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『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』福田己津央監督が「愛」というテーマに向き合った理由とは【インタビュー前編】

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』福田己津央監督インタビュー前編|恥ずかしくて誰も使わなくなった今だからこそ、「愛」というテーマに向き合った

『SEED』で一年かけてやったことを2時間の映画に詰め込んだ

――『SEED FREEDOM』というタイトルが決まるまでの経緯を教えてください。

福田:僕は例えば、「~◯◯の〇〇~」みたいな副題があるのが好きじゃないんですよ。結局よく分からないなと思って(笑)。 その上で、『SEED』と『DESTINY』があるんだったら、じゃあ次は『FREEDOM』でいいじゃないかと。実際にそういうテーマでもあるので。

あとは、頭に「劇場版」を付けるのがすごく嫌だったのもあります。「劇場版」って付いていると、特別感があるように見えて、実は安っぽい感じがするというか、テレビで見ているのとあまり変わらなさそうな印象があるんですね。

自分は「媒体が変わっても、作品の姿は一つであるべきだろう」という考えも持っていたので、「劇場版」というのはつけたくなかったんです。

――これは自分の考えすぎかもしれないんですが、本作のタイトルロゴは「S FREEDOM」になりますよね。これって、「ストライクフリーダム」の略にも読めるし、FRを抜くとSEEDにも見えるようになっているなと。

福田:実際、プロデューサーがまったく同じようなことを仰っていて、タイトルについてはいろいろ苦心されていましたね(笑)。僕は「あまりあざといのもよくないので、もう少しストレートにいきましょう」と言っていましたが。

――『ガンダムSEED』という作品は、人間ドラマはもちろん、戦闘シーンもファンから支持されている点かと思います。今回は3DCGを使う上で、『ガンダムSEED』らしい戦闘シーンにするためにどういった見せ方の工夫をされたのでしょうか。

福田:まず『機動戦士ガンダムSEED』って、一応『機動戦士ガンダム』の冠が頭についているので、基本的なお約束は最初のテレビシリーズ(『機動戦士ガンダム』)に準じるというところがスタートでした。

そこからいろんな意味で変化したり発展させたりして、最終的に『SEED』のアクションというのができてくるんですが、たぶん皆がイメージする『SEED』のアクションって、後半の方なのではないかと思います。まず『機動戦士ガンダム』に近い感じからスタートして、だんだんアクションが派手になったり、スピードが上がっていくというメリハリをつけたかったんですね。

それはTVシリーズのときからそうで、最初は結構大真面目にやっていたんですが、それじゃあ通用しない部分も結構あったりして。最初はちょっと重量感のある重々しい動きだったのがだんだんと変化していくという、TVシリーズで一年かけてやっていた流れを、今回は2時間の中でやろうという考えは持っていましたね。

――『SEED』世代のスタッフと一緒に『SEED』らしさを表現する上で、何か印象に残るような出来事があれば教えてください。

福田:3DCGっていうのは、作画というよりは実写のミニチュアワークとか特撮に近い領域だと自分は思っているんです。仮にそういうものなら、例えば今ならお台場に行けば18メートルの実物大立像とか、横浜には「動くガンダム」があるわけで、モビルスーツっていう質量とか存在感がどんなものかっていうのを、みんなアトラクションとして体験しちゃっているんです。

その上で、じゃあ画面の中で見るものがそれよりも軽かったらどうなんだろうっていうところで、現実と作り事とのすり合わせをきっちりしていかなきゃいけないなと思い、最初のシーンはそれはもう重要視しました。そこが嘘だともう何をやってもおそらく嘘になっちゃうので、スタートはとにかく重量感や質量感があるように見せようと。

――18年の間に、見る側のリアリティ水準が上がってしまったと。

福田:それはありますね。まぁ、実際にあるんだから描く側もそれ見て描けばいいじゃんっていう感じにもなっちゃっているので(笑)。 逆に言っちゃうと、これは描き手の想像力がなくなったということでもあると思っていて、いずれは手で描く必要も、求められることもなくなってしまうだろうなと感じます。

よくある話なんですが「車が描けない」っていう人は、部屋の中で車を知識だけで描いているからおかしいのであって、「外に行って車を見てスケッチしてこい」と思ったりはするんですよね。頭の中でできることに限界がそろそろ見えてきて、それは想像力だけで補う時代ではないなという感じがしていますね。

――アフレコ時のキャストさんへのディレクションについてお聞かせください。

福田:今回は基本的にバラで録ったので、掛け合いで化けるってことがあまりないんですよ。なるべくはやったつもりなんですが、大きくは影響しなかったかなと。

完成形や芝居の空気感が見えないので、新人の方をはじめ、苦労されてたなっていう気がしますね。特にアルバート役の福山(潤)さんとか、「何で俺はこんな早口で喋らされてるんだろう?」って思いはあったんじゃないかと思いますよ(笑)。

そういう部分も含めて、本来は芝居の空気感とかキャラクター出しの段階で色々変わってくるところではあると思うんですが、今回は全員が五里夢中の状態で、集まっていろんなことができなかったので、少なからず弊害はあったかなと。

その分、ディレクションというか、こちらからの「こうしてください」っていう指定はものすごく細かいところまで言っていた気がします。

――今回の収録は前後半に分けて行われたとお聞きしましたが、やはり前半と後半でキャストの理解度は大きく変わったりしていたんでしょうか。

福田:今回はTVシリーズとは違い、2回だけで決めなきゃいけない部分があったので、事前に個人的なディスカッションはかなりやっていました。

でもやっぱり、『SEED』は上手い人が多いですから。本当に「1を言えば100返ってくる」ような人たちをなるべく揃えているので、そういう不安は少なかったですね。

今回は、新人の方たちも僕が全くその人の声を聞いたことがないとか、芝居感がわからないっていう人は呼んでいないんです。というのも、今回は役者ありきではなく、キャラクターありきでそれに当てる役者にお声掛けしているので、まずこちらがきちんと芝居を把握していないとどうにもならなかった。最終的な完成形を最初のオーディションの時からある程度想定して、その中から「この人はこのキャラで」っていう形で、何人かに絞っていきました。

[聞き手・文/米澤崇史]

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』作品情報

大ヒット上映中!

配給:バンダイナムコフィルムワークス、松竹

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

あらすじ

C.E.75、戦いはまだ続いていた。
デュランダル議長の死により、デスティニープランは消滅したが、同時に大戦終結後の世界を安定させる指標は失われた。
各地で独立運動が起こり、ブルーコスモスによる侵攻はくり返され、人々はさらなる戦乱と不安の最中にあった。
事態を沈静化するべく、ラクスを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスが創設され、キラたちはその一員として、各地の戦闘に介入する。
そんな折、ユーラシア連邦からの独立を果たした国・ファウンデーション王国から要請があった。ブルーコスモス本拠地へのコンパス出動を求めるものだ。
要請を受け、キラたちはラクスを伴い、ファウンデーション王国へ向かう。

キャスト

キラ・ヤマト:保志総一朗
ラクス・クライン:田中理恵
アスラン・ザラ:石田彰
カガリ・ユラ・アスハ:森なな子
シン・アスカ:鈴村健一
ルナマリア・ホーク:坂本真綾
メイリン・ホーク:折笠富美子
マリュー・ラミアス:三石琴乃
ムウ・ラ・フラガ:子安武人
イザーク・ジュール:関智一
ディアッカ・エルスマン:笹沼晃
アグネス・ギーベンラート:桑島法子
トーヤ・マシマ:佐倉綾音
アレクセイ・コノエ:大塚芳忠
アルバート・ハインライン:福山潤
ヒルダ・ハーケン:根谷美智子
ヘルベルト・フォン・ラインハルト:楠大典
マーズ・シメオン:諏訪部順一
アウラ・マハ・ハイバル:田村ゆかり
オルフェ・ラム・タオ:下野紘
シュラ・サーペンタイン:中村悠一
イングリット・トラドール:上坂すみれ
リデラード・トラドール:福圓美里
ダニエル・ハルパー:松岡禎丞
リュー・シェンチアン:利根健太朗
グリフィン・アルバレスト:森崎ウィン
ギルバート・デュランダル:池田秀一

(C)創通・サンライズ
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