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夏アニメ『俺自販機』ハッコン役・福山潤インタビュー

夏アニメ『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』ハッコン役・福山潤さんインタビュー|ハッコンに感じた時代の変化と踏み切れる強さーー現代の視聴者には“異世界リテラシー”が備わっている⁉ 

ハッコンはだんだん自動販売機に寄っていく

ーー改めて、第1話の感想を教えてください。

福山:やはり自販機に転生する冒頭のシーンが好きですね。細かい説明はもうしないんだなと(笑)。割り切ってくれたおかげで、こちらも「Don't think! Feel」に近い覚悟ができました。「気楽に見ましょう」というスタンスを最初に提示したうえで、ストーリーもしっかりしていて色々な発見があったと思います。良い意味でオーソドックスなお話でもあるので、演じていて安心感がありましたね。

ーー福山さんはこれまで様々な役を演じてきたと思いますが、自販機は流石に初めてかと思います。ハッコンというキャラクターをどのように捉え、役を作っていったのでしょうか?

福山:僕がアニメデビューした年の最初の役はダークエルフだったんですが、その次は黒板消しと玄関ドアでした。ある意味、20数年前に戻って懐かしい気分ですね。「自販機役を演じる」と聞くと正解が分からなくなりそうですが、モノローグで喋るのは前世から続く魂なので、あくまで普通の青年として演じました。キャラクター性を濃くしすぎると、迷宮に自販機があるという面白さも殺してしまうと思ったんです。

普段は自分がやりたい方向性を提示したうえで、落としどころを探るんですけど、ハッコンに関してはやらないに越したことはない。悲観もしなければ、達観しているわけでもない、視聴者が普通に聞いていられるモノローグにしたいと考えていました。もちろん彼自身活躍もしますし、喜怒哀楽はあるのですが、お芝居の軸はハッコンの周りに集まる人々ですね。

ーーハッコン自身ではなく、周りの人々ですか?

福山:異世界転生モノに限らず、周りのキャラクターたちの掛け合いで進行する作品の主人公は、他者からの投げかけに対する反射で、人物像を理解できるケースが多いんです。ハッコンは人間だったときの名前もわからないし、生前の生活も自販機のうんちくを話すシーンで多少わかる程度なので、言ってみれば謎の人ですよね。彼は他の人たちが会話して、生活して、自販機から出てきたものを楽しんでいることに喜びを感じています。

最初の頃は人間としてどう演じていこうかとも思ったのですが、話が進んでいくとだんだん魂が自販機に寄っていくんです(笑)。人外の役を演じるときにいつも感じるのは、人間的な生命力や欲求は体あってこそ生まれるということ。最初の頃は「もし自販機じゃなかったら……」と人間らしい反応もするのですが、後半になるとそこまで気にしなくなります。自販機の体に引っ張られる過程も含めて無理なく消化できれば、他の人たちに対する反射の中で彼の人物像が浮かび上がるはずだと考えました。

ーーハッコン的には自販機として生きることも本望だと。

福山:実際に本編でそう言ってますから。昔の作品で何かに転生するなら、無機物はかなり下位のはずです。そういう意味では、時代が変わったんだと思います。

ーーそれではキャラクターを掴むこと自体はスムーズだったんですね。

福山:自販機を守ろうとして転落する場面から始まるんですけど、そこからはシームレスに繋がったので、方向性自体は決めやすかったと思います。リテイクを重ねたのは主に、「いらっしゃいませ」や「またのお越しを〜」といったいわゆる定型文ですね。作中で何回も使うので、どこまで機械らしくするかなどは、僕というより監督たちが悩んでいました。

電子音に寄せすぎると「どの時代の自販機?」という疑問に繋がります。今の自販機は音声を流そうと思ったら、滑らかに再生できるじゃないですか。だからこそ、バランスが難しいなと感じました。最初はある程度自分で喋っていたんですけど、やはり人が話していることがわかってしまって。序盤にある程度の文字数を言って重ねたり、収録した定型文を繋いだり、いくつかのパターンを試した結果、定型文を丸々録り直したこともありました。こだわり始めたらきりがないと思ったので、細かな塩梅は監督たちに委ねました。

ーーハッコンは定型文しか返せないので、会話シーンも他の作品ではなかなか見ない流れになっていると思います。

福山:そうですね。定型文で受け答えする場面は、どうしてもやりたくなってしまいました。頑なにやらせてもらえなかったですけど(笑)。

ーー(笑)。ハッコンを演じていて楽しいと感じる瞬間はありますか?

福山:基本的に会話をしないので、ハッコンが何をやっても他の人は受けなくていいんです。淡々と進んでしまわないように、観ている人へのフックになる要素や遊び心を入れるなど、アイディアは色々と出てきます。色々な技法を盛り込まないと、ハッコンのモノローグが退屈になってしまう気がしたので、そこは積極的にやるようにしてますね。

突っ込んだり、ひとり言を発する場面は、聞いてる人に分かりやすく、誰かに向かって語るようにする必要があると第1話を収録した際に感じました。イメージ的には自販機というよりも、透明人間が突っ立って喋る感覚に近いです。

ーーコミュニケーションが成立しないという点には難しさを感じなかったのでしょうか?

福山:どちらかというと難しかったのは、本渡さんでしょうね。自分の投げかけに対して定型文が返ってくるわけで(笑)。一方通行なんですけど、ハッコンは相手の投げかけを受けていいんです。相手に通じてないだけで、コミュニケーションとしては成立しているんですよ。会話が成立していないのはラッミス側なので、口には出さず「本当に難しいことをしているのはあなたなんだよね!」と思いながら演じていました。

ーーハッコンのアフレコがどのような流れで進んでいったかも気になります。

福山:キャラクターたちが話している裏でモノローグを喋るケースもあるので、そのときは別録りでした。収録時はコロナ禍の真っ只中だったので、全員はさすがに無理だったんですけど、メインで絡む人とは一緒にできましたし、色々なパターンで収録していましたね。

ーーラッミス役の本渡楓さんにインタビューで伺ったところ、アフレコ時に「モノローグが多くて終わらない!」とこぼしていたとか?

福山:量自体は多かったんですけど、ハッコンには口パクがないので、本渡さんや他の方々とは大きく違いました。セリフの天地だけ合えば成立するので、そういう意味では僕の方が簡単だったと思います。

ーーハッコンの相棒でもあるラッミスは関西弁混じりの喋り方が特徴的です。本渡さんは「現場で福山さんが力になってくれた」と言っていました。

福山:リアルな関西弁を突き詰めていくと、セリフ自体を変えていかなきゃいけなくなるんです。なので、「ハッコンには関西弁のように聞こえている」という感覚で良いと最終的にはなったと思います。関西弁のアクセントをより本物に寄せるのではなく、それっぽいニュアンスにする方向で落ち着いていました。

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(C)昼熊・KADOKAWA/「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」製作委員会
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