映画
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』ネタバレ考察

アスランの妄想やラストに込められた意味とは?ネタバレ全開で全力で『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』について考察したい

 

本当の意味で「自由」になったキラとラクス

「愛」と並んで本作を語る上で重要だと思ったのが「自由」とういうキーワード。タイトルが「FREEDOM」なので、それはそうだろうとツッコまれるかもしれませんが、とくにキラとラクスについてのメインテーマはこの「自由」でもあったと自分は思っています。

『SEED DESTINY』の終盤も、デュランダルがデスティニープランが提示する人々が役割に従って生きる世界を否定し、キラ達は「自由」な世界のために戦うという構造になっていました。だけど、映画前半におけるキラとラクスはデュランダルを否定した責任を負う形で、それぞれ自分の能力に相応しい地位についており、否定したはずのデスティニープランに沿ったかのような生き方をしているようにも思えます。

 

 
映画の後半で描かれたのは、キラとラクスが縛られていた「役割」から解放されて、互いの「愛」を確かめ合うドラマだったんじゃないかなと。とくに後半のキラとラクスは、明確に自分が果たすべき「役割」に沿わない動きをしているんですよね。

例えば最後の決戦では、キラはミレミアムの守りをシン達に、ストライクフリーダム弐式での時間稼ぎをアスランにまかせる形でズゴックでラクスの救出に向かいましたが、コンパスのMS部隊の隊長で、最強のパイロットでもあるキラ自身が救出任務を行う必要性ってほとんどないんですよね。ファウンデーションを正当性をなくすためにラクスの救出が必須だとしても、ズゴックの扱いに慣れていて、潜入任務・白兵戦もお手の物であるアスランが実行し、キラはストライクフリーダムに乗って陽動を担当する方が適材適所だと思うんです。

しかし、ここでそうしなかったのは、直前のアスランとの喧嘩シーンでキラが吐露した「ラクスに会いたい」という想いを実現するための作戦だったからでしょう。私情……というと悪く聞こえてしまうかもしれませんが、それまでに世界のために自分を殺して尽くしてきたキラが、ここにきて何よりも自分のやりたいことを最優先で動くのがすごく良いんですね。

 

 
これはラクスも同じで、「オルフェと共に世界を導く」という遺伝子に課せられた使命に反抗するだけではなく、最後にはプラウドディフェンダーに乗ってキラの元に向かったのも、コンパスの総裁という「役割」に対して反抗しています。

劇中の描写を見るに、ラクスが同乗していた方がマイティーストライクフリーダムの性能をフルに発揮できるのだとしても、組織の最高責任者であるラクスが最前線に赴くのは本来許されることではありません。それでもラクスが押し切ったのは、「キラの隣で戦いたい」という感情を優先したからだと思うんです。リスクを承知でアスラン達がラクスの出撃に納得したのも、それまでに二人がどれだけ自分のやりたいことを押し殺してここまできたかをよく知っていたからでしょうね。

 

 
もちろんアニメ的には、主人公自身がヒロインを助けに向かったり、ヒロインが主人公と一緒に戦う方が展開としてドラマチックなんですが、リアリティを考えるとどうしてもちぐはぐになってしまうことがあります。しかし本作では、その行動がテーマ的に正しい構造になっているのが凄いんですね。

それを踏まえると、全裸になったキラとラクスが浜辺で寄り添っているラストシーンは、二人がいろいろなしがらみから解放されて「自由」になった瞬間を描いているんだろうと分かります。それまでのキラとラクスは恋人同士ではあってもどこか遠慮がちで、傷つけあわないような距離を維持しているようにも見受けられました。これからの二人は、そういった壁を取っ払ってお互いの愛を深め合っていくのではないでしょうか。

 

 
ファウンデーションの暴走こそ阻止されたものの、世界情勢としては下手すると映画の前よりも悪化した可能性すらありそうな状況ですが、今までの『ガンダムSEED』シリーズのラストのような悲壮感があまりないのは、キャラクターのドラマが綺麗に着地したことで、「キラやシン達がいればきっと世界は大丈夫だろう」と思えるようになったからなのかなと。

現実問題、アコードであることを全世界に公表されてしまったラクスがコンパスの総裁を続けるのは難しいでしょうし、精神干渉を受けたとはいえ領空侵犯をきっかけに核攻撃やレクイエムの報復が起きたことを考えると、キラも今の立場を維持できるかは微妙なところです。

もしかしたら、これからのキラとラクスの戦いは、今までのMSのような“力”を使ったのものとは違ったものになるのかもしれません。ただ、仮にコンパスから離れざるを得なくなったとしても、小さなところからでも二人が一緒に平和のための戦いを続けていくのは間違いないと思います。もしそこまでキラが考えていたとすると、決戦前にシンに掛けた「ミレニアムを頼むよ」という言葉は、すごく重い意味を持ち始めます。

 

 
この辺は半分筆者の妄想も入ってきますが、こういう考察をすればするほど面白みが増していくのが『SEED FREEDOM』という作品でもあります。テーマ性の強い作品って、ちょっと話が小難しかったりしますが本作はそんなことはなく、純粋なエンタメ作品として素直に楽しむこともできるのも良いところ。この「万人向けだけど考察しても楽しい」懐の深さって、まさに『ガンダムSEED』シリーズ全体に通じる魅力であり、長く愛され続けている要因じゃないかとも思っています。

『SEED DESTINY』から数えると約20年、キラたちはおろかムウやマリューの年齢すら追い越してしまったファンの一人として、今こんな奇跡のような作品に出会わせてくれたことに感謝の気持ちしかないです。きっと残りの自分の人生の中でも、今回と同じような体験はもう二度と味わえないでしょうから、劇場公開が終わる前にまた劇場に足を運んで、この瞬間を目に焼き付けておきたいなと思っています。

 
[文:米澤崇史]

 

作品情報

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

あらすじ

C.E.75、戦いはまだ続いていた。
デュランダル議長の死により、デスティニープランは消滅したが、同時に大戦終結後の世界を安定させる指標は失われた。
各地で独立運動が起こり、ブルーコスモスによる侵攻はくり返され、人々はさらなる戦乱と不安の最中にあった。
事態を沈静化するべく、ラクスを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスが創設され、キラたちはその一員として、各地の戦闘に介入する。
そんな折、ユーラシア連邦からの独立を果たした国・ファウンデーション王国から要請があった。ブルーコスモス本拠地へのコンパス出動を求めるものだ。
要請を受け、キラたちはラクスを伴い、ファウンデーション王国へ向かう。

キャスト

キラ・ヤマト:保志総一朗
ラクス・クライン:田中理恵
アスラン・ザラ:石田彰
カガリ・ユラ・アスハ:森なな子
シン・アスカ:鈴村健一
ルナマリア・ホーク:坂本真綾
メイリン・ホーク:折笠富美子
マリュー・ラミアス:三石琴乃
ムウ・ラ・フラガ:子安武人
イザーク・ジュール:関智一
ディアッカ・エルスマン:笹沼晃
アグネス・ギーベンラート:桑島法子
トーヤ・マシマ:佐倉綾音
アレクセイ・コノエ:大塚芳忠
アルバート・ハインライン:福山潤
ヒルダ・ハーケン:根谷美智子
ヘルベルト・フォン・ラインハルト:楠大典
マーズ・シメオン:諏訪部順一
アウラ・マハ・ハイバル:田村ゆかり
オルフェ・ラム・タオ:下野紘
シュラ・サーペンタイン:中村悠一
イングリット・トラドール:上坂すみれ
リデラード・トラドール:福圓美里
ダニエル・ハルパー:松岡禎丞
リュー・シェンチアン:利根健太朗
グリフィン・アルバレスト:森崎ウィン
ギルバート・デュランダル:池田秀一

(C)創通・サンライズ
おすすめタグ
あわせて読みたい

関連商品

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング