
『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』川口敬一郎監督インタビュー|「好きだからこそ、汚したくない聖域に敢えて踏み込んだ覚悟を見ていただきたいなと」
絆が絆を呼んだ、奇跡のキャスティング
──本作では音響監督も兼任されている川口監督。メインキャストそれぞれのキャスティングについてもお聞かせください。
川口:今回のキャスティングは最初にテープオーディションをやらせていただき、その中から数人にスタジオオーディションをお願いするという形式でした。
井藤(智哉)くんはテープで聞いた時の第一印象から「灯悟だな」と。とはいえ、これまでの出演経験もほとんどなかったので、主役で呼ぶには「大丈夫かな?」という懸念する声もあったんです。ただ、個人的には周りを経験のある方で固めれば、大丈夫じゃないかなと思っていて。「主役は井藤くんでいきたい」という意見を通してもらいました。本人がそれを感じたかは分からないですけど、井藤くんは灯悟という役を全うしてくれたと思っています。
──井藤さんにとっては、初のレギュラー作品でもありますよね。
川口:そうですね。最初のアフレコ現場では、ずっと緊張していました。最初に録ったのが第01話のアバンだったので、いきなり中田譲治さんやキズナファイブのベテランキャストたちとの掛け合いじゃないですか。「こっちも緊張するよ!」というメンツと堂々と渡り合っていて、「若いのにやるなぁ~」と関心しました(笑)。
──イドラ役の稲垣好さん、テルティナ役の田中美海さん、ロゥジー役の大野智敬さんについては、いかがでしょうか?
川口:イドラはヒロインと思いきやツッコミ担当だし、ヨゴレ役でもあって。可愛さを出しつつ、面白さも要求される部分があります。その辺りを稲垣さんが上手にやってくれました。
テルティナは基本的に可愛らしい感じですけど、「昔は荒れていた」という設定があって、お芝居でもそういう雰囲気を匂わせてくれていました。ちゃんと原作を読んでくれているんだなと。
大野くん(ロゥジー)に関しては、この作品の前に御一緒した作品でスケベなキャラクターをやっていたこともあり、テープオーディションで聞いた時に「大野くんってイケボも出せるんだ!?」って(笑)。僕の中にはそのイメージがなかったんですよ。イケボをやりつつも、ギャグにも振れるんだと驚きました。そういう意味でも大野くんに対しては、ムチャブリが多かったかもしれません。アフレコは全体的にすごく楽しかったです。キズナファイブ側のアフレコは、自分自身がTVで観ていた憧れの方たちですからね。
──特撮ファンには堪らないキャスト陣ですが、そもそもどういった経緯で実現したのでしょうか?
川口:音響制作を担当した東北新社さんが頑張ってくれた結果ですね。こちらの要望をよく聞いてくれましたし、要望以上に押さえてくれました。「この方も呼べそうですよ」と言われて、「マジで!?」みたいな。今回は小川さんが変身ポーズを考えてくれた流れから、「特撮ヒーローご出身のキャストで声優もやっている人がいるよね」とか。
キズナブルー(万丈寺流)の声は松風雅也さんに担当いただきましたけど、「他のメンバー呼べますよ」と。第08話に松風さん以外の4人も出ていただいたのは、そういう流れがあったからです。
アニメ作りは絆がほぼ全て
──音楽に亀山耕一郎さん、音楽制作に日本コロムビア、更に挿入歌にも特撮ゆかりの方々が参加されています。川口監督から見た音楽面での注目ポイントをお聞かせください。
川口:そもそも今回音響監督を担当したのは、音楽のつけ方や曲の発注に関して、こちらの要求を言いたいと思っていたからなんです。そこで『SKET DANCE』以来、十数年ぶりになりますが、「この作品は音響監督もやりたい」という話をしました。
音楽を日本コロムビアさんに担当いただいたのも良かったですね。挿入歌は絶対に作ってほしくて、『絆創戦隊キズナファイブ』の主題歌とマキシマム・キズナカイザーの挿入歌を発注リストに書きました。「マキシマム・キズナカイザーのテーマ(歌もの、串田アキラさんとか)」みたいな(笑)。その時点だと実現できるかは分からなかったのですが、大人の皆さんが調整してくれました。
そして『絆創戦隊キズナファイブ』の主題歌は、速水けんたろうさんの息子さんである隆成さんに担当いただきました。「それっぽい人に歌ってほしいけど、現役の方は難しいよな」という状況で、隆成さんをご提案頂いて、ピッタリな方にお願いできたなと思っています。あとは、「作詞を藤林聖子さんにやってほしい」というのもこちら側のリクエストだったんですけど、「頼んでみましょう!」という感じで。「これは音響監督をやった甲斐があるぞ」と思いましたね。劇伴も全体的に本家の要素がふんだんに盛り込まれていると思いますし、曲の付け方も意識して観てもらえると嬉しいです。
──川口監督が楽しそうに音楽を発注している様子が目に浮かびます。
川口:発注もですが、音楽メニューを作るのってすごく楽しいんですよ。みなさんにもやってみてほしいです。音を消した状態で見て、「ここでこういう曲がほしい」とか。実際の特撮では、本編で流れない挿入歌も多いですが、自分としては「必ず流したい」という思いがあって。今回は結構本編で歌ものをかけていますけど、次があるなら、もっと作って欲しいです。全部本編にかけますので! コロムビアさん頼みます!!
──最後に、川口監督にとっての“絆”についてお聞かせください。
川口:アニメはひとりで作るものではないので、常に色々な人の助けを借りています。アニメ作りは絆がほぼ全てと言えますね。
今回も「とある作品のオールラッシュの現場にいたんですよ」と言われたり、総作監(総作画監督)の方と大昔に会っていたことが分かったり。何て言うんでしょう……初めて仕事をしていても繋がっていて、そういったことが後から明かされていく。「自分も長くこの業界で仕事をしているんだな」と実感する瞬間があります。加えて、サテライトさんとお仕事をするのは初めてだったので、新たな絆が生まれた気もしています。
──お話を伺う中で、そういった絆が連鎖して、このアニメが出来上がっていると感じました。
川口:そうですね。個人的には異世界モノに飽きている人、特撮に興味が無い人、逆に「特撮は好きだけど、アニメになるとどうなの?」という人にこそ、観ていただきたい作品です。個人的にも好きだからこそ、汚したくない聖域に敢えて踏み込んだ覚悟を見ていただきたいなと。ですので、辛口コメント……はヘコむから止めてほしいですけど(笑)、感想はどんどんいただきたいです。最終回まで楽しんでいただければと思います。
[インタビュー/小川いなり]
作品概要
あらすじ
その野望に立ち向かう、絆で結ばれた5人の戦士たちがいた。
そのヒーローの名は、《絆創戦隊キズナファイブ》!!
キズナファイブの5人は、遂にゼツエンダーとの最終決戦へ。
壮絶な戦いの中で傷付いていく仲間たち。
4人の想いを背に、《キズナレッド》は単身《絶縁王》へと挑む。
激戦の果てに敵と相打ちになるレッド。
命を落とした―――かに思われたのだが、気が付くとそこは《未知の世界》だった!
異世界でも困った人々を救うため、真っ赤なヒーローは冒険者となり今日も戦う!
《異世界×戦隊ヒーロー》でおくる、絆の最強英雄譚!!
キャスト
(C)中吉虎吉/SQUARE ENIX・異世界レッド製作委員会





















































