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アニメ『プリンセッション・オーケストラ』大沼 心監督インタビュー

大人の鑑賞に耐えうる面白い作品を作ることが自然と子どもたちにも響くと思っています――オリジナルTVアニメ『プリンセッション・オーケストラ』大沼 心監督インタビュー | 歌アフレコに合わせて口パクを一音ずつ合わせた“歌いながら戦う”ヒロインアニメの制作に迫る

 

歌と映像を合わせるこだわり

──プリンセス3人のキャスティングの決め手についても教えてください。

大沼:分の中で、みなもはフレッシュさみたいなもの、かがりは少し大人びた感じや大人っぽさ、ながせは元気でトリックスター的な面が強いのでちょっと特徴的な芝居ができる方を意識しましたね。

実は、ながせ役の橘さん(橘 杏咲)に関しては、元々みなも役のオーディションを受けに来ていただいたのを、こちら側が「ながせがハマるんじゃないかな?」と思ってスライドしていただいた経緯があって。そういった点では少し独特な経緯でのキャスティングかもしれませんが、現場で話し合いながら現在の3名に決まったという感じです。

あとは歌の要素があるので「歌える」という点も重要でした。オーディションが少し独特だなと思ったのが、仮の歌でしたけれど実際に歌っていただいて、歌唱力も含めて審査をしたんです。私にとってそういった形式のオーディションは初めての経験になりましたね。

 

 

──そんな経緯で決まったプリンセスたちですが、アフレコ現場の様子はいかがですか?

大沼:やはり“歌いながら戦う”作品なので、映像に合わせながら演じるのは大変そうですね。皆さん実際に体を動かしながら演じられていて、それも三者三様なのが面白くて。シャドーボクシングのように動いたりする人もいれば、やられている前提でダメージを受けているかのような演技だったり(笑)。

本編を録った後に歌アフレコをしているので、声を維持するのも大変だと思いますし、本当に感心しながら見させていただいています。

──先日のインタビューでも、3人とも試行錯誤しながら「難しいけれど楽しい」とおっしゃっていました。

大沼:今後の展開では3人の合唱曲も出てきますが、それこそ本当に“歌いながら戦う”ことが肝になるので、3人での歌唱後は皆さんやりきった表情で収録を終えられていますね。

実は、アニメの制作現場も歌アフレコに合わせて映像調整をしているんです。歌いながら口パクや動作に全てを合わせるのは難しいと思うので、動作の起点や肝になる部分は押さえていただいて、口パクについては一旦こちらで預かって改めて編集する形をとっています。

通常は音響さんに映像と合わせてもらったら終わりということが多いですが、この『プリオケ』は現場のやり取りの回数がとても多いのも特徴です。

──アフレコ後に映像を再調整されているんですね。

大沼:再調整、再々調整といった時もあります。さらに、作曲チームにも寄り添っていただいているので、アフレコ後に編曲を行うこともあります。

映像を合わせて譜割りを変えてダビングして、そのダビングが終わったものを改めて一音ずつ口パクに合わせて調整するといったこともありますね。最初は「これを1年間やるの⁉」と少し思ったりもしましたが、今も頑張って製作している最中です。

 



 

──そんな楽曲が本作では相当数あると伺っていますが、各楽曲に大沼監督からオーダーを出されたのでしょうか?

大沼:私の方から「この場面で使うので、こうしてください」と指示するよりも、むしろ音楽チームが意図をもって制作した楽曲なので、こちらも「映像としてこのように合わせていこう」と考えながら進めることが多いですね。

──かなりの楽曲数なのでどちらのチームも大変ですね。

大沼:そうですね。確認してみたら凄い数の曲数になっていたので、それらは全て劇中で使っていこうと思っています。先行してお披露目している楽曲もありますが、次々と新曲が登場するので、そのあたりも本作の見どころ・聴きどころの一つとして楽しんでいただけると幸いです。

まずは作品を周知していただくために、序盤は各キャラクターのテーマに合わせた楽曲を覚えていただきながら、後半にかけては一話につき一曲ずつ入るような大変なことになると思いますよ(笑)。

 

「変身ディレクター」と「必殺技ディレクター」を立てた理由とは?

──エンドテロップでは「変身ディレクター」と「必殺技ディレクター」として、それぞれ別の方が立たれているのが印象的でした。

大沼:一年間のシリーズだと伺った時に、これはマラソンだと思ったんです。マラソンのような長期戦において監督が自身の色を出しすぎると、現場はどうしても停滞してしまうことがあるんです。

私自身はこのマラソンを走り切るための、いわば補給所のような役割としてサポートに徹して、全体がスムーズに回るように努めようと当初から決めていました。とは言え、オープニングアニメーションは多少自分の色を出させていただきましたが(笑)。

 



 
本編はスタッフ個人の持つ力や表現力に頼っていきたいと考えていたので、例えば変身シーンであれば原画も含めて担当ディレクターに全てまとめていただいています。こういった変身シーンがある作品で複数人スタッフがいる場合だと、通常はフォーマットを決め込んで統一した変身シーンにすることが多いのですが、今回は各ディレクターの個性を尊重しています。

もちろん「ジュエルベルを振る」といった基本的な段取りや決めごとはあるにしても、その間の演出や見せ方については担当ディレクターの個性として表現してもらいたいなと。そうすることで作品としての個性にも繋がっていのかなと思って、そのようにお願いしていますね。

 

 
変身シーンは小林君(リップル変身ディレクター・小林宏平)、渡辺さん(ジール変身ディレクター・渡部高志)、伊藤さん(ミーティア変身ディレクター・伊藤浩二)に担当してもらっています。必殺技に関しては今後も色々と出てきますが、伊藤さんにお願いして非常に力の入ったものを作っていただいています。

面白いなと思ったのは、例えば「可愛くしてください」といった細かいオーダーは特に出していないんですけれど、皆さんから「女の子向けの作品なら、やっぱり可愛くでしょ」と打ち合わせで言われたんです。もちろん格好良さという要素も並列してあるので、そのバランス感覚も基本的にお任せする形で進めています。

その辺りは担当していただいた方の個性が非常によく表れていると思いますし、それをちゃんと皆さんにもお伝えしたいという想いがあってエンドテロップにお名前を出させていただいています。

──リップルの変身シーンで水の傘が登場する演出が印象に残っていて、あれは格好良くて、かつ可愛い演出だなと思って見ていました。

大沼:あの演出は担当の小林君から「傘を使って良いですか?」と提案もらったんです。リップル以外にも三者三様の変身シーンがありますし、必殺技の方も今後も様々な演出が登場しますので、そのあたりも見どころの一つとして考えてもらえたら嬉しいです。

 

スタッフがそれぞれの持ち場でミューチカラを発揮している『プリオケ』という作品

──本作に関わっていて監督が「ミューチカラが高まる瞬間」はどんな時ですか?

大沼:やはりアフレコでキャストの方々が歌うのを生で聴いている時でしょうか。あれは本当にすごくて非常にテンションが上がるというか、ミューチカラが高まりますね。でも、これだと自分からミューチカラを出していないな……。

私自身の作業で言うと、他の作品と比べて編集作業がすごく多くて、微調整を全部しなければいけないので大変なんですけど、細かく調整を重ねてカチッとハマった瞬間が、非常に気持ちが良いんです。

編集の木村さん(木村勝宏)と助監督の関根君(関根侑佑)と、ああでもないこうでもないと編集室に延々とこもっている時は男3人でミューチカラが高まっていますね(笑)。

本当に編集には助けられていて、関根君には口パクを全部直してもらっているので、彼は正に「口パク大臣」として頑張ってもらっています。そんなスタッフがそれぞれの持ち場でミューチカラを発揮していますね(笑)。

 

 

──それでは最後に『プリオケ』のファンにメッセージをお願いします。

大沼:本作では“歌いながら戦う”というハイカロリーなことにスタッフ一同頑張っています。また、アリスピアやバンドスナッチなどは、まだ明かされていない深い部分もあったりします。

皆さんが予想していることがひっくり返る部分があったり、アリスピアという世界の謎に迫っていくような展開も用意しています。ただ、一番大事なのは主人公であるみなもたちを好きになってもらうことだと思っているので、特に序盤は彼女たちに寄り添ってもらえるように頑張って制作を進めています。

これはテーマというわけではないのですが、作品を作る上での心構えとして「一緒に成長できる作品になると良いな」と考えていたので、この作品を通じて一緒に成長していければと思っています。

一年間どうぞ最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 
取材・記事:岩崎航太、編集:太田友基

 

作品概要

プリンセッション・オーケストラ

あらすじ

アリスピア――そう呼ばれる不思議の国は、今よりもずっと昔から世界のどこかに存在していた。

そこには楽しいことが大好きな住民アリスピアンたちが暮らしていたが、いつしか謎の怪物ジャマオックが現れるようになり、穏やかだったアリスピアの平和は、少しずつ脅かされるようになっていった。このままではアリスピアからキラキラとした輝きが失われてしまう――。

そんなピンチにあっても、胸に歌を忘れない『プリンセス』たちの冒険を描いた物語。

勇気と元気がたくさん詰まった、ポップソング・ファンタジア――プリンセッション・オーケストラ

キャスト

空野みなも/プリンセス・リップル:葵あずさ
識辺かがり/プリンセス・ジール:藤本侑里
一条ながせ/プリンセス・ミーティア:橘杏咲
陽ノ下なつ:藍村光
ナビーユ:下野紘
赤の女王:水樹奈々
白の女王:花澤香菜
カリスト:小林千晃
ギータ:千葉翔也
ベス:榎木淳弥
ドラン:武内駿輔
風花すみれ/花の騎士シンシア:鬼頭明里
風花りり/花の騎士ピュリティ:伊藤美来
空野誠志郎:日野聡
空野ようこ:南條愛乃
空野りく:若井友希
根津あいこ:逢田梨香子
姫崎みらい:夏吉ゆうこ
佐藤かえで:阿澄佳奈
日村みかん:大久保瑠美
奏美えな:松田利冴
奏美ろな:松田颯水
曽本さき:久野美咲
葉加瀬まなび:内田真礼
風花すみれ:鬼頭明里
田中まい:和氣あず未
グリムさん:新井里美
カメオさん:子安武人
ダック軍曹:大塚芳忠
副官:畠中祐
ドドメさん:森永千才
タマゴ:朝井彩加

(C)Project PRINCESS-SESSION

 

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