、シチュエーションとキャラクターの多さはものすごかったです。役者さんも30人くらいはいたと思いますけど、とても良かったですよね。
キャスティングですごくこだわっていたのは、「いつもこんな役を演じているよね」って思った人に、全然違う感じのことをやってもらうということでした。それで、1stシーズンの前に、レギュラーを決めるオーディションをしたんですけど、2ndシーズンからは、時間的な理由もあって、ほぼ監督采配で決めていきました。でも、結構ハマっていたでしょう?
──ハマっていましたね。
さとう:これは予算も関係してくるところなんですけど、私がこの役にはこの人がいいよねってプロデューサーに伝えるんです。そのときプロデューサーは、「やめましょう」とは言わないんですよ(笑)。その演者さんを使うんですか!と驚きつつも、動いてはくれるんです。
なので、石田彰さん(西木有/マガティア役)、梶裕貴君(若葉京助役)や神谷君へは、そういう流れでお願いしました。ただ、リュージン君役の野沢雅子さんだけは本当に申し訳ないなと思いました(笑)。私は昔からのお付き合いがあるから、竜(ドラゴン)だし出演してもらおうと軽く言ってしまったけど、これも調整は大変だったと思います。
──神谷さんでいうと、あの鼻歌は強烈でした(笑)。
さとう:あれね! あれは無理をさせたなぁ。でもそれが薬師なんだよね(笑)。オタクだから。そして鼻歌を歌いながら、怪人化剤を刺す。あれは覚悟なんですよね。収録をしているときも、面白いものが録れているなと感じました。本来なら、覚悟を決めるシーンだから、シリアスな劇伴を流してもいいんだけど、それはやめようと思ったんです。原作でも歌ったりしているし、その感じを鼻歌で演じてもらおうと思って……。
さすがに神谷さんに「自由に歌ってください」とは言えないので、池頼広さんに劇伴を作曲をしてもらって、それをアフレコ現場で歌ってもらったんですけど、全然(尺が)入らなくて(笑)。結局「ここまででいいんじゃないか」というところまでにしました。ただ、アフレコ現場で録ったから、サウンドトラックには収録されないんですよ。
──アフレコでは、自由度が高かったという話もキャストからは出ていました。
さとう:どんな作品でもそうだけど、役者さんとのキャッチボールは楽しいんです。結局は演者さんが何をやりたいかなんですけど、毎回、方向性をこちらが伝えて、こういうキャラクターになりますけど、あなたならどうしますか?というディスカッションを収録前にやるんです。だいたい、この方がこういう役をやれば、ニュアンスとかはこうなるだろうというシミュレーションは頭の中でできているから、皆さん、そこには必ず来るんですよね。でも、実際やってみたら、もっと違う方向でも行けるかもと思ったりするので、そのときは相談したりします。そのやり取りも面白かったです。
──残すところ最終話のみとなりましたが、最後にひと言、お願いします。
さとう:いろいろ話しましたが、作り手としては、ちゃんと未来がある感じには落とし込めたのではないかなと思っていますので、最後まで楽しんでください。
[文・塚越淳一]
作品情報
あらすじ
怪人幹部ぺルトロラに阻まれたもののブルーキーパー討伐に成功。極秘ミッションを遂行するグリーン部隊に配属されたD、無論次の標的はグリーンキーパー!
一方、ブルーキーパーを失った大戦隊内には疑念が立ち込め、徐々に一般市民の信頼を落としていたー大戦隊の闇が迫るセカンドシーズンがついに開幕!
キャスト
桜間日々輝:梶田大嗣
錫切夢子:矢野優美華
レッドキーパー:中村悠一
ブルーキーパー:井上剛
イエローキーパー:小野賢章
グリーンキーパー:鳥海浩輔
ピンクキーパー:M・A・O
朱鷺田隼:吉野裕行
藍染小町:長江里加
翡翠かのん:和氣あず未
撫子益荒男:立木文彦
獅音海:小野友樹
浦部永玄:山下誠一郎
雪野アンジェリカ:鬼頭明里
石川宗次郎:濱野大輝
明林恋蓮:黒沢ともよ
薄久保天使:三上枝織
来栖大和:逢坂良太
七宝司:清水優譲
小熊蘭丸:野津山幸宏
戦闘員XX:羊宮妃那
フワリポン:遊佐浩二
薄久保薬師:神谷浩史
若葉京助:梶裕貴
西木正志:森田成一
我藤嶺:白熊寛嗣
村上重信:いとうさとる
(C)春場ねぎ・講談社/「戦隊大失格」製作委員会






























