
『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』連載インタビュー第10回:島村一葉役・鈴村健一さん 後編|昭和ライダーが「物事を面白く捉える方法は幾らでもある」と教えてくれた
仮面ライダー1号は、“不可逆”の中で前進するヒーロー
ーー折角なので丹三郎にも触れたいのですが、鈴村さんにとって「仮面ライダー1号」とは、どんなヒーローですか?
鈴村:レジェンド中のレジェンドですよね。1号がいなければ、仮面ライダーというシリーズは存在していなかった訳ですから。彼からすべてが始まりましたし、その存在は本当に大きいです。
比較対象としてはウルトラマンがいますけど、特撮界において、ウルトラマンが作った第一次怪獣ブームが落ち着いたあとに、等身大ヒーローブームが到来しました。この等身大ヒーローブームがなければ、今ほど特撮は華やかではなかったと思います。
ウルトラマンは宇宙人なので、少しファンタジーでもあるんですけど、仮面ライダーは「本当にありそう」と思わせてくれる。暗躍する謎の組織がいて、その組織が改造人間を作っていて、そこから逃げ出した人間が秘密裏に戦っている。そういうリアルに寄り添った世界観が、特撮の新たな境地を切り拓いたと思います。
鈴村:そのリアルさを体現していたのが、仮面ライダー1号。物語冒頭では“逃亡者”として描かれますし、その悲哀や孤独を背負っているという点が1号の最大の魅力です。僕はヒーローには“不可逆性”が必要だと思っていて。
ーー不可逆性。
鈴村:自分の意思ではなく、緑川博士に連れてこられて改造されてしまった。もう元には戻れない。だからこそ「前に進むしかない」と決意する。
この“不可逆の中で前進する”というフォーマットを作ったのが、仮面ライダー1号なんですよ。その悲しさたるや、凄まじいものがあります。ある意味では、ずっと苦悩しているようにも見えますよね。それを表には出さず、誰よりも深い悲しみを持っている……そこが好きなんです。
ーー丹三郎が1号に憧れる理由は、どの辺りにあると感じますか?
鈴村:逃げない・折れない・負けない。そういう1号の胆力に仮面ライダーらしさを感じているような気がします。
仮面ライダーの代表的な描写として、特訓というものがあって。改造人間なのに、一度負けても修行して強くなろうとするんですよね(笑)。
鈴村:そこには『仮面ライダー』という作品のスポ根的な側面が現れています。番組が始まる直前、日本では『アタックNo.1』や『柔道一直線』などのスポ根が流行っていました。『柔道一直線』に関わっていた人たちが『仮面ライダー』を作っていたという経緯があるんです。だから、世の中のスポ根ブームみたいなものを作品に取り入れているんですよ。
更に言えば、高度経済成長期に誕生したヒーローですから、「努力すれば強くなれる」みたいなことを謳っている訳です。今ではちょっと時代錯誤に見えるかもしれませんけど、丹三郎にはすごく刺さったんじゃないかと思います。
物事を面白く捉える方法は幾らでもある
ーー鈴村さんご自身が「仮面ライダー」から受けた影響についてもお聞かせください。
鈴村:そうですね……僕は、仮面ライダーに対して二つの視点を持っています。一つは“孤独”です。
鈴村:スーパー戦隊って、基本的に仲間がいて、明るい空気感があるんですけど、特に昭和ライダーは不可逆の塊で「もうどうにもならないところに来てしまったけど、とにかく頑張るしかない」みたいな。もちろん協力者はいますけど、本質的な苦悩を抱えているのは一人なんですよ。そんな仮面ライダーの姿に、ずっと憧れてきました。「辛くても立ち上がれ、負けるな」と言ってくれている気がするんですよね。
ーーもう一つは?
鈴村:「ツッコミどころが満載」なところです(笑)。
ーー(笑)。
鈴村:自分の中では、それが世界をユニークに見るきっかけになったんです。
子供の頃って、ドラマを「きちっとしているもの」だと思い込んでいるじゃないですか。でも、ある時から「いや、これは変じゃない?」って(笑)。真剣に作っているからこそ、“ズレてしまった面白さ”というか。
ーー特に昭和ライダーにはそういうシーンが多いですよね。
鈴村:そうなんです。『仮面ライダーV3』で言うと、ライダーマン(結城丈二)がおやっさんと一緒に正月を迎えるシーン。「結城くん、君にも年賀状が届いてるんですって」と言われて、それがデストロン(敵組織)からの年賀状なんですよ。「新年おめでとう。今年こそ、裏切り者は殺す」って(笑)。
鈴村:『仮面ライダーストロンガー』の奇械人ワニーダもそうですよね。ストロンガーだけ何故かスリープガスが効かなくて、「何故あのガスが効かなかった?」と聞かれたストロンガーが「そんなこと、俺が知るか!」という一言で全部解決する(笑)。あとは、ムササビードルという高速で滑空する怪人をおやっさんが自転車で追いかけるとか。
ーーどれも名シーンとして語り継がれていますし、何回観ても笑ってしまいます。
鈴村:ツッコミ出したら止まらないですよ。完璧じゃないからこそ、作品に「ツッコんでいいんだ」と。そういう感覚を教えてくれたのが、特撮であり、仮面ライダーなんです。大変なことはたくさんありますけど、どこかにユニークなことは必ず転がっていて、笑って過ごせるきっかけになる。今でも「物事を面白く捉える方法は幾らでもある」という考え方は変わっていません。
ーーそういった昭和ライダーならではのユニークさは『東島ライダー』にも引き継がれている気がします。
鈴村:そうなんですよね。そこに特撮イズムを強く感じます。柴田ヨクサル先生の作品は常にそういう要素がありますけど、振れ幅は一番大きいんじゃないでしょうか。『ハチワンダイバー』は将棋と格闘技をミックスさせていて、割とシリアスな内容なんですけど、『東島ライダー』にはどこか隙がある。先生が好きなように書いている感じがして、それがすごく“特撮っぽい”んです。
ーー直近の放送回でも仲間同士の戦いが続いていますが、よくよく考えると「何で戦ってるんだっけ?」と(笑)。
鈴村:意味が分からないですよね(笑)。「トーナメントをやろう」と言われても、「何言ってるの?」と思いますよ。
ーー多岐にわたるお話をありがとうございました。最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。
鈴村:端的に言うと、ちょっとした“脳筋アニメ”だと思います。
「なんで戦ってるんだろう?」みたいなことを考え始めると、ちょっと笑えてくるかも知れませんけど、それでいいんです。この作品の正しい楽しみ方だと思います。
なので、ぜひ皆さんも“脳筋”になっていただいて、気軽に観ていただきたいと思います。
ーー現代においては“何も考えなくていい”作品って、逆に珍しいですよね。
鈴村:そうなんですよ。今は「伏線を回収しなきゃいけない」とか、視聴者も「制作者の意図を読み取らなきゃ」みたいな空気が強い時代じゃないですか。
そんな中で「何も考えなくていい」というスタンスは、ある意味で今の時代からズレていて、それこそが魅力なんです。この時代にこの作品を観るということは、非常に面白い経験になると思います。
そのうえで、実はどこかに意味がありそうな感じもする。それこそがヨクサル先生の凄さです。深いテーマが全面に出ている訳ではないけど、“奥の奥”にはある。ただ、それは肌感で感じていただくだけで十分です。「なんか変なアニメやってるな」くらいのノリで楽しめるので、ぜひご賞味ください。
[インタビュー/小川いなり]






































































