
『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』連載インタビュー第12回:中尾役・津田健次郎さん 後編|信念が伴っていなければ、“本物”にはなれない。またひとつ悩みを深めた中尾が遂げる変化
信念が伴っていなければ、“本物”にはなれない
ーー第12話では、そんな丹三郎たちと中尾が居酒屋でばったり遭遇し、戦闘になりました。
津田:中尾的には「自分は“本物”のショッカーになれた。お前たちは偽物だ」と思っている訳ですけど、“本物”である自分を丹三郎たちは超えてくるんですよ。深読みするならば、中尾は自分の力で“本物”になったわけではなく、ある日突然与えられたものなんです。
そこにはある意味で夢があるなと。才能ではなくて、努力の積み重ねによって、“本物”に近づいていく。そういう意味で、この時の中尾は「何が本物か」をよく分かっていなかったんだと思います。
ーー形だけでは、“本物”に届かない部分がある。
津田:そう思います。ただ、才能を与えられたところで、そこに信念が伴ってないと“本物”にはなれないということなのかなと。
ーー戦闘員の姿になっている中尾を演じる際に意識の違いなどはありますか?
津田:自分の中では、そこまで変えていないですね。中尾は元々ポテンシャルが高くて、組同士での喧嘩の賭けに使われるほどの強さを持っているキャラクターなので、そのままの感覚で演じています。
ーー戦闘員の「イーッ!」という特徴的な掛け声についてはいかがでしょうか?
津田:あれは完全に“勢い”ですね。面白いと思ったのは、僕らの世代は当然のように「イーッ!」を知っているんです。でも、若いキャストさんは「そうじゃないよ!」って結構ダメ出しをされていて、苦労されていました。お兄さんたちが頑張って教えるんですけど、なかなか伝わらない(笑)。
ーー(笑)。ショッカー自体に馴染みがないのかもしれません。
津田:仮面ライダーは続いていますけど、昭和・平成・令和でカテゴライズされるくらいですからね。その中で、ショッカーというのは昭和を象徴している存在だと思います。
この作品においては、言葉の中で「イーッ!」が入ってくることもあって。例えば「さあ来い!」の「い」が「イーッ!」に繋がって「さあ来イッー!」みたいな。そういうセリフを見ると、やっぱり“笑い”も忘れないんだなと。
ーーひと続きの言葉を「イーッ!」に繋げるのは難しそうです。
津田:結構難しいです。言葉として成立させた上で、最後だけ「イーッ!」になっていると分かってもらう必要があります。うまくいくと非常に面白い演出になるので、そこは意識しながらやっていました。
ーー少し元気のない時期が続いていた中尾ですが、東島たちとのやり取りを経て、元気を取り戻した様子。今後、中尾のどのようなところに注目してほしいですか?
津田:中尾が本物のショッカーになった時は「このまま突き抜けていくのかな」と思っていたのですが、むしろ一層悩みが深まっているというか。演じていても「煮えきらない人だなあ」と思います。というより、何を悩んでいるのかもイマイチ分からないんですけど……(笑)。そんな中尾がまたひとつ変化を遂げようとしています。非常に人間くさいキャラクターなので、注目していただきたいです。
ーー最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
津田:作品全体として『仮面ライダー』を知っていても、全く知らなくても楽しめる内容になっています。一方で。相当詳しくないとピンとこないようなネタも投入されているので、知っている人はより楽しめるはずです。そういう意味で、どちらの方の期待にも応えられる作品になっているんじゃないかなと。
基本はお馬鹿なコメディですが、それだけではない人生模様が繰り広げられているので、「いつの間にかグッときちゃう」みたいな瞬間もあると思います。引き続き楽しんでいただけると嬉しいです。
[インタビュー/小川いなり]



























































